でも楽しい。どこまでも行けそう(^^)。
「で、最初に戻るけど、この種たちをどうして攻撃に使ったんだよ。かわいそうでしょ。」
「だって、あなたの力に驚いたんだ・・・。母様の種と僕の種、二つ急にできて、僕の種は未熟で爆発しそうになって、で、怖くなって二個とも投げちゃった・・・。」
ごめんなさい、と謝罪の意思が感じられる。まあ、とりあえずは対処できたからいいけど、梅皇や他のみんなには謝らないといけないよ、と言っておいた。
「それにこれからは、たぶんエネルギーチャージの問題はなくなるよ。」
そう言って、ナナシと名乗った樹の方に歩いて行く。大樹の幹に左手で触れ、梅皇にリミッターを外すように言った。
「・・・あああ、何をなさいますか。まだこの上に苦しめとおっしゃるのですか・・・。わたしを切り倒してくださいまし・・・。」
悲しい思いは根深いのだろう。拒否の意思を示すナナシだった。それでも、エネルギーは入っていった。先ほどエネルギーを放出したばかりなのに、カッと熱くなってくる左手の赤い宝玉。存分に吸い取ればいいと力を込めてみる。ぼんやりと光り始める赤い宝玉。ずん、とショックがあり、視界がぶれる。
「・・・その左手をおいて、この星から出て行ってくれませんかね?。」
水穂さんと謙吾さんが、叫びながらこちらに駆け寄ってくるのが見えた。だが、すぐに何かの力にはじき飛ばされてしまう。身体の両脇に熱い水しぶきみたいなモノがかかったのを感じた。視界が赤く染まる。右手で首のあたりを触ると太さ3cmくらいのツタか何かが刺さっていた。首は動かせない。息ができない。
「母様をこの地に幽閉した人間たちよ、思い知るがいい。」
ツタが抜け、血があたりに飛び散る。
「あなた!、一樹様!。」
ようやく二人が何を叫んでいるのか聞こえてきた。何かのフィールドに阻まれて、こちらには来られない。淡く光る半透明の翼が見える。光應翼か・・・。
「すぐに他の仲間も、おまえの落ちるアストラルの海に送ってやる。苦しかろう!悲しかろう。数が多いほど慟哭の声は我の喜びだ!。」
今度は背中から胸に、同じツタが抜けた。目の前1m位に、血に染まったツタが生えている。血が口からあふれた。しかし・・・。
「うあああああっっ!。」
声が獣の叫びのように絞り出された。そのツタは黒く消し炭になって胸からぱらぱらと落ちていった。そうして胸に開いた穴から光があふれていく。 ばぎんっっとカニの殻を裂くような音がしたと思ったら、身体は恒星系を越え大きく伸び上がっていく。自分がいた惑星に手をつく。何か花びらのモノのようなものが手の下で開いたけど、ぷつりと押しつぶしてしまった。
半身が天の川銀河から出たと思ったら、振り返って、右手で銀河の中心部に手を突っ込み、漆黒の球体を引きずり出そうとした。ついでに左手で近くの銀河の同じような球体を引きずり出そうとする。
「一樹殿、だめだっ。津名魅、訪希深!」
どこかで聞いたことがある声。
「三次元の時空連続体が・・・。姉様、もう持ちません!。訪希深、封印を解いてっ、早くっ。」
うん、このボール美味しそう。右手でつかんだ漆黒の球体をさらに持ち上げようとした。
「・・・みんな、悲しんでるよ。帰ろう。」
どこから来たのだろう?金色に光る小さな光が、ちょっとのんびりした口調でそう言う。すぐに目の前でぐっと大きくなって僕よりも大きくなった。 悲しい?なんで?この黒い玉、ずっしりと重くって美味しそうだよ。きらきら光る小さなのは、お砂糖みたいだし。
「ほら、君を呼ぶ声が聞こえないかい?」
あなたっ、一樹様っ、と聞こえてきた。とたんに冷たい思いが広がる。目の前の金色の人物は弾けるように消えた。
「・・・僕は、何を・・・。」
半透明。銀河の光が透けてみえる。美しい女の人が三人、僕を見下ろしていた。
「・・・我ら、三命の頂神の祝福を心静かに受けよ。ただ、まだ孵化には早すぎる。ともに帰るのだ・・・。」
大きな、大きな腕に抱かれ、ぎゅっと押さえ込まれる。そして、さっきとは逆に小さくなっていった。
「あなたっ」
血相変えた水穂さんが抱きついてくる。謙吾さんがおろおろとした表情で目の前に立っていた。なんか、可愛いなと思って左手で抱き寄せる。二人とも大声で泣いていた・・・。
「かわいそうな、ナナシの子。もう一度・・・。」
この声は・・・、そう、樹雷で会った、津名魅様?その声を聞くと、周りの音が聞こえなくなり、時が止まったようだった。
半透明の美しい女性が、そっと小さな樹に触れていた。小さな樹は、根元から折れ、黒く焼かれてしまっていた。津名魅様が触れると、光の結晶のようなモノに、次に光の粒子に変わり、それが小さくまとまると津名魅様の手のひらで褐色のクルミ大の粒に変わっていた。
「この子は、他の者から与えられる暖かみを知らず育った子・・・。一樹殿、樹雷の地で、今持っている種と一緒に、もう一度育ててやってくれませんか。」
クルミ大の褐色の粒をそう言って、僕に手渡す。右手には、さっき梅皇の上で受け止めた種もあった。
「それと、いつまでもナナシでは可愛そうね。名前をつけてやってくださいな。」
気がつくと、左手の赤い宝玉は、ぼんやりと淡く光っていて、その手が押さえている幹は、傲然と青緑色の炎をまとって燃えさかっていた。熱くはない。嬉々とした波動が伝わってくる。なぜだか声は聞こえてこない。
「ナナシは、第1世代の樹ですが、悲しみが長く続きすぎました・・・。今は意識のほとんどを眠らせています。休息の時間が必要でしょう。」
目を伏せがちに津名魅様はそう言った。その両サイドに、巨大な半透明の女性が立っている。顔は大きすぎて見えない。
「・・・それでは、蒼穏(しおん)と名付けたいと思います。蒼い炎が美しい樹ですから。」
そう言うと、傍らにある蒼い炎を上げて燃え上がる樹が、一瞬ひときわ大きな炎を上げて見せた。すぐにさっきの状態に戻る。気づくと、津名魅様やその左右の巨大な女性はもういない。そして、周りの音が急に聞こえてきた。
「・・・あ、れ?あれれ?」
「一樹様!」
二人が顔を上げる。そして、胸やら首やらをなでてくれる。謙吾さんは、上半身の服を強引に裂いて、胸をさわってくれていた。
「あなた、一樹さん、あなた。」
真っ青な顔の水穂さんだった。手のひらで首と胸を触っている。謙吾さんも見たことない険しい表情だった。
「・・・もう大丈夫だよ。津名魅様に助けていただいたみたいだ・・・。」
二人そろって、キッと厳しい目で僕を見た。
「わたし、・・・二度と、あのような姿は、見たくない。」
水穂さんは、震えながらそう言った。
「籐吾殿たちが、あの場に居なくて良かった・・・。後を追ったかもしれません。」
涙目の謙吾さんは、ようやくそれだけ言った。
「二人ともごめん。皇家の樹だからと油断していた・・・よ。」
そう、自前の光應翼も全く役に立たなかった。無敵の光應翼も、皇家の樹相手だと通常シールドの方がまだマシである。
「わしたちは、おまえには必要ないのかのぉ・・・。」
2mほど離れて、柚樹とイツキが居た。
「ごめんなさい。ずっと一緒に居ようと約束した気持ちは変わってません・・・。」
とぼとぼ、といった感じで二人(2樹)とも近づいてきた。
「僕も、信じてきた皇家の樹、その中にもいろいろある・・・、それに殺されそうになった・・・、その現実が厳しいです。みんながいなくなると、独りになると、この世から離れてしまいそうで怖い・・・。」
イツキは急いで僕の肩に乗って、柚樹は足下に走ってきた。
「賢く優しい皇家の樹。そして、支えてくれるみんな、壊れそうな、僕を支えてほしい。」
か細い声でごめんなさいと、二人から聞こえ、おずおずとした波動で2樹は、僕の心をゆっくり洗ってくれた。そして、両手で持っていた二つの皇家の樹の種を謙吾さんに託した。
「一樹様!大変です。これをご覧ください。」
緊急コールで梅皇からの通信が入った。いつものブリッジに着席している籐吾さんからだった。頼んでおいた雨木家開拓団やら、天木家の救援残存艦隊やらの収容は終わったのだろう。目の前に大きくディスプレイが広がる。水穂さんと謙吾さんも、身を翻してディスプレイを見ていた。
「まさか・・・。」
そこには、ディスプレイを覆い隠すように、八面体シリコン生命体が映っていた。
「こいつらまでの距離は?、大まかな数は?」
「は、はい。・・・500光秒ほどでしょうか。非常にステルス性が高い生命体です。この距離に近づかれるまで分かりませんでした。模式的に、この星系の上方から覆い被さるように接近してきています。数は・・・。数百億。」
センサーなどの数値を読み上げる、謙吾さんの言葉の語尾が震えていた。
「さっき、深宇宙に逃げ去ったと聞いたが・・・。仲間を連れて帰ってきたのか?」
モニターしていたディスプレイが突如光った。
「八面体生物の前衛部隊から高エネルギー反応!。何らかのエネルギービームが放たれました。」
なんと、こいつらビームまで打てるのか?
「梅皇、光應翼最大展開。柚樹さんもイツキもお願い。」
ふんっあなたにはほとほとあきれるわっ。そう言い放ちながらも、巨大な5枚の半透明の花びらを展開する梅皇。この惑星の衛星軌道上だ。その内側に、イツキが光應翼を展開する。
「そうだ、忘れるところだった。柚樹さん、リフレクター光應翼お願い。この星を守るぞ。」
ニヤッと笑う柚樹ネコだった。
最前部に例のリフレクター光應翼が花開いた。イツキや梅皇、そして僕のエネルギーリンクモードである。足下にいた柚樹は、もちろん九尾の狐モードである。
「!!!!。」
天を圧する爆音と、地の揺れが僕らを襲う。一瞬柚樹が銀色に光った。
「八面生命体の表層部が、吹き飛びました、がものすごい数です。残念ながら焼け石に水です。」
赤く崩壊した仲間の後ろから、ワラワラと湧いて出てくるように、同じ形の八面生命体が殺到してくる。なんと、壊れた?それとも、死んだ仲間を食っている・・・。
「一樹様、あの小さな樹は、エネルギーを集めて、その母樹で撃退したと言ってましたが・・・。」
謙吾さんが、蒼く燃えさかる樹を指さす。そうか、この樹で、か。
もう一度、蒼穏(しおん)に触れた。今度はエネルギーを誰からもチャージされずとも問題ないはずである。僕の赤い宝玉でさっきチャージしたばかりだ。
「おまえの力を見せてくれ。」
最大出力、発射!と念じた。蒼く熱を発せず燃えていた樹から、細いエネルギービームが放たれた。天を覆い尽くそうと攻めてきていた八面シリコン生命体の群体に突き刺さる。そのエネルギービームは、いくつか生命体を破壊しながら、群体中心部に到達し、突然、球状に広がりながら、群体すべてを光の粒子に変えてしまった。そこに居た者すべてに、まるで夢を見ていた、そう言わせるかのように。
「・・・たった今、見たことが信じられませんが・・・八面生命体すべて消滅、です。」