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その巨大熊は、街の建物を次々と破壊していく。このままでは、いずれ俺達もやられてしまう。
「おかしい!おかしいぞ‼︎」
陽一が叫ぶ。
「おかしいって、何が?」
俺は陽一にそう聞く。陽一は額から出る冷や汗を拭いながら答える。
「普通モンスターは、街には入って来ないはずなんだ!なのに、犬の様な小さいモンスターじゃなく、あんな巨大なモンスターが入って来るなんて!こんな事、今まで一度もなかったぞ⁉︎」
俺達はしばらく、この急な状況に対応できず、黙り込んでいた。巨大な熊モンスターによる破壊の音だけが耳に焼付く。わずかな沈黙の後、俺は口を開く。
「こ、この街から出よう!こんな所にいたら、完全に袋のネズミだ!このままじゃ殺される‼︎」
敦と陽一も、俺の意見に賛成の様だった。俺達は外に出て、街からの脱出を試みる。息を殺しながら街の門へと近付く。しかし、熊モンスターに気付かれてしまった。
「し、しまった!」
急いで剣を抜こうとするが、既に遅かった。熊モンスターの攻撃は、俺達を五メートル先へと吹っ飛ばす。
「ぐ……二人共、大丈夫⁉︎」
俺は無事で、二人に声をかける。
「あぁ!何とか!」
辺りから二人の声がしたのを聞き、俺は安心した。だが、どうする?もう街からの脱出も恐らく不可能だろう。今俺達が助かる道はただ一つ。あの熊モンスターを倒すしかない。だが、そんな力、今の俺には……。
「戦おうぜ!あいつと!」
敦が口を開く。
「あいつを倒さねぇと、先には進めないだろ?それに、あんな奴にビビってたら、クリアなんて無理だ!一歩でも先に進むために、今はあいつを倒すしかないだろ!」
敦の言う通りだ。俺は自分の勇気のなさを改めて恥じる。俺達は剣を抜き、戦闘態勢に入る。
「……私も一緒に戦う!」
俺達は声のする方へと振り向く。見ると、昨夜の女性が立っていた。
「あんた……体が傷だらけじゃないか!無理はしない方がいい。今は安静にしておくんだ!」
「人数が多い方がいいでしょ?それに……」
陽一の意見に反対し、女性は言う。
「私は、どうしても急がないといけないの!一秒でも早く、この世界をクリアする必要があるの!」
女性は、何か特別な想いを持っている。俺達にはない、特別な想いを。
熊モンスターは、俺達に向かって拳を振り下ろす。俺達はそれを素早く避けるが、そこには巨大なヒビが入った。
「どうやら、考えている暇はなさそうだな!」
俺は何とか口を開く。陽一も、
「あぁ!あんたにも一緒に戦ってもらうよ!」
そう言った。すると、『あんた』と呼ばれる事が好きではないらしく、女性は言った。
「私、里奈(りな)って言います!」
その事を察した陽一は、先ほどの言葉を言直す。
「里奈、か。良い名前だな!よろしくな!」
俺達はそれぞれ名を名乗り、戦闘態勢に入る。
敦は何のためらいもなく、熊に向かって走って行く。
熊は敦を押しつぶそうと、先ほどの様に拳を振り下ろそうとする。だが敦は、あえてそれに向かって高くジャンプする。剣を横に振り、熊の拳を切り裂く。しかし、そんな攻撃では単なる時間稼ぎ程度にしかならない。
その後も敦は、熊に細かな連撃を叩き込む。熊モンスターと敦の一対一の戦闘が繰り広げられている。
だが、こちらも一人ではない。熊が敦に気を取られている間に、俺達は熊の背後へと近付く。そのまま熊を袋叩きにするという作戦だった。
しかし、熊モンスターもそこまで鈍くはない。すぐに背後の俺達に気付き、強力な一撃を浴びせてくる。
「くっ……あいつ、見かけの割にはかなりの素早さだ!」
俺は剣の柄を握り、悔しそうにわめく。
「……俺、あのモンスター知ってるぞ」
陽一は独り言の様に呟く。俺は、本当か⁉︎と聞き返す。
「あぁ。実際に見たのはこれが初めてなんだが、話で聞いた。名は確か、『ジャイアント・キング・ベアー』。巨大な見た目とは裏腹に、とてつもない素早さが特徴で、なおかつ力もかなりのものらしい。この世界でも数少ないモンスターらしく、できれば遭遇したくない奴と言われていたが……」
「俺達は今、そいつと戦ってるってわけか。ったく!ついてねぇなぁ‼︎」
陽一の言葉に付け加え、敦もわめく。
熊は再び動き出し、俺達の方を向く。
「動き出すぞ!それぞれ違う方向に散れ!全滅だけは避けたいからな!」
陽一の声で、俺達四人はバラける。陽一は熊に向かって剣を振り上げる。そして、渾身の一撃を与えた。陽一が攻撃を与えた場所は後頭部。熊は後頭部を抑えながらよろける。
やった!俺達は勝利を確信した。しかしーー。
「⁉︎な、何だ‼︎」
俺達は一瞬、何が起きたのか分からなかった。よく見ると、熊が陽一を握り締め、その手を高く振り上げている。
「なっ……くそっ!この!離せ‼︎」
陽一はわめくが、その手から脱出する事はできない。
熊は物凄い咆哮を上げ、陽一を力任せに地面に叩きつけた。
「よ、陽一さん‼︎」
俺達はその場に駆け寄る。そこには血だらけで倒れている、陽一の姿があった。陽一は力なく呻き、次第にその体は透明になっていく。この世界から脱落する。つまり、『死ぬ』のだ。
「そ、そんな!嘘だろ⁉︎陽一さん‼︎」
俺達は叫ぶ。だが、陽一の体はみるみる内に消え去っていく。
「く……三人共、絶対に奴を倒して、先に進むんだ。そして、必ず、この世界クリアしろよ……」
そう言い残し、陽一は消えていった。
「……‼︎陽一さーん‼︎」
俺達は悲しみの声を上げる。だが、もうそこに陽一が戻って来る事はない。俺は、剣の柄をを握り締め、立ち上がる。
「くそ……あいつ、絶対に倒してやる!陽一さんは、あんなに勇敢に戦ったんだ!陽一さんの想いを無駄にするわけにはいかない!」
敦と里奈も頷く。 俺は剣を熊に向け、叫ぶ。
「ぶっ倒してやるからな‼︎」
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