スッと開いてテキスト打ち出来るし。
あ、ちなみに犬種じゃないっすよ(^^;;;。
「おまえの力を見せてくれ。」
最大出力、発射!と念じた。蒼く熱を発せず燃えていた樹から、細いエネルギービームが放たれた。天を覆い尽くそうと攻めてきていた八面シリコン生命体の群体に突き刺さる。そのエネルギービームは、いくつか生命体を破壊しながら、群体中心部に到達し、突然、球状に広がりながら、群体すべてを光の粒子に変えてしまった。そこに居た者すべてに、まるで夢を見ていた、そう言わせるかのように。
「・・・たった今、見たことが信じられませんが・・・八面生命体すべて消滅、です。」
キラキラキラ、とさっきの余韻だと言うように、わずかに残った光の粒子が消えていく。地球で言うなら大判の花火が上がったあとのようだった。 「そうか・・・、よか・・・った。」
眠い、ものすごく眠い。また水穂さんたちに怒られるなぁ、そう思ったと同時に前に倒れ込んでいた。
クリーム色、そんなイメージが湧く。空は青くなく煙ったようなそんな色である。寒くもなく暑くもない。小さな子どもふたりに囲まれて歩いていた。背は僕の腰までもない。歩いているのは、小道だった。道の横は小川があった。道は、両側に子ども二人、真ん中に僕が歩いて余裕があるくらいの幅。地球の軽自動車の幅ギリギリかなぁ、とか思いながら歩いて行く。子どもの歩く速さに合わせている。つないだ手。汗ばんだ小さく熱い手のひらが可愛い。
あれ?僕に子どもは居ないよな。確か結婚もしてなかったし。うん、きっとあれだな。天使だったりして。そう思ったら、子どもたちがぴたりと歩みを止めた。そして僕を不思議そうに見上げている。
「津※○様が、あなたと一緒に行きなさいと言ったんだよ。」
最初の人の名前のようなところが、うまく聞き取れない。
「もう少しだよ、ほら、あそこ。」
そう声をかけられて、前を見ると光が射す、緑の草原だった。向こうにたくさんの木が生えている。二人の子どもに手を引っ張られて、これこれ、おっさんはそんなに走れないよ、と言いながら、その場に足を踏み入れた。
目が覚めた。ものすごくよく寝た、と言うか長い長い夢を見ていたそんな気がする。え~っと、今日は何日だっけ。思い出せない。枕元に携帯置いていたよな、それにメガネ、と思って手を上げて探ろうとして、びっくりした。右手になにやら管のようなモノが貼り付いている。確か家で寝ていたはずだけど。電子書籍やら、うれし恥ずかしなコミックやらをたくさん入れていたiPadも見当たらない。
「え?ここどこ?。」
立派なしつらえの部屋だった。ドラマで見る、政治家が都合悪くなると逃げ込む、大病院のVipルーム、そんなモノが裸足で逃げ出すような部屋である。そこの大きなベッドに独りで寝ていた。
「・・・お目覚めになられましたか?」
背後から丁寧で静かな声で話しかけてびっくりする。和装?白衣装だから看護師だろうか。美しい女性が近づいてくる。手に半透明のクリップボードに似た物を持っていた。SFアニメに出てきたタブレットみたいだ。あれ?ド近眼だったはずなのにメガネなしできれいに見える。
「・・・ここは、どこですか?」
あれれ、声が違う。何回か咳き込んでみるが変わらない。
「ここは、柾木・一樹・樹雷様、あなたの皇家の船、梅皇の病院施設です。」
皇家の船?船の中の病院?梅皇って何?
「僕は、岡山の西美那魅町から一歩も出ていないはずだけど。それに、名前は田本一樹だよ。」
そこまで言って、いろんな違和感を感じた。おなかも出ていないし、手の甲の肌なんか50代に近いおっさんの肌ではない。それに着ている物も、とても肌触りのいい不思議な素材である。好んで身につけていた、ざらっとした半分よれている綿の下着の肌触りではなかった。
「・・・一時的な記憶の混乱かもしれませんね・・・。どちらにしても菊乃先生をお呼びします。」
菊乃先生?う~、思い出せない。美しい女性看護師は、そのタブレットのような物を操作して、魔法のように小さく縮めて、携帯端末にして通話している。うわ、なんか未来だ、カッコイイ。
「・・・ようやく目が覚めたのかい?うちの司令官殿は。え?記憶の混乱?・・・、あれだけのことがあったからねぇ。すぐ行くよ。」
はつらつ、そんな感じの年配の女性の声だった。役場に様々な会合でよく呼ばれている婦人会の会長さんの声に似ていた。その背後で、え、目を覚まされたのですか?、と聞き返している男女数名の若者の声が聞こえてきた。
程なくというか、数秒後に緑色で円形のカーテンが僕の目の前に、床から立ち上がって出現し、それが人影になって、看護師さんと似た和装の服を着た女医さん?が現れた。歳は重ねているようだが、目鼻立ちの整った人だった。
「一樹様、気分はどうだい?」
ささっと、いくつかの液体を用意して僕の腕に注射というか圧縮空気の音をさせて送り込んでいる。まだ頭がハッキリしないので、されるがままに、ぼ~っと眺めていた。その腕も妙に筋肉質だ。もっと生白くてプニプニと柔らかい見慣れた腕ではない。
「・・・気分は、まあいいのですが、僕はなぜこんなところで寝ているのでしょうか?」
やっぱり僕の声ではないような気がする。ちょっと、いやだいぶパニックになりそうだったりする。 「そうだねぇ・・・。阿主沙様や瀬戸様がものすごく心配しているけれど。もう少し眠ったほうがいいかもしれないねぇ。」
そう言いながら、その女医さんは、また何かの液体を注射した。パニック寸前だった僕はまた眠くなる。
「わしを見ても何も思い出さんかな。」
ベッドに寝ている足下に、突然丸まって寝ている銀毛のネコが現れた。こっちの顔を向けてしゃべっている。ふわりと心が温まる。そう、この感触どこかで・・・。
「ねえねえ、僕だってここに居るのに・・・。さっきからうまくリンクできない。寂しいよ。」
ちょっとエコーがかった声で心を濡らしてくる言葉が聞こえた。同時に小さな樹で出来た船のフィギュアが現れる。そうだ・・・。
「・・・、柚樹にイツキ・・・。そうか、そうだった。」
倒れるまでの記憶が、雪崩を打ってぶり返してきた。信じていた皇家の樹。しかし、まるで人のような冷ややかな思いをぶつけてきた樹だった。それを分かったような口ぶりで済まそうとして、受け入れてやれなかった・・・。涙で視界がぼやけた。 「・・・泣いて、いらっしゃるのですか?」
別の声が聞こえてくる。この声は・・・。
「・・・うん、あの樹の想いを受け入れてやれなかった。しかも、不用意に押しつぶしてしまった。」
「あなたは悪くないわ・・・。」
そう言って、髪の長い目鼻立ちのくっきりした女性が、ベッドに横座りして、半身を起こしている僕を抱きしめ見上げている。反対側には、柔らかな顔立ちのこれまた美人の女性が鼻をすすりながら立っていた。
「私たちは、あなたが戻ってきてくれたことが本当にうれしい。もうどこにも行かないで。」
左手の甲の赤い宝玉が、ふわりと暖かくなった。
「水穂さん、阿知花さん。ごめんなさい。あなた方の呼ぶ声で帰って来られました。実は、もうちょっとで天の川銀河と、アンドロメダ銀河の中心ブラックホールを手づかみで食べてしまいそうでした。チョコボールみたいで美味しそうだったし。」
両手で目をこすって、テヘッと笑って見せた。
「ブラックホール食べてどーするっっ。」
二人の美人さんにハリセンで殴られた。スパンッと気持ちの良い音が病室に響く。
「くっ、また水穂ちゃんに先を越されたわ!。」
でかいディスプレイが眼前に広がって、窒息しそうな迫力だけれど、とても美しい女性がドアップで話し始めた。
「梅皇は、そんなにボロボロだし、未知の敵までいたってゆーし。壊れそうなのはこっちよ!。ホントに。天木家に話は通してあるから。とにかくこれ以上・・・。」
ぶわっと目に涙をためた瀬戸様だった。
「と、とにかく、無事に帰ってきてちょうだいねっ!」
「了解しました。瀬戸様の、お味噌汁と塩結びを食べに帰ります。」
ぼぼむっと爆発音がしそうなくらい真っ赤になった瀬戸様だった。背後に見える二人が下を向いて、肩をふるわせながら必死に笑いをこらえていた。
「ほんっっとーに節操のない旦那様だこと。」
こっちも涙声の水穂さんと阿知花さんだった。阿知花さんは、軽く鼻をすすりながら、右手で涙をぬぐっている。ちなみに、と、どのくらい眠っていたのか聞くと、約2日ほどだそうだ。
「あの、報告なんかは?」
と聞けば少しふくれっ面になった水穂さんと阿知花さんが、終わってます、と。血相変えた樹雷皇阿主沙様と船穂様や美沙希様、内海様や瀬戸様がもんのすご~く怖かったですわ、と言われた。
「う~、ごめんなさい。でもみんなが呼んでくれなかったら、本気で二つの銀河食べちゃうところでした。」
みんなが僕を見ている背後に、また転送ゲートが出来て、カッコイイ樹雷闘士の二人が現れる。
「樹雷皇様なんか毎日通信送ってこられるし、瀬戸様なんか2時間おきでしたよ。」
二人とも、そう言って複雑な笑顔である。
「それに、・・・これ、どうします?」
と言って、病室の窓、と言うか僕の部屋の窓か。そのカーテンのようなものを開ける。外は暗緑色の空間。と言うことは、超空間航行で帰って行ってるんだな、と思ったところで、す~っと地球のような惑星の影が視界を遮る。
「超空間航行中なんですね。・・・あの影なに?」
超空間航行中に、何かにつけられている?
「え~っと、整理して言いましょうか。あの第1275開拓星系の惑星覚えてます?」
うん、と頷く。可愛そうなナナシと呼ばれた樹と、その子どもたち。結局種を二つもらって・・・。
「謙吾さんに預けたよね。二つの種。」
ええ、と謙吾さんは立派な飾りのついた小さな箱を二つ見せてくれる。このまま樹雷に持ち帰って皇家の樹の間に植えるそうである。
「その辺の儀式も、たっぷりとあるんですよね・・・、第2世代の樹の種を二つもお持ち帰りなのですから。例によって、そこいら辺の儀式の準備に上を下への大騒ぎな樹雷です。それは、まあ一樹様が出る儀式のことでしょうから。」
にやりと嫌な笑顔で言う謙吾さんである。その横で引きつって複雑な表情は籐吾さんだった。
「そして今、超空間航行中なのに、なんで変な影が見えるんでしょ~ね~。あの影なんでしょうね~。」
あっはっは、びしいっと窓の外の影を指さす。謙吾さんの額には、きっちり青筋が立っていた。
「振り切れないんすよ。梅皇でも。あの第三惑星、付いてきてますよ。惑星ごと。」
顔の右側に、縦線書いてもよさげな表情をしているのは籐吾さんだったりする。
「・・・はあ。え~っと。」
「早めにどこかの恒星系の、ハビタブルゾーンの軌道に置いてあげないと凍り付いちゃいますよ。」
あ~、子どものあの樹が惑星動かせるんだったら、母樹ならばなおさらか。意識をほとんど封印しているって津名魅様も言ってたっけ。
「津名魅様が、あの樹は悲しい歴史を重ねすぎたから、意識のほとんどを封印しているって言ってたっけ。う~ん、どーしよ。」
電子音ワンコールで、目の前に、またでかいディスプレイが開く。
「おお、目覚めたのか。心配したぞ。」
今度は樹雷皇阿主沙様である。樹雷皇に心配させるってどないやねんって、自分突っ込みしながらお答えする。
「樹雷皇阿主沙様、申し訳ありません。ご心配をおかけしました。誠に失礼ではありますが、この通話でご相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
もんのすごく失礼だとは思ったが、とりあえず、あの星をどうしようか、相談してみた。
「どうせ、一樹殿でないと運用できないのであろう?さらに超空間航行して付いてきているのなら、まあ、その選ばれたと言うことだな。実績というかその樹の実力は見せてもらったし。アマナック委員長の星系にでも置かせてもらえばどうかな?」
に~んまりと人の悪い笑顔の樹雷皇阿主沙様だった。後ろで船穂様と美沙希様がほほほ、と左手の裾で口を隠して、上品に笑っている。
「え~っと・・・、はあ、分かりました。」
なんか言い返してもおかしいし。アマナック委員長にお願いしてみよう。とにかく、無事に帰ってきてくれと言われて、通信は切れた。
「なんだかね、あまりに普通すぎて・・・。ほっとするやら力が抜けるやら。」
しみじみと、籐吾さんがそう言うと、謙吾さんは大きく頷いていた。茉莉さんや、あやめさんは、はあ~、とため息をついている。
「兼光おじさんから聞いていましたが、控えめに言っても常軌を逸していますね。掛け値なしに。」
ソッとつぶやいた、白衣の平田健二さんの声を聞き逃さなかった。そっちを見ると、作業着だろうか、厚手のざっくりしたつなぎで、それを腕まくりした、立木幹凪さんと上木晴信さんも頷いていたりする。
「うっふっふ。銀河間航行するときには、よろしくお願いしますよ。それに若い人はええのぉ。」
ちょっと鷲羽ちゃん入った声音で、さらにエロじじい風味まで加えてそう言ってみる。ぽ、とほほを赤くする二人。まじ?そっちも大丈夫なの?
「え~、ちなみに。平田健二君は今年で85歳。上木晴信君は78歳ですね。」
謙吾さんが、にんまりと人の悪い笑顔で言う。目は笑っていない。
「え?え?。謙吾さんはいくつなのよ?」
「ふふふ、ノーコメントと言いたいところですが、僕は今年214歳です。こちらこそ、若い人はええのぉ、ですよ。」
ぎらりと光る目が怖い。しかもここに居るみんなが。見た目はみんな、幹凪さんと菊乃さんを除き、20代後半から30代前半にしか見えない。
「そーね、あなたが一番若いのよ。」
水穂さんが素っ気なく言った。こええ、怖すぎる。みんなにじ~っと見つめられて、耐えきれず。ごめんなさい、と言ってしまった。
「・・・まあ、だいぶ問題ありだが、わしらは、別にかまわんぞ。」
と、突然アマナック委員長が転送されてきた。どこで聞いていたんだか。いつもながら、神出鬼没な鷲羽ちゃんの昔なじみのお爺ちゃんだった。
「それじゃあ、アマナック委員長の惑星と、二重連星で、とか。惑星アルゼルは、蒼穏の星と同じくらいの大きさですよね。」
と、これ幸いと話をはぐらかしてみた。連星って行ってみたのは、某アニメの目的地の二重連星をこの目で見てみたいなとか、思っただけだったりする。
「特に問題ないな。」
さくっと・・・肯定されてしまった。と言う訳で、梅皇の内部亜空間固定されているアルゼル星系の、惑星アルゼルと連星を成すことになった。蒼穏も全く問題ないらしい。僕が時々行ってエネルギーチャージすればいいし。
「あら、そんなの簡単よ。わたし経由で余剰エネルギーを転送してあげるわ。」
と、こともなげに梅皇が言った。さらに、その場から例のエネルギー弾?砲も撃てるようだった。
「ものすごく、平穏に話が収まってしまったねぇ。」
この中で一番若い僕には、どんな技術の裏付けがあってこう言うことが出来るのか想像も出来ない。やっぱり鷲羽ちゃんに頼んでアカデミー行こうかな、とか考えてしまった。
「とりあえず、我らが司令官殿は元気になったようだね。一応、もう少し眠ってもらった方がいい。」
ぱんぱん、と手を打って、菊乃先生がこの場をまとめてくれた。名残惜しそうな視線をいっぱい感じながら、みんな各自の持ち場に転送されていった。いつもの、梅皇での生活が戻ってきたように思える。