次元を超えちゃった剣士   作:keycoffee

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二話分統合しました。加筆した部分もあるので矛盾点が発生しているかもしれません。


第一話

 眩しい光に当てられて、俺の意識は覚醒を始めた。

 

「う……ん……」

 

 全身の気だるさと胸の異物感に抗いながら起きあがる。

 未だ朦朧としている意識を覚ますように軽く頭を振って周囲を見渡した。

 丁度昼ごろだろうか。太陽の光が明るく照らしている。

 

「ここは……一体……」

 

 見たことの無い植物に、背の高い木々が俺を囲んでいる。

 ここは森なのだと理解した。

 ……一体、ここはどこの森なんだ?

 日本ではない可能性はある。

 しかし、ここが別の国であるとは言い切れない。

 人に合わない事には答えが出る事のない疑問によって、意識が思考に沈みそうになった時、体に違和感を覚えた。

 体が妙な解放感に包まれているのだ。

 視線を体に移す。

 

「…………………………」

 

 裸だった。どうしようもなく裸だった。

 それだけならまだいい。いや、良くないのだが、良い。問題は――

 

「おいおい、こりゃ、どういうことだよ……?」

 

 問題は、俺の体が縮んでいることだった。

 見事に体は子供、頭脳は大人な状態である。

 周辺を見渡しても、俺が来ていた服も持っていた荷物も無い。

 ……最悪だ。これじゃ防御力ゼロな上に攻撃手段も無い。

 思わず空を仰ぐ。そこでさらに見たくないモノが見えてしまった。

 空を飛びまわる巨大生物――ドラゴンだ。

 それ以外にも、現実には存在しないはずの生物が数多く飛んでいた。

 俺は口をあんぐりと開き、あまりに現実感の無いその光景を呆然と眺めた。

 

  ◇◇◇

 

 どれ位その状態でいたのだろうか。

 気がつくと、空はすっかり茜色に染まっていた。

 ……何を呆けていたんだ俺は。ここがどこか分からない以上、身の安全を最優先するべきだろうに……!

 俺は自分の馬鹿さ加減に憤りを感じながら素早く周囲の気配を探る。

 案の定、地球上に存在しない生物――便宜上、幻想生物と仮称する――に囲まれつつあった。

 ……受け入れがたい現実を前に呆然としていたとはいえ、近づいてくる気配に気づかなかったなんて、何という未熟さだ……!!

 

「未熟すぎる……」

 

 自分の未熟さ加減に腹を立てながら、武器を探す。しかし、武器になるような物はどこにも見当たらない。

 ……どうする? このままだと美味しくいただかれる事になる。しかし、応戦しようにも武器が無い。

 俺がここにいるのは完全にバレている。

 だが、正確な位置はわからない様子で、完全に包囲しきれていない事に気づいた。

 

「これなら行けるか……?」

 

 俺はなるべく音を出さないように慎重に動く。

 ……後もう少しだ。それまで気づいてくれるなよ……ん?

 そこで異変に気づいた。

 背後から何やらキチキチという音が聞こえる。

 ……俺が気配に気づけなかった?

 背中を嫌な汗が流れた。

 ゴクリと唾を飲み込んでゆっくりと振り返ると、そこには――

 

「………………」

 

 俺を喰らおうと大口を開けている虫の頭を持った犬のような生物がいた。

 ……この状況は正直ヤバイ。

 

「は……はは……」

 

 乾いた笑い声が口をついて出る。

 こちらは武器が無い上に素っ裸。対して幻想生物は、生来持ち合わせている爪などがある。その上、俺が気配を読めないときた。

 戦っても勝ち目は無い。

 残された選択肢は、逃走だけ。

 しかし、逃げようにも土地勘が無い。

 俺は闇雲に動き回ってかえって危険な場所に出てしまう事は避けるつもりだったのだが――

 

「もうそんなこと言ってられない、な!!」

 

 俺を捕食せんと迫っていた虫頭の犬の攻撃を後方に跳ぶ事で回避する。

 着地と同時に俺は走りだした。

 虫頭の犬に背を向け全速力で、だ。

 ヤツも俺を追って来ている。

 ……武芸者として敵に背を向けるのは矜持に反するが、状況が悪すぎる。せめて武器か服が欲しい。

 日頃の鍛錬の成果か、少しずつではあるが虫頭の犬との距離が開き始めた。

 体が縮んだだけで体力や身体能力に変化が無かった事に少し安堵したが、同時に状況の悪さに焦りを覚えた。

 

「このまま逃げ切るっていうのは無理があるよな……」

 

 ヤツの攻撃を避けながら考える。

 いくら俺が毎日鍛錬していると言っても、体力は無限ではない。

 このままではいつか追いつかれて喰われるのがオチだ。

 しかし、俺にはヤツを倒すための手段が無い。

 剣術を修めているとはいえ、異形と戦うのは初めてである。素手で戦うと言っても、表皮に毒など人体に害のある物質が付着している可能性もある。ただでさえ俺は今裸なのだ。

 それに、今はヤツ一匹だけだが、戦うという選択肢をとった場合、別の個体に囲まれてバックリと喰われるなんて事になりそうだ。

 戦うのはリスクが高すぎる。

 かといって逃げ続けるわけにもいかない。

 

「どうすれば………………ん?」

 

 遠目ではあるが、右方向に建物が見えた。

 素っ裸な俺を中に入れてくれるかは分からないが、行ってみる価値はあるだろう。

 

「……よし!」

 

 少しの希望が俺に活力を与えた。

 進路を建物に変えて走る。

 それによってヤツとの距離も狭まる。

 だから――

 ……鎮守の森での鍛錬を思い出せ。木の位置を利用しろ。

 俺は馬鹿正直に地面を走る事をやめた。

 

「ふっ……!」

 

 近くの木の幹を足場にして地面から跳ぶ。

 上ではなく横……現在位置よりも建物に近い木に向かって。

 そしてまた木の幹を足場にして跳んだ。

 それを繰り返すことによって、ヤツの攻撃を避けつつ建物に近づいていく。

 ヤツとの距離が開いていく。

 俺は無心になって跳び続けた。

 

  ◇◇◇

 

 一時間ほど経っただろうか。

 俺は建物の正面にたどり着いた。

 いつの間にか虫頭の犬を引き離していたようで、もう追いかけて来てはいなかった。

 

「ここまで、来れば、大丈夫……か」

 

 荒れた息を整える。

 息が落ち着くまで十分ほどかかってしまった。

 それだけ建物との距離が離れていたのだろう。

 感覚ではフルマラソンを全力で走った時と同じくらい疲れた。

 それも体が縮んでしまったからなのだろうか。いや、今は身の安全だ。

 

「さてと……」

 

 建物に視線を向ける。

 外観は研究所だが、あんな化け物がいる場所に研究所を建てる意味があるのだろうか。

 いや、だからこそなのか?

 誰かに見つかってはいけないような研究でもしていたのだろうか。

 ……情報が少なすぎる。考察は中に入ってからだ。

 見たところかなり老朽化しているため、中に入るのは割と簡単だろう。

 その分中にも化け物がいるというリスクを負う事になるが、それは研究所の外にいても同じだ。

 故に少しでも身を守る事が出来そうな研究所内部に行くべきである。

 

「行くか……」

 

 覚悟を決め、俺は研究所に入って行った。




文章量を少しずつ増やしていこうと思います。

次回はやっと主人公の名前とデバイスが出てきます。
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