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十分ほど歩き、俺達はサルマンへと辿り着いた。この街は案外広く、この世界の最初の拠点である。
敦の提案で俺達は、街の中でも一際デカいホテルへと足を踏み入れた。このホテルは敦はもちろん、他の人達の間でもかなりの評判で、敦もよくここで寝泊まりをしていると言う。
「お、敦じゃないか!今日もやっぱりここに来たのか!」
一人の男性に声をかけられる。この世界はゲームではないため、コンピューターのキャラクターはもちろんいない。つまり、このホテルの様に店はたくさんあるが、店主や店員はいない。誰でも自由に利用できる。
「おう!陽一!お前も好きだな、ここ」
敦は笑みを浮かべ、陽一(よういち)という男性にそう言う。
「まぁな。……って、敦が人を連れて来るなんて珍しいな!」
陽一は俺を見る。
「あぁ。こいつは優。昨日、この世界に来たばっからしくてな。一時的に行動を共にしてるんだ!」
敦はそう説明する。すると陽一は、俺の方を向き、笑顔で言う。
「お前、優って名前なんだな。俺は陽一。敦と同じで、二ヶ月前に来たんだ。この世界に来たばかりって事は、色々と大変だろ。分からない事があったら何でも聞いてくれ!いつでも力になるぜ!」
陽一は俺に手を差し出す。俺はその手を掴み合い、握手を交わす。
「あぁ!いつでも頼りにするよ!」
俺は笑顔でそう言った。
このホテルは本当に便利で、食事や入浴までできる。
俺達はその両方を済ませ、部屋に入る事にした。
「俺と敦は、二人で同じ部屋を使うんだが、良かったら、優もどうだ?部屋も一つで済むし、人数が多い方がいいだろ?」
陽一はそう言い俺を誘う。その誘いに乗り、俺は二人と夜を過ごす事にした。
俺達が部屋に向かう途中、一人の傷だらけの女性を見かけた。長い髪に隠れてよく見えないが、勇敢な顔立ちをしている。傷だらけの体。様々なモンスターと戦闘をしてきた証だ。
「あの人、あんなに傷だらけで……大丈夫かな?」
俺はそう呟くが、どうする事もできないのが事実。
「あんなに傷だらけになるまでモンスターに襲われたのか。辛かっただろうな。」
陽一はそう言うが、やはりどうする事もできずにいる。
「俺達も疲れたし、部屋に入って休むか。」
俺達は部屋へと入り、少し話をした後、すぐに眠りについた。
四時間が経ち、今の時刻は午前三時過ぎ。まだ真夜中だ。何故かは分からないが、俺はふと、目を覚ましてしまった。
「はぁ〜……こんな時間に起きるなんてな。朝までまだ時間あるし、また寝るか」
俺は再び眠りにつく。それからわずか数分後の事だった。突然、街中に地響きが走った。
「……⁉︎何だ⁉︎」
敦は跳ね起きる。陽一も眠そうな目をこする。俺は眠りについた所を叩き起こされた気分で、少し機嫌が悪かった。
だが、窓から外を見た瞬間、そんな感情はどこかへ消え去ってしまった。
「な、何だありゃ⁉︎」
「おい、嘘だろ⁉︎」
敦と陽一が『それ』を見つめたままそう呟く。そんな二人につられて俺も、
「何だよ、あれ……‼︎」
と呟いた。俺達だけではない。おそらく、この街の人こほとんどが、同じ光景を見ているはずだ。そこには、七メートルはあるであろう、巨大な熊が雄叫びを上げていたのだ。
新たなモンスターとの戦闘が、俺達を待ち受けている。
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