天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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お待たせしました。

実は、ずっと今さらですが「NARUTO」にはまってました。

Youtubeの二次創作マンガは本当にたくさん見せて戴きました。うずまきナルトのそれはそれは苛烈な人生、そして恋愛に、持ち得た一男一女の幸せな家族・・・。

DVDも買いましたとも。

そこで、行ってみたくなりました。木の葉の里。

ちょっと外伝っぽくなっていきますがどうかお付き合いを。


樹雷から宇宙へ33

それじゃ~ね~!と、手を上下にパタパタ振って、再び超空間ジャンプしていく鷲羽ちゃん。例によって無茶なおねいさんだなぁ・・・。

 「まさか、いえ、そうだわ・・・。瀬戸様達があんなトラップにおめおめと引っかかるはずがないわ・・・。」

ぐっと右手を色が白くなるほど握って力強く言う水穂さんである。

 「とにかく1つところに留まるのは、せいぜい5分程度。次行くよ、次!」

せっかくの樹の間が「変に不幸」になってしまっては困る。すでに、「あら、手が滑っちゃったわ。」と女将さんが言うと同時にガチャンと何かが割れる音がしているし、痛ってぇと大将の叫び声も聞こえてくる。

 用意してくれていたお茶を急いで飲んで、2点間転送フィールドにもう一度入る。天樹に出て、さらに走って汎用転送ポッドから皇家御用達「越後屋」に行くことにした。いまのところ、瀬戸様達の姿は見えない。どこに落ちたのか分からないが、たぶん、あっという間に這い出てくるに違いない。

 汎用転送ポッドから天樹の入り口付近に飛び、もう一度入り直して、お得意の郊外のショッピングセンターに飛んだ。もちろん偽装のため。ちょっと派手派手しいデザインのショッピングセンターである。「天南」マークが燦然と輝いている。天の川銀河で現在大きく販売を伸ばしているグループである。がっちりがめついのだが、しっかりと自分の足下を固め無理はせず、確実に勢力を伸ばしてきている。樹雷の雰囲気には合わないのではと言われていたらしいが、天南グループは、樹雷の雰囲気を巧みに取り込んで、きっちり商圏として食い込んできていた。

 体格は、国民皆闘士と言われている樹雷なので、さほど差は出ないけれど、変な威圧感もある自分にとって人混みに紛れることは難しい・・・。まあいいか、とずんずん歩いて天南マークのお店に入っていく。ちょうど、晦日市とかで、31日のセールをしていた。1階の食料品売り場をぐるっと回って、そのまま外に出ようとした。

 ふと何かを感じて、立ち止まる。とたんに、近くのレジが煙を噴き、野菜販売エリアの照明が明滅する。浮遊ショッピング・カートを押していた高齢の女性が、何もないところで転んで、周りを見回していたりもする。

 「どうさなさいました?」

背後から、籐吾さんが聞いてきた。

 「うん、もういいかな。走るぞ!」

手近な転送ゲートまで走る。視界の隅に天南ショッピングセンター入り口に殺到する瀬戸様一派を見ながら、転送ゲートに全員でむぎゅっと収まった。

 「越後屋の三階へ!」

グリーンの転送フィールドに包まれ、視界が開けるとふかふかの絨毯が敷き詰められたいかにも高級な一角だった。照明が落とされふんわりした光で満ちた化粧室が転送ゲートの前にあった。念のため、僕だけ越後屋屋上に転送してもらい、下の方に手を振ってみたりする。瀬戸様の部下の1人に見つかり、こちらを指差している。そして、すぐに3階に戻り、旧知の店(といっても天木辣按様の、だけれど)歩いて行った。水穂さん達は所在なさげに最初に使った転送ゲート横のベンチに座って待っていてくれた。その転送ゲートから割とすぐに、その店は見えてきた。基本的に木材をうまくデザインして店構えにしているテナントが多いが、そこだけは地球の、特に銀座などにある老舗のたたずまいが感じられる店だった

 「これはこれは・・・。」

伝統的な樹雷のデザインと地球のようなスーツが融合したような、上下そろいの服を着た歳を召した男性が出迎えてくれた。深々とこちらが恐縮してしまうような一礼である。

 「幾久しゅう・・・。もう、800年も前になるのですね。」

心の中で天木辣按様が泣いている。初老の男性も涙がこぼれ、声を詰まらせたようだった。

 「ごめんなさい。実は・・・、僕は本当はこの場に来るような資格はないのですが・・・。」

いちおう、資格と言ってみた。だって中身は地球のおっさんである。

 「いえいえ、そんなことは全く・・・。存じ上げてますとも・・・。」

本心からの笑みに見える、そんな表情の男性である。

 「今日は、ほとんど顔見せだけなんです。これから、こいつらと来ようと思うんですがかまいませんか?」

 「何をおっしゃいますやら。辣按様、あ、失礼。柾木・一樹・樹雷様の大切な方々でしょう?いついらっしゃってもらっても大歓迎でございます。お時間はかかるかもしれませんが、皆様のお眼鏡ににかなうお召し物をご用意させていただきます。」

それじゃあ、また頼むよ、と言って、左手を刺しだし握手した。もちろん生体エネルギーを送る。男性は老年と言って良い見た目から、初老のはつらつとした雰囲気に変わった。驚いて固まってる男性をそのままに、次の転送ゲートに向かう。ここは本物の皇家御用達。先代樹雷皇天木辣按様も年に数回しか訪れなかった店である。

 「びっくりしましたわ。ここに転送されるなんて。樹雷皇に縁の在る者かその紹介者しか入れない場所なのに・・・。」

水穂さん始め、竜木謙吾も竜木籐吾も、神木あやめ、茉莉、阿知花もほとんど固まっていたようだった。

 「いちおうさ、もと樹雷皇だし。この店がとても懐かしい思い出と一緒によく思い出されていたんだ。夕べ、連絡を取ってみたらとても喜んでくれてさ。」

どうも、先代樹雷皇の若い頃からの付き合いの店らしい。

 それから、このフロアのいくつかの店、先代樹雷皇の行きつけだったところを一巡りして、外に出た。

 「ふっふっふ、出てきたわね。いまよっ!みんな取り囲めっ。」

そこにいたのは、若干ボロボロになってくたびれた感じの瀬戸様がいた。外に出たところを瀬戸様や平田兼光様、天木蘭さんがたちがじりじりと包囲網を作り、それを狭めてくる。しかも、平田兼光様は得体の知れない機械を背負っている。

 「ありゃりゃ、見つかってしまいましたか。でも、それでは絵面的にごらんの皆様が面白くないでしょう。」

じりじりと包囲を詰めてくる瀬戸様達を尻目に、僕は光應翼でみんなを包み、空間転移をかけた。

 「なに!」

何かの干渉波だろうか?光應翼の外でブルーの縞模様の光が出来、押し戻される。球状の光應翼の中で、僕らはカクテルのラズベリーのごとくシェイクされた。

 「ほっほっほ。こんなこともあろうかと・・・。鷲羽ちゃんは、わたしの方がが付き合いが長いのよっ。って、あっっ!!」

平田兼光様が背負っていた何らかの機械が、「偶然」にも火を噴き、その機能を失った。

 「それでは!」

ふいっと空間転移をかけた。なんでそこで壊れるのよぉって、瀬戸様が平田兼光様の首を掴んで前後に揺すっている光景を目の端に捉えながら、もう一度天樹前に戻った。あの場所から、ここを探知して転送かけて追いかけてくるまで数分。

 「実は、次行くとこ考えてないんすけど・・・。」

そう言って、後ろを向いてにかっと笑う。あららと言う表情でお互いを見て苦笑する謙吾達。水穂さんが、ぽんと手を打って、

 「お墓参りに行きましょう。」

なるほど。今度は、水穂さんと阿知花さんに手を引かれ、転送ゲートをくぐる。時間は、すでに2時間程度過ぎている。あと半分逃げ延びれば僕らの勝ちである。

 樹雷では、洗い米とお酒、日本の花芝に似た植物もしくは花束だそうで、それを調達に転送を繰り返す。目くらましにはちょうど良かったりもする。

 樹雷の皇族墓地があり、ここも皇族でないと入ることはできない。ツタ植物がからまりゲートのようになっている。見た目はごく普通の墓地だが、しっかり自らの縁者の墓地に行くようにコントロールされている。樹雷の人々にとってはとても大事な場所らしく、光應翼とはいえぬまでもかなり強力なシールドがかかっているという。

 「副葬品とかの風習はないんですか?」

日本の古墳とかピラミッドとかの関連が思い出されて、聞いてみた。

 「そりゃぁ、初代樹雷総帥とかまでさかのぼればあるかもしれませんが、しっかりしたセキュリティもかかってますし、どちらかというと皇族でも質素なお墓で済ましてしまわれますね。」

 水穂さんの話をへええ、と聞いていると、初七日だの四十九日だの納骨だのという手続きは、日本独自の物らしい。そういえば、仏教と神道の融合とか、日本の場合何でもかんでもな部分があるし・・・。樹雷はさっぱりした物で、人が亡くなった折に樹雷伝統の儀式があって、それっきり遺族が墓参りするだけだそうである。さすが、海賊出身の開拓民ともいえるだろう。手厚く、一度アストラルの海に送り出せば、本人もアストラルの海に刻まれるという考えだし、涅槃の年まで念仏を上げ続けるようなことは無いそうである。

 「それでも、お墓参りそのものは、何かことあるごとに手を合わせに皆さん来ているようですわ。」

 宇宙空間で死んだようなときは、特に宇宙船の事故などの場合、死体そのものがないことも多く、より儀式の簡素化を呼ぶようである。何らかの理由で宇宙船内で死んだとしてもよほど皇族に近い者でないと、宇宙葬で送られることが多く、同様に死体を持ち帰ってくるようなことも少ない。

 通常の人の場合、近親者のみで別れを惜しみ、火葬の後、埋葬して終了だそうだ。名の入った石碑がずらりと並んでいる。皇族の墓碑はさすがに立派である。目に入るものほとんどが木の加工物に見える樹雷だが、地球で言う御影石のような物と木材をうまく組み合わせ、まるでプラスティックで作ってそれから削り出して作ったようで継ぎ目とことんまでなく滑らかな面だった。地球では考えられないような優美なカーブを描き、質素ながらも美しい。

 「あなたの場合、祖先をさかのぼれば真沙希姫に繋がると言うし、私だってそうよ。」

おお、忘れてた。水穂さんも柾木・遥照・樹雷様の娘ゆえ、つながりがあると言えばある。

美しい目で上目遣いにそう言われた。

 「天木日亜の記憶だと、本当に昨日のことのように思い出されるんだけどね。真沙希様は、笑顔が船穂様に少し似ているかもしれない。」

地球にご自身の樹を植えて、少しずつ歳を取って行かれた真沙希様を思い出していた。しかし、アストラル融合って便利なのか不便なのか・・・。自分自身そんな覚えはないと全力で否定するが、やはり天木日亜の記憶は真実味を持って思い出されるし、天木辣按様の記憶もそうである。竜木籐吾や神木あやめ(いや、もう竜木あやめか)達が、懐かしそうな顔をしていた。

 樹雷皇家の墓地の奥へ奥へと進んでいくと、初代樹雷総帥と書かれた立派な墓碑があった。銅像のような偶像を置かないのは、あの樹雷総帥らしいな、と思う。

 「真沙希姫の最後は、樹雷名物木彫り細工の技術を使った、ジュエリーショップを筆頭としたデザイナーズブランドの会長に、アトランティスの女性護身術の開祖の称号に・・・たしか孫も10人以上いたなぁ。とても、とても幸せそうに、家族に囲まれて眠るように逝かれました・・・。」

 僕は、誰言うとも無しに、昭代樹雷総帥の墓碑に向かい、天木日亜の記憶をたどり、つらつらと言ってしまっていた。

 「ほっほっほ。・・・初代樹雷総帥は、盛んに悔しがっておられましてな。最初で最後のお願いと言うから銀河辺縁系探査の承認をしてやったのに、事故で行方不明とは!とまぁ、それはそれはお怒りじゃったのと、最期までもう一度真砂希姫に会いたいとおっしゃっておられました。」

しわがれた声が、何mか背後で聞こえてきた。何の気配も感じなかった。慌てて振り向くと樹雷のインナーの上に質素な貫頭衣にも見えるような、地球の神主が着る服にも見えるような物を纏った老人がいた。

 「これは!神木祥瑞(かみき しょうずい)様。」

まず水穂さんが慌てて深々と頭を下げている。それに倣って、僕や他のみんなも急いで頭を下げた。

 「よいよい。わしはただの墓守じゃ。なんの肩書きもありゃせんぞ。」

かっかっか、とあっけらかんと笑う神木祥瑞様である。

 「一樹様、もしかすると、僕らが辺境探査の旅に出た折に、たしかまだ闘士になったばかりだった・・・。」

そう竜木籐吾に言われて気がついた。天木日亜の記憶が鮮やかによみがえってきた。

 「・・・我らと共に行きたいと、必死に頼み込んできた、あの・・・。」

今時珍しい直訴状を持ち、土下座せんばかりに頼み込んできた、おろしたての闘士用の正装をした少年が思い出された。

 「発進直後に柚樹に密航までしようとして捕まってたなぁ・・・。」

さらに、皇家専用宇宙港に忍び込み、柚樹のセキュリティバイオロイドに捕らえられ宇宙港整備担当職員に引き渡される場面が先ほどの出来事のように頭を巡る。

 「そ、そうでございます!その祥瑞でございます。」

 「よくぞ今まで・・・、生きていたものよなぁ。」

足下で柚樹さんが姿を現し、猫の姿だけど懐かしそうな目で見上げている。神木祥瑞と呼ばれた老人は、何もかも知っているように膝を折って柚樹の前にかがみ込んだ。

 「やはり皇家の樹というのは賢いものだと、とても悔しかった覚えがございます。」

猫の顔で、ちょっと怖いがにっこり笑う柚樹さんに臆せず、視線を合わせる神木祥瑞だった。今度は柚樹さんが、目をそらさない神木祥瑞に対して、くわぁぁっとあくびをして緊張をそらしていたりする。

 そういえば、当時の情報部専用のアンチ・セキュリティ・フィールドを使っていたが、柚樹が見事に見破ってたな、と天木日亜の記憶がそうよみがえる。

 「あれから、私も努力し、天木日亜様から数えて何人か後の、初代樹雷皇のお側付き、つまり天木日亜様の後任になることができました。」

 「そうだったのか・・・。しかし、一緒に来ない方が良かったと思います・・・よ。」

天木日亜や真沙希姫がたどった時間、そして超空間内の時空震で大けがをして、それぞれの樹の判断で時間凍結をかけ、亜光速で樹雷への舵を切り帰途についた、籐吾達・・・。余りにも大きな想いが心を占めてしまい、胸が苦しくなり他には何も言えなかった。

 「はい。柾木・一樹・樹雷様。天木日亜様の記憶と、天木辣按様の記憶を受け継ぐお方。竜木・籐吾様や、竜木・あやめ様、竜木・茉莉様、柾木・阿知花様のレポートそして柚樹・一樹レポートは、何度も何度も読ませていただきました・・・。初代樹雷皇がアストラルの海にお戻りになった後、幸運にも樹に護られ、いままで墓守として、過去の語り部として生き恥をさらして参りました。しかし、今思うのですが、樹はあなた方が生きていらっしゃったこと、そして記憶を受け継ぐことを知っていたのでしょうか・・・?私はそのために生かされていたのでしょうか?」

神木祥瑞は、静かに言葉を繰り、伏せ見がちにそう言った。

 「われらは、15000光年以上隔てられており、超空間通信もできない状態だった。さすがに我ら以外の樹が知りようも無いとは思うが・・・。」

いまだに、樹雷皇家でも皇家の樹について謎の部分は多い。しばらく無言の数瞬が過ぎた。

 「・・・そうですよね。さて、この危険極まりない箱は・・・。私が預かりましょう。」

神木祥瑞が左手を上にして差し出すようにすると、周囲の幸運を吸収して、持ち主に幸運を渡す石は箱ごと神木祥瑞の手にあった。

 「鷲羽様の封印を施しますれば。」

少し離れてくださいと、神木祥瑞は周りに告げ、地面にその箱を置いた。続いて印のような物を両手で結ぶ。空間に溶け込むようにあのやっかいな箱は消えた。

 「これで無事宝物庫に戻りました。今回は、まあ、どうしても、と言う一樹様からのお願いと私が懐かしさのあまり感情に流されてしまった故に表に出しましたが、今回以降は持ち出し禁止と言うことにさせて戴きます。」

神木祥瑞に見事に釘を刺されてしまった。

 「それじゃ、お礼と言うことで握手しましょう。」

そう言って、僕は右手を差し出した。神木祥瑞はおずおずと右手を出して僕の右手を握った。ゆっくりとエネルギーを受け渡す。肌の色艶が良くなり、かがんでいた腰もしゃんと伸び、柚樹に捕まったあの頃とは言えないが、壮年と言えるような歳に見えるまでになった。

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