15
その少年は、俺達の方を向いたまま佇んでいる。俺達が何に驚いているのかが分からない様だ。
「なぁ、どうした?大丈夫か?」
少年が何くわぬ表情で聞いてくる。
「い、いやさぁ……今、キメラを倒したよな?その、大丈夫?」
俺は驚きのあまり声が出ず、頭の中で慎重にセリフを決めながら、やっとの事で発言する。
「ん?あぁ、大丈夫だけど。このキメラ、そこまで強くなかったし。これくらいなら、一人でも余裕で倒せるよ。」
またも少年は、何くわぬ表情で言う。俺達が三人でかかっても倒せなかったキメラをたった一人で、しかもほとんど傷も付いてない。この人、強すぎる!と、俺達は思った。
「はぁ〜……あなた、強いのね!凄いわ‼︎」
里奈が尊敬の眼差しで少年を見つめる。
「え、そうか?いや、あんなモンスターとは、今まで散々戦ってきたからな!」
少年は少し照れている様に見える。俺と敦は、目を細めて少年を見る。
「あ、ごめん。自己紹介してなかったな。俺は……ノア。この世界に来て、九ヶ月くらいかな。」
ノアという名の少年は、自分の事をそう説明する。
「ノア……いい名前だな!」
「あ、ノアってのは、本名じゃないんだ。ある事情で、本名は名乗れない。」
ある事情?俺は気になったが、個人の事情に首を突っ込むのは失礼と思い、何も聞かなかった。
「でもよ、九ヶ月前って事は、この世界が出現した直後からずっといるって事だろう?もうだいぶ疲れてるんじゃねーか?」
「うん、まぁな。この世界をクリアするのも個人差があるから、俺は本当に遅い方かな。でも、やっとの思いでここまで辿り着いたし、俺はこのまま城を目指すつもりさ!」
敦の問いかけに、ノアはそう答える。その後の会話で、俺達もこれから城を目指す事を言うと、一緒に行かないか?と言われた。仲間が多い方がクリアの確率は高くなるし、旅も楽しくなる。そういった事を考え、俺達はノアと一緒に行動する事になった。
「でもさ、まさか優が高校生とは思わなかったよ!」
「私も!年下だって事は分かってたけど、中学生くらいかと思ってた!」
ノアと里奈は同時に言う。
「ちょっと二人共!身長で決めつけてるだろ!」
俺は喚き、地団駄を踏む。その行動を見て、二人は笑う。ふと横を向くと、敦も笑を堪えている。
「プッ……ハハハッ‼︎やっぱり皆そう思うんだな!ほらな、優!俺だけじゃなかったろ?」
笑を堪え切れなかった敦は、遂に吹き出した。敦と初めて出会った時も、敦に間違われた事を俺は思い出す。
「あーもう!ほら、行こう!」
俺は急に恥ずかしくなり、先を急ごうとする。三人も笑いながら、俺の後を付いて来る。このメンバーなら、良い旅ができる気がする。
最後の街、ユレナはもう目前。俺達は、より一層気を引き締める。
読んでくださり、ありがとうございます!