16
数時間程歩いた後、俺達は遂に、ユレナの街に到着した。いつもの様に宿を選び、そこを本日の寝床に決定する。
「部屋はそれぞれ一人ずつって事でいいか?」
敦の問いかけに、俺達は異論なしだ。
「よし!なら、今日はゆっくり休め!明日は朝一で出発だ‼︎」
敦は思い切り、右手の拳を上に挙げる。その時。
「お前、敦か?敦だよな⁉︎久しぶりだな!」
後ろから声をかけられる。そこには三人の男性が立っている。
「うお!大平(たいへい)に、直樹(なおき)に、一郎(いちろう)じゃないか!生きてたんだな!」
「おう!あたぼーよ‼︎」
敦はその三人と拳を合わせる。
「紹介するぜ!こいつらは、俺がこの世界に来てすぐに出会った奴らだ。強くて、とても頼りになる奴らだよ!」
敦は俺達に、彼らの事を紹介してくれた。
「それで、敦よぉ。この街に来たって事は、つまり!」
「おう!いよいよ明日、こいつらとあの城に行くぜ!」
敦は俺達を指し、自信満々に言う。
「やっぱりか!俺達も明日行こうと思ってんだ!なら、どうだ?俺達と一緒に行かないか?俺達も三人でちょっと不安だったんだ。」
三人の中でリーダー的存在の大平が言う。
「あぁ!俺はいいけど、お前らはどうだ?」
敦は俺達の方を向く。俺達ももちろん大歓迎だった。
「よし!なら、明日は朝七時に出発だ!それまでゆっくりと体を休ませとこう!」
それぞれ部屋に戻る。時間はあっという間に過ぎ、夜の十一時を回っている。俺は眠れず、ロビーのソファーに腰掛けていた。するとーー。
「あれ?優君も眠れないの?」
後ろから声をかけられる。振り向くと、里奈が立っていた。
「あぁ。何かな。よく分かんないけど、眠れなくてさ。」
俺がそう言うと、後ろからまた別の声がする。
「俺も同感だ。」
敦の声だった。敦は眠気はあるらしいが、なぜか眠れないという。
「やっぱ、明日の事考えると、何か眠れねーよな!ワクワク感と不安が入り混じって、何か変な気分なんだよ。」
「私もよ。」
二人は同じ意見らしい。だが、俺はちょっと違う。
「俺は、確かにそれもあるけど……。明里姉ちゃんの事だ。」
俺は下を向く。
「明里姉ちゃん?誰だよそれ?」
敦が聞く。そうか。敦は知らないんだ。俺は敦に、俺がこの世界に来た理由を話した。
「なる程。そんな事が。何かごめん。聞いたらまずい事だったかな。」
敦は反省している。
「その明里姉ちゃんの事なんだけどな。俺、明里姉ちゃんの足を、また動ける様にしてあげたいんだ。また、一緒に歩きたいし。でも、この世界は危険だ。もしかしたら、俺は明日、死ぬかもしれない……。そしたら、明里姉ちゃん、やっぱり怒るかな?って」
「怒るに決まってる‼︎」
俺が言い終えない内に、里奈が叫んだ。
「だって、明里さんの家族は優君だけなんでしょ?それに、歳が五つも離れてる上に、優君が五歳の頃からずっと面倒を見てくれてるんでしょ?だったら、明里さんにとって優君は、もう弟を通り越して、子供の様な存在だと思う。今こうしてる間にも、きっと明里さんは優君の事だけを想ってくれてると思う。だから、もし死んだらなんて絶対に考えちゃダメ!生きる事だけを考えて!」
里奈は俺の手を握る。里奈も、病気の弟を救うためにこの世界に来ている。恐らく、同じ弟を持つ者として、明里の気持ちが痛い程分かるのだろう。
「そうだな!俺がこんな弱気じゃいけないよな!俺は絶対に生きて帰る!」
俺は拳を握り締める。
「優!お前には、俺達がいる!お前は一人じゃないぜ‼︎」
敦も拳を胸に当てる。そうだ。俺は一人じゃない。仲間がいるんだ。
明里との約束を果たすため、俺は最後の勝負に出る。
物語もいよいよ終盤に差し掛かってきました。優達の、願いを叶えるための戦いも、クライマックス突入です!