天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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ま、いちおう樹雷ですからね。

天の川銀河随一の軍事力と言うことは、まあ、それなりの人物がいるんじゃないかなぁ、とか思ってます。


樹雷から銀河へ4

「梅皇発進。内惑星速度から、惑星間航行速度へ。」

籐吾さんの操作で、するりと樹雷皇家専用宇宙港を離れ、静かに増速しながら、樹雷本星がサブディスプレイの中で小さくなっていく。コアブリッジ内で聞こえてくるのは、補機関の静かなうなり音だけ。あとは、レーダー系の電子音や端末を叩く音、位だろうか・・・。

 「・・・一樹様!、後方より、戦闘機影。た、多数です!。」

突然、茉莉さんの高い良く通る声がブリッジに響く。今までの静寂が嘘のように、一挙に喧噪が甦った。アラートを示す画像や、電子音が乱舞する。

 「通常シールド展開。機影照合!」

水穂さんが、鋭い針のような声で言った。茉莉さんが、インターフェースを人差し指で撫でると、その部分が白く変わり、シールド展開と3度点滅して文字が定着する。

 「おかしいわ・・・、樹雷空軍の・・・第6航空隊です。」

阿知花さんの操作で、後方確認用ディスプレイが立ち上がり、そのうちの先頭の機体にズームする。確かに、樹雷空軍の観閲式に出たときの機体だった。樹雷特産の樹の木目と、クロームシルバーの金属肌の対比が美しいスレンダーな機体である。たしか、この間世代交代した、最新の機体で、GP軍の戦闘機はもちろん、世仁我の戦闘機よりも高機動性を誇っている。そこに、樹雷闘士の訓練された反射神経と、繊細な操縦が加わると、それこそかなりの戦闘力や回避力を誇る。ただし外へは、半分ほどの性能値を公表していたりする。まあ、それはどこの軍も同じだけど。ちなみに、この機体、謙吾さんの、対空間運動理論を使っているらしい。さらに、短距離であれば超空間航行も可能である。これは実は秘密。エネルギージェネレーターは、西南君の先代守蛇怪に使われていた、ジェネレーターを改良、小型化した物だと聞いている。

その、戦闘機にしては潤沢なエネルギーを生かして、積載量を確保して克つスレンダーで美しい機体を実現した、と謙吾さんがドヤ顔で言っていた・・・。次は、聞き慣れた通信コールの電子音が鳴った。いつものドアップの瀬戸様だった。

 「言い忘れていたわ、第6航空隊から、こんなものが届いていたのよ。」

と瀬戸様が、バラリと広げたのは、嘆願書、と見事な漆黒の墨で書かれ、そこから円形に署名された紙だった。この世界で紙なんて珍しい・・・しかも地球の、しかも江戸時代の百姓一揆の要求書のような、唐傘連判状(からかされんぱんじょう)じゃん・・・。ぢゃなくて!

 「瀬戸様!、あたしゃまだ、樹雷から追われるような、真似は・・・、してませんけど・・・。」

 「なんで、そこで一拍おくのかしらねえ。それに語尾に行くに従って小さな声になるのはなぜ?」

見事な爬虫類な目になる瀬戸様。瀬戸様から、4,5日でも離れられるとホッとしているのを感づかれてしまう!。こう言うところで尻尾を掴まれると、イヤと言うくらい振り回されてしまう。うわ、また地雷踏んでるよこの人、と言わんばかりの視線が集中していた。

 「・・・うふふ、まあいいわ。第6航空隊って、籐吾ちゃん、こっそり訓練していた航空隊よね。」

びっくうううっっ!!と、あからさまに肩をすくめる籐吾さんだった。籐吾さんに合わせた高応答操縦桿が反応して、梅皇が一瞬グラリと揺れる。矛先は僕ではない、とわかって、ちょっと余裕が戻ってきた。

 「それと、この航空隊の追撃はなんの関係があるんですかっ!」

すうっと少し息を吸い込むようなタメをおいて、瀬戸様は一気に言った。にっこりと微笑むのも忘れない。

 「今朝、この連判状が届いてね・・・。阿主沙ちゃんも面白いって言ってるし。載せていっておあげなさいな、第6航空隊。」

近づいてくる、その第6航空隊は、見事な編隊を組んで接近してきていた。

 「は?」

 「だから、梅皇は大きいんだから、空母としての運用もいいんじゃなぁ~いって、こ・と・よ。」

なぜか僕の目には、ディスプレイから飛んでくる紅色の粘着弾が見えた。顔面にべちょおっと張り付いて垂れ落ちる感覚まである。

 「え~っと、確か、みんなの皇家の船を載せるカーゴスペースはあるけど、戦闘機の格納庫は・・・。」

そう言って、謙吾さんを見る。こっちも驚いた目をしている。

 「あれ?一樹様、言ってませんでしたっけ?、いちおう、三角形の両翼部に射出カタパルトが左右3基ずつと着艦ポート、最大250機を整備できる、格納庫スペースがあります。さらに、工場ブロックでは日産10機のペースで生産も可能です。」

全長10キロのとおっても強い、イツキと合体する大戦艦!ってなオーダーはした記憶があるけども・・・。

 「あのお、僕にどこを制圧しに行けど・・・?」

 「だから、超弩級高機動航空戦艦ですよ。」

思いっきり、これでもか!とドヤ顔の謙吾さんと瀬戸様だった。2人とも僕の話は聞いちゃいない。

 「籐吾ちゃん、戦闘機乗りだったのね。戦闘機シミュレーター成績はトップだって言うし、実戦も、どの航空隊のエースも勝てなかったって聞いてるわよぉ。」

瀬戸様投げキッスは今度は籐吾さんに直撃弾!だったりする。そう言えば、剣技を見ていてもただ者じゃないと思っていたけれど・・・。そう言えば、あやめさん1人おいて、どこかに行ってることが時々あったなぁ。誓って僕は、あやめさんに手は出していないけど、さみしそうな顔のあやめさんとお茶を戴きながら、話し込んだりしたこともあるのだ。後で聞いたが、樹雷に帰ってくると、航空隊に顔を出していたらしい。

 「あの・・・、実は、一樹様に皇家の樹の力で命を救って戴いてから、反射速度も上がるし、体力も、その・・・。」

そう言う真っ赤な顔の籐吾さんだった。あうう、僕だけじゃなかったんだ・・・。

 「すまない、籐吾・・・。」

巻き込んで、人ではないモノに・・・。と続けようとする僕を制して、籐吾さんは微笑む。

 「わたしは、・・・幸せです。」

そう言い、目を伏せ、もう一度僕を見た。

 「うん・・・。」

また数瞬、籐吾さんと見つめ合ってしまった。紅蓮の炎が、このブリッジで渦巻き、燃え上がってる気がする。

 「はいはい、なんとなく私まで悔しいのは、どうしてかしらね。そんなわけで、今回の作戦から正式に・・・・・・。」

 「籐吾殿、着艦許可願います!、あ、違った。一樹様、我々も同行させてください。」

ブリッジに、ぶわあっとたくさんのディスプレイが開く。ザッと見て、男性7、女性3位の割合だろうか。航空隊の面々が口々に、同時にしゃべった。こ、こら、おまえら・・・。と慌てて籐吾さんが遮ろうとする。

 「わ、わかりました、わかりました。・・・梅皇、しかるべき着艦ゲートオープン。格納庫へ入ってもらってください。謙吾さん、これだけのパイロットの、寝起きする生活スペースは?。」

あんまり見たくはなかったけど、謙吾さんの顔を見た。もの凄~く怖い目で僕を見ていた謙吾さんだけれど、ふっと笑って、

 「一樹様、梅皇は第1世代の皇家の樹です。、広大な亜空間固定されたスペースがありますよ。それに食料生産ユニットもありますから、この人員の100倍の人だって、4,5年は楽に無補給で暮らせます。皇家の皆さんにいただいた、ユニットもありますしね。銀河間航行用に一つの街も作れますよ、と言うか、もうありますけど。」

ホントこの人、前途多難よね・・・、と言う梅皇のため息混じりの一言と、だよねー、という元気なイツキの声が聞こえた。そのほか、あ~あ、という樹の声とブリッジの人の声多数・・・。瀬戸様のディスプレイは、戦闘機のパイロット達を映すディスプレイを掻き分けるようにして前に出てきた。

 「・・・まあ、そう言うことで、頑張って欲しいわ。艦隊派遣はいらないと言われたけれど・・・・・・、私たちは、あなた方をとても心配しているということは、分かってちょうだいね・・・。」

ちょっと瀬戸様には珍しく、陰のある表情だった。ううむ、若干恩着せがましいような気もするけれど・・・。いやいや、この際、素直にありがたく、ご厚意は受け取っておこう。

 「瀬戸様、ご厚意とご配慮誠にありがとうございます。全員無事樹雷に帰ってくることをお約束します。」

立ち上がって、そう言って一礼した。いつもより、複雑な表情の瀬戸様は、少し表情を緩めて、通信は切れた。

 「・・・と言うことで、航空隊の隊長は籐吾さんよろしく。それと、生活環境全般、住居や食事などは・・・。女性陣頼めるかな?」

ちょっと見回して、そうお願いする。女性陣が頷く。籐吾さんは顔に縦線が浮かんでいるように見える。ま、ある意味因果応報だよ、と。

 「一樹様、すでに500名までの兵舎は完備。全自動調理システム、大浴場、衣類などの洗浄システムも準備できております。今まで動いてなかっただけで。」

ドヤ顔その2の謙吾さんだった。

 「それでは、そこいら辺の説明は、謙吾さんお願い・・・。」

 「あなた、な~んとなく、みんなに押しつけようとなさってますが、全責任は、あなた、ですわよ。」

ぐっ、避けようとしていた話題だけど・・・。水穂さんが、キラリと光るような目をして僕を射貫く視線を向けてきた。

 「・・・命を預かると言うことですよね。冷徹な判断を下さなければならないことが、来ないことを祈ります。」

個の命よりも全体を、か。僕は嫌いな考え方だが、まあ、地球と違って樹雷の場合、1人ひとりが強いので状況は変わるようだが・・・。。今までは自分を含め6人だったけど、責任の範囲が増えると言うことだろうな。

 「樹雷皇阿主沙様から預かった航空隊です・・・。責任重大ですわ。」

胃が痛いのだ。いや、そう感じるだけだけど。水穂さんが厳しくも誇らしげな顔をしている。

 「一樹様、全機収容完了。・・・第6航空隊の・・・、トップクラス32人が来てくれています。」

籐吾さんから、報告を受けると共に、謙吾さんが空間に投影されたパネルを操作して、格納庫の様子がディスプレイに映し出された。整然と着艦してきた航空隊戦闘機。そして着艦した戦闘機は、オートメーション化した整備ロボットや、アンドロイドによって格納スペースに収納されていっている。しかし、まあ、いつの間にこんな設備を・・・。

 「ただいまから、惑星間航行速度で自動航行により超空間ジャンプ可能地点に向かいます。」

惑星間は、だいたいそのように取り決めされていて、外縁部に近いところが超空間ジャンプ可能空間と指定されている。要所要所にある航路監視ステーションからのビーコンのような信号によって、自動操縦に任せるのも慣例である。今から2時間前後、この状態が続くのだ。視線を移して、格納庫の状況が映し出されているディスプレイを見る。

 「あ~、あいつら・・・。」

小声で籐吾さんが、ぼそぼそ言っていた。それでは格納庫に行きましょう。航空隊の皆さんを迎えないと、と水穂さんが声をかけて、謙吾さんと女性陣が席を立とうとしている。

 「さあ、あなたもですわ。あなたこそ、皆さんにご挨拶しないと。」

そうだよな、あ~、何を言おう、とか考えながら席を立つ。

 「もしかして、航空隊の皆さんって、籐吾さんが・・・。」

 「ええ、模擬空中戦で叩きのめした連中です。」

さらっと凄いことを言ってしまう、籐吾さんである。

 「だって、僕の時代からしたら、もの凄く恵まれた戦闘機なのに、コンピュータに頼ったような飛び方してたし・・・。」

微妙に言い訳モードな籐吾さんである。結構いじらしいところもあるんだなっと。なんか、アナログ世代VSデジタル世代みたいな戦いだった訳ね。ブリッジ後方の転送ポートから水穂さんが消えていくのを見て、すぐに僕らも転送ポートに乗った。

 「まあ、籐吾さんももしかすると、僕みたいにやっかい事ホイホイなのかもよ。」

白い歯を見せてニカッと笑って、バンバンと籐吾さんの背中を叩いた。珍しいことに、がっくりと肩を落として、うなだれている籐吾さんだった。ちらっと僕の方を見て、すぐに視線を落とす。ふふふ、僕もいついつもいじられキャラではないのだ。

 

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