少年、彼の地にて斯く暮らしたり   作:長財布

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物語の途中ですが視点を第三者から主人公に変えました。
そっちのほうが書きやすいのですが読んでる側からはどうなのでしょうか?


国会議事堂にて

極上の食事を堪能した後、俺はベッドで横になっていた。伊丹の意識はまだ戻っていないらしい、あとで謝りに行かないとな・・・

 

ぼんやりと天井を眺めているとある重大な事に気がついた。

 

「あれ、俺って今拉致被害者なんじゃね?」

 

伊丹は自衛隊の隊員だから一応捕虜という扱いだろう。しかし俺は民間人という事になっている、そんな俺が敵国の兵士に捕らえられたのだ。

 

邦人救出作戦とかで大編隊が来たらどうしよう・・・

 

なんて考えていると部屋の外でメイドたちが慌ただしく動き回っているのが見えた。

 

廊下に出てメイドの一人をつかまえる。手には伊丹のボロボロになった迷彩服を持っている。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

「いや、その・・・伊丹隊長は目が覚めたんですか?」

 

「えぇ、先程」

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

伊丹の部屋へと向かう。中にはメイド長を始めとする人間+ケモ耳のメイドたちが居た。

 

「あ、帆斗君。無事で何よりだよ・・・体の方は大丈夫?」

 

俺は伊丹に頭を下げた。

 

「すみませんでした!」

 

周りが一気に静まり返った。メイドたちも驚いた表情で俺の方を見ている。

 

「い、いや・・・そんな、頭を上げてよ」

 

「俺が先に出たばっかりにこんなことになってしまって・・・」

 

「まぁ良かったよ、こんなケモ耳のメイドさん達に会えたし」

 

えぇ・・・

 

てっきりドヤされるかと思ったのに、それにケモ耳って・・・ブレないなぁ。

 

「でも次からはあんまり先走って前に出ないでよ」

 

「はい・・・」

 

その後、俺達はやって来た第3偵察隊の人達に連れられ、今度こそイタリカを後にした。その間にゴタゴタがあったのだがここでは割愛しておく、ピニャ殿下には今度胃腸薬を差し入れしよう・・・

 

ひと足先に降ろされ自衛隊から事情を聞かれた。拉致られたカンジになっているのだから仕方ないか。

 

「あの、連れて行かれる際などに酷いことはされていませんでしたか?」

 

「だ、大丈夫ですよ。皆さん、て、丁重に扱ってくれました」

 

大嘘だが。

 

「その割には随分と衣服がボロボロでしたが?」

 

「それは馬から降りるときにミスって落っこちちゃったからですよ。自分で・・・」

 

担当の自衛官は頭を抱える。我ながらかなり無理がある言い訳なのは分かっていた。

 

だが事を荒立てたくない伊丹の気持ちを尊重してのことだ。ここで変なことを言ってしまえば講和自体がご破算になってしまう。

 

「べつに伊丹の為だとか思わなくて良いんですよ?」

 

もう一人のメガネに自衛官が言った。見た目からして厭味ったらしいカンジがムンムンと伝わってくる。実践の訓練とかでは見たこと無いから事務員的なポジションなのだろう。

 

「あ、自分は柳田といいます」

 

「はぁ、別に伊丹隊長のためとかじゃないんで・・・」

 

「そうですか?私が聞く限りそう聞こえるんですがねぇ」

 

この人もしかして超能力者か何かだろうか?しかし俺がここでゴリ押しで通しておいたら何もできないだろう。

 

「いいんですよ、自分が蒔いたタネですし・・・」

 

「そうですか、まぁ今回のことはあまり深く思い詰めないでください。伊丹も美人の騎士達に踏んづけられてもらって喜んでるでしょう」

 

ひでぇ・・・

 

それを横で聞いていた自衛官がコホンと咳払いして口を開いた。

 

「まぁ今回はそういうことにしておきますんで・・・」

 

そしておもむろに立ち上がると俺に向かって頭を下げる。

 

「危険な目に合わせてしまい申し訳ありませんでした」

 

「えぇ・・・そんな、本当に違いますから!!」

 

ここまで謝られて思い詰めるなってムリだろ・・・

 

「ああそうだ。数日後、国会で参考人招致があります。日本の民間人という視点から証言していただきたいのです」

 

「国会にですか?でも証言って・・・」

 

「大丈夫です、聞かれることは予めこちらで用意しておきますし、答えたくない質問はべつに答えなくて構いません」

 

「・・・まぁそういうことでしたら、自衛隊の方にも迷惑かけっぱなしですし」

 

「ありがとうございます。では後日、お迎えに上がりますので」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

日程の調整を終えて建物を出ると―――

 

「カイト!」

 

リュウが立っていた。俺を見るなり駆け寄って抱きしめた。

 

「リュウさん、苦しいです」

 

「馬鹿者!私達がどれだけ心配したことか・・・」

 

涙を流しながら抱きしめるリュウに俺はただならぬ罪悪感を感じた。

 

「はい、すみませんでした。リュウさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「久々の日本だなぁ・・・」

 

東京で買ったジャケットを羽織り俺はタンクローリーやトラックが行き来する門の前に立っていた。

 

季節の移り変わりが無いこちらとは対象に日本は今冬だという。同行するテュカ、レレイ達も厚手の服に戸惑いつつ迎えを待っている。

 

ロゥリィはいつもの服装、寒さなどは感じないのだろうか。

 

高機動車が目の前に停車する。中から富田や栗林が降りてきた。彼らは国会に出るわけではないので普段着姿だ。

 

そして黒塗りの高級車がやって来た。中にはピニャとボーゼスが先に乗っていた。

 

「あれ、この二人も一緒にいくんですか?」

 

俺の質問に柳田は頷いて返す。

 

「えぇ、彼女達は国会とは別件ですが」

 

帆斗達は高級車へと乗り込み、門へと向かう。

 

「そういえば門、初めて通りますね・・・」

 

「そうだったねぇ、君は転生されてきたんだから」

 

転生・・・最近ライトノベルでよくあるヤツだ。別に俺死んでないけどな・・・

 

門の中は長いトンネルのようだった。暗闇がずっと先まで続いている。

 

やがて出口が見えてきた。そこを抜けると――――

 

見慣れた風景・・・ではなかった。

 

コンクリートの壁が設置してあり警備として自衛隊が立っている。

 

チェックを終えて壁の向こうへと出るすると今度こそ見慣れた銀座の町並みが現れた。

 

「こんな街のど真ん中に門ができてたのか・・・」

 

横には慰霊碑が建立されている。先の銀座事件の犠牲者の名前がかかれているそうだ。

 

「あの、橋立さん」

 

「何でしょうか?」

 

女性自衛官が声を掛けてきた。

 

「これを狭間陸将から貴方に渡してくれって頼まれていました」

 

「あぁ、わざわざすみません」

 

手渡されたのは花束だった。

 

慰霊碑の話を聞いて俺も花を供えようと狭間陸将に掛け合った所、断られてしまった。此方の世界の植物を日本へ持ち込むわけにはいかないとのことだ。

 

それで日本で買った物なら問題ないということで陸将が手配してくれていたようだ。

 

献花台に花束を置いて手を合わせる。銀座事件以降、俺の知り合いの一人が行方不明になっているらしい。俺は向こうで暮らす身、やっておくべきだと思ったからだ。

 

ちなみにロゥリィ達は帰りに行うらしい。

 

国家公安委員会の駒門さんに案内され俺達はバスへと乗り込む、途中テュカのスーツをあしらえたり牛丼を食ったりして国会議事堂へと到着した。

 

2ちゃんねるのまとめサイトには誰が書いたのか、国会にエルフが出るというスレが立ってせいでそれ界隈が大賑わいしていた。SNSも幾つか巡ったがどこもトレンドには「国会 エルフ」という単語が見て取れた。

 

そしていつもならチャンネルを変えるであろうNHKやニコニコ生放送の国会中継、特にニコ生の方は立ち見ができるなど、前例のない程のカウントが回っていた。

 

伊丹を先頭に中へと入る、中はいつもテレビで見ている後継そのままだった。カメラに多数の与党、野党の議員、その中に俺達は居るのだ。

 

テュカを見て回りがざわつく。当たり前だろうな・・・

 

「えー、皆さん、コレより特地に関する参考人質問を始めます」

 

委員長の声とともに俺達への質問が始まった。

 

「社民党、幸原みずき君」

 

「はい」

 

幸原議員は与党議員の向かいの台に立ち1枚のパネルを置いた。そこには炎竜と遭遇した際の犠牲者の人数が大きく書かれていた。

 

「伊丹参考人にお伺いします。自衛隊の―――」

 

幸原議員の質問は犠牲者を出してしまった事に対する自衛隊の不手際の有無だ。

 

委員長が伊丹の名前を呼ぶ。

 

伊丹が前に出て言い放ったのは・・・

 

「それは、ドラゴンが強かったからじゃないんですかね・・・」

 

さらに追求する幸原議員に伊丹は自前の理屈を展開、自衛隊がこんな事言って良いものだろうかと不安になってくる。

 

防衛省の補足説明も加わり幸原議員は渋々ながら質問を終えた。

 

レレイやテュカへの質疑応答もあったが相手の思っていた答えでは無かったようだ。

 

そして俺の番・・・

 

「橋立帆斗参考人」

 

「はい」

 

俺は深呼吸して壇上に立つ。

 

「貴方は門が開く半年ほど前から特地に居たそうですね」

 

「はい、どういった理由かはわかりませんが気がついたら向こうにいました。ただ半年と言うのは向こうの日にちで日本の暦では分かりません」

 

俺の答えに辺りがざわつき始めた。

 

「特地に日本人が?」

 

「一体どうやって・・・」

 

「静粛に!」

 

委員長の注意で質問が続けられる。

 

「貴方も自衛隊に保護されたようですが難民キャンプでの生活に不自由はありませんか?」

 

「はい、自衛隊の方たちは私達を保護してくれたのに加え、世話までしてもらっています。むしろ私の方が自衛隊に迷惑を掛けっぱなしです」

 

「そうですか」

 

幸原議員の表情は不満げだ。自衛隊の不手際を聞き出せず焦っているようにも思える。

 

「炎竜に対する犠牲者について、自衛隊の対応に問題はありませんでしたか?」

 

「分かりません、私ともう一人、魔導師の女性が居たのですが、コダ村ではなくワカ村という集落から避難してきました。ですからあのボードは少し間違っています。それに自衛隊が保護したのは炎竜により親族を亡くした子供や老人、生活必需品を失った家族達です。無事だった人達は他の村に避難したと聞いています」

 

野党議員が一斉にバツの悪そうな顔をした。小声で「おい、話が違うぞ・・・」とも聞こえてきた。

 

その後、特地での暮らしや炎竜の脅威などを話して俺の質問は終わった。

 

ロゥリィと幸原議員の一触即発の事態もあったが何とか無事に答弁を終えることが出来た。

 

帰りのバスで再びSNSを見るとトレンドタグに俺の名前や異世界転生とか書いてあった。

 

観光も兼ねて箱根へと向かう伊丹達とは別行動で俺は東京で少し買い物をした後、一足先に門へと戻った。

 

後々考えればそれは賢明な事だったと思う。

 

数時間後、伊丹たちを米露中の工作員が襲ったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

ご愁傷様です。主に工作員の皆様方・・・

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