天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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ふと気付いたら、規定容量を突破。

慌てて、投稿します(^^;;;。

おっさん、なかなか樹雷へ帰れません


樹雷から銀河へ21

広大な宇宙、大艦隊の息の詰まるような戦闘、飛び交う大量の戦闘機群、つかの間の平和、そして、文明の終焉から、新たな旅立ち。ちょっと定番っぽい気もするけど見事な演奏と合唱だった。

 その後、浮遊する色とりどりの宝石群を赤いドレスの周りに幾重にも身にまとった歌い手が現れた。一礼して、宝石群を服に密着させ、歌い始めた。どうやってるのだろうか、ソプラノ帯域から男声のテノール帯域まで出ているように聞こえる。まず地球のオペラなどではあり得ないなぁ、とか思う。歌い手さんの見た目は、ふくよかで大きな胸から女性に見えるけど、種族の違いというものかもしれない。全体的にふっくらした体型は、地球のオペラ歌手によく似ていた。

 歌の内容は、貴族の女性が親衛隊の男性に恋をして、男性も禁じられた恋と知りながら逢瀬を重ねる。身分の差に二人は泣き、あの世でいっしょになりましょう・・・、と投身自殺などしようものなら、結構地球でも多い話だが、ここからがすごい。親衛隊の男性、様々な戦いにおいて武勲を立て、爵位を授与され、めでたくゴールイン。かと思えば、夫は、恋多き女性の浮気に泣き、自らも浮気を重ねる。庶民には及びもつかない貴族の生活。きらびやかな時間も過ぎ去り、ふたりは歳を重ね、長い人生の最後は二人だけで静かな余生を過ごし来世を誓い合う、という波瀾万丈だがハッピーエンドのお話である。これだけで大河物語が書けそうだった。どこかの皇族の某ご夫婦に似てるなあと思う。二人して浮気しているかどうかは知らないけれど・・・。

 まあ、ね。屈折した柾木・一樹・樹雷としては、想定内の感動レベルの演目だった。演出の華美はさすがと思うが、地球で音楽を聴いていた時の、一種引き込まれて歌手に恋をするような甘い思い出にはほど遠いな、と思った。ちょうどあの頃自分も若くて、感覚も繊細だったのかもしれない。もうおっさんだからなぁ。この辺は主観が入りまくるのであまり当てにはならない。

 並べられた料理は、文句のつけようがない美味といえるものではあったが、例えば砂沙美ちゃん+ノイケさん連合軍のあの魂を持って行かれそうな美味しさや、瀬戸様の大いなる母を思わせる味わいではなかった。比べる相手が悪いとも言うが。

 「・・・どうかなさいました?」

水穂さんが、何かを察して聞いてくれる。水穂さんの取り分けられた料理もあまり減っていない。阿知花さんは、綺麗に食べているが、ナプキンをきちんと折りたたんでいる。それこそアイロンでプレスしたように。阿知花さんって結構、こう言う嫌みするんだなぁ。(ちなみに、ナプキンをきっちり畳んで店を出るのは、あまり満足してませんよ、ほら、ナプキンをこんなに綺麗に畳む暇があるほどです。みたいな意味合いがあったりする。ナプキンはくしゃっと置くとナプキンなんかに気を取れらる暇も無いくらい満足しました、みたいな意味になるそう・・・。諸説あるようだが。)

 「うん、とてもきれいな演目だねぇ。」

二の句は、告げずにそれだけ言った。

 「舞貴妃様のことですから、これだけで終わることはないと思いますけれど・・・。」

水穂さんも、肩すかし感があるということか。まだ、序盤だし。ラノちゃんやリルルとメルルは、若干退屈モードである。おとなしくはしているが、小さな子には厳しいかな、やっぱり。

 色恋沙汰のオペラみたいな出し物が終わって、舞貴妃様がステージ上に転送されてきた。何でも、準備が必要ですのでしばらくお待ちくださいとのこと。その言葉が終わり、一旦舞貴妃様は、退場した。演奏していたオーケストラの楽器の入れ替えみたいなのもやっているようだった。

 数分後、舞台左袖に、舞貴妃様と、高齢の女性が転送されてきた。舞貴妃様が手を引いている。舞貴妃様にくらべて背は半分ほどしか無いように見える。ちっちゃなおばあちゃん、だった。ステージ中央にイスが用意され、その高齢の女性は、手を引かれて座った。

 そして、マイクを渡された。なんと!ワイヤードマイク(電線付きマイク)である。この超空間航行が当たり前の宇宙に、ワイヤードマイク!。たしか、樹雷での最初の式典のとき、浮遊する光点に見えるようなモノが、マイクだった気がする。声が出ているところへ自動か手動で追従し、声を拾うようなモノだったと記憶している。しかし、ステージに手を引かれてやってきた女性に渡されたのは、地球でよく見るような電線の付いたマイクだった。しかも、女性が持つと大きく見えるほどの。え?、え?、と慌てないまでもびっくりして周りを見ると、天木輝北様と竜木謙吾は、目を見張っていた。水穂さんは、珍しく驚いた表情で口元を袖で覆っている。

 「・・・ごめんなさいね。こんなお婆ちゃんで。私、マジョーラ・レ・セプシーと申します。エクシトの母でございます。」

マイクテストも兼ねてか、イスに座った高齢の女性は、そう言った。少し声はしわがれているが、まだまだ太く艶やかな声である。

 「柾木・一樹・樹雷様がいらっしゃる、そう、伺いまして、いても経ってもいられず、息子に頼んで、お邪魔しましたの。GBSの一樹様のお歌とダンス、久しぶりに楽しゅうございました。もしかしたら、ご迷惑かも知れませんけど、私の歌を聴いてくださいませ。」

ゆっくりと、そこまで言うと背後の音楽隊へ簡単に指示を出す。弦楽器が、愁いを帯びたメロディーを奏で始めた。そこまで見届けた舞貴妃様は、静かに転送されていった。

 「あなたのことが忘れられない・・・。今さらどうして会いに来てくれたの?帰ってくれたら嬉しいわ・・・。思い出はブラックコーヒーのように胸に満ちる・・・。」

マイクに口紅を付けんばかりに近くへ寄せて、マジョーラと名乗った女性は歌う。どことなく、地球のジャズに似たメロディ。歌詞は、かなり昔に銀河辺縁系で使われていた言葉のようだった。一声出たときに、歌の背景が力を持って描かれる。そして、曲が進むにつれ、歌を纏っていく。ひとえ、ひとえ大事に。僕は、一生に何度もあるか、ないかの体験をしている、そう確信した。そして、宴会芸のとはいえ、自分の芸のあまりのつたなさに赤っ恥で、気分は果てしなく落ち込むのであった。

 「・・・この曲を再び・・・、聞くことが出来るとは。」

つぶやきが聞こえてくる。アマナック委員長の頬を光るものが伝っていた。

曲はクライマックスへ進む。グッと力を溜めて声を出す女性。なるほど、この力ある声は、そこいらのマイクでは受け止めきれないだろう。いや、物理的にサチュレーションするとか、クリップするとかではない。声の芯を真っ向から受け止め、増幅器へ真っ正直に送り込むことが難しい・・・。そんな幅のある声であり、想いが深い歌だった。僕は、地球の大好きな某歌姫が専用マイクを持っていた、そんな逸話を思い出した。

 「あなたと一緒に、静かにお茶を飲むことだけが望みだった。でも、あなたは、こんなにも冷たくなって・・・。私はあなたを許さない。私の人生を悲しみで満たしてしまったのだから・・・。」

まるで、血を吐くように歌う、お婆ちゃんだった。マジョーラおばあちゃんが歌うと、そのオーラが炎になって、客席全体がその炎に包まれ燃える様な錯覚を覚えるほどだった。しかし、マジョーラおばあちゃんは、派手なアクションもなければ大げさなジェスチャーもない。淡々と歌っているだけだった。一曲歌い終え、しばらく息を整えている。

 「・・・ごめんなさいね、昔はもう少し歌えたのだけれど・・・。」

そう言いつつ、マイクを離さず、立とうとした。少しふらついている。見かねて、僕は席を立って、手を取り、腰を抱いてあげた。すぐに杖を持った舞貴妃様も転送されてきた。ゆっくりと足が体重を支えるのを確認して、力を緩める。なんとか転倒は防げた。まあ、昔取った杵柄だな、福祉課職員としての。同時に、手が触れたので皇家の樹のエネルギーを渡した。ハッとした様な顔を僕に向けるマジョーラ・レ・セプシー様だった。僕は小声でささやく。

 「地球の、僕の大好きな歌姫は、若くして亡くなってしまいました。あなたは、まだまだ生きて歌ってほしい。勝手ながらそう思いました・・・。」

今度はふらつかずに、少し腰が曲がっているけれど、しっかり立っているマジョーラおばあちゃんだった。

 「・・・あの神木・瀬戸・樹雷様が入れ込むはずね・・・。私、そんなに老いぼれていないわ、と、あなたの手を振り払いたいくらいだけど・・・。正直、うれしいわ・・・。また、思い切り歌えるのね。」

そう言って、じっと僕の目を見るマジョーラおばあちゃんだった。きれいな琥珀色の瞳が僕を射貫く様に見ている。若かった時はかなりの美人だったのだろう。腰を支えていた手をマジョーラおばあちゃんの手に持ち替えて、軽くキスをして離れた。

 席に戻ると、なんとな~く不機嫌そうな水穂さんの顔がある。

 「・・・もお、ご自分の影響力の大きさをもっと考えて欲しいですわ。」

こっちもぼそぼそ。

 「だって、あのおばあちゃんの歌、ずっと聞いていたいと思ったんだもん!」

おっさん、感動したのだ。かなりあざといが、ちょっとこどもっぽく言ってみた。ラノちゃんが顔をしかめて引きまくっている。珍しく、あまり感情を表に出さないアマナック委員長が机の下でグッジョブ・サインを出してくれていた。

 「我らが、あの星に入植した頃かな、一度だけ、マジョーラ殿の歌を生で聞いたことがあるのだ。まだ、レセプシーなどという惑星規模艦などではなく、まだ小さな宇宙船だったな。エクシト殿もリルルくらいだったと思う・・・。各地を回って芸を磨き、対価を戴いている、そう言っておった。」

 ステージでは、マジョーラ・レ・セプシー様が舞貴妃様に手を引かれてゆっくりと退場された。一度舞台は暗転。明るくなった時には、舞貴妃様を中心に、男女数名のダンサーが並んでいる。アップテンポの曲とともに、ダンスが始まった。地球でよく見るワイヤーアクションには見えず、もちろん反重力場のようなものを使った様な動きではない。まあ、若干のそんなハイテク介助はあるかもしれないが、自前の筋力でもって見事なダンスを踊っていた。頭の中に中国雑伎団とかの言葉が出る。しかし、もっとすごい。樹雷にも剣舞があるが、それに近い様な動きだった。こってりした音楽の後は、こういったダンスがホッとしたりもする。ドラムスの効いた、アップテンポな曲が僕としては楽しい。

もともと僕は、ポップスでも演歌でも、シンフォニーでも何でも聴く。さすがにヘヴィメタは苦手である。やっぱり、実家のオーディオシステム持って来て、梅皇かイツキに設置しようと思う。100V電源は・・・、まあ、後で考えよう。自分でも里帰りが楽しみになってきた。

 さてと、文字通り宴会(と言うと失礼だが)もお開きのようだった。舞貴妃様へお礼をやっぱり言わされて、梅皇への空間電送チューブに乗った。レセプシーを離れ、梅皇が近づくにつれて、船殻が変わったのがわかる。何やら前よりも変にツノがある。うん、ちょっとつんつんしている。

「あ、言い忘れてました。某社製シールドをアレンジして、通常空間情報を書き換え、船殻表面と同化し、空間そのものに潜り込む機能が追加されました。その結果、隠密行動機能がかなりレベルアップしました。今回、結構遠くにジャンプアウトしたのに発見されたでしょ?一樹様。」

こちらを振り返って、くりっとした目でそう言うのは、竜木謙吾さんだった。

「う、・・・んそうだった、けど。でも、相手が皇家の樹だし、割とその辺敏感で、それで見つかったんじゃない?」

自分は、空間伝送チューブの後ろの方に乗っている。足下には柚樹の気配もある。少ない経験上ではあるが、まあ、そう言ってみた。

 「しかし、あのナナシの樹達は、皇家の樹のネットワークにも組み込まれていませんでしたし、プローブもかなり隠密性能にこだわったものだったんですが、あの早さで見破られました。その辺の事実からこれからの新兵器開発と言うことでちょっと予算が下りていたんですよ。」

ドヤ顔の謙悟さんであった。見事に某アニメの真○さん状態である。

 「それに、一樹様考案のアストラル・シールド、樹雷兵器開発工房で最優先開発事項になったようです。」

 「そりゃうれしいけどさ、そんなん古来からの結界とか盛り塩とかで・・・。」

 「はい、そういうノウハウは樹雷でもあるのですが、システマティックに効果があったのは一樹様のが初めてです。それに、結界や盛り塩も、対象から見えなくしたり、入りにくくするもので、対象の絞られた、力のある攻撃にはほとんど無力ですから。」

 「でもさ、地球で言う、超能力関連機器とか結構進んでいるんじゃない?」

はい?心外だなぁと言う表情の謙悟さん。

 「確かに、様々な機器があります。GPで解明も進んでいまして、能力強化したり実体化させるようなこともできます。それに残留思念を読み取る様な装置もすでにあります。しかも、あなたは瞬間転移もできる様だし。まあ、それは置いといて、アストラル・レベルそのものに攻撃が加えられる様な事は今までなかったんですよね。」

ふううん、そういうもんですか。と相づちを打ったところで梅皇に到着した。ここで舞貴妃様とはお別れである。

すでに、手首にあったパンフレット兼レセプシー入場パスは舞貴妃様の手にあった。

 「このたびのご利用誠にありがとうございました。またのご来訪をお待ちしております。」

シンプルにそれだけ言って、かなりつややかな笑みを僕に向け、ついで一同を見渡し、深々と一礼する舞貴妃様だった。

 「どうもお世話になりました。マジョーラ様にどうぞよろしくお伝えください。そして次も是非、あなたの歌を聴かせてくださいと伝えてください。」

にっこりと、この上もなくうれしそうな笑顔をする舞貴妃様だった。

こちらはそのまま梅皇のブリッジに転送される。他の皆様はつれづれに帰って行った様だった。すぐに天木輝北様に通信をつなげ、改めてお礼を言った。また、請求金額等後ほど明示して欲しい旨伝えると、その件は既に解決済みというか、本気で立木林檎様が公用扱いにしてくれたらしい。樹雷皇阿主沙様が言っていたことを疑うわけではないけれど、今回なかなか手に入らない一品ものの材料だったというので、それはそれで気になっていたのだ・・・。

それでは!と、さわやかなあいさつとともに天木輝北様は、自艦と作業船他を引き連れ、超空間ジャンプし帰って帰って行った。天木姓の皇眷属のようだが、権力を振りかざすような人でないことにちょっとホッとした。そういえば、他の船が超空間ジャンプする様子は、あまり見たことがなかった。一瞬虹色にゆらめき、前方に丸い皿状にできた暗緑色の空間へ突入していった。某アニメほど派手ではないけれど、やっぱりカッコいいし、妙にテンションが上がったりもする。

 各銀河の代表の船はまだ停泊したままだった。瀬戸様の船、水鏡、樹雷皇阿主沙様の船、霧封、そして世二我の美守様の船も同様に停泊中である。未だ会議中と言うことだろう。偉い人は大変だなぁ。瀬戸様に何か言われないうちに帰りましょう、そうしましょう。そう思って、水穂さんと阿知花さんを見ると、うんうんと頷いている。すでに、梅皇の各部署から発進のためのチェックルーチンの報告が上がっている。

 「一樹様、全システム、オールグリーン。新船殻とのリンクも問題ありません。」

そう、特に何も言われていない・・・。いまのところは。

 「樹雷皇阿主沙様、瀬戸様へ通信を入れて、樹雷への帰還航路を・・・。」

そう言いかけた時に、ブリッジ内に警報が鳴り響いた。まさか、こんなところで敵襲?

 

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