結構ヘロヘロになってました。
もう一つの趣味の方も、オークションで必ず買ってくれるひともいて楽しくやらせて戴いています。
さて、ちょっと多いけど更新です。火の国は遠い・・・。
「その横に、あるのって・・・、幼生固定された第5世代、いや第4世代皇家の樹の超小型コアユニット・・・。」
自分の船の中ながら、驚くべき物を売ってる店だった。・・・って、売って良いのか皇家の樹!。いや、売って良い物ではないと聞いている。樹雷に貢献した傀儡の星に、特別に贈られたことがあると聞いている。そう思って横見たら、謙吾さん固まってるし。
「・・・師匠!」
店の奥で、コーヒー片手に、タブレットから3D出力されている樹雷の新聞を読んでいるのは、この船を修繕してくれた天木輝北様だった。
「おう!、謙吾!。わしの船、収納させてもらったぞ。これは、一樹様。突然すみません。樹雷王阿主沙様の辞令が降りまして。」
そう言いながら、珍しい紙の辞令を見せてくれる。確かに樹雷皇の押印済みの書類だった。
「あー、はい、そうなんですね・・・。天木輝北様、こんなところに並べて置いていいのですか?これ。」
「ああ、この店は皇家の船を持つ者にしか見えません。シールドが幾重にもかかっておりますので。どうです、お一つ?地球の小型車両に擬態した探査および工場・研究ユニットをお持ちだとお伺いしたもので。ああ、お代はいいんですよ。瀬戸様からのプレゼントですって。」
ぐ、ここでもらってしまうと悪魔に命を売り払うがごとしかもしれない。
「一樹様、亜光應翼張れちゃったりしますけど・・・。こないだから縮退炉止まったままですし。」
そうだった。一年くらいほったらかしだった・・・。ラノちゃんの船起動しようとして、鷲羽ちゃんが縮退炉の臨界下回って、エンストさせたんだった。
「メインジェネレーターとして、いじってみたいな~、とか思うんすけどぉ。」
むっちゃ、あざとく下から見上げる謙吾さんだった。おのれはJKかっ!
「わかりました。あとのことはあとのことだし。天木輝北様、ジェネレーターとエネルギーキャパシタ一緒に包んでおいてください。あとで謙吾が取りにきます。」
毎度あり~~♪な声を聞きつつ店をあとにする。通りに出て行くと、クレープ屋のテラスで4人は女子会している。あれ、籐吾さんが見えない・・・。
「うちの旦那さまなら、その新製品と怪しいモジュール抱えて航空隊の格納庫に行きましたよ。」
そう言って女子会に戻る、あやめさん。
でね、でね、あのお菓子、そうそうチョコレートって言うの?それででくるまれた、アレ。正木香奈子さん経由で手に入ることになったのよぉ。ってな会話を聞きながら通りを歩いて行く。ちなみに、キットカットだったりする。いろんな味が出ていてソレをフルコンプしたいようだった。太るぞ、そんなんばっか食べてると。
「籐吾殿、もっと速く飛びたいのかねぇ・・・。」
ラノちゃんと手を繋いで歩いている謙吾さんである。微妙にそう言う小さい子好きなんだなこの人。まあ、兄弟姉妹多い家系らしいし。今日は柚樹さんは、珍しくラノちゃんに抱かれている。燦々と照る人工太陽の下、本当に平和な町並みだったりする。
町の人達は、もともとは雨木開拓団とその救助隊だけれど、見事に町に溶け込んでいる。チラチラとこちらを見ているけど、ほとんど意識させない。さすが樹雷の住人。定食屋さんらしき店に入ってみたり、立ち飲み屋のようなところで世間話しながらアルコール飲んだり(酔わないけどね)して一日がゆっくりと過ぎていく。樹雷でも、だいたい24時間程度の周期で一日としているようで、僕としてもありがたい。超空間航行中でもあるし、まず何かの攻撃があるわけでもなく、静かに第1480星系への航路を進んでいく。
そして、夜は天木輝北様も呼んで、居酒屋「樹の間」梅皇支店(どうも息子さん経営らしい)で歓迎会というか、そう言う緩い飲み会を開いた。今は、静かで良いですよね。神木祥瑞様はお酒はどうなんですか?などなど差しつ差されつ夜は更けていく。お酒も数種選べて、料理も樹雷風やら、メルマス風の香辛料が効いた料理やら地球で言う創作料理の居酒屋のようだった。香辛料がたっぷり使われているメルマス風の料理は、僕や水穂さんは結構箸が進んだが、謙吾さんや籐吾さんたちは、若干引き気味。舌にはおいしいのだけど、香りがきついようだった。今度地球のカレー屋さんに連れて行ってみよう、とか思ったりする。
「・・・ちょっと、辛いというか、何というか・・・。」
籐吾さんのお口には合いかねるようだった。
「水穂さん、みんなでこんどインドカレー専門店で美味しいお店に連れて行こうか。専用の窯で焼くナンの美味しいところがあるんだ。」
「まあ、良いですわね!。でも・・・、ほら・・・。」
と指さす方向は、水を結構がぶ飲みする皆様。
「樹雷じゃ、こういう料理はないの?」
どちらかというと樹雷は、日本食と似て樹雷は素材のおいしさを引き出すような調理をするのが当たり前らしい。きつめの香辛料で調理する文化はないようだった。天木輝北様も公務を離れての飲み会だと、適度に柔らかな表情である。
「天木先生の率いられている、修理部隊はどうしたんです。」
謙吾さんが、赤みのかかった顔で尋ねている。
「もう、ほとんど教えることもないからな。ぜ~んぶ、あいつに投げてこっちに来た。おまえも居るし、何よりこっちが楽しそうだしな。」
「うっわ~、凶悪ですね。神木聡、でしょ?」
「そうだ、まあ、あいつなら皇族だし、な。」
そう言ってる顔は、少しだけ心配そうなのと、任せられるというのの半々と言うところだろうか。おんなじような顔をしている謙吾さんだった。たぶん、結構心配させたり手を焼いたたぐいの若者なのだろう。
「こないだの有様見たら、こっちの方が心配になってなぁ。樹雷始まって以来の大型戦闘艦だし。町もできるって言うから、樹雷皇阿主沙様にお願いしたんだ。街角の知る人ぞ知る怪しいパーツ屋って、一度やってみたかったしな。」
「こちらの方は、文字通り大船に乗った気でいてください。ときどき、・・・いや、結構頻繁に無茶する人が居ますけど。お店の方も面白いモノ、また入荷して置いてください。」
ちらちらとこちらを見ながら、にやりと、笑い合う2人。誰だろうね無茶する人って。
女3人寄ればかしましいとはよく言ったモノで、水穂さん達は、さっきのカフェの女子会の続きである。さすがにラノちゃんは、お酒の席だし、最近、リルル達と仲が良いようで、今日はアマナック委員長宅でお泊まりだそうである。あの星も非常に重い枷があるとはいえ、幸せに過ごしてほしい、そう願わざるを得ない。僕は、瀬戸様からいただいた皇火の原酒なるものを飲んでいる。アルコール度数だけ言うと80%越えているらしい。それでもほろ酔いだったりする。なんだかなぁ、とか思う。
いいじゃん、前みたいに柚樹さんの背に乗っけてもらって寝室に行くようなことにならないし、とか、僕の皇家の樹であるイツキに言われた。そりゃ、そうなんだけどねぇ。でもおっさんには、たまにゃ周りに弱みを見せるようなことがあっても、悪いことではないんだけどね~。まあ美味しいお酒だし、良い思いはさせてもらってるよ。などとホッとしながら独りで一杯やっていた。そんなところに、籐吾さんが晴れ晴れとした顔で入ってくる。
「遅れてきた人は、皇火一杯だよ。」
って澄ましたイケメンをいじめてみる。
「・・・じゃ、ちょっとだけ。・・・天木輝北様、あのモジュレーター凄いですね。」
と言って、僕よりも、今や怪しいパーツ屋の店主になった天木輝北様に話しかけていた。ぐっと飲み干した皇火が苦しかったのか、一瞬顔をしかめるけど、そのまま天木輝北様に話しかけたままだ。
「鷲羽様から、実は、ほい!と一山もらいましてな。あの人にとっては、もう興味を無くした技術でも、こっちは最先端どころか数年先を行くモノだったりしますからなぁ。・・・っ物は良かったようですな。」
ええ、人馬一体というのはこのことかと思いました!と晴れやかな顔で言う籐吾さんである。籐吾さんはあれから自分の専用機体に取り付けて、梅皇に亜空間固定されている演習場を飛んでいたらしい。話しぶりを聞けば気分良く飛べたのだろう、いつになく、謙吾さんや天木輝北様と話が盛り上がっていた。そんなこんなで時間が過ぎて、夜が更け、いったんお開きになる。町はまだできたばかりなので、二次会的にいけるところも・・・、って樹雷だとどんなところに行くんだ?前を歩く謙吾さんを呼び止めて、こっそり聞いてみた。一瞬にしてもっと赤くなる顔。どうも人によるようだけど、樹雷の人たち、性欲は旺盛らしく、本番有りのピンクなお店に突撃するそうである(避妊系の技術は完璧だそうで)。そうでない者はGP系のカウンターバーに行くか、自己鍛錬のため、そのまま帰ってしまう人も多いらしい。地球に似てるようで似てないなぁとか思う。
「じゃ、今日は・・・」
ここまで言うと、ガバッと水穂さんに拉致られてしまった。おとなしくそのまま連行されて寝室へ。今日は疲れていたのか、寝ているラノちゃんを覗いて、一戦交えて、そのまま良い子で寝てしまった。
明けて次の日。豪華でだだっ広い自分の邸宅(おかしな表現だが)で、水穂さんとラノちゃんと朝食を食べ、一服した後、みんなを呼び出し、ブリッジに集合した。これからの行動の確認である。与えられた時間に制限は特にない。樹雷本星に報告を繰り返しつつ、指示を仰ぐやり方である。すでに、ターゲットの惑星の火の国大名には話が通ったらしい。瀬戸様への朝の定時連絡で連絡を受けた。現在のところ、あの惑星では、大陸の国々の小競り合いがあり、また、火の国に忍びの里があるように、他国にも同様の里があり、いまでこそ平和を享受し、大きく発展したようだが、それもここ十数年のことらしい。
辺境の、未開発地域指定の第1480星系近傍、と言っても数十光年手前だが、既存の航路がある。そこからは、航路探査と同時に、低速で小刻みに超空間航行をし、観測した上で星系外と思える場所にジャンプアウトする手はずである。あと、数時間程度で既存航路との分かれ道に到着予定だ。その後星系内を探査し、対象の惑星に接近し、地球とよく似て、ひとつだけある衛星上空に一時停泊する予定である。謙吾さんや籐吾さん達は、衛星軌道上でまずければ(経験上関知される可能性が高い)、ラグランジュポイント程度まで下がってこちらの行動を監視してもらう。
「・・・そうね、火の国の大名に金(きん)をつかませて、口封じの上、話を通したけれど、大名と話す限り、正直、よくこの国が他の国から侵略されなかったと思ったわ。」
瀬戸様の話では、火の国の大名の印象は、ひいき目に言っても、優しげな印象というか支配者には似つかわしくない印象で、あのような体術や技能を駆使する者を率いるようには見えないそうだ。
「一度、火の国の大名に会ってもらって、そのあと木の葉の里に行ってちょうだい。雷車と呼ばれる、地球で言う鉄道のような交通機関があるようよ。木の葉の里には、ちょうど、火影と言われる里長の家の隣が空き家だそうで、そこを借りて滞在するように手はずを整えているわ。」
「了解しました。データなどの情報は、6人で共有します。定時連絡は向こうの時間で8時及び18時にいたします、様々なお手配やお心遣い誠にありがとうございます。」
と、最後だけは笑顔で返事を返した。梅皇の通信ディスプレイから、わずかにうなずきつつも納得しかねるような表情の瀬戸様の顔は消えた。まあ、火の国の大名には余り良い印象は持たなかった、というか、半分腹立たしかったのかもしれないな、とか思ってみたりする。瀬戸様にしては、と言うとかなり失礼に当たるけれど、そう言ったモノが顔に出ていた。
「一樹様、このまま順調にいけば3時間程度で既存航路からのジャンプアウト地点に到達します。」
「了解した。ジャンプアウト後の方針を決めておこう。ブリッジ要員以外は各自待機。」
梅皇のブリッジから、いつものメンバーのブリッジ要員がミーティングルームに転送された。一見何もない部屋だが、3Dフォログラフィで、巨大なディスプレイを浮かべたり、イスを出したり、専用端末も自在に手元に出せるようになっている。部屋全体が皇家の樹のインターフェースと言ってもいい部屋である。
「まず、航路探査なんだけれど、どう?何かマニュアルのような物がある?」
先人のやり方があるだろうし、先例はもちろんあるだろう。
「樹雷辺境探査時のデータが使えますわ。」
そのたぐいのデータ、注意点、効率的な方法等々、たくさんデータベースにあるようだった。その中から検索上位いくつかのデータを参考に探査することになった。
「火影という者との交渉などは?どうすればいい?」
「正直、一樹様の素のままで良いのでは。たぶん、樹雷皇族並みの直感力もあるようですし、小細工するだけ無駄という気もします。」
籐吾さんから真顔で発言があった。
「船穂様がおっしゃるように、樹雷情報局の総力を挙げた監視衛星も破壊されたというのなら、非常に戦いに慣れた人々と言えると思います。対人の術や技が主でしょうが、今まで不条理な戦いもあったのでしょう。あそこまで攻撃力を特化するのは並大抵のことではないはず。」
「水穂さん、やはりそう思いますか?」
水穂さんだけではない、そこに居るみんなが頷く。
「神木祥瑞をこの場に呼んでくれ。」
あの大筒木の木札を持っていたという神木祥瑞は、とりあえず、雨木開拓団やその救援隊、そして航空隊の皆さんとともに梅皇の町に住んでもらうことにした。農業でも良いし、お店をしても良いし、静かな生活が望みなら、それでも良いと言ってある。こちらからコールすると、即座に神木祥瑞が転送されてきた。
「ただ行くだけではなく、何かしらの作戦会議をするだろうと思っておりました。」
転送のグリーンフィールドが消えるとそこには、神木祥瑞が樹雷式敬礼で立っていた。うむかなり凜々しい。天木日亜の記憶が、連れて行けず申し訳ないと何故か謝っている。そう言う目で見ていると、お嫁さん達を始め、ふたりの屈強な樹雷闘士の目が怖い。視線を外して咳払いなどをしてみた。
「・・・神木祥瑞殿には、もしかすると大きな迷惑を掛けるかもしない。生まれたときに大筒木という木札を持っていたに過ぎないにしろ。」
「わかっております。私も自らのルーツを知りたいというのは、あの頃から変わっておりませぬ。ただ、今回の第1480星系が近づくにつれ、不安感が増しているのは確かです。」
若々しくは見えるが、僕などよりも齢を重ねた者の物言いだった。瀬戸様の手の上で舞っていると言えばそうなんだろうけど、こちらとしては、こういう人物が居てくれるのがありがたいと思っている。謙吾さんからこの部屋の簡単なレクチャーを受け、早速情報端末などを起動している。さすが、一介の樹雷闘士ではない方である。
今回は(今回もと言うべきか)、ただの戦闘ではないだろう。あれほどの戦闘力を有する人々である。一筋縄ではいかないだろう。ただ、なんとかして樹雷側に引き入れる必要がある。初期文明の星なので、もしかすると数世代をかけての説得になるかもしれない。
「ただ、一応、国の代表者と思われる者と交渉は済んでいるようですから、いちど打ち解ければ話は早いと思いますが・・・。」
打ち解ける方法ねぇ・・・。話し合いを重ねて、一緒にご飯でも食べて、お酒でも飲めればだけれど。
「非常に地球の文化に近いようなことも、瀬戸様おっしゃってましたら、結局一樹様まかせ、ということになるんでしょうね。エネルギー弾飛んできても光應翼張れるし、柚樹様とイツキ様が肩に乗ってるし・・・。さらに元々行政職員ってゆーのもあるし。」
「結局出たとこ勝負の成り行き任せってか。」
大きくうなずく皆様。小細工してどうにかなるなら、そりゃ、瀬戸様や船穂様が対応しているわな。こんな樹雷皇族一年生に命を下すこともないだろう。
「あなたの場合、はっきり言わないと分かってくれませんから、言いますけど。わたしは、ラノちゃんと三人っきりのおうちで生活できて、ちょっとうれしかったりしますのよ。」
水穂さんが、はっきりそう宣言した。若干約2名の視線が冷たいが、なんと、実はそうなのである。神木祥瑞殿は、別の旅館をあてがわれていたりする。まあ、ラノちゃんといっしょ、ではあるのだが。
「査察官と、その家族という設定じゃん。」
「それこそ何の小細工も無しですわ。」
水穂さんもドヤ顔するんだ・・・。と感心した。
「ふふっ、監視付きですけどね。それも24時間交代制の。」
ぼそっと茉莉さんがメガネを左手であげながらそう言う。結構釘挿しまくりの発言である。モニターの光を反射して光るメガネが、なかなかに怪しい雰囲気が出ている。謙吾さんが微妙に苦笑しながら、それでもどことなく嬉しそうな顔だったりする。
「そういや、一度東京行った、あの時みたいな感じだな。」
水穂さんと、東京行っていろいろあって、レーザー衛星で攻撃された話(第1部、「広がる樹雷8話~10話」参照。)
「そうですねぇ・・・。その辺ちょっと不思議なのですが、GPS衛星とか、天気予報用の高々度静止軌道衛星とかは無いようなんですよね。宇宙開発の類いは、まだ手が付けられていないようですね。」
神木あやめさんが、樹雷王阿主沙様からいただいたファイルを見ながらそう言った。
「結局、スパイ衛星などの人工衛星を軌道に乗せても、地上からエネルギー弾で狙撃されるような星ですから、誰も手を付けられていない、だけかも知れませんね。」
衛星軌道上からプローブを射出し、地上を偵察する類いの探査衛星は、ほとんど破壊されていた。第1480星系のターゲットの星の衛星とのラグランジュ・ポイントから偵察し、時空間移動能力のある樹雷型の物でさえ、帰還率40%を切っている現実がある。
「ふむむ・・・。とにかくまず火の国に入国して、その大名とやらに会うことが先決だなぁ・・・。どう入る?」
知事とか、首相とか、大統領とかじゃないんだな・・・。大名とはまた古風というか地球の常識だと江戸時代以前である。それに、衛星軌道から、いきなりシャトルで乗り付けるわけにも行くまい・・・。
「火の国への街道が多分あるんだろう。その近くの森の中かどこか、目だたないところに転送して、そこから火の国へ歩いて入国するのが順当でしょうね。何か仕掛けてきたら、取引材料にしちゃえば良いし。でも殺しちゃダメですよ。」
こちらには、ちっちゃくなった見えない皇家の船と、銀ネコの皇家の樹の柚樹がいるし。まあ光應翼張れるし。謙吾さんがこちらを見ながらそう言った。まあ、僕と水穂さん、ラノちゃん、神木祥瑞殿の4人で、歩いて行こうと。
「そだね。仕掛けてくるくらいだから、忍びというか、忍者なのだろうし。上手く捕まえて大名に突き出してやればいいか。」
ここの忍者は、ほっかむりした黒装束ではなくて、パッと見、銃を持っていない兵隊か釣り竿を持っていない釣り人のように見える。忍具と呼ばれる攻撃道具他は、腰あるいはポケットのたくさん付いた、ベストのような衣服に収納しているようだった。荷物が多いときは、リュックサックのような背後に背負う物を使っているようだった。とにかく両手は空けておくと言うのが慣習のようである。例によって、ピココンと着信の電子音が鳴り、顔を隠した水鏡の女官さんから通信が入った。神木あやめさんが受けてくれる。
「瀬戸様から、第1480星系のターゲット国についてのアポイントメントが取れたそうです。明日、向こうの時刻で申の刻に来朝して欲しいとのことです。たぶん、午後1時なんでしょうね。大名への目通りの時刻ですから、午前11時前後には、到着して事務処理等済ませて欲しいとのことですわ。」
なんだか、手書き、印鑑、手作業での決済という言葉が頭を巡った。マジですか、いまどき。と思って、ああ、樹雷ではないのかと思い直す。
「・・・何らかの印鑑とか持ってった方が良いのかな。なんかそんな感じがする。あと身分証も。」
生体認証が当たり前の世界なので、そう言うたぐいの紙的な物はほとんどない・・・、おお!瀬戸被害者の会の会員証があった。これは「樹の間」でも必須なので常時携帯している。
「どうもその辺、必要かもしれませんね。瀬戸様ルートから再問い合わせしてみるそうです。」
さらに、初期文明の国への対応のガイドライン的な物と命令書がデータで送られてきた。GPや世仁我、樹雷他銀河系内の恒星間国家で共有されている条約だった。それによると、自力で恒星間航行ができるようになるまで、基本的に干渉はしないことが明記されている。
今回の場合、樹雷領宙であることと海賊の領宙に近いこともあって、樹雷皇の勅命を賜っている。ただ制限は多い。科学技術供与や提供は禁止。個人的な戦闘行為で力の誇示が必要な場合は(まあ、拳での会話とか言うやつです。)は先方の言う忍術にカモフラージュするならOK。明らかな科学兵器や個人携帯武器は、持ち込み及び使用禁止。例の変幻自在の個人端末は持ち込んでも良いが、タブレットやスマホ形状などの類似の機器があれば見せても良いが、形が変化する場面は見せてはダメ。海賊の干渉は確認された時点でなるべく気取られないように排除せよとなっている。