天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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なんだか、苦しく書けない中、書きためた分も投稿です。

うん、なんとか頭の中のリアクターが臨界になった気分です。

やっぱり楽しい。

読んで頂いている皆様、ありがとうございます(^^)。


樹雷から銀河へ7

 「うわ、それ大変じゃん。謙吾さん呼んで、倉庫に移しましょう。人数も増えてるし、食べ物なら結構使いやすいだろうし。」

慌てて、謙吾さんをコールして、幹凪さんやら、菊乃さんやらも呼ぶ。僕の研究室に即座に転送されてきた。どうしたんですが?一樹様といつものくりっとした目で聞いてくれる謙吾さんだった。柚樹の方を見ながら、申し訳ないなぁ忙しいのに、と思って口を開いた。

 「あのね、どうも柚樹さんがすっかり忘れていたようなんですけど、もと天木日亜さんの持ち物とか、生産された農産物やらが、まだ全く手つかずで残っているようなんです・・・。」

銀毛のネコが、どことなくすまなさそうに、重々しく口を開く。

 「約1万3千年前の樹雷正絹から始まって、農産物、畜産物・・・。いま思い出して在庫チェックを大ざっぱにやったが・・・。数十万トンに及ぶのぉ。時間凍結倉庫内にあるものは新鮮じゃし、圧縮梱包されているものは、通常倉庫だが・・・。まだ使えると良いのじゃが。」

そういえば、このネコさんというか樹は、1万3千年前の樹だった。その辺、1万3千年間の生産物があるって事?

 「一樹様、それでは、梅皇の一部にその倉庫を建てましょう。時間加速フィールドで包めば1時間程度で建築可能です。」

謙吾さんは、カスタマイズを重ね、使い倒しているらしい、汎用武器&タブレット&個人端末をタブレット形状にしてすぐに設計を始めてくれる。そう言えば、1万3千年というと・・・。

 「ねえねえ、もしかして、籐吾さんや、あやめさん、茉莉さん、阿知花さんも同じ状態だったりするのかな。」

ちょっと不安になって、籐吾さん達もここに呼ぶ。考えたくはないが、食料爆発、と言うか物品爆発? すぐに4人が転送されてくる。かくかくしかじかと聞いてみると、そういえば!と4人とも顔色を無くしていた。すみません、一樹様確認してきます!と慌てて4人とも転送されていった。謙吾さん達は、亜空間倉庫建設に慌てて散っていった。ちょうどそこに水穂さんが来てくれる。

 「もお、こんなところに閉じこもっちゃって・・・。」

いつもの、しょうがないわねぇ、と言う口調で始めようとして、雰囲気の違いに気がついたようだった。こちらもかくかくしかじか。

 「・・・売っても良いんでしょうけど、価格破壊というか、控えめに言っても銀河の市場経済を混乱させますわね、きっと・・・。」

1年前の役場職員だった記憶がちょっとフラッシュバック。道の駅とか、母ちゃん日曜朝市とか、農協の直売所とかのイメージが思い出せた。なんの役にも立たないけど。水穂さんにとってもも初めての困りごとらしい。

 ちょっとびくびくしながら、みんなの報告を待っていると、案の定、かなり、いや結構大変なことになっていた。籐吾さん達の分も合わせると、気が遠くなる量の物資があった。

 「水穂さん、アマナック委員長に、連絡取ってください。」

慌てて、一度帰ったアマナック委員長に、連絡を取ってもらう。

 「また、どうしたのだ?さっきの件かな?」

さすがに、今回はディスプレイ越しである。シックな調度品の執務室の様子が分かる。

 「お忙しいところ誠に申し訳ありません。・・・ええと、あの、申し上げにくいことなんですが・・・。あの、実は・・・。引き受けていただきたいなぁとか・・・。」

と、いままでの経緯をかいつまんで話した。

 「こちらとしては、まだまだ復興には時間も物資も必要なので、嬉しい話だが・・・。それにしても壮大でややこしい話だなぁ・・・。で、どうするのだ?」

とにかく、少なくても良いので、必要な物資を引き受けてください、とお願いした。苦笑というか、ちょっと嬉しそうな、そんな複雑な表情のアマナック委員長だった。だまってアルゼルに物資を移すとゴミでは決して無いけれど、不法投棄を疑われる量である。ある意味災害レベルの量だろう。

 そんなこんなで、午後一杯かけ、梅皇に巨大な倉庫街、というか、映画で良く出てくる港湾の倉庫のような並びが出来て、そこにほとんど一杯になる量の物資が転送されていった。最新の倉庫システムのようだが、物品の検索から、必要なものを選び、例えば梅皇の厨房に到着するまで10分程度必要らしい。転送技術やら、超高速演算コンピューターを動員しても、その時間が掛かるそうである。5人(5樹?)×1万3千年分の物資が貯蔵、保管された事実はそう言うことらしい。それとほとんど同じ量の物資がアルゼルにも運ばれていった。梅皇に保管されたのは、総量の半分の物資である。向こうは向こうで保管場所は何とかあるようである。たぶん、皇家の樹のような亜空間固定技術などだろう、たぶん。

 「本当にありがたい限りだが・・・。凄まじい量だな。」

ひくくっとこめかみが引きつっている、アマナック委員長だった。

 「・・・有効活用いただけると、本当に嬉しいです。」

こちらも引きつった笑顔で応戦した。まあ、大半がゴミになる、とかではないので良いと思うと自己満足に気持ちを強引に持って行く。時間的にはすでに夕刻になっていた。そろそろ、歓迎会の準備もできた頃だろう。

 「突発的に大変なことが起こっていたような気もするけど、なんとか始末が付いて良かった・・・。」

そうつぶやくと、水穂さんが黙ってうなづく。

 「そうだ、瀬戸様やら、阿主沙様や皇家の皆さんから贈り物をいろいろ戴いているけど、お返しとかは・・・。」

 「そうですわね・・・。何かの折にお気持ちをお返しするのが良いとは思いますが・・・。」

結構、こういう問題って気を遣うのだ。

 「皆様のお好きなものとか、また教えてくださいね。」

ええ、リスト化してまたお渡ししますわ、と水穂さんは言ってくれる。

 「また、新たな樹を賜った皇家の方がいらっしゃった時に、何か贈るのでも良いと思いますし、瀬戸様や阿主沙様へは、一番の贈り物は問題解決、みんなが樹雷に元気に帰ってくること、でしょうね・・・。下手なもの贈るのも失礼かも知れないし。」

そう言ってくれるのは謙吾さんだった。静かに水穂さんも頷いている。

 「瀬戸様には、・・・まあ、以前からお世話になっているので、珍しいモノが手に入ったりしたら私から贈っていたりもするので、あまりに気になさらなくとも良いですよ。」

さすが、女性らしい対応だなと思った。ありがとうございます。そう言って研究室の席を立ち、食堂へ行こうとした。

 「・・・一樹様、やはり食堂に行かれますか?」

そう聞いてくるのは、籐吾さんだった。

 「そうだね、航空隊は皇家の眷属では無い者が多いんだよね・・・。」

逆に気を遣わせてしまうか、な?と思って、振り返ってみんなを見る。僕はもともとそう言うところで育っていないけれど、天木日亜の記憶も、天木辣按の記憶も厳然と上と下という身分差を言ってくれる。みんな、どうとでも取れる微笑みを顔に浮かべている。お昼ご飯の時はかなり雰囲気固かったしなぁとか思い出した。

 「・・・みんなでわーわー言いながら、お酒飲みたいけれど・・・。適当にご挨拶だけで・・・。」

とつぶやくと、

 「ま、今夜は無礼講で行きますか?」

 「そうですね、司令官殿がさびしそうだし。」

そう言う、イケメンふたりだった。そう言って両手をつかまれる。ガッシリとした熱い手が頼もしいし、欲望が暴走しそうになる。そのまま、こっちこっちと転送ゲートへ行き、転送されたところは、航空隊やみんなが集まってる昼間の食堂。地球で言うところの、ビュッフェ風に料理が盛られていた。準備万端整っている。それでもやはり、今回乗り組んだみんなの表情は硬い。皇族という言葉だけが重く感じてしまう。みんな樹雷の正装だったりもする。食堂の端っこに、一段高い場所があって、そこに僕らの人数分ぐらいの料理が取り分けられている。やはりあそこに座るんだろうな。まずは形を整えないと行けないんだろうと思って、杯を取って

 「みんな杯は行き渡ったかな?」

そう言うと、それぞれの前の杯をみんな持って立ってくれる。上木晴信、上木愛優、平田健二、上木彩矢と立木幹凪さんと菊乃さんは僕らから言って右手方向に一塊に居た。落ち着いて一同の顔を見渡すのも初めてだったりする。魅力的で美しい人ばかりだな、と思ってしまう。

 「それじゃぁ、梅皇へようこそ。もしかすると、瀬戸様あたりから聞かされているかも知れないが、今回の旅は、・・・」

そこまで言って、またみんなを見渡すと、さらに表情が締まる。

 「・・・予想外の状況が起こるかも知れない。表向きは、開拓惑星の視察が目的だが、いまだ、目的地の情報は辺境でもあって、未確認の情報が多い。」

左右に視線を振ると、ゆっくり頷く闘士が多い。、みんな納得ずくということだな。

 「・・・本当は我らだけで行くつもりだったのだ・・・。だが、愛情たっぷりの瀬戸様はそれを許さず、ここに居るみんなを派遣してくれた。」

下手なウインクしながら、ちょっとだけ嫌みっぽく・・・。あはは、とみんな引きつった笑いが漏れてくる。

 「正直、今まで戦ったことの無い相手と相まみえるかも知れぬ。その際は、この船に集う、人も樹も総力を挙げて立ち向かわねばならない・・・。先ほどから、皆の仕事の様子は見させてもらった。非常に心強いものを感じている。」

どの顔も、とても頼もしく輝いていた。イツキを始め、柚樹さんやら梅皇、阿羅々樹、緑炎、白炎、赤炎、樹沙羅儀から強く暖かい波動が伝わってくる。

 「と言うわけで、共に飲んで食べて、大きな力を発揮できるようにしておきたい。そう思って、この歓迎会を準備した。今日はもちろん無礼講である!。乾杯!。」

間髪入れず、カンッッという杯を打ち合わせる音が食堂に響き渡った。みんな全員気持ちよく、それぞれ飲み干してしまった。もちろんテーブルには、おかわり用のピッチャーのようなものもあるし、自分の好きな酒が飲めるよう、テーブルもある。うわうわ、なんとなく地球の飲み会のようで、ちょっとテンションが上がる。

 「こういう雰囲気で良いですか、司令官殿、というか一樹様。」

ニッと白い歯を見せる、僕の周りに居るみんな。

 「いやぁ、ありがとう。樹雷のかしこまった飲み会ではないから充分だと思うよ。と言うほど経験無いけれど・・・。」

そう言うそばから、「皇火」が僕の杯に追加される。もう一回、グッと飲み干した。うん、うまい。そして、このまま樹雷皇阿主沙様の食卓に出しても恥ずかしくないほどの品数と手が込んでいそうな、鮮やかな色と華やかな盛り付けの料理の数々・・・。菊乃さんを筆頭に、水穂さん、阿知花さん、茉莉さん、あやめさん連合軍のお料理は、ほぼ全方位死角なし、であった。

 航空隊の男性陣を中心に、僕の方を見て、おお~っとか声が上がっている。だって、これほど濃いお酒でも、味はともかくほとんど酔えないのだ。飲むそばから分解されてしまう感じ。謙吾さんと籐吾さんが、羨ましそうな、それでいて引きまくっている表情で横目で見ているのが見えた。

 そんなこんなで、夜遅くまでみんな飲んだ。航空隊ともそこそこ打ち解けられたと思うし、新しい、幹凪さんや菊乃さんともいろいろ話せた。ちょっと、じゃなくて、だいぶこっぱずかしかったのだけれど。ただ、性的嗜好などは、樹雷やGPでは、さほど重要な用件ではないようだった。宗教国家もあるようだが、そう言うところは戒律や、規則が厳しいようで、いまだ根強い差別などはあるらしい。幹凪さんの話で、まさかと思ったが、優性人種がどうとかなどという考えまで残っている星系があるようだった。そこでは、皮膚の色が緑色で、褐色の髪、そして漆黒の目であることが選ばれた民族らしい。そうで無い者は、何かしらの難癖を付けて強制収容所などに送り込まれているようだ。幸いにも他の星系に影響が及ばないのは、近隣星系に対して鎖国をしていることと、自らが最も優れた民族であると言う自負があるためのようだった。その自負も、根拠はかなり怪しく、シードを行った文明の遺跡に、その文明が王とする人物の描写があり、それがそのような容姿の人間だったらしい。どっかの星の金髪碧眼の白色人種こそ優性人種である、とかいっていたちょび髭の某党首が目に浮かんだ。

 一樹様、まあ、一杯どうぞとか言われて皇火を注いでもらったり、へええ、休みの日は格ゲーやってるの?とかの会話が楽しかった。なんだかわりと、地球の若者と変わらないなぁ、とか思ったのだった。もちろん、こう言った航空隊などに所属している以上、やはり、乗り物系は好きらしく、樹雷にも地上の個人移動用のバイクのようなものや、クルマのような物はみんな一様に所有していたり、レースに似たイベントに出ていたりするようだった。

 単純に移動そのものは、物質や人体転送技術が成熟し、完璧に普及しきっているため、ほとんど星系内なら転送ポートを乗り継いでどこにでも行けて、急ぐ用件はそれで済んでしまうようである。それではやはり味気ない、と考える人もたくさんいるので、そう言った娯楽用の乗り物もちゃんと市場としてあるらしい。

 さすが樹雷の闘士、と思えることも会話から聞き取れて、例えば天樹の地下に一大トレーニング場のような場所もあって、最下層から上層部に人力で昇るのだが、昇るまで様々な危険動物もいる上に、樹雷の平均的な闘士で、1週間程度かかるコースもあるらしい。みんな一日の内多い者で8、9時間程度肉体鍛錬に充てているようである。地球なら消防士とか警察官とか自衛官の職にでも就かないと、そこまで時間を割いて身体を鍛えるなんてできないだろう。ちなみに、樹雷も地球の一日と大差なく、24時間強と言ったところ。さすが国民皆闘士と言われるだけあるなぁと感心した次第。それ聞いて、さもありなん、なんて納得気味に頷いている自分も地球人ではないなとか思ったりする。

 ほとんど酔えないけど、久しぶりに楽しい飲み会だなぁ、と思っていると謙吾さんがアルゼルの祭りの映像をサイドに映し出してくれた。あのリルルとメルルも1年経って、子どもらしい表情を取り戻していた。アルゼルに伝わる古の衣装をまとって、舞いに参加していた。うんうん、大きくなったなぁ、と微笑んで見ていると、一段高い来賓席のようなところにアマナック委員長が座り、その隣には、奥様らしい方、その隣には・・・・・・、長く赤い髪をヘアバンドで止めた・・・、あれは、鷲羽ちゃん??。

 「ねえ、謙吾さん、あのさ、あそこにいるのは・・・。」

 「ああ、鷲羽様ですね。」

事も無げにそう答える謙吾さんだった。

 「あの方に、第1世代の皇家の樹が作る亜空間だの、その亜空間内に固定された惑星系という壁なんて関係あると思います?」

今さらそんなこと聞きますか?的な表情でそう問い返されてしまった。そういえば、アマナック委員長の古くからの友人だと、委員長本人が言っていたような気もする。

 「まあねぇ・・・、でもああやって、さらっと座ってると、びっくりするなぁ。」

正直な感想である。水穂さんを見やると、やはり驚いている様子である。

 「・・・ほんとうに。伝説の哲学士、銀河随一の科学者の通り名は伊達じゃないですわね。」

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