天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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樹雷の戦艦とか、そう言う描写はあるけれど・・・。

さて、奇しくも樹雷側の物語になってしまいそうな今日この頃・・・。


樹雷から銀河へ3

「一樹様、今のところ、通常の通商産業ルートでは何も起こっていないようです。貿易商や、情報屋が何かつかんだ形跡はありません。」

黙っていたラノちゃんが口を開く、この子はシード文明の船のメインコンピューターだった子だ。鷲羽ちゃんから譲り受けているツールも多く、やる気なら天の川銀河の情報を一手に掴むことも出来るかも知れない。・・・さて、何があるのか楽しみだなって・・・。そう言う思考をしてしまう自分が怖い。

 「知っているかも知れないけど、鷲羽ちゃんにもそのうち教えを請うた方が良いかもしれませんね。さて、明日のために、食べて飲みましょう。」

樹雷から遠い辺境の地で、なにやら樹雷の根幹を揺るがしそうなことが起こっているようだ。第4世代の樹の暴走後の枯死、第5世代に至っては、その兆候すら見せず枯死に至っている。そう思いながら、一口二口と飲んで食べている。ちなみに、僕の飲んでいる酒の銘は、「皇火」名の通り、アルコール度数83%。でものど越しは安っぽく焼けるような、と言う味わいではない。

なんとなく、謙吾さんが欲しそうなので、飲む?と言ってほんの少しだけ注ぐ。

 「ぐ・・・・・・。兼光様も撃沈したって聞いてましたけど・・・。」

同じように欲しそうにしていたので、籐吾さんにも注いでみる。見る間に顔が赤くなる。

 「これ・・・、ぐえ、だめだこりゃ。」

珍しく、白旗モードな籐吾さんだ。すぐに手近の水を口に含んでいる。ちょっと面白い。2人とも、茉莉さんとあやめさんに、バカね、と言う目で見られている。僕はそれを木のコップに、とくとくっと手酌で注いで、普通にごくごくと・・・。うまい・・・。料理も少しだけど美味しい。瀬戸様や内海様に教えてもらって、樹雷特産の美味くて強い酒をこの樹の間に特別に置いてもらっているのだ。神寿の酒は、それこそ天上の味わいだけれど、僕には水と同じである。ある意味もったいない。隣の水穂さんを見ると、少し考え込んでしまっているようだ。心ここにあらずと言った感じ。

 「・・・どうしました?」

そう言って、太ももをさわさわ。妻様なので、セクハラではないだろう。今の時間なら、いろいろなグレードで開いているピンクなお店もあるし、この近くはそう言う街であるが、結構大騒ぎになるのがオチなので、平田兼光様あたりからは誘われてもいるが、行ってはいない。

 「んもお。・・・樹雷皇阿主沙様や、内海様、瀬戸様直々ですよ。あなたは怖くないのですか?」

小声で、そのサワサワした左手をぎゅっと握ってちょっと怒りっぽく返してきた。

 「染まっちゃったんでしょうね、僕は、という田本一樹は、怖い方が強いのですが、天木日亜の記憶や天木辣按様の記憶は、さっきから大はしゃぎですよ。梅皇さんもテンション高めです。」

基本、平和主義ではあるのだが、天の川銀河屈指の軍事国家である樹雷の人々は、特に男性は荒事好きである。何も知らずに、この街をぼ~っと出歩くと、あっちこっちでケンカが始まっていたり、ケンカに巻き込まれたりする。だが、国民皆闘士なこの星、酔ってはいても死んじゃったりすることは全く無い。各々の力を完璧にわきまえている。そうでなかったら、この街が壊滅してしまう。地球なら、そう東京なら樹雷闘士5人も居れば、いや3人でも多いか・・・、壊滅制圧まで半日くらいだろう。梅皇さんは、さっきから気分が良いのか、鼻歌?のような歌う声がしている。さすが、前樹雷皇の樹、肝の据わり方が違う。

 これ美味しいですね、なんのお造りでしょう?とか、出汁はなんで取っているんだろう?とかの会話が楽しい。

 「林檎様、お忙しいところ申し訳なかったですね。」

そう言いながら、お酒を注ぐ。あら、まあ、と言いながら受けてくれる。確か西南君のお嫁さんの何人目かだと聞いたことがある。西南君のド悪運を多少でも中和して支えている、女性陣の1人だと聞いた。

 「・・・水穂様や阿知花様が羨ましい・・・。」

ぽろり、と言葉がこぼれたそんな感じ。思わず、手を出して、その言葉を拾いに行きそうになった。

 「この人、甲斐性はともかく、節操は無いんですよ、林檎様気をつけてくださいねっ。」

水穂さんが、少し無理矢理な笑顔でそう言った。え~、そうかなぁとか言いながら、頭を掻いてみる。

 「ほほほ、そうね・・・。」

西南君は、簾座連合に行っていると言うし、寂しいのだろうなぁ。今日は、ちょっと、林檎様にかわいそうなコトしちゃったかな・・・。ごめんなさい、のつもりでお酒を注いだ。林檎様は、すすす~~っと飲み干してしまう。

 「林檎様、何か注文しましょうか。お好きな物言ってくださいな。」

僕がそう言うと、顔がかなり赤い謙吾さんが、さっとメニューを取り上げてしまって、すぐに2、3品注文した。

 「まあ、謙吾ったら、覚えてくれてたんだ・・・。」

ちょっとまぶしそうに、弟を見る姉。数分して届いた料理は、やはり林檎様の好物だったらしい。さっきよりは箸が進んでいた。少し変わった野菜?菜っ葉?のおひたしと見たことがない尾頭付きの魚のお造り。そして、地球で見るチーズグラタンのようなもの、だった。美味しそうに頬張る林檎様が春先のタンポポのように可愛らしい。西南君、こんなかわいらしい人をほっとくと、僕食べちゃうぞ、的な目で林檎様を眺めていた。

 「一樹様、そんなに見つめられては困ります・・・。」

まるで絵に描いたような反応だった。ポッと頬に紅さす林檎様。

 「・・・いえね、西南君も罪作りな人だなぁ、と。」

 「・・・西南様はそんな方じゃありません。木訥で真面目で、自らの生きてきた苦しみを優しさに変えて伝えてくださるのです・・・。」

即答かい。

 「ごめんなさい。あまりに可愛らしいので、このまま林檎様を包んで持って帰ろうかと思いました。」

そこら中で、業火の火柱が上がった。

 「一樹様、経理の鬼姫は、瀬戸様よりも怖いですよ・・・。」

謙吾さんがぼそっとそう言った。そして、目の前のコップをクイッとあける。あ、それ、さっき注いだ僕の酒・・・。謙吾さんの顔が七色LEDのごとく変わって、慌てて水を探している。

 「謙吾ったら・・・。包まれるのは、まあ、慣れてますし。」

ぷっ、と水穂さんが吹き出している。何かあったのだろうか?ううう、謎だ、宇宙の謎だ・・・。

 「僕の胸で良ければいつでも貸しますよ!」

天木辣按様の格好で、そう言ってみる。林檎様と、籐吾さんと茉莉さんが、こっちを見て酒を喉に詰まらせていた。げほげほ、こほんこほんと咳き込んでいる。

 「ほんっと~に、節操のない旦那さまだこと。」

微妙に、旦那さま、のところを強調する水穂さんだった。なんかちょっと嬉しい。

 「色目、とかじゃ無いのが、また始末が悪いんですのよ。ねえ、籐吾様。」

阿知花さんが、ちょっと意地悪な口調で籐吾さんに振る。

 「そうですよね~。私は・・・、日亜様に光をもらいました・・・。」

うわ、籐吾さん目が逝っている。すでに泥酔モード?それを聞いて、謙吾さんの業火が3倍くらいになる。目なんか光ってるし。ラノちゃんが、なぜか立ち上がって、謙吾さんの膝にすとんと座る。嫉妬?それとも煩悩?の炎は即座に収まった。

 「謙吾お兄ちゃん。」

謙吾さんの顔を見て、にっこり笑って言う。この子、どこで覚えたんだろ、そんな必殺技。さらりとしたストレートな黒髪が揺れるラノちゃんだった。謙吾さんは、また顔色が七色LEDしていた。

 「・・・僕は、お兄ちゃんぢゃないのね~。」

気色悪いですわって、水穂さんに左手をつねられた。右側は、阿知花さんの手刀が脇腹に刺さる。痛いって・・・。ほほほ、と綿帽子が転がるような林檎様の声が聞こえてきた。

 そうやって、なんだかよく分からない、樹の間での一時は過ぎ去って、お開きの時間になった。明日の朝もそこそこ早い。謙吾さんは、林檎様を送って、今日は自宅で眠るようである。それはそれで、嬉しいような、なんとなく残念そうな、複雑な表情で立木家へ2人連れだって帰っていった。樹の間のお勘定を済ませて、樹雷の街をみんなでしばらく歩く。

 「繁華街の夜だというのに、清浄な空気は、やっぱり樹雷なんだなぁ。」

 「一樹様、地球が恋しいのですか?」

阿知花さんが、声をかけてくれた。

 「いえ、それなりに、恋しいと言えばそうですが、どちらかというと、何も出来なかった過去に無理矢理連れ戻されるような、そんな気持ちなのです。」

しばらく歩くと、汎用転送ポッドに着いた。樹雷の皇家専用宇宙港に転送されて、梅皇に戻った。お酒のせいで息が早い水穂さんと、一戦交えて、今日は阿知花さんところに行って、籐吾さんところも寄ると待っていてくれて、また水穂さんのところに戻ってぬくもりに潜り込んだ。すでに籐吾さんと風呂は済ませてある。英雄色を好むと言うらしいが、英雄かどうかはともかく、我ながら人ではないなと、そう思ううちに意識は遠のいた。

 そして、僕が準備を整えて、梅皇のブリッジに立ったのが、出発30分前。すでにみんなブリッジの席に着いていた。おはようございます。と若々しい声に身が引き締まる。

 梅皇のコアユニットの前にイツキは本来の大きさでセッティングされていた。梅皇は皇家の船の第一世代艦で、公的にはイツキは皇家の船第二世代艦に分類される。しかし、僕のイツキは第1世代の梅皇に迫る力があるらしい。この合体状態で、梅皇は全力で機動できる。梅皇は、全体的には巨大な頂角の鋭い二等辺三角形をしている。前部は、イツキのようにとがった鼻先が後ろへ反り返り、それが中央部の楕円の円環につながるデザインで、左右の翼状になっているものにはそれよりも巨大な円環の孤の一部がある。これが大きくつながって円環になると、超長距離リープ用縮退リング形成システムになる。いまのところ、アルゼルから技術供与された、シード文明の銀河間を渡ることが出来るメインリアクターは起動していない。いつでも起動は可能だが、なかなか銀河間探査の許可も下りていないし、そのような暇も無かったのだ。

 「梅皇、イツキ、コアブロック起動。出航準備を頼む。」

了解、と二本の樹から答えが返ってくる。コアブロック=ブリッジ内は各種兵装類、機関各種、操舵系、索敵レーダー系と順に光が甦っていく。

 「梅皇、イツキからのエネルギー供給レベル増大。第1補機から第6補機まで起動、臨界まであと10秒。・・・3.2.1・・・。補機6連縮退炉、第1から第6まで臨界突破。通常使用領域になりました。冷却システム正常。」

謙吾さんからの報告である。イツキの補機縮退炉は、梅皇は6機搭載している。これだけで、得られるエネルギーレベルは第2世代皇家の樹に迫るらしい。鷲羽ちゃんと謙吾さんの共作らしい。目が逝ってしまった2人は、さすがに僕でも横で見てて怖かったのを覚えている。

 「重力場バランサー、空間バイアス昇降舵正常。慣性制御システム正常。」

籐吾さんから、今度は操舵系の報告である。この人、阿羅々樹に専用の単座戦闘機を持っている。僕や謙吾さんにオモチャにされる代わりに、この戦闘機、もの凄い状態になっている。それに、たまに、樹雷星の宇宙軍の戦闘機隊に混ざって訓練しているらしい。

 「各種レーダー、亜空間ソナー、シールドオールグリーン。今回の新装備、対アストラルアタック用シールドも・・・正常のようです。」

茉莉さんからの報告である。亜空間探査系の装備も、1年前よりも増えていた。僕が見ている世界は模式図だがディスプレイ上に展開している。イツキが見ている情報も、以前と同じように僕の脳内に展開している。美しい星の大海である。命があふれかえっているこの世界だった。新装備は、さっき調達してきた物。また、変な皇族の僕の発案で具体化した機器である。もともと、似たようなシステムはあったのだが、それを少し同調周波数を変えた、そういうモノだったりする。

 「火器管制系異常なし。縮退ミサイルおよび、超空間スライス・ミサイル準備できています。」

あやめさんは火器管制系担当。射撃の腕はかなりのもの、らしい。加えて、水穂さんと阿知花さんで通信関連と総合情報処理を担当してもらっている。なかなかにこの2人のやりとりも面白い。柔の阿知花さんに、シャープな水穂さんだった。

 「樹雷および、銀河連盟からの航行許可受信、同時に樹雷皇家専用宇宙港からの出港許可でました。」

 「梅皇、第1275開拓星系に向け、発進してください。」

そう、今回「視察」に行くのは、この新規開拓星系である。

 「梅皇発進。内惑星速度から、惑星間航行速度へ。」

籐吾さんの操作で、するりと樹雷皇家専用宇宙港を離れ、静かに増速しながら、樹雷本星がサブディスプレイの中で小さくなっていく。コアブリッジ内で聞こえてくるのは、補機関の静かなうなり音だけ。あとは、レーダー系の電子音や端末を叩く音、位だろうか・・・。

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