少年、彼の地にて斯く暮らしたり   作:長財布

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陸上自衛隊特地派遣部隊

この世界にはスマホや電話、モールス信号なんてものはない。故に情報が伝わるには時間がかかる。

 

しかも人から人へと広がっていくのでその途中で噂に尾びれ背びれが付いて実際よりもかなり誇張されて伝わってくることが多いのだ。

 

かなりローカルなこの村でも村を中継して貿易を行う商人からアルヌスに何やらおかしな門が出来上がってその門から変な人達が侵入してきたという話が伝わってきた。

 

なんでも帝国が攻めても返り討ちに遭ってしまったのだという。

 

帆斗自身、帝国へは何度も足を運んだことがあった。大体が以前作ってもらった銃の弾薬を取りに行く為なのだが帝国は多くの人口からかなりの国力を誇っている。

 

そんな帝国を返り討ちにあわせ、さらに後から入ってきた情報だが連合諸公国からなる軍隊も壊滅させたという知らせが入ってきてからはこの噂は人から人へと渡っていくうちに脚色されたものだと思うようになった。

 

この世界の兵士は高貴な貴族が多い、装備を買うだけの財力があり、戦争で活躍すれば元老院などでの影響力が強くなるからだ。

 

リュウや帆斗はそんな噂には興味が無い様子で最近の井戸端会議の話題はそのアルヌスでの話でもちきりで正直うんざりしていた。

 

「リュウさん、どう思いますか?」

 

「アルヌスにやってきた人達のことか?あんなもの単なる噂だろう。帝国や属国の連合軍を打ち破ったなんて何かの間違いだ」

 

「ですよねぇ~」

 

帆斗達は村の巡回を続ける。最近ラーダ村長はイタリカへ出張続きでその間の村の治安維持は彼等が行っているのだ。

 

といっても夫婦喧嘩の仲裁や作物の成長具合の確認、施設の維持が主な内容であった。

 

「カイトお兄ちゃんだ」

 

村のやんちゃっ子のイーラがやって来た。

 

「イーラ、どうしたんだ?」

 

「向こうでカイトお兄ちゃんがこの前使ってたすまほを持っている人が居たの」

 

「なんだって!?」

 

帆斗はこの世界に来た時、ポケットの中に幾つかの小物が入っていた。シャーペンやミニノートにスマホ、しかしスマホはこの世界にいても使えないのでここに来た時に写真を撮った位だ。

 

イーラは帆斗が持っていたスマホに興味を示し少し使わせていた。バッテリーが切れてからはずっとリュウの家に置きっぱなしになっている。

 

「その人は今何処に?」

 

「入り口にいると思うよ?」

 

帆斗は駆け出した。スマホを持っている人間がこの世界に他にも居たなんて、俺と同じ漂流者の可能性があったためだ。

 

「ちょっと、どうしたんだ急に・・・」

 

必死に後を追いかけるリュウ。入り口にはイーラの言ったとおりiPhoneを持って家や風景を写真に収めている人が居た。しかしその男性は一般人ではなかった。

 

緑を基本とし濃淡の別れた独特な服装、これは森や草むらの中に隠れた時に自身の姿を見えにくくするもの、さらに腕には見慣れた国旗が施されていた。

 

「日の丸、陸上自衛隊・・・」

 

帆斗が見たのは日本国陸上自衛隊の隊員であった。しかも一人や二人ではない、複数人、およそ1個分隊位の人数だ。

 

彼の姿を見た自衛官もまた驚いた表情をしていた。異国の地で現地に住む日本人を見つけたような感覚、いやそれ以上だろう。

 

なんたって日本と特地が繋がったのはつい最近の事だったからだ。

 

 

 

 

陸上自衛隊特地第4偵察隊隊長の坂出瑞樹二等陸尉は特地の原住民と一緒に暮らしていた日本人が居たことに驚きを隠せなかった。

 

高校指定のワイシャツに大戦時に使われていたようなボルトアクション式のライフルを携えた姿は違和感しか感じない。

 

坂出と副長の宿毛は立ち話もなんだからと言われ村の集会所へと案内された。

 

「えっと・・・日本語は分かりますか?」

 

「懐かしい響きですね、日本語なんて久しぶりに話しました。」

 

その言葉を聞いて坂出は確信した。間違いない、彼は日本人だ。

 

彼の名前を聞いてすぐ本部へ伝え日本政府へ連絡、戸籍を調査した所同じ名前の人物がヒットした。顔写真や年齢も一致したという。

 

「橋立帆斗君、キミはどうやって特地に来たんだい?」

 

「特地ってのはここでいいんですかね?それがよくわからないんです。気がついたらここに居たってカンジで・・・」

 

「ここに来たのはいつから?」

 

「半年前位だと思います。詳しい月日はわかりませんね、こっちは向こうと暦が少し違うんです」

 

坂出の質問に帆斗はスラスラと答える。それを宿毛がメモしていった。

 

「それは?」

 

坂出は帆斗の持っていたライフルを指差した。

 

「自衛のためにこっちで作って貰ったんです・・・銃刀法違反にはなりませんよね?」

 

因みにこれはウソだ。リュウに爆轟魔法の使い道について聞かれた際に興味本位で作ったものだ。これを作った鍛冶屋のおじさんにも口外しないように言ってあるし口止め料も払っている。

 

「うーん、まぁ微妙なところだねぇ。といっても特地は今のところ正式に日本の領土っていう訳でもないし・・・まぁ今回のところは見なかったことにしておくよ」

 

「それはどうも」

 

「最後にだけど、ここは戦闘地域になる。キミが門を通って此方に来てない以上強制は出来ないけど日本への帰国をおすすめするよ。どうする?」

 

ジャーナリストの仕事などでアフガニスタンやイラクなどの戦闘地域に行く日本人は居る。帆斗は現段階では旅行者という扱いでしかない。パスポートなどの正規の出国手続きを行ってはないが仕方がないだろう。

 

「いえ、私は日本にまだ戻る気はありません」

 

帆斗ははっきりと言った。

 

「そうか、我々はアルヌスにある駐屯地に居るから困ったときはいつでも来ていいからね」

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

こうして特地第4偵察隊のワカ村からの情報収集任務は完了した。

 

「まさか特地に日本人が居るとは、報告書どう書こうか・・・」

 

駐屯地に帰投するする高機動車の中で坂出は頭を抱える。

 

『あー・・・こちら第3偵察隊、ドラゴンと思われる生物に襲撃された集落を発見。一応周辺の村に情報を伝えておいて下さい』

 

無線機から第3偵察隊隊長、伊丹耀司2等陸尉の声が聞こえてきた。

 

「ドラゴン?」

 

同乗していた瀬戸内三曹が聞き返す。

 

「ワカ村に戻るぞ、松島!」

 

「了解しました」

 

ハンドルを握る松島二曹がハンドルを切ってUターンした。後ろを走る73式小型トラック、軽装甲機動車もそれに続く。

 

高機動車に揺られる中坂出は呟いた。

 

 

「ホント、特地はなんでもありだな・・・」

 

 

 

 

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