妖精達と歩む大空   作:グリーン

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本当にお待たせしました。もう少し早く掲載する予定でしたがスパロボXが面白すぎて……お待ちの方本当に申し訳ありません。


撃墜

 

-冥界島

 

マルド・ギールの最強呪法、メメント・モリがナツとグレイに襲いかかるが、半身を滅悪魔法の代償……悪魔の力に犯されながらもグレイはナツを守った。

 

「ナツを信じる」

 

その言葉を聞いたナツは奮起し、マルド・ギールを追いつめていく。そして遂に自力でのドラゴンフォースを発動させる。

 

だが敵も冥府の王、一筋縄ではいかない相手だ。ナツの奥義すらも耐えきった。しかしグレイがナツを信じていたようにナツもまたグレイを信じている。ボロボロになったグレイの滅悪魔法がマルド・ギールを貫いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

エルザの渾身の一撃で遂にキョウカは斃れたが、最期の瞬間、命と存在の全てをフェイスに捧げる事によりフェイスが発動した。その影響をフェアリーテイルのメンバー達も感じ取っていた。

 

「っ!?魔力が……消えていく!?」

 

ウェンディが周囲から魔力の匂いが消えていくのを敏感に感じ取った。

 

「そんな……間に合わなかったの?」

 

星霊達との別れを受け入れられず絶望して膝をつくルーシィ。

 

「やだ!アニマルソウルが解けたら……」

 

リサーナは捕まった時に服を奪われていたのでテイクオーバーが解除されると全裸になってしまった。ドランバルトがすぐさま上着をかけてあげた。

 

ここにいる全員が魔法が終わってしまうことを知ってしまった。魔法が消える……魔道士も居なくなる。絶望に染まっていくフェアリーテイルのメンバー達……

 

『諦めてはダメよ。ウェンディ』

 

突如響いた声に反応してウェンディは呆然と空の彼方を見上げた。聞き覚えのある懐かしい、絶対に間違える事のないその声の主は……

 

「グランディーネ?」

 

自分を育ててくれた天竜(ははおや)の声だった。

 

 

 

 

 

クロスさせながら突き出された両腕に、ツナはかつてないほどの炎を収束させていた。7つの炎を得た副次効果で炎の最大量が今までより遥かに増しているが目の前の敵は未だにその力の底を見せていない。

 

-絶対にここで決める!!-

 

先に打ち込んだ雨の炎もそろそろ消える頃だ。今は動きの鈍いアクノロギアをイグニールが完全に圧倒しているが元々の自力はアクノロギアの方が上だ。ここで勝負をかけるしかないとツナは広げた炎の翼からの逆噴射をさらに強めた。

 

「イグニール!!」

 

「おう!!」

 

ツナの声に応えてイグニールはアクノロギアの尾を掴むとその場で回転しながら振り回し始めた。

 

「ヌッ……ググッ!貴様ッ!!」

 

アクノロギアも何とか抵抗しようとするも、遠心力で身動きが取れない。

 

「うおおおおおっ!!」

 

気合いと共にぐるぐる回転していたイグニールがそのまま上空へとアクノロギアを放り投げた。

 

アクノロギアは無理矢理翼を広げて空気抵抗を大きくしてブレーキをかける……が、その動きが止まる瞬間を狙う者がいた……

 

「今しかない!XX BURNER(ダブルイクスバーナー)!!」

 

ナッツの姿を模した巨大な大空の炎がアクノロギアに放たれた。放ったツナ自身もその勢いに弾き飛ばされそうになるが必死に炎の翼から逆噴射の炎を強める。

 

「くっ!!」

 

イグニールすらもその余波で吹き飛ばされるのを必死にこらえる。それほどまでにこの一撃は力強く、巨大だった。アクノロギアをも圧倒的に凌駕する程の大きさの砲撃……アクノロギアは防御の姿勢を取ることすらできずに炎にのみ込まれて大爆発を起こした。

 

「はあっ!はあっ!……」

 

流石に大きく息を乱しているツナ……掛け値なしの全力を放ったことにより身体中が悲鳴をあげているが目だけは前方の爆発により発生した凄まじい煙を見据えている。イグニールがツナを守れるように横へ並んだ時、巨大な質量を持ったものが前方の煙から海へと落下していく。

 

その正体は間違いなくアクノロギアだった。その全身に火傷と傷を負ってボロボロになったアクノロギアはそのまま眼下の海へと大きな音と津波を引き起こしながら沈んでいった……

 

「やったのか……?」

 

「ウム!誠に見事だったぞ!!」

 

イグニールが賞賛すると共に大きな掌をツナの足下へ広げる。どうやらそこに乗れと言いたいらしい。酷く疲労しているツナはその申し出をありがたく受け取ってイグニールの掌に着地した。

 

「そうだ!まだ終わってない!何とかフェイスを止めないと大陸中の魔力が……」

 

フェイスがいつ発動しても遅くはない。三千ものフェイスをどうやって止めればいいのか分からないがここでじっとしている訳にもいかなかった。

 

「案ずるなツナよ」

 

「どういう事だ?」

 

イグニールの余裕な顔を見てツナは問いかける。イグニールはニヤリと笑うと口を開く。

 

「『魂竜の儀』によって滅竜魔道士の体内にいたのは俺だけではないということだ」

 

 

 

 

 

 

 

「これは!?」

 

フェイス発動を止められず唇を噛みしめながら顔を俯かせていたミラは突如あがったミネルバの声に反応して顔をあげる。

 

そしてミネルバの視線を追うとさっきまでタイマーが表示されていた巨大なモニターからアラート音が鳴り出して、フェイスの反応が凄まじい速さで次々に消えていっている所だった。

 

「フェイスが破壊されているの……?」

 

「どうやらそのようだ……いったい誰が……」

 

三千ものフェイスの反応が今やほんの僅かしか残っていない。残りもこのペースならばすぐに消えるだろう。何が起こっているのか二人は顔を見合わせて困惑していた……

 

 

 

 

 

ウェンディ、ガジル、スティング、ローグの四人の胸の内には様々な感情が渦巻いていた。何故なら今、フェイスを破壊しているのは消えたはずの、あるいは自らの手で殺したはずの存在だったからだ。

 

「本当にグランディーネなの……?」

 

ウェンディの母たる天竜が……

 

「メタ……リカーナ?」

 

ガジルが探し続けた鉄竜が……

 

「バカな……バイスロギアはあの時に……」

 

スティングに力を与える為に死んだ白竜が……

 

「スキアドラム……本物なのか?」

 

病に侵されローグの手で死ぬ事を選んだ影竜が……次々とフェイスを破壊しているのを感じていた。そして間もなく全てのフェイスが破壊された……

 

 

 

 

 

 

「そうか……ウェンディ達の親のドラゴン達もみんなの中にいたということか……そして彼らがフェイスを破壊してくれたんだな」

 

「そういうことだ」

 

アクノロギアを倒し、フェイスが全て破壊された事で当面の危機は去ったが、ツナはまだ疑問に思っている事があった。ゼレフがナツを弟だと言ったことや何故ドラゴンスレイヤーの体内にいたのか……

 

「話してくれるのか?あなたの今の状態を含めて」

 

何よりも気になるのが目の前のイグニールの事だ。

 

「全てを語るには少々時間が足りんかもしれん……我らが400年の時を渡りナツ達の体内にいたのには2つの理由がある」

 

「400年!?時を渡る!?……まさか、エクリプスで!?」

 

イグニールは頷く。大魔闘演武の際に使われたエクリプスを思い出す。400年前からドラゴンがやってきた事を……それより前にまさかエクリプスが使用されていたとは夢にも思わなかった。

 

「そしてナツ達の体内にいたのはドラゴンスレイヤー達が竜化するのを防ぐ為、それから我らの延命のためだ」

 

「竜化?アクノロギアのように滅竜魔法を使用し過ぎれば本当にドラゴンになってしまうのか?」

 

以前、ウェンディの魔法で顕現した翡翠の竜、ジルコニスの幽霊からアクノロギアも元人間だと聞いている。

 

「その通りだ。最も、もうその心配もないがな。竜化に対する抗体は既に全員できている」

 

「良かった……」

 

ツナはそれを聞いてホッとした。ナツ達がドラゴンになってしまうなんて悪夢としかいえない。もしかしたら自分の炎で元に戻せるかもしれないが自信がない。

 

「ただナツについては別の問題があるのだ」

 

「それは……ナツがゼレフの弟だということと関係があるのか?」

 

ゼレフから聞いた、ナツが400年の時を生きるゼレフの弟だということがエクリプスの話と合わせると現実味を帯びてきた。

 

「そうだ。それは……ムッ!!」

 

「これは!?……周辺の魔力が薄くなっているのか?まさかまだこの近辺にフェイスが?」

 

破壊し損なったフェイスが近くにあるならすぐに破壊しなければとツナは身構える。だがそれをイグニールは否定する。

 

「いや、間違いなくフェイスは全て破壊されたはずだ」

 

「じゃあいったい……ッ!!」

 

ツナが下方に目を向けると眼下の海が巨大な渦を巻いていた。その中心部に莫大な魔力が集まっている……

 

「仕留めきれなかったのか……」

 

「そのようだな」

 

大きな水柱が発生し、空中へと躍り出る巨大な影が姿を現した。一見するとその姿はボロボロで、翼は焼けただれ、特に左腕は完全に壊れているようだ。満身創痍のアクノロギアだがその瞳に宿った怒りがそれを忘れさせるだけの力強さを醸し出していた。そして何より……

 

「くっ!?何だこの魔力は……?」

 

「ムウ……奴め!この星の魔力を喰らいおったな!」

 

アクノロギアの口に今までにない凄まじすぎる魔力が収束していく。周辺の魔力が一時的に薄くなるほどに魔力を喰らっていた。それは正しくこの星(アースランド)の力……その力が今正に解き放たれようとしている。

 

「気をつけろ!ツナ!!」

 

「分かっている。大丈夫だ」

 

この全てをかけた一撃を避けて一気に勝負を決めるべくツナとイグニールは身構える。そしてその時は訪れた……

 

「ガイア・カノン」

 

巨大な光球がツナとイグニールに迫るが……

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

迫り来る光球を見てツナが感じたことは困惑だった。確かにシャレにならない威力だし、スピードもそれなりにある。だが本当にそれなりだ。ツナもイグニールも難なく避けることができそうだ。

 

-どういうつもりだ?アクノロギアが起死回生に放ったにしては……-

 

光球を避けながらアクノロギアを見るとその口がニヤリと弧を描いている。あれは愉悦の笑みだと考えた瞬間、ツナの超直感が警鐘を鳴らす。慌てて辺りの地形を見渡し、巨大な光球の行き先を想像する……そしてツナはアクノロギアの真の狙いに気付いた。

 

「し……しまった!!」

 

「ツナ!?」

 

イグニールが驚くのを無視してツナは今の自分に出せる最大のスピードで光球を追って飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方冥界島では、ENDの書の扱いについてナツとグレイが一触即発の空気を醸し出していた。マルド・ギールを倒した後、ナツはイグニールの依頼通りに本を手に入れようとして、グレイは父の遺志を継いでENDを倒す為に本を破壊しようとしていたが、そこにゼレフが現れて本を手中に納めた。

 

「その本返せよ!」

 

「フフ……ダメだよナツ。これは僕にとって大事な本なんだ。……最も君にとってもだけどね」

 

「何を訳の分からねえ事を言ってやがる!?」

 

意味深に言葉を紡ぐゼレフに激昂するナツ……グレイも鋭い目でゼレフを睨み付けている。

 

「君達は早くここを離れた方がいい。大空と炎竜王、さらにはアクノロギアまでいるんだ。巻き込まれたらただじゃすまないよ」

 

ツナ達の戦いはこの冥界島まで衝撃が響く程に戦いは激しさを増していた。ここからかなり離れた場所にいるにも関わらずだ。

 

「ツナと父ちゃんがタッグを組んでんだ!アクノロギアなんかに負けるかよ!!」

 

「それについては同意するぜ」

 

「確かにツナヨシは強い。さっき試しに戦った時よりも遥かに強くなるなんて……この短時間に何をしたのかな」

 

ゼレフはツナと冥界島で戦った時ですら自身が不死身でなければやられていたと確信していた。そして期待する。それから僅かな時間でさらに強くなったツナヨシならいつか本当に自分を殺せるかもしれないと……

 

-いや、僕はもう決めたはずだ……期待すれば辛くなるだけだ-

 

「だけどツナヨシでもアクノロギアには勝てないだろうね。けれどもしツナヨシが生き残っていたら……竜王祭で会おうと伝えてくれ」

 

そう言い残してゼレフはこの場から消え去った……それを見送ることしか出来なかった二人は悔しそうな顔をしていた。

 

「……さっき凄まじい炎を感じた。あれは間違いなくツナの炎だ」

 

「もしかしたらアクノロギアをやっちまったかもしれねえな」

 

一触即発の空気から完全に抜け出してなかったので二人は目を合わせずに話している。だが……

 

「「!!」」

 

二人は同時に気付いて同じ方角へ振り返った。そして目を見開く。

 

遠くから迫る光球……凄まじいという言葉すら陳腐な言い回しにしかならないほどの魔力が内包されているその光球は正に堕ちてくる太陽のようだった。

 

 

 

 

 

ナツ達だけでなく他のフェアリーテイルのメンバーもこれに気付くがどうしようもなかった。

 

「に……逃げ……」

 

「ヤバい!」

 

「死ぬぞ!」

 

もう逃げ場はどこにもなかった。迫り来る死に誰もが絶望したその時……

 

炎の絶対防壁(ブリンダ・アッソルート・ディ・フィアンマ)!!」

 

誰かの叫びと共に冥界島を守るように巨大な炎の壁が出現した。光球は炎の壁によって押し留められている。

 

「この炎の壁は!?」

 

「ツナさん!?」

 

「ツナなの?!」

 

ルーシィ、ウェンディ、ミラは大魔闘演武のドラゴン襲来の際にツナによるこの防御技を間近で見ていたのですぐにこの炎の壁がツナによるものだと気付いた。

 

この冥界島にいる全員の視線が光球を押し留めているツナへと集中する。ツナは光球に押し込まれまいと必死に受け止めていた。

 

-くっ!受け流せない!ならこのまま……-

 

ツナは炎に込めた調和の力を強める。この凄まじい魔力を大気と調和させて打ち消すことにした。だが光球の向こう側に見えた光景に思わず息を飲んだ。

 

近づいてくるアクノロギアとそれを追うイグニール。そしてアクノロギアの口内には先程の焼き直しのように魔力が収束している。

 

「ガイア・カノン」

 

再びアクノロギアが光球を放つ。しかも最初の光球を抑えていて動けないツナへと向かって……

 

「ツナ!!」

 

イグニールが叫ぶも遅かった。いや、ツナならば今からでも避けるのは造作もない。だがその選択を選べるツナではない。ツナが逃げれば仲間達は間違いなく全滅するからだ。

 

「うおおおおおっ!!」

 

仲間達を絶対に守り抜くとツナは覚悟を決めている。それはツナにとっては常に当たり前の事……だからこそツナは大空なのだ。そしてその覚悟の炎が一際大きく燃え上がった。

 

その瞬間、山をも軽く吹き飛ばすほどの光球同士がぶつかり合い、大爆発を巻き起こした。

 

「「「うわああぁぁっ!!」」」

 

「「「きゃああああっ!!」」」

 

爆発の閃光と衝撃が冥界島を走り、フェアリーテイルのメンバー達は耐えられずに吹き飛ばされる……

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

「いてぇ……」

 

「俺達……生きてるのか?」

 

1人、また1人と起き上がるフェアリーテイルのメンバー達……無事を喜び合いながらも辺りを見渡して絶句する。辺りにあった岩は吹き飛び、建物も崩壊していた。正に焼け野原の様相を見せていた。

 

だがそれでもあの爆発の規模に対して被害が少なすぎる。何しろ誰1人として死んではいないのだから。

 

「あ……ああ……」

 

「どうしたのウェンディ?…なっ!?」

 

その時、ウェンディが信じられないようなものを見たように目を見開き、体をガタガタ震わせる……近くにいたルーシィがその視線を辿ると同じような表情を浮かべた。

 

ツナが腕を突き出したまま空中に佇んでいた。俯いていて顔はここからではよく見えない。だが手に灯る炎は弱々しく、ボロボロになった服の隙間から見える肌は赤黒く染まっていた……

 

そして糸が切れたように真下へと墜ちていった……

 

「ツナァァァッ!!」

 

ルーシィの絶叫が冥界島に響き渡った……

 

 

 

 

 

 

 

 




感想の返信も出来ずにスミマセン……感想きちんと読んではいるんですが……


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