妖精達と歩む大空   作:グリーン

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自分って待たせ過ぎですよね……

それでも応援してくださってる方に感謝を。


繋がる希望

 

-冥界島

 

「よかった……みんな……無事…で……」

 

ツナはアクノロギアの攻撃から仲間達を守る為に残った炎の全てを振り絞った。しかし仲間達を守る事はできたものの星の魔力を用いたアクノロギアの攻撃の直撃を受けたツナは虫の息だった……

 

全身から血を流れているが、最早その痛みすら感じる事はできない。

 

仲間達の自分を呼ぶ声がだんだんと遠くなっていくような感覚を味わいながらそれでも仲間達を守れた事に安堵してツナの意識は闇に包まれた……

 

 

 

 

 

 

「ツナァァァッ!!」

 

ルーシィの悲痛な叫びを聞いたアクノロギアはニヤリと笑うと意識を失い墜ちていくツナに追い撃ちをかけようと右腕を振りかざして突っ込んできた。

 

「させぬ!!」

 

そこへイグニールが割り込んで来て、アクノロギアの巨体を真っ向から受け止めた。そしてそのまま体当りしてアクノロギアを押し返している。

 

「ナツ!!」

 

「おうよ!!」

 

「俺も行く!!」

 

イグニールの呼び掛けに応えたナツと一緒にいたグレイがツナの落下点を目指して走り出した。二人は競うように全力で走ると墜ちてくるツナをしっかりと受け止めた。

 

だがツナはその衝撃にも目を覚まさず、ナツとグレイはツナの惨状に息を飲んだ。

 

「ツナ!!しっかりしやがれ!!」

 

「くっ!俺達を守る為に……」

 

グレイは気付いていた。あの大爆発の中で自分達がほぼ無傷だったのはツナが自分達を守ったからだ。爆発の瞬間、間違いなくツナの炎の暖かさを感じていた。

 

「ウェンディィッ!!!早く来てくれ!!!」

 

冥界島中に届くかのような大声でナツはウェンディを呼ぶ。その叫びを聞くまでもなくウェンディはツナ達のいる場所へと辿り着いた。いや、ウェンディだけでなく、一緒にいたフェアリーテイルのメンバー達もツナが墜ちる姿を見て走り出していた。

 

「ツナさん!!」

 

「ツナ!!」

 

「ツナ!!」

 

「ツナ兄!!」

 

到着したメンバー達もツナの姿を見てその怪我の酷さに言葉を失う。中でもやはりツナに好意を持っているウェンディとルーシィの動揺は大きかった。

 

「あ……ああ……」

 

目を見開いて呆然としているウェンディをシャルルが頬を叩いて叱咤する。

 

「しっかりしなさいウェンディ!!早く治癒魔法を!!」

 

「あ……うん!!」

 

厳しくも自分の役目を示してくれた相棒に心の中で礼を言うと、ウェンディは寝かされているツナの傍らに膝をついて治癒魔法を掛け始めた。

 

-ツナさん!!-

 

傷つき倒れた愛しい人を絶対に助けると誓いながらウェンディは魔力を解放する……だが、暖かな光がツナを癒そうと輝くがウェンディは表情を険しくするばかりだ。

 

-ダメ……このままじゃ……そんなの嫌!!-

 

ぴくりとも動かない体……弱まっていく鼓動……最悪の結果を頭に描いてはそれを否定するようにウェンディはさらに魔力を強める。

 

「グオオオオッ!!」

 

「父ちゃん!!」

 

ナツが空を見上げるとイグニールとアクノロギアはもつれ合いながら遠くへと離れていく。だがハッキリとアクノロギアの方が優勢のように見える。ナツはその姿を見て、ツナを見る……そして走り出した。

 

「みんなはツナを頼む!」

 

「おい!ナツ!」

 

グレイの静止に耳を貸さずにナツの姿はあっという間に遠ざかっていった。

 

「ツナ!!」

 

「ミラ姉!!」

 

そこへ入れ代わりに傷だらけのエルザを支えたミラとミネルバが到着した。エルザにも一刻も早い治療が必要と見受けられた。

 

「おい!エルザは大丈夫なのか!?」

 

「生きてはいる。早く治療したいところだが……」

 

ミネルバもそれ以上言葉には出せない。何しろ今、ツナの治療を止めてエルザの治療をすればツナの命が危ない。かといってエルザも放って置けば危うくなってくるだろう……

 

ツナとエルザを交互に見るウェンディの顔は半泣きの状態だ。どうしようもないジレンマに苦しむウェンディに声がかかる。

 

「集中……する…んだ!私は……大丈夫だ……」

 

「エルザさん……」

 

意識を取り戻したエルザがウェンディを叱咤する。身体中ボロボロになりながらもその目には強い光が宿っていた。その目を見つめてウェンディは涙をゴシゴシと拭いた。

 

「はい!!」

 

治癒の光がさらに輝きを増すも、ツナは未だに目を覚まさない……周囲の仲間達も奇跡を祈りながらも、もう無理なのかもしれないと諦めかけた時、大きな影が頭上を覆った。

 

「ウェンディ」

 

「グランディーネ!!」

 

ウェンディの母であるドラゴン、グランディーネがその大きな体でツナとウェンディの前へ優しく降り立った。さらにその後ろには三体のドラコンも同じように降りてきた。

 

「おい!今までどこにいたんだよメタリカーナ!!」

 

「バイスロキア!マジかよ!?」

 

「本当に……スキアドラムなのか……」

 

怒っているように聞こえるがその顔には嬉しさを隠せないガジル、スティングとローグは自分達が殺したはずのドラゴンが現れた事で驚愕していた。

 

「相変わらず目付きが悪いのう」

 

「驚いたか?人間の記憶を操作するなど我らには簡単なこと」

 

「滅竜魔導士としてドラゴンを殺した自信と実績を与える事が目的だったのだ」

 

ここに滅竜魔導士の親たるドラゴンが勢揃いしていた。自分の子供達との会話に花を咲かせたいところだがもう既に時間は残り僅かになっていた。滅竜魔導士達は自らの体内にいたことを聞いて驚愕する。

 

「代わりなさいウェンディ。私が彼の傷を癒すわ」

 

「本当!?グランディーネ!」

 

母の提案にウェンディは目を輝かせた。自分に天空魔法を教えてくれたグランディーネならばツナを救えると確信する。

 

「待っ……て……」

 

「ツナさん!!」

 

か細い声でそれを止めるのは他ならぬツナだった。薄く目を開けてグランディーネに懇願する。

 

「もう……そんなに……時間がないはずだ……俺の為にそれを無駄にしないで……」

 

「え?どういうことですか?」

 

「聡い子ね……そして優しい子……」

 

訳が分からないというウェンディと優しく慈愛の目でツナを見下ろすグランディーネ……

 

「私達にもうあまり時間は残されていないわ……昔、アクノロギアの滅竜魔法で魂を抜き取られてしまったから」

 

「滅竜魔導士の体内にいたのはそなた達の竜化を防ぐ為と我々の延命の為でもあったのだ」

 

「そして一度体外に出たからには最早時間は残されておらん」

 

「イグニールも炎竜王としての誇りにかけて死せる前の全ての力をもってアクノロギアを倒そうとしているのだが……」

 

グランディーネ、メタリカーナ、バイスロキア、スキアドラムが何故今まで行方不明だったのかが明かされる。真実に驚愕する滅竜魔導士達……そしてようやく再会した親達ともうすぐ別れなければならないと知り悲しんでいる。特にウェンディは悲痛な表情を隠そうとせずに叫ぶ。

 

「そんな……せっかく会えたのに!!」

 

「泣かないでウェンディ。私達があなた達の未来の為に出来る事がたった1つだけあるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グランディーネ!!』

 

『イグニール?』

 

それはツナが堕とされた時、アクノロギアを引き離しながらイグニールがグランディーネに念話で伝えてきた事。

 

『ツナの治療を頼む!!ツナを絶対に死なせてはならん!!』

 

『娘の夫になるかもしれない子だし、私もそのつもりだけど何故そこまで?』

 

ウェンディの体内にいたグランディーネは娘がツナに対して本気で恋している事が分かっていた。娘の為にも彼を癒すつもりだったがイグニールにここまで強く請われるとは思わなかった。

 

『残念だが俺一人ではアクノロギアには勝てん。だがツナならばいつか我らの悲願を果たしてくれると確信した!』

 

イグニールは例えこの戦いで敗れてもツナがいる限り希望は残ると言っている。その希望を絶やす事をグランディーネも他のドラゴンも望まない。

 

『分かったわ。任せてちょうだい』

 

『頼んだぞ。俺も最後に奴に意地を見せてやるとしようか!』

 

そう言ってイグニールは最後の戦いに残った力の全てを注ぎ込むのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グランディーネ……」

 

「世界の為にもウェンディ、あなたのためにも彼を治してみせるわ」

 

「ありがとう……お母さん……」

 

ウェンディの瞳からとめどなく涙が流れる……それを優しい瞳で見つめると気を引き締めるように空を仰ぐと、莫大な魔力がグランディーネの頭上に集まり始めた。

 

「今の状態で一人では無理だろう」

 

「我らも手伝おう」

 

「最後の仕事だな」

 

「ありがとう」

 

鉄竜、白竜、影竜が魔力を天竜へと受け渡す。魔力が更に膨れあがると空に複雑な魔方陣が浮かび上がった。ウェンディは複雑な魔方陣を必死に心に刻み込もうとしている。

 

「天竜の……涙」

 

魔方陣から遠目に見えるほどの大きな水滴のようなものが落ちてきた。誰もがその水滴のようなものが凄まじい魔力を内包していることに気付く。

 

その水滴は真っ直ぐに倒れたままのツナへと落ちる……そしてツナの体に触れた瞬間、水が弾けるのと同時にまばゆい光がツナを包み込んだ。

 

光が消えて、みんなが視力を取り戻すとあれほど傷だらけで確実に致命傷だったはずのツナの肉体には僅かな傷すら残っていなかった。そしてツナは何事もなかったように立ち上がったが、その顔は決して明るいものではなかった……

 

「すみません……俺の為にあなた達の貴重な時間を……」

 

ツナの謝罪に喜びの声をあげようとしていた周りのメンバー達も沈黙する。だがドラゴン達の顔は晴れやかだった。

 

「そなたが気にすることではないぞ」

 

「どの道我らの時間はそう残されていなかった。悔いはない」

 

「フェイスを破壊できた上に未来の希望を守る事ができたのだからな」

 

メタリカーナ、バイスロキア、スキアドラムが笑いながらも言葉を紡ぐ。その体は徐々に透けはじめていた。それぞれの子供と最期の会話を残し始めた。そしてグランディーネはウェンディの横に並ぶツナに優しく頬笑む。

 

「これはあなたの為でもあるし、最愛の娘の為でもあるわ。でも一番は未来へと希望を繋ぐ為……この世界全ての人々の為なのよ。だから簡単にその命を捨てようとしないでね」

 

グランディーネは頷くツナを見て安心するとツナの隣で涙を流しているウェンディへと視線を移した。

 

「ウェンディ……立派になったわね。いつもあなたの中から見守っていたけどこうして面と向かって話す事ができて嬉しいわ」

 

「グランディーネ……」

 

「もう私がいなくても大丈夫よね?あなたにはとても素晴らしい家族や……愛する人がいるのだから」

 

「……うんっ!!」

 

泣きながらも笑顔を見せるウェンディに安心するとドラゴン達は空へと舞う。体が急速に透明になっていくドラゴン達はそれでも、悔いのない誇らしげな顔をしながら遂に消えていった……

 

「ウェンディ……」

 

ドラゴン達が消えていった空をじっと見つめていたウェンディに何を話せばいいのかツナは迷う。

 

「大丈夫です!お母さんはいつでも私を見守ってくれていた事が分かりましたから!だから私は……私のやるべき事を!」

 

まだ涙が乾いていなかったがそれでもウェンディは力強い瞳でエルザの元へと走った。そしてすぐさま治癒魔法を掛け始める。

 

「ツナ、大丈夫なの?」

 

「心配かけたね。でももう完全に回復したよ」

 

「良かった……」

 

ルーシィとミラがツナを心配するがグランディーネの治癒魔法は凄まじく、傷は完全に癒えていた。

 

『ツナよ……』

 

「これは……イグニールッ!?」

 

目の前の二人は疑問符を浮かべるがツナにしか聞こえないイグニールからの念話が頭の中に響いた。

 

『奴を討つ為に生き永らえてきたがどうやらその望みを叶えることは不可能のようだ……』

 

「待ってて!すぐに加勢に……」

 

『無駄だ……最早俺には最期の一撃を放つ力しか残っておらん。その一撃をもって必ず奴に深手を負わせてみせる!だから後は頼む!!』

 

どうやらツナが傷ついていた間に戦闘はかなり不利になってしまったらしい。ツナは慌てて死ぬ気の炎を灯す。

 

『やめよ!俺が傷を負わせたとしても今はまだ奴には勝てん!そして分かっておろう!次に奴が狙うのはお前だということを!』

 

「しかし……」

 

戦闘の場所はかなり遠くである事が分かる。イグニールが引き離してくれたようだがイグニールを倒した後、アクノロギアは必ずツナを狙ってくるだろう。

 

『お前がすべきことは仲間から奴を引き離す事、そして一番重要なのはお前が生き残ることだ!』

 

「生き残ること……」

 

『ツナよ忘れるな!我らドラゴンはお前に全てを掛けた!いつか必ずアクノロギアを倒すと信じているぞ!!』

 

「分かった。聞き届けた……その願い……」

 

イグニールがニヤリと笑う姿がツナの脳裏に浮かぶような気がした。

 

『……ナツを頼むぞ。全てを話せなかったがまだ奴の試練は続く。力になってやってくれ』

 

「ああ……」

 

『さらばだ!ツナよ!最期に共に戦えた事、楽しかったぞ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「父ちゃぁぁぁんっ!!!」

 

そして数十秒後……天地を揺るがす鳴動とナツの絶叫が遠く離れたこの場所まで響き渡った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回でタルタロス編は終了ですかね。
ZEROにはいきません。ジョットの事は過去語りのような形になると思います。

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