天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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ポツポツ書いていても、溜まればそれなりの量になるもので(^^;;;。

とても暑い日が続きますが、皆様も頑張ってください。

※少し手直ししました(170817)。


樹雷から銀河へ24

 「そうさのぉ、ちょうど良い。今夜は、正木紳士会と正木淑女会の例会だ。そこで、いろいろ聞いてもらうとええ。柾木・一樹・樹雷殿は、今回の紳士会が初めてじゃな。」

ええ、と頷く。話には聞いていたが、正木の紳士会が勝仁様を筆頭に、正木の村の数名と天地君、面識は無いのだが、GPで働く正木珀嶺さんという方がいらっしゃるようだった。水穂さんと結婚して、すぐ樹雷に行っちゃったので、正木紳士会には僕は出たことが無い。

 「ええと、いまさらなんですが、正木紳士会への参加ですが、僕はもともと田本ですが・・・、参加資格は・・・あるのでしょうか?」

 「水穂と結婚し、柾木家に養子縁組したのじゃろう?問題ないな。まあ、ひとこと挨拶とわしの承認は必要じゃがな。今夜は、天地の父親の柾木信幸も同席する。仕事らしいが、夕方到着するじゃろう。そうじゃ、阿知花殿も正木淑女会へ初参加じゃの。」

はい!、とほほを赤らめて、そう言う阿知花さんだった。

 「けっ、また私らは、仲間はずれかよ。」

魎呼さんが、あぐらをかいて座って、右手で頬杖ついている。つり上がった目が怖いっちゃぁ怖いけど、どことなくかわいく感じる人である。

 「魎呼さん、天地様がお気持ちをお決めになったら、私たちもご一緒できますわよ。」

目を伏せてお茶をすすりつつ、阿重霞さんがさらりと言ってのける。びくっっ、と肩をふるわせる天地君だった。え、まだ決めてないの・・・?

 「もう、かれこれ十年ですわ・・・。」

そう、許嫁(いいなずけ)だったのよね、ノイケさん。短めの髪の毛が風に揺れる。

 「まじめというか・・・。ねえ天地殿、他が良いのだったら紹介するわよ?」

あの迫力ある、微笑の瀬戸様だった。

 「いえいえ、もう充分です。」

両手を前に出し、手首と頭を左右に振りながらそれだけ言って、顔を赤らめ下を向く天地君だった。天地君も大変だねぇ・・・。話題が僕から離れたので、ホッとしながらお茶をすすった。

 しばらく、なんともいえない空気の中、時は過ぎ去っていった。ま、僕だってあまり褒められた生活態度ではないしなぁ。なんだかいろいろやっかいごとを引き込んでるし。

 「えらく、静かだねぇ。どしたのさ?」

そう言ってようやく鷲羽ちゃんが現れた。あ、鷲羽お姉ちゃん、と言って砂沙美ちゃんがお茶を入れている。砂沙美ちゃん悪いねぇ、ありがと。と言って湯飲みを受け取っている。  「コールドスリープの解除作業は終わったよ。後は1,2時間待てば目覚めるはずさ。」

変に上品ぶることなく右手で湯飲みを持って、お茶を飲んでいる鷲羽ちゃんである。ちょっと熱かったのか、一瞬顔をしかめて飲み込んでいた。

 「鷲羽ちゃん、中身はなんだったの?」

表情を変えず、瀬戸様は単刀直入に聞いた。鷲羽ちゃんは困ったような顔をして答えた。

 「私もびっくりしたよ。たぶん、人だと思う。しかも私ら、いや、私には・・・思い出深い人だよ。」

あれ、鷲羽ちゃんにしては歯切れが悪い。

 「と、言うわけで。時間もあることだし・・・。」

にぱっと、これ以上はない、という笑顔で僕を見る鷲羽ちゃん。パチンと指を鳴らした。

 「うふふふふ、いろいろデータ取りさせておくれ。」

鷲羽ちゃんの肩と頭に、モルモットご一行様いらっしゃ~いと、小さなのぼりが立っている。それを見て、いやな記憶がよみがえった。

 「かかれっ!精密スキャンモンスター(樹雷特化型)ぬるぬる君5号!!」

畳の目の間からじゅるりと沸き上がる、黒いスライム・・・。僕もそう同じ手は食わない!。

 「ていっっ!」

柾木家の玄関を思い描き、瞬間転移をかけた。ばちちっと全身に電気ショックを食らった。

 「いででっ・・・。」

いつもなら問題なくできるものが、何か電磁ネットのようなもので絡め取られて元の空間に、びよよ~んと引き戻された。そのまま、黒きスライムに飲み込まれる。

 「うわ~っはっはっは、甘いよ、銀河一の天才科学者の手から逃れようなどとは!!」

くっやはり鷲羽ちゃんからは逃げられないか。まあ、これはこれで、寸劇のネタになるよな、とか思いながら意識はブラックアウトした。ちら、と見えた水穂さんや阿知花さんがいってらっしゃ~い、と手を振っているのが少し悔しかった。

 

 「ここは、どこだね・・・。」

そう言う、ちょっと年上の人を思わせる声がする。自分の身体の周りは暖かい。例によって天地君ちのお風呂かな。

 「ここは、地球の柾木家のお風呂です。」

天地君の声がする。ああ、やっぱりお風呂だ。

 「ほれ、そろそろ目を覚まさんと、また鷲羽殿にオモチャにされるぞ。」

はい!完璧に目が覚めました!と周りを見回すと、銀ネコがこっちを向いて泳いでいて、僕は、巨大な柾木家の風呂の縁に身体を預けて腰掛けていた。ちっちゃなイツキが、ざばぁと可愛らしく浮上してくる。

 「おお、ちょっとカッコいいぞ、イツキ。」

 「えへへ。・・・謙吾さんや籐吾さんもそろそろ入ってくるって。」

 「柚樹さん、キズは?」

さっき、所々黒く焦げていたのだけれど。

 「だいぶ良くなったぞ。わしも、お主と同じように、あのスライムに飲み込まれて気がついたらここに浮かんでおったのだ。鷲羽殿がキズを治してくれたのだろう。」

からら、と引き戸を開けて、天地と裏から読めるのれんをくぐってイケメンふたりが風呂に入ってきた。いかん股間が反応する。

 「思わず身構えましたよ、一樹様が変なモンスターに飲み込まれて。・・・鷲羽様も人が悪い。」

 「何人も泣かされた人がいるって言ってましたね、そう言えば。」

そう言って、僕が身を預けている風呂の縁に、左右に分かれて座るふたり。ギリシャ彫刻が生きて歩いているようだった。なんにせよ、極楽極楽。

 「なに?鷲羽と言ったか?。今は・・・。」

ザバッと水音がして、なにやら慌てたような雰囲気の人の気配。

 「教授、興奮しないでください。まずは身体を温めてください。非常に長い間、コールドスリープしていたのですから。」

天地君が慌てて、声をかけていた。教授・・・?、コールドスリープ?湯煙の向こうに、ふたりの人影が見え、その湯煙がゆっくりと右へ流れていくと、短髪だけど、後ろ髪だけ長く伸ばした天地君の頭が見え、その横にちょっと年配に見える、禿頭の男性がいる。ボディスーツのような物を着用しているようだった。

 「天地君、いつも悪いねぇ・・・。その方は?」

あ、田本さん、じゃない、一樹さん、気がつきました?と言って、さ、教授、一緒にと言いながらこっちに移動してきた。教授と言われた人は、動くのに慣れていない様子が見られたが、なんとかこっちに湯を掻き分けてきてくれた。

 「鷲羽さん、とりあえずお風呂いっといで、柾木・一樹・樹雷殿と脱出ポッドの中身は低体温症の治療で、温かい湯の方が良いから、もう転送しといたよ、って言うんで今に至ります。ちなみに、この方は、GPの、あ、いや皇立アカデミーの首席教授である、夷隈教授だそうです。」

 「柾木・一樹・樹雷・・・、ひょっとして樹雷の皇族の方ですか?」

まだ、はっきりしない頭を振って、言葉を紡いでいる印象の教授だった。

 「ええ、まあ、その・・・。まだ皇族になって一年なんですけど。この地球で皇家の樹に選ばれてしまって・・・。」

とにかく、口で言うより、とイツキにここら辺の地図から、星図を出してもらって、太陽系の地球であること、便宜上樹雷の保養地扱いの初期文明の惑星であること、GPアカデミーの場所と、夷隈教授をどうやって助け出したかを説明した。

 「そうか、もうそんなに時間が経っていたのか・・・。」

僕らから少し視線を外して、上向いた様子で目を閉じる教授だった。

 「夷隈教授、とお呼びしてよろしいでしょうか?我々は、あの燦葉香草の種を収容してから正体不明の宇宙船に攻撃されました。目覚めたばかりの教授に、ご心労をおかけして申し訳ないのですが・・・。」

そこまで言うと、夷隈教授の表情がどんどん引き締まってきた。

 「・・・ヨルムンガンド、フェンリル・・・。いかん!」

そう言って、湯船から一気に立ち上がる教授だったが、バランスを崩して倒れそうになる。たまたま続いて入ってきた、平田兼光さんがなんとか支えた。

 「そうだ、鷲羽君、鷲羽君はいるか?」

血相を変えて、と言う表現そのものの慌てようだった。

 「落ち着いてください、夷隈教授、2万年あまり眠っていらっしゃったのですよ。」

平田兼光さんが、静かな口調で教授を諭している。まずは身体を温めないと、なかなか次の行動に移ることができない。

 「・・・わしは、・・・そう、もう、2万年も前になるのか。哲学師としてのライフワークとしてシードを行った文明の痕跡や遺跡を探すフィールドワークに出た。せいぜい1,2週間、長くても1ヶ月程度で帰ってくる予定だったのだが・・・。」

そこまで言って目を閉じ、様々なことを思い出しているようだった。僕は、天地君ちのお風呂の心地よさに身を預け、教授の言葉を待った。

 「わし専用の探査宇宙船で目星を付けていた星に降り、調査を続けていた。そこで、今までに無い遺跡を発見した。あきらかにシードを行った文明のものではなかった。」

そう言って、また目を閉じた。

 「教授、とりあえず、鷲羽さんや瀬戸様交えて、ゆっくりとお話を伺わなければなりません。ここは、樹雷の保養地扱いで、鷲羽さんのかなり強力なシールドもあり、内緒ですが皇家の船も何隻も停泊しています。まずは、身体を温めて、砂沙美ちゃんとノイケさんのご飯食べましょう。」

天地君が改めて、声をかけてくれた。やはりあの女性陣を束ねる力量は半端ではない。そうだ、次期樹雷皇なんてのもひょっとするとアリかもしれない。僕はあまりこういうのは向かないなぁと思う。

 「うむ、わしの乗っていた探査宇宙船もある程度武装していたのだが、赤子の手をひねるがごとく破壊されてしまった。フェンリルを持ち出し、部下とともに脱出ポッドに入るのが精一杯だった・・・。」

そこまで言うと黙り込んでしまった。確かに、あの正体不明の敵なら、通常航宙船に毛が生えた程度の武装なら、あっという間にやられてしまうだろう。あの攻撃は、柚樹さんにも大きな負担がかかったし、柚樹さんとリンクした僕も左手はまだひりひりする。

 それから、10分程度暖まってから風呂を出た。水穂さんたちが用意してくれた服を着て、脱衣所から出ると、瀬戸内特有の蒸し暑い風がわずかに吹いているが、それでも火照った身体には涼しい。すでに時間は午後6時を過ぎていた。密かな虫の声が聞こえてきている。皇家の船の内部も空調などは完璧に動作しているが、やはり水のにおいや木々のにおいが違う。ホッとするのだ。そう言えばさっき勝仁様が、正木の紳士会と淑女会の定例会がある、と言うようなことをおっしゃっていた。場所はどこだろう。そう思って天地君に声をかけた。

 「天地君、正木紳士会があるようなことを勝仁様がおっしゃっていたけど。」

ふりむいた天地君は、やっぱり一瞬高校生かと思うような笑顔である。

 「ええ、午後7時からですね。場所はうちの二階の座敷です。柾木・一樹・樹雷様も柾木家に養子縁組されたので、このたび入会になります。阿重霞さん、砂沙美ちゃん、水穂さんは、正木の村の集会所で淑女会に参加して、教授と、鷲羽ちゃん、瀬戸様と平田兼光さんたちは鷲羽ちゃんの研究室で、後のみんなは紳士会や淑女会が終わった後、いつものリビングで待っていてくれるようですね。」

 「謙吾と、籐吾は?」

 「僕らは、柾木家でないのでリビング組にお誘いいただいています。それとラノちゃんもいちおう今回はリビング組だそうです。」

ニッと白い歯を見せて笑う謙吾さんは柴犬みたいだし、籐吾さんは、一種日本刀のような美しさが際立っている。本当に僕には過ぎた部下たちだったりするよな、と思った。

 「まーた、そんな顔して・・・。しかも最近、天木辣按様モードがデフォルトになっちゃってるし・・・。ちなみに、そのカッコでコンビニや山田商店行くと・・・、大変ですよ。」

そう言われて気がつくと、謙吾や籐吾の頭を見ている。大柄な天木辣按様の姿のままだった。天木日亜も日本人の体型からすると大柄だけど、宇宙にいる間、なぜか辣按モードが定着してしまっていた。

 「どっちがいい?」

 「辣按様、迫力ありすぎっす・・・。日亜様が良いです。な、籐吾殿。」

女性ファッション誌の表紙を飾りそうな二人が、そう言って頬を赤らめている。それぢゃ、そっちに、と。からら、と柾木家の玄関を開けて、さあどうぞと天地君が引き戸を持ってくれる、ああ、どうもすんません、と頭を下げて玄関をくぐり、顔を上げたらびっくりした顔をする天地君だった。

 「田本さんだと言うことは頭がわかっていても、そう簡単に姿が変わると、誰だこの人?って思いました。いろいろ染まってますねぇ。」

 「そうなのよ・・・。天地君はまねしちゃだめよ。」

そう言いつつ、涼しげなワンピースに着替えた水穂さんが廊下で待っていた。阿知花さんも少し恥ずかしそうに、ゆったりとした白いシャツに明るいオレンジのパンツで水穂さんの後ろにいる。二人ともそれぞれシックなハンドバックを持っている。あ、そうか正木淑女会に行くのか。ラノちゃんは、とててて、と走ってきて手を握ってくる。

 「・・・おお、水穂さん、阿知花さん似合ってますよ。」

 「何よ、その間は。」

 「だって、二人とも樹雷の服しか最近見てないもん・・・。」

そう言いながらたまらなくなって、二人とも抱きしめた。

 「気をつけて行ってらっしゃい。」

 「もう、こんな時だけ・・・。」

水穂さんは、顔を背けて右手を頬の方に持って行き、阿知花さんは無言で、ぽろぽろと涙を流しながら静かに泣いている。

 「はいはい、なんとなく、すんげぇ悔しいんですが!第一夫人と第二夫人な事実は変わりませんからぁっ、さっさと正木淑女会に行ってきてください。僕らが、責任を持って繋ぎ止めておきます!!。」

ちょっとムッとした口調の謙吾さんの声が後ろから聞こえる。すでにラノちゃんは謙吾さんの手を握っている。やっぱりラノちゃんの、お兄ちゃん認定は謙吾さんなんだ・・・。一拍おいて、ふたりともグッと手で僕の胸を押して、簡単に身繕いして玄関へ歩いて行く。

 「でもさ、繋ぎ止めておきますって、そんな・・・。」

それを聞くと、ふたりのイケメンの目つきが、もの凄く悪くなる。正直怖い。特に、籐吾さんの怜悧な顔が歪んだように見える

 「柾木家の玄関でいろいろ言っても、どこで言っても同じでしょうけど。ほんの数時間前にこの世から出ようとしたのは誰ですか?」

籐吾さんの言葉に、す~っと、柾木家の室内温度が数度下がったようだった。当然よっ、と言わんばかりの奥様ふたり・・・。

 「ホントに、瀬戸様と同じ気持ちですよ。僕らも。さあさ、皆さんおそろいのようですよ、正木紳士会に行った行った!」

謙吾さんが、引きつった笑顔で柾木家二階を指差している。

 「うう、ごめんなさい。」

 「・・・こんな時だけ可愛いんだから・・・。今夜は離しません。」

ふいっと視線を外して、耳を赤くしてそう言う籐吾さんだった。ちょうど、砂沙美ちゃんが水穂さんの手を引いて玄関から出て行こうとしていた。

 「なんか、いろいろあったようですが・・・。正木紳士会に行きましょう。」

天地君の顔もなぜか厳しい顔だったりする。うぐぐ、非常に、たかが二階へ行くだけなのに足が重く感じる。そうは言っても、数万光年を旅するわけでも無く、階段上がって、右手のふすまを開けると、宴会の用意は出来ていて、何人かすでに座っている。あれ、そのうちの1人2人は知った顔だった。50代~60代に見える人が2名、あと髪の長い、ちょっと内気っぽく見える人が1名いる。

 「時間は早いがみんなそろっておるから、始めるかの。」

まずはここにお座りください、と天地君に言われたところに正座する。ちょうど宴会の場所と対面するようになる。

 

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