願いの世界   作:坂田 信長

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最終回です!ぜひ読んでください!


ただいま

24

    ここはどこだろう。目の前が真っ暗だ。体の節々も少し痛い。何か聞こえる。エンジン音。車の音だ。……車?

「はっ‼︎」

    俺は起き上がる。周りを見渡すと、アパートやマンション、一軒家が建ち並んでいる。歩行者は、俺の方をチラチラと見ている。

    現実世界だ。俺は、戻って来たのだ。今は何時だろう。俺は立ち上がる。ふと、店の中のデジタル時計が目に入る。

    十月二十五日 土曜日 午前九時十三分。時計にはそう記されている。

    どうやらあの後、俺はすぐに現実世界へと転送されたらしい。つい数十分前まで『願いの世界』にいた事を考えると、少し不思議な感じがする。

「帰って来たんだな、俺。明里姉ちゃん、俺、約束果たせたよ!……明里姉ちゃん……!そうだ!明里姉ちゃんはどうなったんだ⁉︎」

    俺は辺りを見回す。よく見ると、俺は光田中央病院の真ん前にいた。恐らく俺は、この病院の前に転送されたのだろう。俺は何の迷いもなく、すぐさま病院へと入って行く。

 

 

    光田中央病院の一室。眠っていた明里は目を覚ます。

「あら、もう九時過ぎてる。ちょっと寝坊しちゃったかな。」

    そう呟き、明里はふと、下半身に目を向ける。力が入る。……え⁉︎

「ちょ、ちょっと待って‼︎どういう事⁉︎」

    明里は立ち上がろうとする。次の瞬間、明里は何と、自分の足で立ち上がっていた。そこに、亜美が入って来た。

「明里!お見舞いに来たよ!……って、明里‼︎どうしたの⁉︎その足!」

「分からない!ついさっき起きたんだけど、その時にはもう動く様になってたのよ!」

    二人は驚いた。なぜ、自分の足が急に⁉︎医者にも、もう二度と動かないと言われていたのに、

「……もしかして、優?優なの?」

    明里ははっとし、そう呟く。だが、それ以外に考えられない。明里は我慢できず、病室を飛び出す。

「ちょ、ちょっと、明里!」

    亜美も明里の後を追う。

「うおっと!安田さん?……って、足が動いてる⁉︎安田さん、ちょっと待ってください!」

    明里の担当の医者に呼び止められるが、構わずに病院の廊下を走り続ける。

(優が帰ってなきゃおかしい!だって、私の足が治ってるんだもん!それ以外に考えられない!)

    里奈は、自分の病室がある五階から、階段を使って一目散に下って行く。二階の階段を駆け下り、一階に辿り着く。そこにはーー。

「あ……明里、姉ちゃん。」

    俺はそう呟く。四メートル程離れた位置に、明里が立っている。明里は一歩づつ、ゆっくりと俺に近付いて来る。そして、俺の目の前で止まる。

    俺が旅に出てから今まで三ヶ月とちょっと。久々の再会だった。一体何事かと、病院の医者や患者が、その様子を見ている。俺は首を上に向け、明里の顔を見つめる。そして、俺は口を開く。

「ただいま、明里姉ちゃん!俺、姉ちゃんとの約束、ちゃんと守」

    俺が言い終える前に、明里は俺を抱き締めた。

「うぅ……うぅ……!」

    明里は泣いている。明里の涙が雫となり、俺の頬に垂れてくる。

「お帰り、優……辛かったでしょう……本当にごめんね……‼︎」

    明里は俺を離し、その場に座り込む。涙を何回も拭っているが、その涙は止まる事を知らず、延々と流れ出てくる。こんなに泣いてる明里を見るのは、明里の祖母が亡くなった時以来だ。俺も座り込み、明里の方を向く。

「俺の方こそごめん。心配かけて。」

    俺は明里を優しく抱き締める。俺も辛い事はあったが、明里はそれくらい、もしくはそれ以上に辛かったのだろう。この涙を見れば、それが一目で分かる。

    明里は、俺の頭を自分の胸に寄せる。

「帰って来てくれて、本当にありがとう‼︎」

「うん!明里姉ちゃんの足が治ってくれて、俺も嬉しいよ!」

    何て姉弟愛なのだろう。この様子を見ていた誰もがそう思う。亜美も、目に涙を浮かべ、その様子を見ていた。

    その後、明里は一日病院で休んだ後、翌日に退院する事ができた。俺が『願いの世界』に行った直後、高校の方にも明里から連絡が入っており、俺も学校に復帰できる様になった。

    明里の足が治っているという事は、里奈の弟、蓮太の病気もきっと治っているだろう。

    明里が退院して一週間。俺は、家のリビングにいる。

「なぁ、明里姉ちゃん」

    俺は明里を呼ぶ。だが、数秒間何も言わない。

「どうかしたの?」

    明里は俺に聞く。

「いや、やっぱり何でもない。」

    俺は上を向き、そう言った。

    なぜ、今俺が明里を呼んだのか、自分でも理解できなかった。ただ、明里の声を聞く事ができるという事。それだけで、幸せだったのかもしれない。

 

 

(完)

    

 




最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございます‼︎
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