お金無いから(中華タブレットにはまり中)、三連休もどこも行かないし。
う~、「カーズ・クロスロード」は見てこようかなぁ(^^;
「一樹様、全システム、オールグリーン。新船殻とのリンクも問題ありません。」
そう、特に何も言われていない・・・。いまのところは。
「樹雷皇阿主沙様、瀬戸様へ通信を入れて、樹雷への帰還航路を・・・。」
そう言いかけた時に、ブリッジ内に警報が鳴り響いた。まさか、こんなところで敵襲?
「状況報告!」
ブリッジ内で各分担ごとに、座席が作られるとともに3次元バーチャル端末を起動し、様々なシステムを立ち上げ、高速処理を始めるお嫁さん達だった。梅皇前方進行方向を映し出している、ディスプレイに何かが横切っていく。いくつかはせっかく新しくした船殻と接触しながら横切って行っている。ガッ、ゴッと強いショックと気味の悪い音を感じる。しかも、かなりの数である。
「一樹様、特に心配いりません。これ、星間植物とでも言いましょうか、その種たちです。」
とりあえず、どちらにしてもぶつかっていても良いことはないので、梅皇に後退を命じ、少し離れてみた。ほお、なるほど茶褐色の5,6m位の長さだろうか、真ん中がふくれたラグビーボール状のものが多数通過していく。ぶつかったときの感触から言っても秒速100km行くかいかないかだろうか。
籐吾さんの説明によると、近くの星にこの植物の親木があって、数十年に一度、種が熟せば、こうやって一斉に大気圏外へ打ち出され、運がよければ数万年も旅した頃に他星系に到達、環境が合えば発芽し、また子孫を増やすそうだ。
「そういえば、地球にもホウセンカという花は、種をバネで飛ばしていたなぁ。」
とは言っても、重力圏を振り切る初速である。どうしているのかと聞くと、
「親木は、種の付け根に爆発力のある液状化学物質をため込み、そして種側も同様のものを溜め込みます。時期が来れば、打ち上げ化学推進ロケットよろしく・・・。」
「うわ~。それ一度見てみたいって・・・、天木日亜さんも、天木辣按様も一度見てるわ、それ。」
そう、そのときの記憶が頭を巡る。そう言えば、記憶ごと融合してるんだった。それはそれで、こう、楽しみがないというか、感動が薄いというか・・・。贅沢かもしれないけど。そうそう、名前は、反射膜が恒星の光を反射する様子から燦葉香草(さんようかそう)だったか。
天樹とは言わないけれど、かなり大きな木から発射される壮大な自然のロケット花火である。必ず太陽を背にした夜の時間に発射される。最後の種は、二段目の燃焼が終わったときに、元々は花びらを支えるガクの部分がバネ状になっていて、はじき出されるようだった。そして、宇宙空間に出れば、薄いフィルム状の反射膜を広げ、太陽風を受け加速、最終的には秒速100km程度に達し恒星間へ挑むのである。
「宇宙空間でこの種に出会うことは非常にまれです。見えなくなるまでに願い事を3回言うとかなうそうですよ。」
謙吾さんが、頭だけ振り返って笑顔でそういった。横を見れば、お嫁さんたちが、何か一生懸命早口でつぶやいている。何を言っているかは聞こえないけど、とてもいじらしい。ラノちゃんは目をパチクリしている。本当に珍しいのだろうな。
「本当に万に一つ、発芽できる環境の惑星に到達すると、大気圏で果実部分の周りは燃え尽き、中の本当の種が土にばらまかれるようになっています。」
宇宙線などの影響は、その種の皮部分と果実部分が遮蔽してしまうらしい。真空の宇宙空間を数万年単位で航行できる、生命エネルギーがすごい。
「・・・以前は、その数万年ものあいだ宇宙空間で過ごす生命力の強さが、薬として高価な値付けがされ乱獲されたようですが・・・、科学的に薬効は特にない、という研究結果が出て乱獲はやみました。ただ、いまだに薬効はなくても、ほとんどおまじないのような意味で高値では取引されているようですね。」
謙吾さんが、梅皇のデータベースから誰に言うとでもなく読み上げてくれる。ここで僕が、じゃあおまじないで一つと言えば、取ってきてくれたりもするのだけれど、まあ、せっかくここまで来たのだから次の恒星系まで頑張って行ってほしい、そう思って何も言わなかった。
「待ってください。何でしょうか・・・。なにか、非常に微かですが信号?SOSかな?を感じます。」
神木茉莉さんの鋭い声が飛んできた。彼女にしては口にする言葉が多い。
「信号の種類と発信源を特定してくれ。」
ブリッジがにわかに忙しくなる。
「信号源は、さきほどの燦葉香草の群れの中です!信号は・・・、SOSのようです。」
神木茉莉さんが、発信源を突き止め報告してくれた。
「通常航行にて、先ほどの燦葉香草の群れに追いつき、速度を同期し、SOS発信源を特定できるか?もちろん救出したい。一応瀬戸様にも報告を。」
「了解!」
「わかりました。」
籐吾さんが、そう言って独特な形状の操縦桿を操作した。ゆっくりと目の前の星が流れ90度近く回頭するのがわかる。若干、水穂さんが不服そうなのは、まあ、また呆れてるんだろうな。阿知花さんなんか、やれやれという表情だったりする。
「いちおう、確認するけど、SOSを受信すれば・・・。」
「はい、受信した船は、最優先で発信源を特定し救出しなければなりません。」
さらに、樹雷航宙法第5条の・・・とか言い始めるあやめさんだったりする。
「・・・もしかして、また何かやっかいなことだったりしたら・・・。ええ、とぉ、助けてください。」
語尾は少しトーンダウンしているのは許してほしい。
「はい!」
予想に反して、みんなが、それこそ大きな声で承諾してくれる。なんか妙にニコニコしていたりもする。
「独りで行く、とか言ったら・・・」
水穂さんが、ぱきぽきと指の骨をならしていた。この人、お母様から直伝のアカデミー神拳の使い手である。徒手空拳だと、僕もかなわない。さらに阿知花さんの棒術まで加わると、問答無用の土下座モードである。もっとも二人には、むんずと胃の腑も握られていたりもするけど。
別段、特に高速で飛んでいるわけでもない種たちに追いつくのは訳もなく、すぐに視界にとらえることができた。梅皇で接近したら、種たちの軌道をめちゃくちゃにしてしまうので、乗せている樹雷の航空隊に出張ってもらった。すぐに、目標のSOS発信源の種を見つけて、電磁ネットで包み持ち帰ってもらう。着艦ゲートではなく、すぐに切り離せる対爆貨物室に入ってもらった。あやめさん、茉莉さんコンビが、まず非破壊での検査、内部サーチ等して爆発物ではないことを確認する。
「一樹様、種の内部、中心に近いところに古いGPの脱出ポッドのようなものが確認できます。種の組織に大事にくるまれています・・・。」
う~ん、どうしよう・・・。やっぱり瀬戸様でしょうね、こういう場合。あきらめて、水穂さんに水鏡へ連絡を取ってもらう。
「あらま、こんにちは。」
すこ~し、お怒りというか、ムッとしているというか。なんとなく、イラついている、というか。
「神木・瀬戸・樹雷様にはご機嫌麗しゅう。」
正式な樹雷の一礼をする。まだ、特に何も言わない。
「・・・」
もうちょっとで、更年期とか言いそうになるのをこらえた。後ろにいる、平田兼光様と、天木蘭さんがこちらと目を合わせようとしない。
「ふん、まあ、いいわ。それで、何を見つけたの。」
例によって、かくかくしかじか。SOSの受信とその信号に従って、すれ違った燦葉香草の種の群れから一個、救出した物があることを報告した。いつもの扇子を口元に持ってくる瀬戸様だった。
「ふうん、・・・そうねぇ。何が出てくるか分からないし、とりあえず樹雷に帰ってからの話にしましょう。」
ホッとして、瀬戸様から目をそらし、もう一度見るとコモドオオトカゲ顔でニヤリと笑う瀬戸様だった。
「オホホホ、その後は水鏡にいらっしゃいね・・・。」
怖っ。籐吾さんと謙吾さんを見ると、2人とも前を向いたまま、ぶんぶん頭を振っている。護衛で付いてきてもらおう。絶対に。にっこり笑って、水穂さんと阿知花さんも見てみると、意識的に視線を合わせようとしない。どうせ連れてくけど。
「・・・ほほほ、一樹殿、独りで来てほしいわ・・・。」
ちなみに、柚樹さんもラノちゃんの膝の上で素知らぬ顔である。さっきからイツキは顔に縦線書いたイメージを送ってきている。
「はい、わかりました。それでは私独りで、今回収容しました荷物をお持ちしようと思います。大変なモノだったらマズイので鷲羽ちゃんも呼んで欲しいのですが。」
一計を企てたところで僕はこの程度。毒をもって毒を制する、のか、毒が二乗になって襲いかかってくるのか・・・。とにかく、瀬戸様のこめかみに、ビシッと音がするかのように青筋が浮かび上がった。
「いちおう、対爆空間および時間凍結倉庫等は水鏡に・・・。」
「ふんっ、イケズね一樹殿。あるわよ、・・・もっておいでなさいな。鷲羽ちゃんも呼んでおくわ。」
「どうぞよろしくお願いします・・・。」
一礼して、顔をゆっくりあげても、まだ通信は切れていない。たっぷり3秒後、表情の読み取れない瀬戸様と見つめ合ってから通信は切れた。
「えーんえーん、怖かったよ~ん。」
泣いてみた。
「かわいくないですから。」
「俺たち連れて行くつもりだったでしょ。」
「一樹様、かっこわるい・・・。」
「ま、観念して食べられるのも良い経験じゃて。」
みんなえらく冷たいのである。
「でもさ、浮気はいやなんでしょ?」
「もう、ほとんど公認状態ですし。・・・あんまり断るのも、瀬戸様のお立場もあるでしょうし。あそこまで積極的な瀬戸様は、西南くんの時以来ですわね。」
あごに人差し指当てて、ん~、と思い出す仕草の水穂さんだった。
「いや、あのさ、そこで・・・。」
「もう四人と関係持ってるあなたですから、まあ、ゴシップネタとしても面白いかも。」
突っ込みたいところは多々あれど・・・、それにも増してむちゃくちゃオープンなんだ、樹雷って。
「文字通り取って食われるわけよね。」
阿知花さんが珍しく、ちょっとエッチな妄想顔で言ってたりする。おもしろがってどうすんのよ。
「子供ができたらできたで、それは樹雷の宝ですし。」
どうもそうらしい。生体強化をすると寿命は非常に長くなるが、子供の誕生はおしなべてかなり少ないようである。出生率そのものは、適齢期が長いので地球とそう変わらないが、なかなか子宝を授かることが難しいのかもしれない。
「生け贄、と言うかも。」
なんだかさんざんな言われようだった。
「いいもん、瀬戸様とおいしいご飯食べて、おいしいお酒飲んでくるんだもん。」
「据え膳食わぬは男の恥というじゃないですか。・・・俺はいやですが。」
まあ、そういうことらしい。誘われて断り続けるのも角が立つと。きっちり謙吾さんは自己主張しているし。
「それに鷲羽様もお呼びするそうですし、大丈夫ですわ、行ってらっしゃいな。」
ころころころと女性陣は、明るい笑顔で言う。ある意味目上の女性に呼ばれていくことって、それなりに名誉なこと?。ここいら辺が、樹雷皇族1年生の弱いところである。ま、いいや、荷物のこともあるし。何かおいしいものはあるんだろうし。
「こちらが先ほどのSOS騒ぎで、出遅れた間に、樹雷皇阿主沙様も瀬戸様も帰途についたみたいです。我々も出発しますか?」
そうしてくれ、と籐吾さんの問いかけに答えた。恒星の光を反射した、燦葉香草の種たちが遠ざかっていく。近くだとキラキラしていて一種、星雲にも見える。どこか、また恒星系の環境の合う惑星で、根を張り花が咲き、実をつけ、そして新たな惑星を求めて旅に出るのだろう。
「超空間航行プログラムロード。超空間航行に移行し樹雷へ帰還します。」
燦葉香草の反射光が消え、暗緑色の超空間に突入した。たぶんあと1時間程度で樹雷星系へ到着のはずである。目を閉じ、イツキが見ている世界を共有する。いつもながら美しい。皇家の樹は、空間を風と感じ、足下の根で異次元空間の熱を力に変えて跳ぶ。
しばらくイツキとのリンクで楽しんでいた。突如また船が軽く揺れた。
「一樹様、何者かの攻撃です。左翼に被弾、損傷は非常に軽微。」
そう聞くと同時に、梅皇に光應翼展開と命じた。
「超空間航行中なのに?艦影特定、状況報告してくれ。」
「先ほどの銀河間代表者会議で、ある程度の艦影データが更新されていますが、それにも該当がありません。」
「このまま樹雷本星の場所を特定されるのまずい。通常空間に復帰し、重力震を発し様子を見る。」
超空間航行を続け、樹雷星系近郊にジャンプアウトして場所を特定されるとまずい。この辺を徘徊する海賊程度なら、樹雷本星に近づこうとしないだろうが、未確認の敵なら話は別である。
「通常空間に復帰、樹雷本星から離れる方向でランダムジャンプ。」
ランダムジャンププログラムがロードされ、スタンバイしたようだった。そして、何度かランダムジャンプの後、通常空間に復帰した。銀河中心に近いので基本的に明るく、星間物質の密度も濃い。
「一樹様、先ほどの新機能である、空間そのものに潜る機能テストしてみましょう。」
なにやら隠密性能を上げるとかなんとか、言っていた機能だろう。
「うん、良いと思う。ランダムジャンプ終了後、その機能を使ってみよう。」
了解!、と謙吾さんが準備を始める。謙吾さんの左手が、ディスプレイを走り、薬指と小指で軽く画面をタップする。その新機能を発動させたようだった。
「空間スライド機能発動します。メインタンクへ空間重力子注入。急速潜行。」
なんだか説明聞いただけだとよくわからなかったが、これ、潜宙艦じゃん。
「ええ~っと、地球のアニメで、よく似た設定の潜宙艦ってのがあるんですが・・・。」
「おお、それは良い名前ですね。空間に潜りますからね。」
なるほど~、と謙吾さんと籐吾さんが頷き合っていた。事実はアニメより奇なり(?)だったりする。
「船体は、ほぼ見えなくなるまで沈降します。代わりにこれを」
そう言って、天井から降りてきたのはまさしく潜望鏡。
「場合によっては、さらに沈降することも可能です。」
周囲は、暗い紫色に近い色だった。樹雷まで、あと700光年ほどだ。
「亜空間ソナー起動します。補機関停止。」
「水鏡に通信を・・・船影の確認できない船から攻撃を受けた。損傷は非常に軽微。超空間航行中での攻撃故、静観されたし。ほかの皇家の船とともに樹雷にとどまり待機のこと。樹雷到着は遅れますと。」
あやめさんの操作で、超空間航行のできる小型通信中継プローブを打った。遅くとも小1時間程度で通信は届くはずである。
「・・・さて、敵の出方を見ますか。」
5分、10分・・・。なんか隠れん坊みたいでわくわくする。イツキとのリンク、そして梅皇とのリンクも利用する。皇家の樹が何か捕らえれば、ほぼタイムラグなしに僕にもわかるはずだ。
十数分文字通り息を殺して、敵出現を待った。超空間内で着弾できる力を持つ敵である。ランダムジャンプごときで進路をごまかせるはずもないだろう。梅皇の背後600光秒程度に何者かのジャンプアウト反応を感じた。
「17時方向、ジャンプアウト反応あり。かなり小型です。船影照合データに該当ありません。」
前面ディスプレイ上に、船影が映し出される。かなり小型で、そう、樹雷の戦闘機ほどしかない。滑らかで、カタチは角張ったメカのようではない。有機体に似ていると言えば似ている。動きは、かなりトリッキーである。ときおり空間転移のような動きもしている。こちらを探しているのか、あまり遠くへは行かないようだ。
「うーむ、かなり小さいなぁ。」
20m程度しかないように見える。亜空間固定機能のある皇家の船でも数百m単位の大きさがある。最もコアユニットのみでも恒星間航行可能ではあるが・・・。
「せいぜい、近隣恒星間か、惑星間航行用の機体にしか見えませんね。皇家の船並の内部空間圧縮機能か、亜空間に固定するような機能でもあれば別ですが。」
ジャンプアウトしてきた機体を様々な角度から画像キャプチャして、あやめさんたちが解析している。
「明らかな推進機関はもっていませんね。重力場を利用したものか、空間そのものを変化させながら推進していると思われます。」
それでも、こちらを攻撃してきた。そして明らかに何かを指標にして追いかけている。こちらが、以前と違うところは・・・。
「燦葉香草の中の脱出ポッドを追ってるのだろうか・・・。何らかの通信波は出ていないか?この機体は単独だろうか、それとも仲間が他にいるのだろうか。」
また、あやめさん達解析チームが、様々な機器を操作している。
「十中八九、あの宇宙船は何かを探していますわ。そしてこちらを攻撃してきたところを見ると、あの種が何か関係しているとみて間違いないでしょう。」
「謙吾、あの種を入れてある耐爆倉庫、シールドはかかってるのかな?」
「ええ、今は通常シールドがかかってる状態です。外宇宙航海用放射線シールドに、通常兵器用シールド・・・。」
そう言っている最中に、あの小さな宇宙船の背後から、ゆらり、と巨大な影が揺らめいて出てきた。巨大な握りこぶし、そんな感じの塊だった。先頭部分だけ出てきたようである。その先頭部分から釣り竿のように小さな機体に白い光がつながっている。後ろ部分は揺らめいて見えない。巨大なチョウチンアンコウ?そんな印象である。そこまで見えたが、一瞬後にはあの小さな機体だけ残して消えた。
「いまのは感知できたか?」
振り返ったあやめさんが、首を振りながら言った。
「駄目です。視覚情報のみ得られました。つまりこの梅皇の他の探知システムに引っかかっていません。」
ちなみに、映像記録はもちろん取っている。
「と、なると、非常にやっかいな相手だなぁ。もしかして、こちらの武器も通じないかも知れません。」
謙吾さんが、前方を見据えたまま腕組みしてそう言った。
「こちらと同様に、亜空間に潜っている可能性は?」