少年、彼の地にて斯く暮らしたり   作:長財布

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イタリカへ

「なに!?それは本当か」

 

「えぇ、聞いた所自由に持って行っていいそうです」

 

帆斗、リュウ、カトー、レレイは駐屯地の外、翼竜の死骸が放置してある場所に居た。

 

伊丹にダメ元で聞いた所返ってきた言葉は「まぁ、いいんじゃないの?」だった。

 

念のために狭間陸将の所まで聞きに行った所二つ返事でOKしてくれたのだ。

 

「なんと・・・これだけの翼竜の鱗が手に入ったらしばらく生活には困らんのう」

 

数日後、皆を集めて翼竜の鱗の最終作業が行われた。

 

「うわ、くっせぇ・・・」

 

しばらく放置されていた翼竜は腐敗して強烈な匂いを放っている。

 

「こんな薄布一枚でよく耐えれるもんだよなぁ・・・」

 

せっせと翼竜を解体していく住民を見て帆斗はしばらく布を口元に巻いて奮闘していたものの途中で我慢の限界が来てしまった。

 

自衛隊の人に頼んでガスマスクを借りてきた。息苦しいが腐臭を嗅ぐよりは何倍もマシだ。

 

1日で大きな麻袋3つ分の鱗や爪などが集まった。しかしまだ沢山残っている。

 

「この鱗とは何に使われるんです?」

 

帆斗が重たい麻袋を運びながら尋ねる。

 

「防具などの表面に使われるんじゃ。翼竜の鱗は軽くて硬い故、胸当てや甲手に付けるらしいのう」

 

「なるほど」

 

ドラゴンの鱗で防具作るなんてモンハンみたいだな。と帆斗は思った。

 

手に入った鱗は自衛隊の方にも幾つか渡した。日本に持って帰って材質や耐久などを分析するのだという。

 

「これだけの鱗、売るなら信用のおける人物に頼みたい」

 

「確かにこの量だとそこら辺の貿易商に頼むのは気が引けるからな」

 

レレイの提案にリュウが同意した。

 

「誰か居ませんかねぇ?」

 

「そうじゃのう・・・あぁ、イタリカに儂の知り合いが店をやっておるんじゃ。彼に頼むといい」

 

「イタリカ、ですか・・・」

 

イタリカはテッサリア街道の先にある都市だ。アルヌスからとなると少し距離がある。

 

「この量を運ぶには少し難儀ですねぇ」

 

そう呟く帆斗にカトーが笑いながら言う。

 

「なんじゃ、自衛隊の使っているあの荷車を使えばいいではないか。馬などの動力がないにも関わらず人を20人乗せても平気で動いておったんじゃ、鱗の1袋や2袋くらいどうってこと無いじゃろう」

 

「あぁ、車があるんだった」

 

特地での暮らしが長かったせいか帆斗は自動車なる近代文明の利器を完全に忘れていた。

 

自衛隊側に頼んでみると第3偵察隊の人達が協力してくれた。イタリカの偵察も兼ねているらしい。

 

仮設住宅がある場所に3台の車輌が停車した。

 

「偵察ってこんなのでやってるのか・・・」

 

隊員たちは高機動車に73式小型トラック、軽装甲機動車に分乗しているようだ。荷物を高機動車に乗せて自分たちも乗り込む。

 

「自衛隊の車輌に乗れるなんて夢にも思わなかったなぁ・・・」

 

駐屯地に担ぎ込まれた時は意識が朦朧としていてあまり見れなかったが改めて見回してみると内装はとてもシンプルだ。

 

シートは座り心地は二の次のようだ。こんなのに座って何時間も揺られるとはさぞ大変だろう。

 

「あぁ帆斗君。これ、検査終わったから返すよ」

 

伊丹が取り出したのは帆斗が持っていたライフルだった。

 

「どうも、でもいいんですか?」

 

「まぁキミは微妙な立場なんだよね、でも日本籍の石油とか運ぶ船の乗では武装した警備員の乗船も許可されてるし大丈夫でしょ」

 

なんとも危なっかしい考えだがこれから向かうイタリカで何が起こるか分からない、最悪責任を伊丹に押し付ければよいと考え有り難く受け取ることにした。

 

先頭を走る73式小型トラックに後ろの2台が続く。馬車道だが自衛隊の車輌も余裕で通れるほどの幅がある。

 

すでに地図は作成してあるらしく桑原曹長がコンパスを片手に方位を確認していた。

 

それを興味津々で見つめるレレイ。

 

「あぁ、これはコンパスと言ってこの赤い部分が必ず北を向くようになってるんだ」

 

「おぉ・・・」

 

さらに説明を続ける桑原をバックミラー越しに倉田が眺める。

 

「鬼軍曹って呼ばれてたあの桑原曹長が孫娘を見るような目でさー。こちとら候補生の時に散々ハイポート走させられたってのに・・・」

 

「銃しょって長距離走るやつですよね、やっぱ自衛官でもキツいんですか?」

 

毒づく倉田に帆斗が尋ねた。

 

「そりゃキツいってもんじゃ無いよ、銃は重いし絶対に体から45度の角度じゃないと駄目なの、それに教官が笛を吹いたら強制ダッシュでさぁ、死ぬかと思ったよ。そんで、その時の教官が桑原曹長だったって訳。ホントに鬼軍曹だったよ」

 

鬼軍曹と聞いて帆斗は「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹が思い浮かんだ。

 

「それは大変ですねぇ・・・」

 

「多分キミの思っている10倍は大変だと思うよ」

 

それだけのことをしないと国というものは守れないのだろう。帆斗は自衛隊の存在の重みを感じた。

 

「隊長、あれなんですか?」

 

帆斗が指差した方、進行方向の大分先に黒煙が上がっているのが見えた。

 

言うまでもなく隊長とは伊丹のことだ。隊員ではない帆斗が言うのはおかしい気もするがこの集団を引っ張っていっているのは彼なのであながち間違ってはいない。

 

そして何より彼自身が伊丹を隊長と呼ぶことを気に入っているのだ。

 

「俺たち、煙の方に向かって行ってない?」

 

伊丹が双眼鏡を覗きながら呟いた。

 

「イタリカの近くで火事でしょうか?」

 

「桑原さん、地図見せてもらっていいですか?」

 

「あぁ、どうぞ」

 

帆斗は桑原から地図を受け取り現在の位置とイタリカの位置を確認する。

 

「もしかしたら煙の発生源、そのイタリカかもしれませんね・・・」

 

 

 

 

 

 

「これは、手厚い歓迎だな・・・」

 

リュウが呟く。

 

イタリカへ入る門の前に到着すると城壁の陰から沢山の人間が顔を覗かせていた。

 

しかもその人達は鎧に剣を装備している。ボウガンやバリスタなどの此方の世界での遠距離武器を帆斗達に向けているも者も居る。

 

「私が行く」

 

そう行って高機動車を降りたのはレレイだった。次いでテュカ、ロゥリィと続いて降車する。

 

「あの人達だけで大丈夫なんですか?」

 

帆斗が尋ねると伊丹が頭を掻きながら悩む。ぶっちゃけあのロゥリィがいれば問題ないようにも思える。

 

「まぁ俺は行きますけどね」

 

「私も降りる」

 

高機動車のドアを開け帆斗とリュウも降りる、念のためライフルのボルトを操作し、弾薬を装填しておいた。

 

「ちょっとまって、そんなにみんな行ったら俺も行かないといけなくなるじゃん!」

 

伊丹が慌てて降車する。という訳でレレイ、テュカ、ロゥリィ、帆斗、リュウ、伊丹という大所帯で門に向かうことになった。

 

「隊長、よろしくお願いします」

 

「お願いって・・・どうすればいいのさ?」

 

「ノックでもすればいいんじゃないですか?」

 

帆斗が適当に答える。

 

「じゃぁなんかあったらそれで対処してよ」

 

伊丹が俺のライフルを指差してドアの方に向き直る。そして拳を門の扉に叩きつけようとした時・・・

 

バァン!!

 

突然ドアが開き外開きの扉が伊丹に直撃、伊丹はその場に倒れてしまった。

 

唖然とする5人、そして視線が一斉に門の前に立っている一人の女性に注がれる。

 

「もしかして、妾が?」

 

門の前には帝国の第三皇女、ピニャ・コ・ラーダが立ち竦んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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