と言い訳しながら投稿します(^^;;;。
皆さん、お身体はお大事に~~~。
そう思ったら、どこかから呵々大笑と言わんばかりの、あの第1世代の古樹の声が聞こえてきた。それにつられて他の樹も、世代が下の樹もみんな気持ちよく笑っている。その波動は、声は聞こえずとも、樹雷の民には伝播するのだろう。宴会の場にいるVIPの皆様も笑顔になっていた。肺を浄化するような気持ちの良い微風が巨大な宴会場を流れていく。不思議な甁子は、何度お酒を入れても天上の美味なる味に変えてくれた。なんだかマジックアイテムみたいだな、とか思ってしまう。
大宴会も何とか終盤に近づき、樹雷皇阿主沙様の一時閉会宣言により(なんとこれが1週間続く予定だそうだ)、三々五々、樹雷のVIPの皆様は会場から退出していった。まだ夜は早い。たぶん夜の街に繰り出す人はたくさんいるのだろう。僕はまた外向き用の笑顔を顔に貼り付けて、VIPの皆さんが少なくなった頃を見計らい、阿主沙様夫妻、内海様夫妻にお礼を言ってなんとか梅皇に戻ってきた。身体は疲れていないけれど、気疲れは思いっきりした。とにかく暖かい湯にでもつかってホッとしたい・・・。
「そう言えば・・・。水穂さん、イツキの中の住まいとかっていろいろ選んでくれたんですよね。お風呂って・・・。」
「・・・そうですわね。まだ入ってなかったのよね。」
人差し指をあごに当てて、記憶を思い起こしている水穂さんだった。
「じゃあ、今日はみんなでイツキに行こうか。」
わいわいと、転送ゲートをくぐってイツキのお風呂に来た。なんと、様々なお風呂が集合している健康ランドの巨大バージョンだった。露天風呂あり、怪しく緑色の薬湯あり、半屋内の白湯に、塩分の多い炭酸泉だのよりどりみどりだった。
「あなた、怪我も多いですし・・・。」
真っ赤な顔して、小声で言う水穂さんだった。いつの間にこんなに・・・。
「まさに内助の功ですな、司令官殿」
竜木籐吾さんがそう言った。
「わたしも、循環システムと薬湯のセッティングなどは協力させてもらいましたのよ。」
阿知花さんが、指をつんつんしながらそう言う。可愛らしいことこの上ない。
「とにかくありがとう。」
目頭が熱くなる。嬉しいのだ。単純に。とりあえず、混浴でも良いのだが、いろいろなお風呂があるので、男女で別れて入った。ラノちゃんは水穂さんが連れている。なぜか、僕は、謙吾さんと籐吾さんに連行されるように、薬湯に行き、塩分強めの炭酸泉に連れて行かれた。
「怪我なんかしてないし・・・。」
「水穂様と阿知花様特選薬湯です。この天の川銀河で採れる特選素材を贅沢に使った薬湯なんですよ。あんなことがあったんですから、素直に浸かってください!」
また怒られてしまった。2人とも酔っているので声が大きくて、ちょっと怖い。それでも薬湯に浸かるとじっとりと身体にしみこんでくる。この薬湯は、なかなかスゴイ薬を使っているらしく、気分も幸せ感が半端なくなるし、肩の凝りみたいな固まった身体の澱を流してくれるようだった。
そこから少し大浴場内の道を下って、ちょっと温度の低い、だだっぴろい風呂で、みんなで競争して泳いだり(闘士三人が泳ぐと、それは大変なことになるけれど問題ないくらい広かった)、身体の洗いっこして、濁り湯に入って、温泉の滝に打たれて身も心もさっぱりした。あ~、いい湯だったと、寝間着というかパジャマというか、ゆったりした衣装に着替えて、おのおのの部屋に戻っていった。戻っていったけど、夜這いはするんだけれどね。謙吾さんとの約束通り・・・。その後籐吾さんと、みたいな。そんな時間を過ごしながらも、宴会はともかく、いつもの僕らの生活に戻ろうとしていた。
寝室に戻って、水穂さんの横に潜り込むと、これも決まって頑張ってしまう。人あらざる者一歩手前の自分にとって、夜の三回程度はごく簡単なこと、あたりまえのことになってしまった。でも、2人の闘士にしろ、お嫁さんにしろ本当に美しい。樹雷の医療技術やナノマシン技術の賜物なのだろう。いっぺん、鷲羽ちゃんにDNAのテロメアなんてどんなになってるの?って聞いてみたい。講義が始まると、半日くらい離してくれなそうだけど。それだって、GPの控えめに言っても筆頭哲学師御自らの授業である。今更だけど周りにいる人物の立場の重さや大きさに感服したりする。
そんなこんなと思いを巡らせていると眠ってしまったらしい。樹雷でのすがすがしい朝を堪能して、そのままの勢いでなんとか2日目、3日目をクリアした。しかし宴会はまだまだ続く。1週間ぶっ通しって、ほんと凄い。
そして4日目の余興である。今回なぜか、1年前の逃走というか大追跡が評判が良かったらしく、きちんとプログラム化されるらしい。宴会場に朝早くに集合、我らのチームと瀬戸様率いる第7聖衛艦隊選抜チームが対戦することになっていた。大逃走の時間制限は午前中で8時開始12時終了の4時間。エリアは、天樹を中心とする半径20kmエリア。転送ゲートは使っても良いが皇家の船に乗って逃げるのはダメ。転送ゲートもエリア外に向かっては閉じられている。皇家の樹の間も立ち入り禁止(選ばれている世代の樹によって入ることができるエリアが決まるため)。双方のチームに自分たちには見えないビーコンシステムが配られる。これは、GBS放送時に視聴者には俯瞰図のように表示され、色分けされた点として分かるようになっている。このビーコンシステムは、出場者には感知できないようになっている。そうでないとどこにいるか分かってしまう。地球でも同じような番組があったような気がする。あっちは、もっと小規模で遊園地みたいなところで追いかけっこしていたと思うけど。天樹を中心に樹雷の町の半径20kmの円周上までが今回のイベント境界線である。天樹から15分の差を置き、瀬戸様達は探索を開始する。僕らは逃げ回る。身体タッチで拘束。午後12時のサイレンで終了のルール。
勝負条件は、僕らのチームの僕自身かプラス誰かが捕まらず、生き残っていれば僕らの勝ち。ただし、僕が捕まった時点で負け、今夜は瀬戸様の水鏡で一泊コースと言うルールである。
「これだと、私たちには不利よね・・・。」
水穂さんが、例の携帯端末をタブレットに変形させた物で、いろいろな検討やシミュレーションをしながら言った。
僕達のチームは、僕、水穂さん、阿知花さん、謙吾、籐吾、あやめさんに茉莉さんである。いちおう、僕の皇家の船達は、小さくなれたり、一緒に逃げたり出来るので僕に含まれているらしい。ラノちゃんは、さすがに体格差が大きいし、第1段階程度の生体強化レベルでもあり、今回はアマナック委員長に預けてきた。
「地の利は明らかに瀬戸様にあるし、ん~~。逃げながらショッピングでもしましょうか?」
ニヤリと黒い笑みを放ってみた。びくっっと謙吾さん達が、顔に縦線書いている。ちょっとした一計があったりもするのだ。なにせ、僕には、良くも悪くも先代樹雷皇の記憶がある。どうも先代樹雷皇、結構問題児だったらしく、お忍びで良く樹雷の町に飛び出していたらしい。前樹雷皇が亡くなって800年ほど。悪友達もまだいるかもしれない。
「その辺は、瀬戸様も計算済みでしょうね。ふふふ。」
きっちり、水穂さんの黒い笑みも帰ってくる。謙吾さん含めて、他の4人はまだこの手の笑みは難しいようだ。確かに情報戦は、明らかに向こうが上。しかし、こちらには・・・。まあ、4時間程度だし樹雷の町並みを見物しよう。転送ゲートに乗り、瀬戸様達の待つ出発ポイントに行く。すでにみんな集まっている。
「あんら、・・・一樹殿おはよう。」
今日に限って、また瀬戸様の迫力が凄い。あなたにロックオンしたわ、獲物ね。と言う視線が怖い。
「神木・瀬戸・樹雷様おはようございます。本日はどうぞよろしくお願いします。」
いちおう、目上でもあるし。
「今夜はね、とっておきの強いお酒をある方から戴いたの。たしか兼光は1時間と持たなかったわね。」
瀬戸様の言葉を聞いた、平田兼光様の背後にいた闘士は、一斉に顔色をなくしていた。確か、平田兼光様は結構な酒豪と聞いている。平田兼光様は、憮然とした表情だった。すぐに、僕の左後ろに謙吾さんが立ち、小声で教えてくれる。
「一樹様、いちど樹の間で呑んだ「皇火」覚えていらっしゃいますか?あれの原酒だそうです。火入れなし無加工品らしいっすよ。つまり混ぜ物なし・・・。あの兼光様が1時間持たなかったそうです。」
それだけ言って、スッと下がる謙吾さん。おお、そりゃ、酔えるかも。原酒だともっとアルコール度数高いだろうし。一瞬、瀬戸様それじゃあ行きますか、とこちらから捕まえてもらいそうになった。わずかな心の動きを水穂さんに読まれたか、左腕をつかまれかすかに引っ張られた。
「・・・あなた一応勝負ですからね。GBSもあんなにねらってますわよ。」
水穂さんがちょっとうつむき加減で低い声で言う。確かに、反重力か何かで浮いている中継デスクに何人かコメンテーターが座っている。同じように樹雷側の放送席まで浮いて漂っている。
「それでは、両者とも準備は良いかな。」
樹雷皇阿主沙様のお声がかかった。そちらを見て、頷く。瀬戸様達も同様だった。
「樹雷大追跡開始!」
ぱあ~~ん!と派手な空砲が鳴った。こちら側は脱兎のごとく走り、最初の転送ゲートに走り込む。瀬戸様達はまだ動けない。10分後に僕らを追って来るはず。
「最初は、樹雷皇家の宝物庫前へ!」
天樹のほぼ中心部にある、謎だったり、危なかったりする物品を収めている様々な意味での耐爆倉庫。昨日のうちに、こっそりあるものを宝物庫番人にお願いしておいたのだ。
瞬時に天樹の入り口に転送され、そこからまた宝物庫に転送された。通常は、この様には転送されない。皇家のさらに重鎮のみがそう言った転送を許されている。
「おっと、姿を変えておかないと。」
いつものように、くっと視線が5cm程度高くなる。着ている樹雷戦闘服が一瞬、グッと肩幅や胸回りがキツくなるが、すぐに追従する。さすが特製樹雷生絹。樹雷はこう言った自然物の加工が本当に上手い。宝物庫の前に転送され、宝物庫の扉を叩いた。
「天木辣按様のアストラルと融合する男か・・・、なるほどのぉ。梅皇の力とは言え、見事なモノじゃ。」
お、鷲羽ちゃん?と見間違うような、雰囲気のおばあちゃんが宝物庫の扉を開けて出てきた。歳は分からない。
「急な申し出で申し訳ありません。瀬戸様から逃げ切らねばなりませんので、一時お借りします!。」
そう言って、そのお婆ちゃんが持って出てきたモノを受け取り、両手で、その宝物庫の番人の手を握った。例によって余ってるエネルギーを放出する。地球で言う、70代~80代のように見えていた肌がみるみるうちにつやつやになり、そこには今年入社した新入社員ですぅ、的な女性が立っている。門番の女性の右手を取り、ひざまずいてそっと口づけした。真っ赤になる女性。
「レンタル料金は、柾木・一樹・樹雷あてにご請求くださいね~。」
「ふ、ふんっだ。こんなになっちゃったら請求なんて出来ないじゃん!」
叫ぶ宝物庫の番人だった。ありがとね~と後ろは見ずに手を振って、少し離れた転送ゲートに走り込んだ。
「やっぱりここね~~!。待ちなさい~~~!」
お、もう追いつかれたか。瀬戸様達の追っ手が転送ゲートから走り出てきた。さっきの宝物庫の門番が、その場でくるりと回り、両手で長めのスカートをたくし上げるように少し上げて、右足をタンと床に打ちつけた。
「あ~れ~!」
ばくんっと宝物庫前の床が開き、わらわらと追っ手の皆さんが暗い床下へと吸い込まれていく。瀬戸様のあられもない声を聞きつつ、こちらも転送がかかった。
「樹の間へ!」
昨日のうちに、樹の間の極秘二点間転送ゲートの使用を樹雷皇阿主沙様のお許しを得ていた。岡山の柾木神社の森を模した、中庭が見える場所に転送された。樹雷とは違う木々の香りがわずかに郷愁を呼ぶ。しかし、ここも持って数分。
「大将!、部屋借ります!。」
「おう!、飲み物を用意してあるよ。がんばれ。」
のれんを少し上げて、樹の間の入り口を見ると大将とおかみさんが、いつものように仕込みをしていた。時間的にまだ開ける時間ではないが、中継地点で使いたいので無理を言って部屋を確保してもらっていた。ここなら防諜対策もほぼ完璧である。しかし、迷惑はかけられない。5分経てば次の場所に強制転送されるように設定している。さすがに、樹雷闘士のみんなである。息が乱れているような者は居ない。
「・・・さて、お集まりの諸君。」
少しもったいぶって、綺麗な紫色の風呂敷に包まれた木箱を取りだした。一斉に、視線が木箱に集中する。
「これは、いまから約580年ほど前に天木辣按様が密かに手に入れた、不思議な石、と言うことになっている物だ。」
木箱を開けてみんなに見せる。天木辣按様の記憶ごと融合している僕である。記憶をたどり使えそうなモノを探しておいたのだ。樹の間のいつもの部屋にみんなで入って、しばし会議。
「580年前、天木辣按様は、領宙の拡大のため、深宇宙探査を行っていた。あまり大きな予算は取れなかったようで、1、2回程度しか行けなかったようだが。艱難辛苦と言って良い旅の後、この石を手にされた。」
右手の人差し指と親指でつまみ出した。見た目はそこらの小石と変わらない。河原にある、流れで角が取れた丸石ではなく、どこかから割り取ってきたような鋭さがある。目の前でしげしげと見たあと、木箱に戻す。
「・・・あまりにも凄まじい力故に宝物庫に封印されていた物だ。」
「あなた、その効能は?」
水穂さんたちは、ゴクリとつばを飲み込むような雰囲気だった。代表して水穂さんが口を開いた。
「半径10mの球状のフィールドから外の幸運を吸い取り、持っている者に幸運をチャージするのだ。」
精一杯のドヤ顔で言ってみた。
「それ、本当にそんな効果があるんすか?」
思いっきり毒気を抜かれた謙吾さんが、頭をカキカキそう言う。
「天木辣按様が先代梅皇で帰る途中、幸運を吸い取られた星系が、不運にも突如超空間から現れた恒星破壊爆弾に壊滅させられているな・・・。」
その記憶を聞いて、引きまくるお嫁さん達だった。
「説明しよう!」
ばしゅんっと何故か鷲羽ちゃんがジャンプアウトしてきた。あたかもこれが自分の役目と周囲を威圧するかのごとく説明を始めた。
「山田西南殿が、生体での不運体質なら、この石は物体として存在している不運製造機というか幸運吸引器だね。この宇宙、こう言った形でバランスを取ることが多く、西南殿とまさに対になる石であ~る。ちなみに、今回瀬戸殿から逃げ切るということと、4時間という時間制限付きで鷲羽ちゃん印の封印は解いているよ。時間が来れば、自動的に封印され、宝物庫に戻ることになっている。」
それじゃ!と、再び超空間ジャンプしていく鷲羽ちゃん。例によって無茶なおねいさんだなぁ・・・。
「まさか、いえ、そうだわ・・・。瀬戸様達があんなトラップにおめおめと引っかかるはずがないわ・・・。」
ぐっと右手を色が白くなるほど握って力強く言う水穂さんである。
「とにかく1つところに留まるのは、せいぜい5分程度。次行くよ、次!」
せっかくの樹の間が「変に不幸」になってしまっては困る。用意してくれていたお茶を急いで飲んで、2点間転送フィールドにもう一度入る。天樹に出て、さらに走って汎用転送ポッドから皇家御用達「越後屋」に行くことにした。いまのところ、瀬戸様達の姿は見えない。