天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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GXPの15巻と、魎皇鬼第4期第3巻が出ましたねぇ。

GXPは、どこ行くんでしょう・・・?

魎皇鬼の方は、聖機師物語とリンクしましたね。今後の展開がちょっと期待できます。

こっちは、どうせ梶島先生にはお説教モノのぶっ飛び方で頑張る・・・しかないなぁ(^^;;。

今後ともよろしくお願いいたします。


樹雷から銀河へ19

 「あのぉ・・・、なんか、微妙に、申し訳ご・・・・・・。」

 「会議に遅れ、申し訳ない・・・。我は、シードを行った大先史文明の末裔、惑星アルゼルのアマナックと申す者。そして、紹介する。我が・・・家族だ。」

真っ白になりながらなんか言わねば、と思った矢先、アマナック委員長が遅れて登場した。なぜか、家族というか3世代で登場である。あのリルルとメルルもいっしょだった。2人がこっち向いて笑顔を見せてくれる。2人のお父さんとお母さんに見える人もいっしょだった。その、父母だろうふたりもこちらに向いて一礼してくれた。ああ、大きくなったなぁ・・・と見ていると、涙がこぼれてきた。ちょっと上向き加減で耐えていると、すっと阿知花さんが涙を拭いてくれる。小声でありがとうと言った。

 「我らは、シードを行った文明、また、大先史文明と言われている文明の末裔であり、その結果の監視者の任がある者である。その立場で、一言申し述べたく参上した・・・。私の家族を同席させるのは、この、柾木・一樹・樹雷殿と深い関係があるためである。また、少々長い話になることをお断りしておきたい。」

 各席から見える中央大型ディスプレイにアマナック委員長の顔が映った。先ほどまで第1275星系の記録映像が出ていた物である。お茶や軽い飲み物の希望があるか、レセプシーのパンフレットが3次元ポップアップして点滅していた。適当に選んで承諾ボタンを押す。しばらくお待ちください。担当の者がお持ちいたします、と出た。さすが、かゆいところにも手が届くもてなしぶり。転送では無く、人が給仕してくれるのだ。かなり贅沢なことである。それには、まあ都市伝説か気のせいレベルのことだが、食べ物は転送されるとわずかに味が変わる、と言われていたりする。超高級のお酒や特級品などの食材は、転送ではなく、手間をかけて運ばれてくるようだ。

 「・・・遙か昔、我らの記憶も定かでは無くなるほどの昔、我らは現在の天の川銀河を凌駕する科学技術文明を誇り、局部銀河系はもとより、乙女座銀河団の80%をその支配下に置いていた。あるとき天昇皇の意志のもと、近隣銀河を中心に、命を無から生み出せる船を使いとして送り、生命のシード(種まき)を行った。シード船が到着した様々な惑星環境に合わせ、莫大なエネルギーを発生する反応炉からの力を使い生命核を作成し、生命体を構築、船の着陸した惑星へ放つ大事業であった。」

 アルゼルのアマナック委員長は朗々と会場内によく通る声で演説する。静かな中にも力のある声だった。監視者としても、太古の昔より見守ってきたのだろう。

 「・・・我らとて、そのような壮大なる慈善事業を自らの意志で始めたわけでは無かった。」

すっと、視線を下げ、もう一度あげた表情は、厳しく恐ろしささえ感じるほどの迫力があった。一言ひと言かみ砕くように語り始めるアマナック委員長だった。まるで、油の切れた巨大な歯車が噛み合うかのように言葉を紡ぐ。

 「非常に恥ずかしい過去と言わざるを得ない・・・。確かに、我らには誇るべき強大な科学技術文明があった。しかし、進みすぎた科学技術文明に対して、それを使う心が幼なすぎた・・・。科学技術とバランスのとれていない精神は、自動的に人々の諍いの種になってしまった。広大な領宙のあちらこちらの惑星間から始まった戦争は、すぐに恒星間の枠を超え、銀河間戦争へと発展してしまった・・・。より効果的な武器の開発、強力なシールド、さらにそれらを凌駕する武器や防御方法・・・。際限なく兵器開発は続き、数千年に及ぶ戦争は、国や民の力を減退させていった。泥沼の戦いであることはわかっていたのだ。しかし、互いの主義主張に、それぞれの立場、さらに宗教の考え方が絡むと、互いを殲滅するまで戦いは終わることがなかったのだ。」

 なんとも壮大な戦争の話だった。アマナック委員長の話が始まると同時に、資料映像が映し出された。一条の光線が恒星に突き刺さると、一瞬にして恒星は大爆発し、数瞬の後には、ブラックホールになり、星系の惑星達を内側から飲み込んでいく。次に、どこか見たことのない球状星団にシーンが切り替わる。今の銀河では見たこともない宇宙船から細く赤い光線が放たれる。放たれた赤い光線は、球状星団を斜め上から袈裟切りになぎ払う。球状星団は、斜めにズレたように見えたあと、真っ暗になった。そこに何ももともとなかったかのように。しかも周辺の銀河も丸く切り取って。球状星団が元あった場所の空間を大きく歪ませ、白い稲妻が残った銀河へ走ったかと思うと近くにあった渦巻き銀河の4分の3を道連れに消え去った。当時の星間戦争とひとくくりにできないほど大きな戦いだった。命は一瞬の抵抗もできず消し飛ばざれてしまっていた。恒星や銀河中心ブラックホールを投げつけ合うような、莫大な力の応酬は3次元空間さえもねじ曲げ破壊しようとしたかもしれない。語っているアマナック委員長の顔は、古い大木の表皮のように見えた。銀河代表者会議会場は、真夜中の森のごとく静まりかえっていた。

 「敵味方双方が、今見てもらったような半径10万光年を殲滅できる兵器の開発をほぼ同時に完了した時点で、膠着状態に陥った。だが、すでにどちらも戦争継続が不可能なほど、すべてにおいて疲弊してしまっていた。結局何も残らなかったのだ。あれほど周囲を威圧し、銀河すべてを消し飛ばせると豪語した科学技術文明も、見る間に萎縮、そして後退していった。」

乙女座銀河団の80%を支配下に置く文明・・・。通信、交通等々、それだけでもオーバーテクノロジーと言える。そして、半径10万光年を消し飛ばす兵器・・・。その過去を知れば、今の我々でも喉から手が出るほど欲しい技術である。しかし、それも戦争により失われてしまったようだった。

 「我らは、すでに祈るくらいしか力は残されていなかった。高位次元生命体として三命の頂神へ・・・。そこで答えてくれたのが、・・・。」

レセプシー殿の周りでふわりふわりと浮かんでいた三命の頂神が、スッとアマナック委員長の前に来て、「ちっちっち」と言わんばかりに人差し指を左右に振っている。まだ言っちゃ駄目なのか?。

 「ふふふ、分かり申した・・・。とにかく、三命の頂神は応えてくれた。応えてはくれたが、罰と力を賜った。命を奪い尽くしたのだから、今度は命を育てよ。そして過ちが二度と起きないように監視せよ、と。おまえ達が力を伝えても良いと思う者が現れるまで老いることも死ぬこともまかりならん。そう頂神はおっしゃった。ならば、と、偽善と言われてもいい、我々は天昇皇の号令のもと、最後の力を結集し、せめてもの罪滅ぼしと、我々が生きてきた証を残すために1万数千隻のシード船を建造し到達できうる銀河や恒星系に向け派遣したのだ。」

資料映像は、どこかの渦巻き銀河系を背後に、天昇皇が演説するシーンになった。最後に破壊よりも創造を!との大唱和で光のつぶつぶが、光の航跡を残し四方八方へ飛び立っていく。充分に離れてから各々、大きく空間を歪ませて跳び立っていった・・・。

 「そして、幾星霜。監視者として我々は、ひっそりとこの天の川銀河にも住まわせてもらっていた。命が根付き、進化し、我々へコンタクトしてくる日を辛抱強く待った。科学技術は進み、星の海を渡って我々にコンタクトしてきて、そう柾木・一樹・樹雷殿の時間で2万年ほど前。我らの技術をねらう者達も現れた。」

アマナック委員長が、こちらを見てニッと笑う。え?僕に言ってるの?は?

「様々な脅し、援助の申し出、交渉、話し合い。数限りなく我々への働きかけは天の川銀河系内の様々な文明、そして海賊などからあった。しかし、我々はいまだ技術を受け継げる者はいないと判断した。我々が住む星系も、恒星へ大量の惑星破壊弾を放り込まれた。恒星は赤色巨星化し我々の星は、水も緑も、恒星の荒れ狂うプラズマに奪われ吹き飛ばされた。それでも、我々は技術を開示することはせず、地下都市を築き、我らの命が尽きるのを待っていたのだ・・・。そんなある日、この柾木・一樹・樹雷殿は、いとも簡単に、そう、なんのてらいもなく、もともと海賊船のエネルギージェネレーターだった宝玉のエネルギーを生命エネルギーに変え、我らの恒星と、惑星をあっという間に生き返らせてしまった・・・。」

アマナック委員長は。今にも笑いださんばかりに、いや、笑いをこらえるかのように、かな、ニコニコとした表情で言った。

 「聞けば、なにやら子どもの頃に見た物語にトラウマがあって、赤く焼けただれた我々の星と、その物語が重なって、水と緑が復活する様子が見たいと暴走したエネルギーを放出したと言った・・・。地下都市から出て、髪を濡らす雨、頬を撫でていく風、咲き乱れる草花に我らは号泣した・・・。生の喜び、そして後継者の確認の時が来たのを悟ったのだ。」

今度は映像は、あのGBSの放送に切り替わった。虎のカッコした、柚樹さんを伴った僕が光應翼を張り、不安定なエネルギージェネレーターから恒星へエネルギーを放出、さらに近くの惑星へも放出したあのシーンだった。

 銀河代表者会議の会場内にどよめきが起こる。どういう話なのかは聞き取れない。当事者としては、どことなく居ずらかったりする。ねえ、帰っちゃだめ?的な目で水穂さんを見ると、前を向いたままでぎゅっと手を握ってくれた。

 「我々は、ついに技術の伝承者にふさわしいと思える者に出会えたと確信した。まずは、柾木・一樹・樹雷殿に銀河をわたることができる船の封印解除キーを手渡した。このことは、第5次元の監視者も確認済みだ。」

ほお、とでも言うような感嘆の声?が上がる。そんなにすごいことなのかな。なにやら首回りがくすぐったいやらなにやら・・・。

 「さらにもう一つ、家族のことも話さなければならない。話は3千年あまり前に遡る。数千年ぶりに産まれた我々の子ども達が宇宙海賊にさらわれた・・・。ここからは、映像を見てもらった方が良いだろう・・・。」

鷲羽ちゃんがうんうんと頷いている。映った映像は、子ども達がさらわれ、子ども達の命が惜しくば、シード船を改造した海賊船のメインリアクターの封印解除キーをよこせと言っている海賊の通信映像だった。葉巻を咥え筋骨隆々とした、いかにもな海賊だった。その背後両脇にふたり、男女の海賊が立っていた。ひょっとして、ひとりは、あの操縦席で死んでいた女性海賊だろうか?アマナック委員長の話は続く。

 「さらわれたのは、私のふたりの孫だった。・・・それでも、封印解除キーを渡すわけにはいかなかった。孫を見殺しにしようとも・・・。何があろうとも銀河を消し飛ばせるような技術を外に出すわけにはいかなかった。我らの思いを汲み取ってくれたのか、海賊の配下の1人が船を奪い、逃げたと情報が入った・・・。その後、情報は途絶えてしまったのだ・・・。私たち家族は、一縷の希望を持って今まで生きてきた。」

また、映像が切り替わる。今度は僕らの記録映像だった。西美那魅町役場近くの、農業用溜め池の下に埋もれていた宇宙船の話からである。リルルとメルルのアストラル体と出会い3千年以上埋もれていた宇宙船を鷲羽ちゃんのところに持ち込んで・・・とやった結果、二人の身体の再構築に成功し今に至るである。その様子の映像だった。僕は、なんか恥ずかしい事を言ってる自分の声が、また恥ずかしい。

 「たまたま、二人の孫を乗せた船が地、いや、ある辺境の星に流れ着いていたようだ。その船はシード船を改装した物だった。柾木・一樹・樹雷殿は、鷲羽殿と船のエネルギーを補給し、シード船のメインコンピューターの起動に成功。子供たちはすでに命はつきていたが、シード船コンピューターの判断で、アストラル体と生態構築データへ分離保存されていたようだ。そのコンピューターに記憶されていたデータを元に身体を再構築してくれた・・・。莫大なエネルギーが必要だっただろうに。」

そして映像は、大粒の涙を流して二人を抱きしめるアマナック委員長で終わった。

 「孫がさらわれた時には、息子も嫁も言葉に出しはしなかったが、内心は大嵐のごとく乱れておっただろうと思う。私を恨んだろうと思う・・・。こういった出来事は、我らにすれば定めでもあり、覚悟もあるつもりだった。しかし、3千年という年月は、ここにいる息子たちと家族のきずなが疎遠になるには充分な時間だった。もう、人らしい生活はあきらめていたのだが・・・、しかし、孫が戻ってきたおかげで、家族と過ごす人並みの喜びを味あわせていただいている。・・・このように、柾木・一樹・樹雷殿は現在のところ、何かを面白半分に破壊するような方向には力を使っておらん。そのことを近隣銀河の代表者の皆様に報告したく、こうやって参上させていただいたのだ。」

 どこからかわからない、手をたたく音、身体をたたくような音、テーブルをたたくような音が会場内に沸き上がってきた。いちおう、感動していただいているのだろうか・・・? 僕は、ゆっくり立ち上がって、一礼し拍手のような物が静まるのを待った。

 「ひと言だけ付け加えさせてください。・・・ひとつ、アマナック委員長に謝らねばなりません。」

少しだけ眉を動かして、こちらを見るアマナック委員長だった。

 「シード船、そう、ラノ・ヴォイス3と言う名前だったようですが、本来生命創造を終えるとシステムを封印し、その惑星で眠りにつくようプログラミングされていました。」

後ろを振り返って、ラノちゃんを僕の前に呼んで立ってもらった。ちょうど、リルルやメルルと同じ歳格好である。

 「封印シークェンスに入ったラノ・ヴォイス3は、もう眠るのは嫌、僕と一緒に飛びたい、そう言ってくれました。子ども二人のために自己を犠牲にした名もなき女海賊の行動、二人の子どもたちの命を守りたかったが、尽きようとするエネルギーには抗えず、自ら苦渋の選択をした経験・・・、そういったものが彼女の意志を目覚めさせたのか、どうかはわかりません。しかし、その意志を確認した僕は、再度シード船メインリアクターに火を入れ、鷲羽様に手伝っていただき、封印シークェンスから一時的に切り離し、メインコンピューターの記憶をアストラルとして生体に投射、一人の人物としてこの世に生まれ出てもらいました。これから、僕は、天の川銀河を越え、皆様のところへ行きたい。話をしたい。いろいろ見て回りたい・・・。その水先案内人として、柾木・ラノ・樹雷と名乗り、僕の梅皇に乗ってもらっています。まあ、シード船の目的外利用という言うわけですので、謝ろうかと・・・。」

さっきの何かを叩く音に増して、ドッという感じで歓声というか、轟音というか、そう言う声が巻き起こった。

 「うちの、リルルとメルルの良い友達になってくれとるしのぉ。わしには、なんのことかわからんな。」

珍しくすっとぼけるアマナック委員長だった。

 

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