天地無用!~いつまでも少年の物語~。第2部   作:かずき屋

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激怒のおっさんです。

また、後先考えずの行動が、どうなることやら。


樹雷から銀河へ9

「がっっ・・・!」

あの重い思念波が、苦しげな声を発して、一瞬にして途絶えた。頭を抱えていたブリッジのみんなが目が覚めたように辺りを見回している。すぐに目の前の操作盤に視線を移して自分たちの仕事に戻っていた。

 「・・・アストラルシールド装置修復開始。超長距離リープシステムへのエネルギー供給停止。メインリアクター・・・、停止しません!」

謙吾さんが血相変えて、僕の方に振り返った。左手は、実はまだ熱いままだったりする・・・。いや、手ぬるいとばかりにどんどん熱くなってきていた。今着ている樹雷皇族の服の左腕が焦げ臭い匂いを発してきている。結構耐熱性はあったと思うけど・・・。

 「あのぉ・・・、ね、まだこれ、暴走してまして・・・。熱いのね~。」

なるべく申し訳なさそうに、そう言ってみた。左腕から煙のような物を感じた。

 「ええええっ!どうすんですかっっ・・・、この辺には、赤色巨星も褐色矮星も近くにないですよっ!」

ブリッジのみんなが、思いっきり後ろに引いている。謙吾さんが見事に慌てていた。銀河の端っこに近いところである。中心部に近い樹雷とは訳が違う。

 「一樹様、このまま跳びますか?」

ラノちゃんが、微妙に無表情な声でそう問いかけてきた。

 「・・・跳ぶったって、1000万光年も跳んだら帰って来られないじゃん。」

さすがに樹雷だギャラクシーポリスだといっても、数万光年対一千数百万光年の距離だと桁違いの距離である。あまりにも遠すぎる。自らの位置を確認して、観測して、座標を得ても、同じ航法を使って同じ場所に帰ってこられるか非常に怪しい。元々の場所も相対的に動いているし。ちなみに、上位超空間航行でも、たぶん3~4年掛かるだろう。それも超空間航行の安全な航路があれば、である。天の川銀河を飛び交ってる宇宙船は、安全な航路を数千年掛かって開拓した結果である。

 「とりあえず、目の前の第2惑星にもう一回放出して、そのあと、第2惑星と第3惑星の

軌道間にある小惑星にでも放出しようと思う・・・。」

というわけで、やれやれ、と口に出さないまでも、多かれ少なかれみんなそう言う表情をしながら前に向き直る。謙吾さんの操作で、さっきのシーケンスが繰り返される。そして、2度ほどメインリアクターのラインからエネルギー放出。ようやく梅皇のリミッターが効いて、左手は熱くなくなっていった。

 「しかし、まあ、なんとも凄いエネルギー量だこと。」

梅皇がさすがに呆れてため息をついている。暗い青い色に見えていた第2惑星は、雲が晴れるように、白い雲と青い水、土色が垣間見えるごく普通の地球型惑星に変貌していた。

 「さっきのは、なんだったのでしょうか・・・。ともかく、生き残ったプローブに探査させましょうか?」

水穂さんがそう尋ねてくれる。うんそうだね、戦闘態勢は継続でお願いします。と言って、しばし静かな時間が流れた。

 「一樹様、残存プローブから映像来ました。」

神木茉莉さんの静かな声とともに、梅皇のブリッジの一番大きなスクリーンには、梅皇のレーダー等の探査結果が、その下に、ずらりとプローブからの探査結果の映像が出た。今度はジャミングはない。特に異常は・・・。

 「・・・。え~っと、第2惑星と第3惑星の間の小惑星帯はどこ?」

ブリッジのみんなが、ビクッと首をすくめるような動作をした。立て付けの悪い木の扉がきしむように、神木あやめさんがこちらを向く。出来れば話題に関わり合いたくない、そんな雰囲気を背後に大きく纏って。

 「・・・もともと、この惑星系には岩石型の惑星が3個あったんでしょうね、第2惑星の向こうにあった小惑星帯がそうだったんでしょう・・・。さっきのエネルギー放出で寄り集まって星になりました、と言うか戻っていきましたよ。」

神木あやめさんが、こめかみから汗をひとしずく垂らしながらそう言った。

 不可思議に多いあの小惑星帯、というかデブリとでも言うか、たくさん漂っていた小惑星の帯が消えていた。その代わりに、第2惑星よりも少しだけ小さな惑星がひとつ、さもここの軌道が私の本来の居場所です、とでも言ってきそうに、軌道を周回していた。第2惑星よりも恒星より遠いので、植物の緑と水の青のようなものも見えるが、白っぽいのは氷だろうかそう言う星が出来ていた。

 「惑星って割と簡単にできちゃうんだ・・・。」

 「・・・あなただけよ!」

バカねホント。と言う目でこちらを見る水穂さんと、阿知花さんだった。くくくと謙吾さんと籐吾さんは笑いをかみ殺している。うおっほん、といかにもな咳払いをしてみた。

 「おおっと、仕事仕事。」

 「・・・くすくす。」

2人とも、そんな仕草が可愛いなぁとか思っていると、茉莉さんがプローブの追加情報を報告してくれる。今では第4惑星になった巨大ガス惑星近傍を探査していたプローブの情報だった。

 「私たちが最初、第3惑星と言っていた巨大ガス惑星の背後、いくつかある衛星・・・、内側から4番目でしょうか。そこに天木家の艦隊と開拓団らしき艦影が不時着しています。こちらが得ていた情報の30%程度の艦隊です。艦隊損耗率は70%超えていますね。かなり損傷を受けている様子です。」

 「護衛の航空隊と、医療班を編成して、救助に派遣したいけど・・・って緊急用の医療機体なんか積んでたっけ?」

 「はいはい、ありますよ。ウチの父母、幹凪と菊乃、上木の3人と平田を乗せてきた機体がそうですよ。樹雷の医療用機体です。それに、瀬戸様が手配してくれた、大型の作業輸送船も一隻あります。」

謙吾さんが前を向いたまま、そう言った。さすが瀬戸様抜け目ない。

 「それじゃ、梅皇コントロールに移行して、籐吾は、航空隊を指揮し輸送船および医療船を率いて救助活動に・・・・・・。」

そう言いかけた時に、水穂さんが鋭く叫ぶように言った。

 「第2惑星衛星軌道上に非常に微少な、2つの動振感知!。何かが超空間ジャンプしました。」

同時に得体の知れない力を感じた。だが、あの重っ苦しい思念波ではない。

 「梅皇、光應翼は?」

 「展開したままよ。」

そう返答を聞いた数秒後、何かが至近距離に超空間ジャンプアウトする警報が鳴る。同時に、僕の頭に悲鳴が聞こえる。他のみんなには聞こえていないようだった。皇家の樹?いや、こちらの皇家の樹ではない。ジャンプアウトしたものが強烈な悲鳴を発しながら至近距離を飛んできた。何の悲鳴?といぶかしむ間もなく籐吾さんが、回避行動を取った。慣性制御システムがぎりぎり応答したらしく、僕らに結構大きな横方向のGがかかった。

 「強大なエネルギー反応!。・・・なにっ・・・、光應翼をすり抜けた?」

わずかな差で直撃を避けた籐吾さんが、ひっくり返りそうになる船体をどうにか立て直した。その悲鳴を発するモノは、梅皇の直近で莫大なエネルギを発した。そんじょそこらのエネルギー弾とか梅皇搭載の大型縮退ミサイルとかそう言うレベルのエネルギーではない。もっと大きなモノ・・・。今度は、何かに耐える梅皇の悲鳴が聞こえると同時に、僕も背中が焼かれるような痛みを感じた。

 「ぐうっっ!、」

 「一樹様、縮退リングの上部が消滅!左翼中破!。航空隊用カタパルト、および大口径ブラスター使用不能!一撃目は回避しましたが、梅皇の損害も大!。」

謙吾さんが厳しい口調で言った。

 「被弾部分の閉鎖および修復急げ!。」

 「駄目です、自動修復装置ごと持って行かれています。・・・航空隊は全員無事です。」

 「第3第4補機縮退炉制御不能、コントロール機能切断、切り離します・・・。切り離し成功。梅皇の後方20光秒の位置で縮退崩壊!籐吾殿、船体の維持を!・・・。」

痛みに耐えるそばで、籐吾さんやあやめさんの緊迫した声が飛び交っていた。メインリアクターが止まって銀河間航行モードから戻ったラノちゃんが、イスにしがみつきながらこちらを心配そうに見ている。水穂さんがさっきの敵を追跡していた。

 「梅皇に損害を与え、敵は後方の恒星へ突入、落下・・・、まだエネルギー放射続いています。・・・恒星に穴を開けながら・・・恒星の後方に抜けたところで・・・爆発、消滅しました。ちょうど縮退崩壊した縮退炉が、恒星攻撃余波の恒星中心部からの噴火フレアを飲み込んでいます。」

一撃目は、消滅した。そう、その間僕は、焼け死ぬ皇家の樹の悲鳴を聞いていた。そのように聞こえたのだ。背中の火傷のような痛みと、不条理なことにへの怒り、そして悲しみを直接心に

叩き込まれていた。意識が飛びそうになる。

 「一樹様、大丈夫?」

ラノちゃんの声が聞こえる。一樹様なのね、お兄ちゃんじゃないのね~という、この場に至って何を今さら、という思いにどうにか現実に引き戻された。

 「なんとか・・・。梅皇の影響を食らった・・・。それと・・・、い、今のは皇家の樹に似ていた。」

そう言うのが精一杯だった。苦しげな声に、阿知花さんが慌てて僕のそばに走ってきて、上半身の衣服を脱がせようとした。

 「阿知花さん、大丈夫・・・。もう一つ、たしか・・・。」

 「先ほどと同じ動振感知!」

水穂さんの声。また同じ悲鳴が聞こえた。

 「このぉっっ、柚樹、イツキ来い!」

誰だか知らんが、なんちゅうことをするのか!と言う怒りが湧いた。同時に柚樹を伴い、外に空間移動した。梅皇のすぐ前だ。小さくなったイツキが肩に乗る気配がある。柚樹は九尾の狐の格好だった。

 「イツキ、柚樹、光應翼を展開してくれ。」

目の前に、微妙に色の違う光應翼が2枚展開した。もちろんその向こうには梅皇の光應翼もあった。さらにその向こうの方から、泣きじゃくる皇家の樹の気配が来る。船の外なので、その気配もクリアに感じられる。顔をくしゃくしゃにして涙をぽろぽろこぼしながら泣きじゃくる子どものイメージだった。梅皇の光應翼で勢いをそがれ、柚樹、イツキの光應翼でかなり勢いが弱まった。

 「・・・大丈夫だから、もう、大丈夫だから・・・。」

最後に僕の光應翼と両手でどうにか受け止められた。それでも手のひらから煙が上がる。熱い。ぎゅうっとそのまま抱きしめた。

 「おまえたちをこんなにしたのは誰だ?」

あのね、兄弟のね、とその樹は応える。というか種?そんな手触りが手のひらから感じられた。そして、そいつはどこにいる?と聞くと、こっち、と教えてくれた。

 「柚樹、イツキ行くぞ!梅皇、付いてきてくれ。」

むかあぁっ!と湧いた怒りはそのまま、第2惑星を目指し空間転移する。待ちなさいってば!と言う梅皇を尻目に、一瞬後に、第2惑星の地表すれすれ。うららかな日差しとそよ風が気持ちイイ。目の前に緩やかな丘があり、大きな樹とそのそばに小さな樹が見えた。

 「くおらぁぁぁぁぁ!、こんな小さな子達になんてコトさせるんだっっ!」

す~っと息を吸い込んで大声で腹の底から怒鳴った。柚樹とイツキも敵意丸出しである。二人(?)2樹とも隙あらば飛びかからん、ばかりだった。

 「・・・お、おまえ達が悪いんだぞ、こんなところに母様を繋いで。母様は、母様は・・・。」

おずおず、と言った感じだろう。さっきの思念波が語り始める。え?、母様?、で、なんで皇家の樹がこんなところに?思念波も比べものにならないくらい弱いし。

 「・・・わたしの・・・、子ども・・・達をいじめるのはだれ?」

やわらかな、されど強い思念波がそう語りかけてくる。

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