天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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今年も熱い夏が、来そうですね~と書こうと思ったけど、最近朝晩涼しい。

むむ~。変な災害とか無いと良いけど。

つれづれなるままに書きためてると、気がついたら規定値なので投稿します。



樹雷から銀河へ20

 「うちの、リルルとメルルの良い友達になってくれとるしのぉ。わしには、なんのことかわからんな。」

珍しくすっとぼけるアマナック委員長だった。いまひとつ感情の発露の様子が分からないが、どうも各銀河代表者の皆さんは笑ってくれているように思えた。

 結局のところ、アマナック委員長の助言や、僕の今までの実績(まあ、確かに破壊目的には使っていない)というところで、今回集まった銀河間代表者の皆様は一応納得してもらい、今後の方針では、どの銀河出身であろうとも、対等の関係であること。さらに何か銀河に害するような行動はしないことを約束した。それを聞いて、三命の頂神の皆さんは、す~っと音もなく消えていった。

 

 いままでの、銀河内の通信や航行ネットワークとは違い、莫大な距離のある銀河間である。技術的には、タイムラグなしにやりとりのできる銀河間通信ネットワークの構築、そして宇宙船の航行システム等の技術のやりとりなどをこれから各銀河間で持ち寄り、開発していくことなどを大枠での取り決めが決議され、、第1回銀河間代表者会議は終わった。たぶん各銀河からの担当者などが集まって、様々な細かいことを決めていき、通商産業部門に話を下ろし、銀河間条約などを決め・・・、各種要綱の取り決め、さらに下位の行政機関への文書発送・・・。ああ、ぞっとする(笑)。大変だなぁ、各国の閣僚の皆さんは。昔の仕事内容などを思い出して(とはいっても下っ端だけど)辟易した顔をしながら立ち上がった。樹雷王阿主沙様と神木・瀬戸・樹雷様が話しながら立ち上がっている。

 「まあ、我らの皇族からも先ほど各銀河を回りたいとの発言もあったことだしな。昨年度の補正予算としても通っておるし、繰越予算で執行を待っている状態だったか。瀬戸よ、ついにその時が来たな。」

 「ええ・・・、林檎ちゃんも、その辺は了承済みよ。梅皇の新船殻用の材料費もどこかから捻出してきたし。」

 なにやら、樹雷皇阿主沙様と瀬戸様がうんうんと頷き合っていた。へえ珍しい、阿主沙様、クソババァとか言わない時もあるんだ・・・。

 「とりあえず、いろいろあるだろうから、1週間ほど里帰りしてらっしゃいな。あ、でも第2世代皇家の樹の種を2個も持って帰ってきてたのね・・・。」

長い髪を絹の髪袋でまとめた瀬戸様がふわっと振り返る。いつもながら鮮烈な美しさがあった。ほとんど鬼気に近い迫力にびびってしまう。

 「なに?何か言いたそうだけど?」

 「いえいえ、いつもながら瀬戸様はお美しいなぁ、と。」

 「だ・か・ら、そんな棒読みじゃ、・・・い、や」

うっわ~、地雷踏んでるよコイツ的な目で、阿主沙様や内海様、あと籐吾さんがこっちを見ていた。

 「あ、あの、瀬戸様。銀河代表の皆様とお茶会とか、お食事会とかはないんですか?私ごときが聞くとまずいような突っ込んだお話とかなさるのではありませんか?」

一瞬、ちらり、と樹雷皇阿主沙様を見やり、その後内海様に視線を飛ばす瀬戸様だった。

 「ふふふ、そうね、それも大事なんだけど・・・。あれだけ心配したんだから、何か欲しいわ。」

うを、森の中の洋館の女主人モードだ。さらに、背後に燃え上がる鬼気のような物を感じた。同時に、肩から胸に手を回される。

 「私だって、やきもきしたのよ・・・。」

う、っわ~~、美守様!低くてセクシィな声が背後から聞こえる。み、耳元に息を吹きかけないでください!。

 「聞いてるわよ、ほとんど毎日、四人全員相手してるんですって?」

二人から異口同音に言われた。

 「あはははは。」

顔が熱けりゃ、耳も熱い。嫌な汗が額やら背中やらを流れ落ちていく。

 「一樹様、みんな行ってしまいますよ。」

自業自得よね、ふん、みたいな感じで大股で先を行く水穂さんと阿知花さんだった。でも止めてくれなきゃもっと怒るでしょ?とか思いつつ、これ幸いと、ちょっと無表情な声が下の方からするのに答えた。

 「そうだよね~、ラノちゃん。船の様子を見に帰らないとね~。」

無理矢理、しなだれかかっている美守様の手を頭を低くしてかわして、何も言わせないうちに手の甲に軽く口づけし、さっと離れた。

 「それでは、また後ほどよろしくお願いします。」

これ以上ないと思える笑顔で、ラノちゃんを連れて後ろへ下がった。チッとさすがに舌打ちはしないが、美守様と瀬戸様が、かなり残念?そうに見える。お二人のお立場でしたら、若い男なんざ、なんぼでも囲い放題でしょうが!と喉まで出かかるが、すんでのところで飲み込んだ。

 「もぉ、後じゃなくたって、今でもいいのに。」

美守様の、あからさまな声が聞こえてくる。あんら、私の方が先だったのよ!とか小声で言う瀬戸様が少しだけかわいく感じる。ゆったりした樹雷の服を着て、先を行く樹雷皇阿主沙様が、前を向いたまま恐ろしいことをさらりとおっしゃった。

 「このまま、水鏡でしっぽり濡れてくれてもいいのだがな。こちらは助かるが・・・。」

なぜか内海様まで、大きく頷いている。

 「・・・うちの4人がものすごく怖いので、瀬戸様と美守様のお相手は勘弁してください・・・。美守様も瀬戸様もお立場があるでしょうに。」

くわばらくわばらである。樹雷皇様達と別れて、会場を出て廊下を数mほど歩くと、舞貴妃様が立って待っていた。一度軽く会釈して、ささやき歌うように言葉を紡ぐ。

 「・・・ここは、レセプシーでございます。皇族の皆様こそ浮世を離れ楽しんでいただきたく存じます。そして、それもまたひとつの舞台上の演出となり、銀河に語り継がれる美しい物語となりましょう。」

一瞬、昔はまった険と魔法の小説に出てくる、吟遊詩人と言う言葉が脳裏をよぎった。そう言えば、ここは治外法権の隔絶された空間である。皇族の浮名もこの中だけ・・・なんだろうなぁ。たぶん。

 「ほら、そんな顔してると、瀬戸様にまた捕まりますよ。そうじゃなくたって、ここは・・・。」

籐吾さんが、後ろを振り返ってムッとした顔でそう言った。

 「そう言う籐吾さんこそ・・・。ほら踊り子さんが手を振ってくれてるよぉ。」

そう、この廊下、たまたま透明なパイプのようなところだった。下には、赤や金色などを中心とした華やかな色の内装が見え、豪華なクラブの様相を呈している。座っている人達からは、斜め上方を歩いて行くように見える。その透明チューブの下半分は、不透明にはなっていた。羽根飾りをつけたり、つばの優雅に曲がった帽子をかぶり、ドレスアップした女性達が、男性客相手に談笑していた。その中にはこちらを見て手を振っている女性も居た。

 「・・・やめてください、僕の趣味ではないです。」

そっち系だから?とか失礼にも聞こうとしたら、舞貴妃さんが解説してくれた。

 「・・・樹雷皇族の方には、少々大衆的に過ぎますわよね。先ほどの部屋は、レセプシーでも比較的廉価なお値段で、お楽しみ戴けますのよ。」

ポッと耳が赤くなる籐吾さんである。たぶん、答えは前者なのだろう。今夜も頑張らねば!

 「たしか、柾木・一樹・樹雷様は、音楽がお好きと伺っております。故郷の音楽もよろしいかと思いますが、せっかくですので、是非私たちが永年、天の川銀河を旅して集めた音楽もお楽しみください。」

うわ、それ、生演奏?とか聞きたくなって、なんとかこらえた。オーディオマニアというかそういう人種は、生演奏とかコンサートとか言う言葉に弱い。聞きに行くと、自分のシステムから出てくる音とあまりにも違っていて、頭の中では、スタジオ録音とコンサートの生演奏は違うとわかっていても、泣き笑いしながら帰ってくるのがオチだけれど。

 「ほお、それは楽しみです。でも、そろそろ我らの船が改修を終わる頃ではないかと・・・。」

そこまで言って舞貴妃さんの前に目をやると、天木輝北様と竜木謙吾、立木幹凪、上木晴信がこちらに歩いてきていた。さっそく天木輝北様が樹雷式の礼をしてくれる。

 「柾木・一樹・樹雷様、梅皇の船殻取り替えと、ナナシ、いや蒼穏の星を惑星アルゼルと連星にする作業終わりました。惑星間引力や潮汐力の問題がございましたが、梅皇とあなた様からのありあまるエネルギーもあって、問題解決しております。さらに、今度は、光應翼なしでG型恒星に突入し、恒星コア部で1時間以上耐えられる耐熱性を持ち、至近距離で大型縮退弾が爆発しても、空間ごと喰われない耐爆コーティングおよび、天樹細胞壁超硬化テクタイト処理を施しております。そのため、海賊船ダイダロスクラスの主砲の直撃を、光應翼なしに受けても持ちこたえます。」

 そこまで言って、ニンマリする天木輝北様だった。どことなく竜木謙悟に似ていたりもする。

 「・・・このたびは、私どものためにご足労いただき、そして過分にも最高品質の船殻材料をご提供いただき本当にありがとうございます。」

手のひらを左右に振って、気さくに話してくれる。

 「なんの、竜木謙悟にこの仕事を受け継ぐ時に、約束していたのですよ。謙悟は、私の弟子の中でも一番の実力があります。良縁だけが悩みの種だったのですが・・・。これからもいろいろよろしくお願いします。」

 逆に頭を下げられてしまった。いえいえ、こちらこそ申し訳ありません、などとやりとりをしていると、天木輝北様の後ろでまっかな顔をして、少々うつむき加減で立っている竜木謙悟だった。その横で立木幹凪殿が、晴れやかな笑顔で謙悟の肩をたたいている。

 「・・・この場で皇族の皆様が立ち話というのも、無粋という物ですわ。本日は、樹雷皇阿主沙様のおはからいでこのレセプシーは貸し切りでございます。私、柾木・一樹・樹雷様や水穂様、阿知花様ご一行様へのおもてなしを寝ないで考えておりましたのよ、ささ、まずはこちらへどうぞ。」

通路の外を見ると、下から何人もがこちらを見ている。舞貴妃様が、なんとなく井戸端会議風になってしまった雰囲気を連れ戻してくれた。そうやって、誘われるまま舞貴妃様の言うとおりに、巨大な部屋に通された。中央部が一番低く、そこが直径50m程度あるステージのようだった。5,6人程度の丸テーブルが円周状に12セットほど配置され、それが三段ほど上方に向かって低い階段でメリハリをつけながら配置されていた。さながら地球のコロッセオのような部屋だった。もちろん、豪華な作りの照明、テーブル、椅子などの配置は当たり前である。色調は深いブルーの色調で統一されていた。

 僕らは、勧められるまま真ん中の段のステージ直前に二つのテーブルに分かれて座った。ステージはほどよく離れて全体を見ることができる。かぶりつきとは言わなくても、コンサートホールの2階最前席、みたいな感じだった。もちろん、テーブルで食事やお酒を楽しみながら、と言うスタイルだろう。地球ならコンサートホールで、席が決まっていて、のような場所を想像してしてしまう。まあ、ヨーロッパあたりの歴史あるホールだと、貴賓席の用意があったりするようなのも聞いたことがある。席に着くと同時に、人数分の食器等が転送されてきた。そして、飲み物などが人によって給仕される。さらに人が変わり、シェフだろうか、どことなく地球のそういった職業の人の雰囲気に似た人が、手押しカートともに現れ、その場で良い香りのお酒を振りかけたり、炎を上げたりして簡単な調理をして座った者に取り分けていく。ラノちゃんやリルルやメルルにはちょっとかわいらしいワンプレートとソフトドリンクが置かれた。でも安っぽさはない。大人達と同じようにナイフやフォークも用意されている。それにすごいのは、お箸もあったりする。割とこういう食器ってそんなに変わらないのかなぁとか呑気に考えていた。

 「ねえ、水穂さん、樹雷に急いで帰らなくていいのかなぁ?」

さすがにおっさん不安なのだ。

 「・・・そうですわね。樹雷皇阿主沙様のご厚意ですし、あなたがおっしゃったように星間外交の食事会も阿主沙様や瀬戸様にはあるようですから、こちらはこちらでしばらく良いのではないでしょうか。」

めずらしく?ちょっとうれしそうな笑顔だったりする。そういえば、こういった場も久しぶりだったりする。

 「そういえば、この一年、瀬戸様に引きずり回されたりしてホッとする間はなかったねぇ。」

 「たぶん、第二世代の皇家の樹の種、お持ち帰りの件は、なんらかの式典があるのでしょうが、瀬戸様もああおっしゃってますから、地球に里帰りする時間もとれるかもしれませんね。」

阿知花さんもそう言って微笑む。思わずそのほほを撫でたくなったが、かろうじて踏みとどまった。

 「鷲羽ちゃんも帰ってきたら検診だとか言ってたし、久しぶりに帰ろうか・・・。みんな、地球の服とか用意して、山田商店でスナック菓子とか買おう。」

なんだか、お嫁さん達やら闘士の二人が小さくガッツポーズしている。やれやれと、言いたそうな水穂さんもどこかうれしそうである。まったく、食べ過ぎると太ったり虫歯になるじょ。ひいき目に見ても、そういうジャンクフードのたぐいは、日本のコンビニとかスーパーマーケットの方が樹雷より多彩である。期間限定などのチョコレート菓子なんか樹雷にはない。包装も派手だし。樹雷は定番ものの他は、そうそう無駄なラインナップというか、多品種での展開はやらないっぽい。そういう点では日本は商売がうまい、と思う。

 「柾木家にお土産買って帰らないとね~。」

そういう会話をしていると、食事の準備も整い、何かの公演も準備が整ったらしい。

 え?乾杯?やっぱり僕?とか言ってキョロキョロする。だって、アマナック議長も天木輝北様も居るじゃん、と水穂さんに小声で言うと、横腹を小突かれた。痛いって。もそもそ言っててもかっこ悪いのであきらめて立ち上がる。

 「・・・いろんな人に心配され、いろんな人に助けてもらって、僕はこの場にいられます。ありがとうございます。樹雷皇阿主沙様のお計らいと言うこともありますし、この場は楽しみましょう。乾杯。」

乾杯、乾杯!と声と杯を打ち付け合う音がした。同時に、真ん中に構えられたステージに演奏家の皆さんが転送されてきた。ほお、合唱もあるんだ。男性、女性と正装をした人々が並んだ。

 一度、各楽器類からランダムに音出しがされて、指揮者の合図で静寂が戻る。そして、ピアノのような楽器の最弱音と、か細いストリングス一丁の音から演奏は始まった。ブレスレット状になっているレセプシーのパンフレットを、と思うとA4位の大きさの正式なパンフレットになった。銀河標準語で、演目から今演奏が始まった曲の名前、由来、そう言った情報が見やすく表示される。みんな、お酒を飲んだり、運ばれてきた料理に手を付けながら聞いているようだった。静かなピアニッシモから始まった曲は、楽器を増やし、勇壮なメロディーに変わってきていた。何かに似ているなぁとおもったのは、ラヴェルのボレロだった。そんなに僕自身クラシックは詳しくないけど、平和から戦争に至り、破局に終わるラヴェルのボレロは好きな曲だった。同じメロディーを楽器を重ねながら、最後の破局のフォルティッシモで締めるまで約15分ほど繰り返すのである。このレセプシーでの曲は、パンフレットによると、ある惑星間国家の興亡の叙事詩のようだった。途中、またこれも、逝ける王女のパヴァーヌ(亡き王女のパヴァーヌの方が有名か)に似たメロディが流れる。広大な宇宙、大艦隊の息の詰まるような戦闘、飛び交う大量の戦闘機群、つかの間の平和、そして、文明の終焉から、新たな旅立ち。ちょっと定番っぽい気もするけど見事な演奏と合唱だった。

 

 

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