13
俺の剣と大男の剣が激しくぶつかり合う。
「ヘッ!つばぜり合いで攻撃を防げてるつもりか?だがこっちにはな……」
大男は左手にあるもう一本の剣で攻撃をしかけてくる。
「もう一本剣があるんだよ‼︎」
俺は素早く避けるが、剣先が腹部をかする。俺は後ろに下がり、その場に座り込む。腹部はわずかに出血している。
「く……この!なめるなぁ‼︎」
俺はすぐに立ち上がり、大男に向かっていく。再びつばぜり合いになる。
「なぜ俺を狙う⁉︎人違いしてないか?」
俺はこの大男と話した事はないはず。面識だってない。大男は口を開く。
「覚えてないのか?お前よぉ、二ヶ月半くらい前に、俺を睨みやがったよな⁉︎それが気に食わねぇんだよ‼︎」
思い出した!あの時、二本の剣を持つ男を俺は確かに睨んだ。だが、そんな事で?ここまでやるのか?
「そうか、あの時の!俺のあの行動に怒ってるんなら謝る!ごめん!」
俺は必死に謝るが、許してくれそうにない。
「今更謝ったところで誰が許すか!俺はあの時から、ずっとお前をつけて来たんだ!お前を殺すためにな‼︎」
大男の力は更に強くなる。こいつ、余程根に持つタイプだ!俺は一旦大男から離れる。だが、大男は両手の剣を乱暴に振り回し、俺に向かって来る。
俺はその攻撃を止められず、二本の剣は俺の体を切り裂く。俺は壁を背もたれに座り込む。目が霞む。やはり、二刀流には敵わないのか?大男が近付いて来る。その時、部屋の外から声がした。女性の声。里奈の声だ。
「優君?どうしたの?何の音?」
その声は次第に近付いて来る。里奈がこっちに来ている。
「ぐ……里奈さん!ダメだ!来ちゃダメだ‼︎」
だが、すでに遅かった。里奈は壊れたドア越しに姿を現す。その表情は、何が起きたか分からない様な表情だ。
「運が悪いな女!見られたからには生かしてはおけん!お前もここで死んでもらうぞ‼︎」
大男は里奈に向かっていく。里奈は体が動かず、ただ佇んでいる。
「や、やめろー‼︎」
剣がぶつかり合う鈍い音が響く。気がつくと俺は、剣を手に大男と戦っていた。
「ゆ、優君‼︎どうしたの⁉︎お腹から血が出てるよ⁉︎」
里奈は優を見て、そう叫ぶ。
「里奈さん!早く逃げるんだ‼︎」
俺も叫ぶ。腹部がとても痛い。だが、ここで戦うのをやめたら里奈が殺される。俺はこの場を離れるわけにはいかなかった。すると、里奈も剣を抜いた。
「私も戦う!この人、二本も剣を持ってるし、普通じゃないって事くらい分かるわ!」
里奈はそう言い、大男の腹部を狙って攻撃をしかける。大男は左手の剣で、里奈の攻撃を防ぐ。そして、大男が里奈に気を取られている内に俺が攻撃をしかける。俺の剣は、わずかに大男の腹部をかする。
「よし!いいぞ‼︎」
喜びの声を上げるのと同時に、俺は腹部を抑えて座り込む。
「優君!大丈夫?」
「あぁ。何とか。ちょっと痛みが走っただけだよ!」
心配する里奈に対して、俺は強気な口調で言う。
「この……!俺がお前らみたいなクソ共に負けてたまるか‼︎」
大男は立ち上がり、俺達の方に迫って来る。俺も立ち上がろうとするが、里奈は俺の肩を軽く叩く。
「優君、ここは私に任せて!しばらく休んでて!」
里奈はそう言い、一人で大男に向かっていく。だが、里奈の剣は一本で、相手は二本。里奈の方が圧倒的に不利だ。
「この女が!そんなに死にたければ真っ先に殺してやるよ‼︎」
大男と里奈の戦闘が始まった。大男は先程と同じ様に両手の剣を振り回す。しかし、里奈はその攻撃を巧みに避け、大男に素早い一撃を与える。里奈は攻撃を続ける。
大男の持つ二本の剣は攻撃のための物だが、里奈の素早い攻撃に対して抵抗できず、二本の剣は防御専用になってしまっている。
「す、凄い!」
俺はそれを見ながら、つい呟いてしまう。それ程にまで里奈の攻撃は凄いものだった。里奈は戦い慣れている。恐らく、この三ヶ月の間に様々なモンスターと戦ってきたのだろう。
「この俺が……二本の剣を所持するこの俺が!こんな女に負けてたまるかぁ‼︎」
大男は立ち上がり、拳で里奈を殴る。まさか拳で攻撃してくるとは、里奈も俺自身も予想していたかった。里奈は殴られた頬を押さ、その場に座り込む。大男は剣を手に、里奈に向かっていく。
「死ねぇ!クソ女‼︎」
里奈は素早く剣を拾い立ち上がる。しかし、その手を大男に蹴られ、再び剣を落としてしまう。
「しまった‼︎」
剣を拾いに行こうとするが、剣の位置は三メートル程先の所。走って来る大男の方が速い。大男は里奈の腹部に剣先を向ける。里奈はその場に立ち尽くす。直後、その目には信じられない光景が広がっていた。自分は無事だ。目の前に何かが倒れている。それを見て、里奈は叫ぶ。
「……‼︎優君ー‼︎」
俺は里奈をかばい、大男の攻撃を受けたのだ。幸いにも大男は剣を横に振ったため、傷は浅くて済んだが、先程のダメージもあり、意識はもうろうとしていた。
「ハハハ!バカな奴だ!まぁ、最終的にはこいつを殺す予定だったから、手間が省けたぜ!」
大男は、俺に止めを刺そうとする。その時。
「うぉー‼︎」
一人の男性が、大男に斬りかかる。里奈はそれを見て、驚いた表情になる。
「あ、敦さん‼︎」
その男は、敦だった。
「里奈、久しぶりだな!さ、早く優を安全な所へ。こいつは俺が何とかするからな!」
里奈はお礼を言い、俺をロビーの方に運ぶ。
「さぁ、あんた!覚悟してもらうぜ!」
敦は剣を構える。
「この……!どいつもこいつも俺をなめやがって!二刀流をなめんじゃねぇ‼︎」
大男は二本の剣を手に敦に向かっていく。敦は横に剣を振る。その力は物凄い強さだった。いや、強さではなく、技術だ。敦は器用に剣先を大男の指先を捉え、大男の手から剣を落とさせたのだ。そしてそのまま剣先を大男の首元に持ってくる。
「安心しな、殺しはしねぇ。見逃してやるから、もう優に関わるな。」
敦は鋭い目で大男を睨む。
「ヘッ……ヘヘッ……何だよ、情けなつもりかよ。そんなもんいらねぇよ!」
大男は剣を拾い上げ、その剣で自分の首を刺した。
「なっ⁉︎お、おい⁉︎」
敦が驚くが、一瞬の内に大男は消えていった。即死だったのだ。
敦は急いでロビーへと向かう。
「優君!起きてよ!目を覚ましてよ‼︎」
里奈が泣き叫んでいる。俺は目を覚まさない。敦も俺の名を呼ぶが、全く反応がない。その時、一人の中年男性が走って来た。その男性は医者であり、この世界に来てからもケガ人などを治療する人助けをしているらしい。包帯なども持ち歩いていた。
数時間後。その男性の適切な処置のおかげで、俺は何とか目を覚ました。
「優君!よかった〜‼︎」
里奈は俺を強く抱き締める。
「里奈さん、苦しいよ!あれ?大男……そうだ!大男は⁉︎」
俺は体を起こし、そう叫ぶ。
「あいつなら、自殺したよ。俺には敵わなかったみたいだな!」
敦がドヤ顔をかます。
「って、敦じゃないか!久しぶりだな!」
「おう!優も久しぶり!」
敦は今更気付いたのかよ!という感じだ。この世界での試練をまた一つ乗り越えた。城のある街まであと少しだ。
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