願いの世界   作:坂田 信長

18 / 24
続きです。ぜひ読んでください!


現実世界と願いの世界

18

    爽やかな風が窓を通り抜ける。時刻は午前八時十一分。光田(みつだ)中央病院は、換気の時間だ。今日は土曜日。窓からはさすらう枯葉が見える。もう十月も下旬。もうすぐ冬が到来する頃だ。

    病室で明里は、腰まで伸びた長い髪を触りながら、一枚の絵を眺めている。一人の女性と男の子の絵。その絵に描かれているのは、優と明里。優は幼稚園の母の日イベントで、母の絵を描くことになり、この絵を描いたという。

    明里は、

『私はお母さんじゃないよ、まだ十歳だし!』

    と笑った。しかし優は、自分にとって一番大好きな人だから。そういう理由でこの絵を描いたのだ。両親を亡くした直後だった優にとって、自分を引き取ってくれた明里の事が本当に大好きだったのだ。

「……優が『願いの世界』に行って、もう三ヶ月も経つのね。夏休みに入る前だったのに、もう二学期の半分が終わったよ。早くしないと、冬休みになっちゃうよ……。」

    明里はそう呟き、優の描いた絵を見つめる。あんなに幼かった優が、命を懸けて冒険しているという事を考えるだけで、胸が締め付けられそうになる。

「……死んでないよね?嫌よ、そんなの!早く帰って来てよ……!元気な顔を私に見せてよ‼︎」

    明里は俯き、拳を握り締める。明里の目から涙が流れ出る。優が死ぬ事が、とても耐えられないのだ。

「優君は絶対に帰って来る!」

    一人の女性が病室に入って来る。亜美だ。

「聞いてたの?もぉ……盗み聞きは良くないよ?」

    明里は涙を拭う。

「泣く程、優君の事が好きなのね。」

    亜美は優しい表情で明里を見る。

「当たり前でしょ!おばあちゃんが亡くなって辛かった時、優は支えになってくれた。その他にも、優に何度も元気付けられた。本当に、大好きなの‼︎」

    明里はそう言い、ふと横を向く。見ると、亜美が少しニヤついている。

「あっ……べ、別に変な意味じゃないからね!優が大好きっていうのは本心だけど、そんな意味じゃ……」

「もー、分かってるわよ!照れちゃって、可愛いな〜!」

    亜美はいたずらっぽく言う。明里は照れた表情のまま頬杖をつき、窓の外を見る。亜美は立ち上がり、部屋を出ようとする。

「優君の事、信じてやんなさいよ。絶対に大丈夫だから!ね?」

    明里は少し不安な表情になりながらも、頷く。

「じゃ、私これから講義があるから。時間があったらまた来るからね!」

    亜美はそう言い、病室を後にする。

「優……私との約束、絶対に守ってよね。」

    明里はそう呟いた。

                             

    

一郎は、切り裂かれた所を押さえている。俺達は、必死に亡霊騎士を探す。しかし、どこにもいない。

「くそっ‼︎どこえ消えやがった⁉︎影も姿も見えんぞ‼︎」

    大平は悔しそうに喚く。一体どこだ?俺が血眼になっめ探していると、突然里奈が叫んだ。見ると、亡霊騎士が里奈の目の前に現れている。

「この‼︎」

    俺は剣を抜き、亡霊騎士に向かっていく。つばぜり合いになる。強い。こいつ、強さも今までの奴らと格段に違う。俺は一旦離れ、亡霊騎士に剣を突き立てる。

「うぉぉぉ‼︎」

    すると、亡霊騎士は再び消えた。

「くそっ!また消えやがった‼︎」

    俺は喚く。

「いや、違う!消えたんじゃない‼︎」

    ノアが叫ぶ。

「今見たんだ!あいつ、地面に入り込んでいったんだ!だから、現れる時も下から出てくるはず!そこさえ確認できたら倒せるかもしれないぜ‼︎」

    俺達は地面に目をやる。だが、何も現れない。その数秒後。突然敦は剣を突き立てた。

「優、そこをどけぇ‼︎」

    俺は言われるままに後ろに下がる。そして、敦が地面に剣を突き刺す。すると、地面の中から唸り声が聞こえた。

「よっしゃ!いける!倒せるぞ‼︎」

    一同は期待を持ち始める。奴の行動パターンさえ読みきれば、案外楽に倒せる。

    再び現れる。だが、既に行動パターンを読み取っている俺達の敵ではない。奴が姿を現わす度に、最低二回は攻撃を与えられる。勝てる、勝てるぞ‼︎と、その時だった。

「うわっと‼︎」

    直樹がつまずき、転んでしまった。

「な、直樹‼︎」

    直樹の後ろから亡霊騎士が現れる。大平は助けに行こうとするが、亡霊騎士の横からの攻撃に阻まれてしまう。

「直樹ー‼︎」

    大平が叫ぶ。その時。

「ぐっ……はっ……‼︎」

    別の声が聞こえる。見ると、一郎が血だらけで倒れている。

「い、一郎‼︎お前、どうして⁉︎」

「俺はもう、ろくに戦えねぇ……。なんならいっそ、体を張って誰かを助けようとおもってよ……。」

「だからって、俺の身代わりになる事ねぇだろ‼︎」

    直樹が、一郎を抱き上げて叫ぶ。一郎の体は、透明になっていく。

「ヘヘッ……皆、絶対に生き抜けよ!」

    そう言い残し、直樹の手の中で一郎は消えていった。

「一郎……うわぁぁー‼︎‼︎」

    直樹は立ち上がり、剣を構える。

「てめぇだけは、絶対にぶっ倒してやるぜ‼︎」




現実世界での状況も必要かな?と思い少し入れました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。