天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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職場の異動が発表され、なんと9年間いた「課」から全く違う職種の「課」へ
異動となりました。

長くいた課の後始末と、新しい職場で覚えなければならないことと・・・。

忙しさは度を超しています。とはいえ、まあ、ブラック企業と言われるほどのこともなく(^^;;;。

なんとか更新できました。会話が多いのですが、お楽しみ戴ければ幸いです。


樹雷から銀河へ17

 「なら、話は早いわ。第一回銀河間代表者会議とでも言うべき会議であなたの釈明が必要なの。一時間後よ。いい?」

わかりました。神木・瀬戸・樹雷様。と答え、一礼し、通信を切って、後ろを振り返る。水穂さんと阿知花さんが頷く。

 「籐吾、ゆくぞ。」

そう声をかけた。

 「はっ、一樹様。」

キンッと綺麗に磨かれたグラスを爪で弾くかのように籐吾さんは答えてくれた。そして、正装を着て身支度を整えるために各自転送される。僕は、二人の奥方様(ものすごく恥ずかしい・・・今でも。)と一緒に部屋に帰り、樹雷の正装である白を基調にした、いにしえの戦士に似た着衣を整えてもらった。赤いラインと黒、そして紫の線が差し色のように細く囲む例の服である。ラノちゃんも可愛らしい、ちょっと巫女さんに似た着物のような服だった。10分後くらいにレセプシーからの移動ゲートに4人と1匹と1隻(?)が着いた。柚樹さんもイツキも姿を消して付いてきている。すでに籐吾さんは到着して僕たちを待っていた。

 「お待ちしていました。さあ、参りましょう。」

レセプシーへの移動力場チューブの入り口には、若い、目の大きな男性を伴った、大きな力を感じる女性がいた。衣装からして露出度も大きく、地球の踊り子を連想させる服であった。

 「ええ、お世話になります。柾木・一樹・樹雷です。・・・お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

この場合、まあ皇族の僕よりも先に名乗るべきだろうが、まあ、そこら辺は適当な地球人モードで。と思ったら、水穂さんがびっくりした様子で問いかけた。

 「これは、舞貴妃様・・・。その節はお世話になりました。」

 「まあ、どうもすみません。先に樹雷皇族の方に名乗らせてしまいました。私は、舞貴妃と申します。この子は、息子の舞十です。以前、水穂様とはご一緒したことがありますもので、私がご案内役を申し出た次第です。」

水穂さんが、すっと目を伏している。うん、何か仕事がらみだろうな。しかも瀬戸様関係か・・・。まあ、僕には関係ないだろうし。

 「・・・母様、この人達凄い・・・。」

突然、舞十と紹介された、目の大きな男性が感極まったようにポロリと言葉を落とした。舞貴妃と紹介された美しい女性は、ゆっくりと首を横に振った。

 「舞十、私たちが望もうとも、指すら届かない方々です。あきらめましょう・・・。」

ああ、そうだろうなぁ。僕の周りの人たちはなにげに凄い人ばかりだし・・・。元宇宙船の女の子もいるし・・・。僕は、樹雷の樹とは仲が良いけど、まあそれだけだし。ふ~ん、という感じで聞き流した。こちらです、と指し示された、黄色い光る円盤に各自乗る。加速度など感じさせず、静かに速度を上げながら、放射状に並んだ各銀河からの来訪者の宇宙船を横目に、中央のレセプシーへ移動力場チューブは案内してくれる。天の川銀河中央部に近い位置ゆえ、星々の光は多すぎるくらいである。中心方向に見えているガス状星雲など、神々しいばかりの色をしていた。放射状に並んだ船の真ん中にいる、レセプシーへの他のチューブも、動いていく黄色い円盤は見えるから、代表者は集まりつつあるのだろう。しかし、顔や容姿は全く見えない。ヒューマノイドであるのかどうかさえ分からない。

 「・・・私の出身星は辺境ですので、天の川と言われて星々の連なりが見えるだけでしたが、さすがに銀河中心に近いと壮観ですね。」

某GBSの放送で、僕の出身星は銀河辺境と言うことになってるから、まあ良いだろう、と思って言ってみた。

 「ほほほ、老いた星を救うまでのお人が、何をおっしゃいますか・・・。あなたは、今すぐにでも、見えている星々一切をその手中に収めることが出来ましょうに。」

ふわりとこちらに振り返り、唇に右手を触れるか触れないかの距離まで持ち上げて、舞貴妃さんは一遍の物語を読むかのようにそう言った。表情から考えは読み取れない。それでも嫌われているような様子はないようだった。

 「・・・まあ、そのような力はあるのでしょうが、そんなことより、僕は、銀河から銀河を渡り歩いて、いろんな人と話をしたり、いろんな物を見てみたい、そんな想いが強いんです。」

舞貴妃さんは、吸い込まれるような微笑みで、じっと見つめて、そのまま無言で前に向き直った。ラノちゃんが僕の右手をぎゅっと握って僕を見上げている。

 「・・・さっきも、どこか遠くへ行きたいと言って、私たちを困らせるのです。」

水穂さんが、つぶやくようにそう言う。後ろ姿しか見えない籐吾さんが、思いっきり頷いている。

 「なら、僕たちと行こう!。きっと楽しいよ!」

舞十と紹介された男性が、僕の顔をのぞき込んでそう言う。急に前に出て、楽しげにそう言うのでびっくりした。

 「これ、舞十!。」

舞貴妃さんが振り返って、怒ったような、それでいて悲しそうな表情でそう言った。

 「う~、ごめんね。そう言う自由がある舞十君がうらやましいよ・・・。」

心の叫びかもしれない。まあ、その代わりいろいろスゲーこともあるのだけれど。水穂さんと籐吾さんから深いため息が、これ見よがしに聞こえてくる。

 「一樹様、いつでも行けますよ。準備は整っています。」

ラノちゃんが無表情にそう言う。驚いた表情をした舞十君だった。この子、時々こう言う人間離れした顔するんだよな。

 そうこうしているうちに、レセプシーに到着し、控え室に案内された。そんなに華美ではないが、しっかりとお金のかかった応接室というのが第一印象。ふんぞり返るようなソファではないが、居心地良さそうなイスとテーブルの部屋である。会議が始まるまでおくつろぎください、と舞貴妃さんは、静かに退出していった。すぐに、静かな通知音のような電子音が鳴り、扉が開いてお茶を持ってきてくれた。そのほか、欲しければ軽食から、天の川銀河内の主要国のフルコースまで転送サービスでも、また、人に給仕させる(最も贅沢らしい)のでも何でも可能らしい。しっかり料金は取られるらしいけれど。僕としては、なんとなく出歩いて、自販機なんかあって、それでペットボトルの飲み物なんかあるとうれしいけれど、と言ったら、そんなものあるません!と水穂さんにサクッと切り捨てられた。

 「まあ、なぜか地球の湯飲み茶碗そっくりなのがホッとするけれど。」

ひとくち、ずずっとすすって、しげしげと茶碗を眺めた。他のみんなは、静かに座っている。

 「・・・ホントにあなたは・・・、怖くないのですか?」

籐吾さんが、キッと引き結んだ口から、絞り出すようにそう言う。

 「さっき、三命の頂神といわれる存在の一人にぶん殴られたので、すっきりしましたとさ。」

そう他人事のように言って、残りのお茶を飲み干した。ちょっと熱かったりした。

 「・・・そう、僕が二十代の頃、あのときよりずっと、ずっと暖かい想いに包まれているから寂しくないよ・・・。ありがたい思いで満たされていて幸せだよ。」

そう言うと、水穂さんがそっと寄り添って、右手を握ってくれた。

 「そうね、私、自分のことばかり・・・あなたのこと、あなたの昔のこと聞いてなかったわ。」

水穂さんがそう言うと、あとの二人もハッとした顔をしている。

 「ふふっ、特に聞かれなかったしね。」

もしかしたらイツキが選んでくれた理由のひとつかもしれないな、と我ながら考えていることもある。まあ、おっさんの過去なんぞ誰も知りたがらないだろうと・・・。一拍おいて、ちょっとだけ付け足してみた。

 「・・・謙吾のおばあさまの立木もも様が、謙吾のことを言ったことがあったじゃない。泣いているところを初めて見たと・・・。あれ、自分にも刺さっててね・・・。寂しさというか、人の冷たさは生きようとする思いを削るよね・・・。でも今は、あなたたちがそばに居てくれてありがたい。炊きたてご飯を目の前に出されたくらい嬉しい。」

 「・・・ご飯にたとえないでください。」

阿知花さんは、目をぬぐっている。

 「そうそう、思い出した。柚樹さんに出会った時。あのとき柚樹さん、あの冷たい海底に帰ろうとしたでしょ?天木日亜殿のパーソナルと供に。」

びくっとびっくりしたように、銀ネコが足下に現れて、僕を見上げる。耳が寝ているのが、怒られたネコみたいで可愛い。抱き上げてなでる。

 「そんなところに帰したくなかったんだ。できれば、正木の村の土に植えてあげたかった。天木日亜殿のパーソナルがどんな物かよく分からなかったけど、僕が飲み込んで食べてやる、そうも思った。銀色の葉を持ち、クリスタルのコアユニットにいる姿は僕にはあまりにも寂しげに見えたんだ。勝手な思い込みかもしれないけれど、そんな海底に身を沈めないで、樹として、地球の太陽の陽を浴びて、青々と茂って欲しいと思ったんだよ。1万2千年もあんなところで一人で居たんだ。もう今は違うだろうって。結果的には鷲羽ちゃんのおかげで希望の斜め上を行ったけどね。」

銀ネコの柚樹さんの両脇を僕の両手で持って柚樹さんの目を見てそう言った。

 「わしは・・・、うむ、おぬしに昔のことをなぜ語って聞かせたのか・・・。最後に会った人間に昔のことを語って聞かせるのも一興と思ったのかな・・・。とにかく津名魅様に会えたので、もう思い残すことはない。そう思い、静かなあの海へ、思い出の眠るあの地へ飛び立とうとした。それにしても、お主が、不完全なアストラルに触って取り込まれかけた時は肝をつぶしたぞ。」

柚樹さんは、だらんとネコが持ち上げられたような姿勢で、一瞬視線をそらし、また僕の目を見てそう言った。そっと床に降ろすと、柚樹さんは、僕の膝に飛び乗って、あごを置いて寝そべった。

 「柚樹さんごめんなさい。後先考えずに行動してしまいました。それに、・・・籐吾さんも、後ろから刺された時、何もかも終わった、天木日亜殿のところに行ける、そんな目をしたよね。」

えっ、と目を見開いて僕を見る籐吾さん。

 「僕のわがままだけど、僕は、絶対に逝かせはしない。そう思った。自然と口をついて出てきたんだよ、周りの樹に助けてくれって。ものすごいエネルギーを異次元から汲み上げ、光を超える速度で宇宙を跳ぶことが出来るほどの皇家の樹だ、人の命をつなぎ止めることなど造作も無いだろうと思った。その通りだったけど、結果はこれも想像の斜め上を行ったなぁ。」

バキンと背中がわれ、自分が光の巨大な存在になり、何者かに押さえつけられる記憶が蘇った。

 「・・・参りました。一樹様。あのとき、私は、これであの苦しさから解放される、日亜様のおそばに行ける、たとえ行けぬとしても、もう胸の内を掻きむしられることはない、そう思いました・・・。」

目の前に置かれた茶碗を片手で取って、一気に飲み干す籐吾さん。

 「今までに無いような必死の表情で、私の胸に手を置いたあなたを見て、もう良いのです、と言おうかと思いました。しかしながら流れ込んでくる力はたとえようもない幸福感を伴っておりました。傷も癒えましたが、私の日亜様はここにいるじゃないか。そう、だんだん思えてきて、気づけば、さらに私は幸せ感につつまれ、生きよう、生きなければ、と思いました。」

力が感じられる目線で、僕の方を見て、そう籐吾さんは言った。

 「いろいろ言ってくれてありがとう。僕もそんな不幸自慢をする気は無いんだけどね。」

そう言って、なんとなくもう一度、地球のどこにでもありそうなセトモノの湯飲みを見た時、目の前にディスプレイがポップアップして、開場10分前を伝える。迎えの者が来たら、ご案内しますので、用意された席についてください、とCGだか本物か分からないが綺麗な女性のオペレーターにそう告げられた。ほどなく、電子音が鳴り、扉が開く。

 「お待たせいたしました。開場10分前ですのでお席にご案内いたします。」

先ほどの舞貴妃さんと違った、女性が入り口右横の方に立っていた。

 「では、ゆこう。ラノちゃんも、みんなで行くよ。」

4人と一匹と一隻(?)が部屋を出る。誰も姿は消していない。案内役の女性は、何も言わず先導して歩いて行く。すぐに転送ポートがある、地球のホテルのエレベーターホールのような広場に出て、女性が操作した転送ポートに乗るよう促された。案内役の女性にありがとう、と言うと、ポッと顔を赤らめていた。

 転送された場所は、そこそこ大きなホールのような建物。その中央部分だった。おおきな楕円のように見える。全体的に黄色の混ざった上品なアイボリーのような色のホールである。席は人数分用意されていて、イスに腰掛けると、するすると1mほど上昇し、後方に移動して楕円の一部を成すように席が定まった。同じように、出席者が楕円を作っていく。その場所によると、何らかのフィールドで包まれたような部分もあり、僕らのようにそのままの部分もある。フィールドも赤、青、緑、黄色、とうっすらとだが色がついている。我々の環境との隔絶フィールドだろう。しばらくして、僕の両隣に、樹雷皇阿主沙様と船穂様、美沙希様、神木・内海様、神木・瀬戸様が着席した。その向こうへ世仁我の美守様が着席された。

 「樹雷皇阿主沙様、このたびはご迷惑を・・・。」

と、一言謝ろうと口を開いたが、すっと手を上げられて、制せられてしまった。

 「なに、どうせ、西南殿の海賊征伐が落ち着けば、近隣の銀河へ大遠征使節部隊を送ろうと思っておったのだ。我ら樹雷も人口が増え、大所帯となったし、領宙は広い方が良い。」

前を向いたままで、阿主沙様はそう言った。こちら側に座っている船穂様が、口元に手を当てて阿主沙様のあとを継ぐように言った。

 「相手から出てきてくれれば、そのコストも大幅にダウンできますし、航路開拓の手間も省けます・・・。双方誤解による戦闘などという不幸も防げますわ。一石何鳥にもなっておりますのよ。」

はあ、と気の抜けた返事をしてしまう。なるほど、メリットも大きいと。さらに左隣から聞き慣れた声も聞こえてきた。

 「話がついている場所へ、話し合いに行くのと、何が起こるか分からない状態で行くのとでは艦隊の規模も違うわ。まあ、そう言う訳で、一樹殿には頑張ってもらわないと。・・・あら、始まるようよ。」

何をですか!と突っ込もうと思った時に、楕円の会議ホール中央に、転送されてきた人物がいた。先ほどの映像からすると、エクシト・レ・セプシー本人だろう。

 「この度は、私が運営しております、レセプシーへようこそ。私どもは、どこの恒星間国家にも属さず、この天の川銀河で遊興娯楽を提供してきました。このような立場ですので、今回の第一回銀河間代表者会議のコーディネーター、そして暫定ではありますが、議長を務めさせていただきます。どうぞよろしく。」

エクシト・レ・セプシーは、一拍おいて、す~っと全席を見回していた。レ・セプシーさんの立つ楕円のホール中央部は、私たちの目線の高さで浮遊している。

 「皆様のお席に、このレセプシー内の電子案内パンフレットを置かせていただいています。タブレット形状ですが、脳波を自動読み取りし、必要の無い時はブレスレット形状へ変化します。このレセプシーのIDカードなどを兼ねていますのでご滞在中はお持ちくださいませ。お帰りの際は、このレセプシーのフィールドを出るおりに自動回収させていただきます。」

全体を見回しざま僕の方を向いて、ニッとウインクするレセプシーさんだった。着席した席にテーブル状のものが浮かび上がるように出現し、その上に薄い板のような物が置いてあった。それが電子案内パンフレット兼IDカードだろう。早速手に取ると、華やかなオープニングから、このレセプシー内での各種公演、演劇などが映し出される。目を議場に向けると、すぐさま、するりと右手首にブレスレットの形になって移動した。ほほお、すっかり忘れていたけれど、この携帯端末システムがこんなところにも・・・。

 「・・・ただいまより、第一回銀河間代表者会議を始めます。」

口調を変え、厳かな中にも力のある声で、エクシト・レ・セプシーは宣言した。

 




さて、魎皇鬼第4期、どこに行くのでしょうか・・・。

う~ん。
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