とりあえず、本編の第4期は終わっちゃったし。
でも、聖機師との整合性をとるだけで話が終わるのだろうか・・・。
「フェンリルとヨルムンガンド・・・。記憶がすでに定かではありませんが、地球時間で30億年ほど昔、初めてアストラルの力を汲み出し恒星間を飛び、その結果、自前のアストラルを消耗し共に滅びようとしていた、フェンリルとヨルムンガンド・・・。この存在を不憫に思ったわたしは、フェンリルとヨルムンガンドを対にし、エネルギーのくみ出す先を熱的死を迎えつつある宇宙、・・・この宇宙の隣とも言うべき異次元宇宙に変えました。そうやって創ったのが皇家の樹の種なのです・・・。その数は確か5つ。」
津名魅様はそう言うと一度顔をお伏せになった。
「いままでに、樹雷にやってきた人間に渡した種は5つ。今の樹雷人の始祖たる初代樹雷皇の他に、種を渡したことがあります。そのうちの一つが神武・・・。そのお話はともかく、今ここにあるフェンリル、そしてヨルムンガンドのコアにもよく似たキューブがあるはずです。姉様や妹の思考錯誤と同様のわたしの思考錯誤の一つでした。」
皇家の樹の秘密・・・。こんなところでエライ物事を知ってしまった。それにしても、これからどうすれば良いのか。
「しかし、津名魅様、それならばどうすれば良いのでしょう。柚樹のリフレクター光應翼とわたしの力をリンクしても弾き返すのが精一杯だった攻撃です。しかも、現在の我々が知る物理法則から少し離れた存在のようです。」
謙吾さんや籐吾さんが頷いていた。正体不明の敵故、主に政治的な意味で思い切った攻撃も出来なかった部分もあるが。
「すでに、自前の生命体のアストラルは使い切っているはずです。そのためフェンリルを食して取り込み、自らの力としたい、それだけの思いで追いすがってきているのです。すでに妄執と言っても良いでしょう・・・。この宇宙のインフレーションが始まったばかりの頃の生命体です。ここにいらっしゃる皆様とは全く違うアストラル構造をとっています。」
目を伏せ悲しげな声の津名魅様だった。
「それでは津名魅様、例えばなんですが、このフェンリル殿をヨルムンガンドに差し出してしまうと何が起こるのでしょう?」
事なかれ主義と言わないで欲しい。何か行動を起こし収束させるにはコストが発生する。しかも、収束までには多大な時間が必要になる場合もあるし、星間問題化しちゃうとそりゃもう大変なことになる恐れもある。口は開かないが、瀬戸様や天木蘭さん、平田兼光さんはかすかに頷いていた。さすがに皇族一年生でもそれぐらいは理解できる。
「衰えたとは言え、アストラルに影響があるこの二つの存在です。ヨルムンガンドに取り込まれたフェンリルのエネルギーは、ヨルムンガンドに吸収され結果的に暴走状態になり、融合爆発を起こします。その影響は、この三次元宇宙にあまねく広がった生命のアストラルに逆流し、瞬時に肉体ごと焼き尽くすことでしょう。・・・今の火星のようになりたくは無いでしょう?」
昔は、それほど生命体が発生しておりませんでしたから・・・。だそうである。ちなみに火星があのような状態になったのは20億年いや30億年くらい前?らしい。そういや、地球でもそのくらいに大量絶滅があったとか無かったとか・・・。
「わかったよ。とりあえず、重縮退ミサイルで外殻を削ろうかね。その後、魎皇鬼でグングニールで突入して取ってきてもらおう。魎呼いいね?」
へ~い、とか気の抜けた返事をする魎呼さんである。魎皇鬼ちゃんは目をキラキラさせているし。
「ヨルムンガンドの外殻・・・。シールドは魎皇鬼を浸食し、出られなくなります。」
フェンリルがそう言葉を発した。少し考えた鷲羽ちゃんが、ヨルムンガンドのデータをくれるかい?と言うと、フェンリルは鷲羽ちゃんのような大きなディスプレイを照射し、そこに莫大な数の数字や文字列の羅列を並べていった。鷲羽ちゃんが目前の端末をたたき、パンッと手をたたくと、ディスプレイから文字列や数字が離れ、舞い、鷲羽ちゃんの端末に吸い込まれていった。
「・・・う~ん、こりゃ困ったねぇ。魎皇鬼の擬三次元クリスタル・コア構造体を浸食、融合してしまうのかい・・・。それに、う~~ん。」
夷隈先生、この数値ですが・・・。と、なにやら数字を夷隈教授に見せて考え込んでる鷲羽ちゃんだった。
「ふむ、どう見ても、三次元空間に安定して存在していないというか、揺らぎながら存在しているような数値だな。魎皇鬼の外殻と、・・・なるほど3次元揺らぎ分が同調してしまうのか・・・。こりゃやっかいだな。」
腕組みして考え込んでいる2人だった。
「あのぉ。天樹の加工物なら問題ないのでは?つまり、皇家の船なら・・・。」
最初から、それで行けば良いじゃん、じれったいな。と思いながら発言した。お嫁さん2人とイケメン2人は、微妙な表情である。
「魎皇鬼のグングニールみたいなマネができるのかい?」
そう言われて、ちょっと考える。
「イツキ、光應翼を収束させて円錐状に展開できるかい?」
あんまりやってないけど、できるよ。と即答が来る。もともとイツキは、次元跳躍用に突入しやすいような紡錘形を基本形にして設計されている。
「鷲羽ちゃん、梅皇だと少し大きすぎるけど、イツキの前方に光應翼を収束させて円錐状に展開、場合によってはドリル状にして突入、あと、柚樹さんと僕の光應翼でカバーするのは?」
ん?といぶかしげな顔をしている人が数名。この際、とりあえず無視しておく。
「瀬戸殿はどう思う?」
鷲羽ちゃんが瀬戸様の方を見て一言問うた。瀬戸様の手が蛇のように僕の手に絡みついた。すべすべもちもちしている手は、さすがに皇族の手だと思う。それ以上にドキドキする。
指を絡めてぎゅっと握ってくる。その気配を察したか、反対側の水穂さんも手をそっと僕の拳に乗せてくる。爪を立てん勢いで強く握る。ううう、おっさんにそんなに意思表示されても困るんだけど。
「鷲羽殿・・・。」
表情は出さない。でも冷静な声だった。
「鷲羽殿の、防衛線で戦闘力を削り、そのあとで突入ならば・・・。航空隊も支援で、皇家の船イツキ突入口から進入させましょう。もちろん水鏡も梅皇もバックアップで近くでいるわ。」
平田兼光さんの、第七聖衛部隊を連れてこなかったのが悔やまれますなぁと言うつぶやきが聞こえてきた。太陽系制圧に行くんじゃないですから・・・と、天木蘭さんがフォローしている。・・・と、なれば。
「わかりました。我々は敵宇宙船の無力化後、イツキで突入します。籐吾、航空隊を指揮し、内部に空間等がありヨルムンガントの捜索が可能であれば、その空いた穴を通って我々を追って突入、その後内部を捜索開始してくれ。そうだ、こちらも光應翼ほどのシールド効果が必要なさそうなら鷲羽ちゃん特製探索艇をつかおう。」
小回りが効く方が使いやすいかも。
「安全確保ができたのを確認してから探索艇を出しなよ。あれ、あんまり強力な武装もシールドもないからね。」
鷲羽ちゃんが、そう言うそばから、すでに大スクリーンでは自動操縦で攻撃が始まっていた。かわいい映像だが、鷲羽ちゃん攻撃部隊は・・・、なんと苦戦している。
「亜鏡面シールド、なんと、突破ぁ・・・?」
その声と同時に、ぱりんっと割れて飛び散るシールドが映像化されている。
「どうでもいいことなんですけど、なんで、その凄そうな技術使った、亜鏡面シールドがガラスが割れるように割れて飛び散るんですか?」
「え、それってお約束じゃないの?ほら、何年か前にここの国営放送でやってたよ。1億ボルトの電磁バリアーに勝てるのは、バリアーだけだ!とか言ってたし。」
あああ、ありましたねぇ・・・。バリアー張って突入してオーバーブーストかけて相手のバリア割るやつ・・・。丈夫なっバリアーだなぁっっ!とか言いながらぱりんって割るアニメ。
「いや、あのぉ、あれはアニメーションで、あくまでも娯楽用の番組でして。」
「なんだ、そうなのかい。初期文明の星のはずなのに、技術的な説明もしっかりしているからノンフィクションのドラマ化したやつかと思ったよ。」
ジャパニメーションの勝利!というやつですか。難しそうな言葉を羅列しているようにも見えたけど、そうですか、銀河一の天才科学者様にはあれで通じるんですか・・・。
「それなら、アクティブ・ホーミング重縮退ミサイル乱れ打ち!」
ミサイル発射艇(とひらがなで書かれている。何故か。)からなんだか凄そうなミサイルが撃ち出されていく。敵宇宙船、ヨルムンガンドは、軌道を無視してまっすぐ地球に向かっている。そこへ、重縮退ミサイルが着弾する。黒い球状の縮退力場が形成され、本来であれば宇宙船外装ごとえぐるように爆発する。僕らが装備している物よりも半径が大きく一発で半径10km程度縮退崩壊させるようだ。ぽこぽこぽんっと黒いシャボン玉みたいなのができて消える。しかし、ヨルムンガンドはほぼ健在である。
「この3次元と別次元間をふらふらするような外装が曲者だねぇ。実在と虚数空間を不定期に行き来している。通常兵器では無理か・・・。」
「そうだ、鷲羽ちゃん、柚樹のリフレクター光應翼で敵攻撃はかろうじて反射、それでなら破壊できました。その辺使えませんかね?」
柚樹さんも怪我を負い、僕もとっさのリンクで腕が焦げかけるほどエネルギー・キックバックを受けた。それでも、光應翼で弾くことはできている。そのエネルギー弾を食らえば敵も大破した事実がある。
「そうさねぇ・・・。瀬戸殿、その辺どうだい?」
おお、そうか皇家の樹に直接データリンクをお願いするのだ、瀬戸様の考えも必要だろう。
「この際、背に腹は代えられないわ。あとは、一樹殿の樹だし・・・。」
わかりました、と柚樹にデータリンクをお願いした。あたりまえだが、何かの物理デバイスをやりとりするようなことはしない。銀猫の柚樹から、瞬時にデータリンクは終わり、銀河一の天才科学者に新たな知識が付加された。
「よし、この定数の揺らぎ成分の項を付加して、新魎皇鬼型徹甲弾を作成っと。長距離ホーミング・レーザーへも反映させるよ。」
新魎皇鬼型徹甲弾を水雷艇が近くまで運び、発射している。今度は、外装に突き刺さりその場で爆発したり、ある程度突き抜けて爆発したりしている。それでも外装部分が剥がれた程度である。全体としての大きさも少し小さくなった程度だろう。しかも、徹甲弾を射出した水雷艇や、射出前の水雷艇もヨルムンガンドからのビーム兵器で一網打尽に破壊されていた。その次の瞬間、向かっていた重縮退ミサイルもヨルムンガンドはビームを撃ったまま、ビーム射出口をぐるっと自分の周りを一周させて、迫り来るミサイルをことごとく着弾前に破壊してしまった。次いで、ビームを間欠発射して、重縮退ミサイル発射艇のほとんどを破壊してしまった。
「くっっ、なんて奴だい。ならば!」
次の手は、海王星、天王星からの遠距離射撃である。螺旋状に射出された高エネルギーの粒子ビームが、ヨルムンガンドの外装を削っていく。鷲羽ちゃんの粒子ビームが面白いのは、向こうの外装に接したと思ったら、液体状に一度広がって、その後もう一度収束し外装を貫いていっている。さすがにチョココロネのようだった船体も先頭の部分、チョココロネなら最後に食べる部分(人によるけど)を残して吹き飛んでいた。そこまでの猛攻でようやく中心部分にわずかに光が煌めいているのが見えてきた。
「あっっっ!」
映像を見ていたみんなが息をのんだ。小さな煌めく光が、巨大な残骸を離れて加速しながら地球に向かう軌道に乗った。
「鷲羽ちゃん、地球までの到達時間は?それと落下場所は?」
「どんなエネルギー量だい、亜光速だよ!!。到達予想時間はあと5分以下、いや3分だね。落下場所は、ここ。」
鷲羽ちゃんの左手が、矢印のようにフェンリルを指差している。
「亜光速の速度を持ったまま、ここに着弾したら・・・?」
背筋に寒気が巨大ムカデのごとく走っていく。
「地球は持たないね。地殻の3分の1と核の4分の1が持ってかれるよ。」
「イツキ、柚樹、来い!みんなも!」
二本の皇家の樹を伴い、自らを光應翼に包み、柾木家上空10kmに空間転移した。イツキを通常サイズに大きくして乗り込む。すぐに、2人のイケメン監視人&恋人とお嫁さん2人が転送されてきた。イツキのブリッジを起動し、敵ヨルムンガンドの位置と速度を確認する。
「思いついたらすぐ、の人なんだから・・・。あと1分40秒ほどで僕の目の前だよ。」
「普通の光應翼で良いのじゃな。少し展開する距離を開けようかの?」
イツキがしょうがないなぁとばかりに状況報告してくれて、柚樹さんがトラに姿を変えてスタンバイしている。瞬時に、僕とイツキのリンクがブリッジモードになる。イツキが見ている物がそのまま僕も見えるのだ。赤く小さな光点がみるみる近づいてきている。
「梅皇も合流してくれ。多重光應翼で行く手を阻み、イツキおよび梅皇の慣性制御および重力場制御で減速しつつ、ヨルムンガンドを確保、柾木家に送り届ける。その際、決して地球に影響があってはならない。」
「了解!」
イケメンふたりと、お嫁さん2人が答えてくれる。果たして亜光速まで加速している10cm角程度の物体を緩やかに減速しながら確保できるか自信は無い。しかし、皇家の樹のエネルギー量もすさまじい。すぐに梅皇も月の裏側から現れ合流した。イツキも梅皇と合体する。まずはイツキの光應翼、柚樹、梅皇と距離を置いて光應翼を展開した。
「準備完了。慣性制御および重力場制御最大へ。」
イツキコントロールで、梅皇を操作する籐吾さんだった。ユーザーインターフェイスの半透明キーボードやら、兼用ディスプレイやらがひらひらとオープンし、大型パイプオルガンを操作するかのようだった。謙吾さんが、補機やら皇家の樹のエネルギーバランスを取っている。ただただ最大出力というわけにもいくまい。
「第一層目の光應翼へヨルムンガンド接触。」
イツキのスクリーンにその様子が映っている。ドンというショックもあるが、さすが梅皇持ちこたえている。まったくのゼロ距離で速度を相殺してしまうわけにも行かず(ヨルムンガンドが粉砕されてしまう)、接触からこちらの慣性制御や重力場制御をじんわりかけて地球大気圏上層までに亜光速を相殺するプランである。あまり強力な重力場フィールドが地球の重力圏に干渉するのもなるべく避けたい。しかし便利だな慣性制御って、とか思ってしまう。ヨルムンガンドもほぼ瞬時に亜光速まで加速してしまうのも凄いけど。
視点を変えた映像が来た。別ディスプレイに映し出される。光應翼の一層目、二層目、三層目と、花びらが中心に押し込まれるように速度を落とし、ヨルムンガンドを受け止めていた。まるで大輪の花が咲くかのように。光應翼そのものが微妙に色が違うため、遠目には巨大な花に見えるだろう。ちょうど梅皇の左側に、2人の女神を背にした巨大な津名魅様が現れた。左手に青白い光る物を持ち、右手でヨルムンガンドをつまみ、右手の平に乗せた。赤く光っている。
「フェンリルとヨルムンガンド、あなた方は、今のこの宇宙には影響が大きすぎます・・・。しかし、星の海を旅する力を奪い去るには惜しい・・・。いまより我の力を与えますから、自ら生きる糧と、その力の根源は、三次元宇宙の生命の根幹、アストラルの海から汲み出すのをやめ、熱的死を迎えている隣の宇宙から力を汲み出し、人と共に生きる樹とおなりなさい・・・。そうすれば、かけがえのない友に出会え、再び限りない宇宙を飛ぶことも出来るでしょう。」
津名魅様はそう言うと、左右の手のひらをそっと合わせた。青白く見える光点と赤い光点がくるりくるりと、共にお互いの周りを回り始める。
「今度は、仲間になる樹がまわりにたくさんいるわね。少しずつみんなの力を分けてもらいましょうね。」
光應翼を生み出せる樹が、梅皇他何本かこの星域に確かにある。津名魅様は胸の前にフェンリルとヨルムンガンドの光点を置き、右手でスッと花を手折るような動作をした。光應翼のその花びらの一つが、するりと光應翼から離れ、津名魅様の手元に行く、同じように何度かその動作をすると、津名魅様の右手に微妙に色の違う光應翼が数枚集まり、その光の花びらで二つの光点を包み、抱きしめた。
「一樹様、・・・凄まじいエネルギーが一点に集中した後、ロストしました。われわれのセンサー類では感知できません。再び、膨大なエネルギーを時空振と共に感知。これは・・・、皇家の樹・・・。」
「それでは、一樹殿に預けます。樹雷で育ててあげてくださいね。」
今度は梅皇のブリッジにちっちゃな可愛らしい津名魅様が現れ、僕の手に大きめの植物の種を握らせてくれた。
「・・・あのぉ、瀬戸様の方が適任では?」
手のひらの上の種と、津名魅様を交互に見る。周りのみんなは、やれやれと言わんばかりの顔だった。
「どうせ2つ、第2世代の樹の種を樹雷に持って帰るのでしょう?第1世代の樹の種が1つ増えたって、どうと言うことはありませんよ。」
うむ、あの関わってはいけない笑顔バリバリの津名魅様である。って、第1世代??
「そう、今、わたしが創ったんですから。」
にっこりと笑顔の津名魅様だった。それでは、と深々とした丁寧なお辞儀をしてスーッと消えた。
「第2世代の樹の種2つと、第1世代の樹の種をお持ち帰りですか。そりゃ大変だー。」
謙吾さんが、棒読み口調でつぶやいている。
「なんだか、いままでの樹雷の歴史を吹き飛ばす勢いよね。」
水穂さんが、阿知花さんとうなずき合っていた。
「どんな式典になるのでしょう?もちろん、1人で出てくださいねー」
籐吾さんまで棒読み口調だった。
「とりあえず、柾木家に帰還する。梅皇は月の裏側で待機。イツキ、分離後、不可視フィールド張って降下してくれ。」
本当にやっかい事引き込む人だね~。そうじゃのぉ。のんきな2人の樹の会話がイラッとする。