とある魔術と恋姫†無双   作:近衛龍一

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張遼、上条達に街を案内するのこと

 

目が覚めると俺を縛っていた縄がほどけていた。

浜面の方も解放済みで背伸びしていた。

 

「ンじゃ、お前らが眠ってた間に進ンだ話すンぞ」

「「お前に眠らされてただけだけどな」」

 

どう考えても眠ってたわけないだろ。

こっちは疑われて処刑されるかもしれないって状況だったのに。

まさか味方に眠らされるとは思ってもみなかった。

 

「まず最初に知識として聞いておきたいことがある」

「まさかのスルースキル発動か……」

「レベル6だな……」

「面倒だ。もういっそのこと永眠させるか」

「「………(サッ)」」

 

一方通行が再びこちらに手を伸ばしてきたところで静かに座り方を正座にチェンジ。

だって痛いのはイヤだもの。

眠らされたくはないもの。

結局何を言おうが無能力者(レベル0)超能力者(レベル5)に敵わないのだ。

 

「話を聞く気になったよォだな。とりあえず三国志ってェのは知ってるか?」

「「……………………おう」」

「オイ、今の間はなンだ」

 

その赤い瞳で俺たちをジロッと見つめる。

う、疑ってるな一方通行のやつ。

ははっ、上条さんだって立派な高校生なんですよ。

三国志くらい余裕で知ってます。

 

「あ、あれだろ?劉なんちゃらが曹なんちゃらと旅行して七つの玉を集める話だろ?」

「ち、違うぜ大将。関羽っつぅ空から落ちてくる系ヒロインがドリンクバー往復係を経て電波系彼女とイチャイチャする話だよ」

「両方違ェよ。三下の方は人物あやふやで別の話が交じってるし浜面に限っては関羽以外は自分の話じゃねェか。簡単に言えば魏・呉・蜀の三国それぞれが天下統一を目指して戦ってくっつゥ話だ」

 

あ、あれ?そうだったっけ?

魏・呉・蜀は聞いたことがあるけれども、それって三国志の話に出てくるのか。

ふむふむ、勉強になる。

それと浜面は羨ましいから爆発しろ。

 

「その三国志がどうしたんだ?」

「ここはその三国志のパラレルワールドって話だよ」

「三国志の?武将なんて一人もいなかっただろ?」

 

それくらいは分かる。

中国史といえど要は日本の戦国時代と似たようなものだ。

英雄伝として未来に残るくらいだから皆ゴツくて大きい武器を持っているだろう。

女の人なんて仮に武勇で乗っていたとしても片手に数える程だろう。

 

「そこが俺も驚きなんだがァ、武将ってェのが皆女らしいンだ」

「え? 女体化?」

「お前の変換の仕方と速度にビビッたがそォいうこった」

 

普通『だったら三国志とは言えないんじゃないか?』とか『言ってる意味が分からないんだが』とかだろうに、浜面は期待を裏切らない。

理解して尚且つどことなくエロく聞こえるような言い方で言うなんて。

これはもう彼女に言いつけるしかないだろう。

 

「ンで、話を三国志の方に戻すが実際三国時代と呼ばれるまでには細々とした勢力の争いがあってそれを纏めて三国志っつゥことにして正式に三国で争い始めンのは後半の話だ」

「そうなのか? 俺が知ってるのは劉備が関羽、張飛と義兄弟の契りを結んだところからなんだが、それはまだ三国時代じゃないってことだな?」

「おい浜面。お前知っててさっきあンなこといいやがったのか?」

「だって俺出番少ないじゃん。お前らより極端に」

 

マジ……?

浜面は知ってたの……?

知った上で出番数増やそうとしてあんなこと言ったの……?

………なんか浜面に負けたって悔しい。

 

「ッチ。そうだな。そこはまだ黄巾賊とすら戦ってねェから冒頭だ」

「なら、今はどの辺だ?」

「それを今から話すンだろォが。小競り合いしていた勢力の一つに董卓軍ってのがあンだ」

「董卓軍って……まさか!」

「そォだ。ここはその董卓軍なンだよ」

 

あの子……そんな大事なポジションの子だったのか……。

しかし名前聞いたときに感じた既視感はこれか。

そりゃ三国志の有名武将なら一度は聞いたことがある。

容姿が容姿だから結びつかなかったが……。

 

「でも一方通行。董卓って暴政暴君が原因で劉備達に倒されてたよな……?」

「なンだ?そこまで知ってンなら話は早ェじゃねェか」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺その辺の話わからないぞ?」

「マジか大将。俺でも分かったのに」

「うわっ……浜面にバカにされた……。浜面に」

「俺の名前を強調するな!」

「ったく…。簡単に説明するから聞いてろ。朝廷の力が弱まった時に最大権力を持ったのが董卓だ。浜面言った通り暴政暴君で民から反発くらったがそのまま続けて反乱勢力に倒された、ってのが俺の知ってる三国志だ。だから劉備軍に倒されたというより劉備軍も混じった連合軍、が正しいがな」

「俺の知ってる?何かこことは違うのか?」

「お前にはあのガキが暴政してるよォに見えたか?」

「い、いや……」

 

どう見てもそんなことできるような子じゃない。

暴政どころか人は良さそうだし、町民のこと考えても動きそうだ。

悪どいことするような人間じゃないだろう。

 

「だろォな。俺も同じだ」

「じゃあ連合軍との戦いはない……?」

「いンや。隣にいた賈詡ってやつが言ってたろ。今から連合軍との戦いで忙しいって」

「そうえばそんなこと言ってたな……」

「これが本当かどォかはまだ決まったわけじゃないが聞いた話だとここの領主が暴政で民を苦しめてる、なンつゥ噂が他勢力の間で広がって、反乱軍が結成されたらしい。で、その反乱軍と近々大きな戦があるンだと」

「誤解ってことじゃないか!だったら早くその誤解を解いて……!」

 

あの子はただの出世のための道具になるってことか?

そんなこと許されるものか。

たぶんその標的になった理由は人の良さで騙されたか、はたまた人徳でこの都をちゃんと治めているから周りに嫉妬されたか……。

どちらにせよいい人だから狙われたということじゃないか。

 

「バカか。知らねェ部外者やその国のやつらが誤解を解こうとしたところでンな話を簡単に信用するやつがどこにいンだよ。だいたいこの時代はどの勢力も名声を上げるために必死っつゥ話だ。そこに民のための反乱軍を作ったンで一緒に戦いましょうなンつゥ上手い話が舞い込ンでみろ。真偽を確かめずに食いつく決まってる。仮に嘘と分かっても、無理に戦に持ち込むだろォよ」

「じゃ、じゃああの子は……!」

「最後まで聞け。どォせ三下のことだ。この話を聞けば助けようってのは分かりきってンだ。忘れがちだが俺たちは行くアテもねェ。だからしばらくここに身を置かせてもらう間、力を貸すって約束をしたンだよ」

「マジかよ。だけど元々不審者扱いされてここに連れてこられたのによくもまぁそこまで話を進めれたな」

「ンなもン能力見せたら向こうから力を貸してほしいって食いついてきたよ。斥候疑惑も戦いに使えるやつをわざわざ斥候にするはずがねェ。しかもよく考えたら斥候ならあんなに騒いでること自体おかしいことだ、ってことでな。今の連合軍の話もそうやって誤解を解いてから聞いた」

「うわぁ……なんという能力……」

「どれだけ使い方豊富なんだよ……。ついに釣り餌にまでなった……」

「うっせェな。だがまだ本当に暴政が行われてないか分かったわけじゃねェ」

「おい!あの子がそんな!」

「念の為だ。はしゃぐンじゃねェ。だから三下、浜面。お前ら今から街の見学も兼ねて本当に暴政が行われてないかその目で確かめてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、まさかあんたらがホンマに斥候やないとはなぁ」

 

一方通行に言われて街の見学をすることになった俺と浜面。

護衛兼案内役をしてくれるのはさっきいた紫髪のお姉さん、もとい張遼さんだ。

どうもサラシはデフォらしく、街を歩いていても特に民が驚いた表情を見せることはない。

 

「張遼様! ご無沙汰しております!」

「おぉ!元気にしとるやないの。今は無理やろうけど、暇になったらあんたんとこの酒屋にまた行くわ」

「ははっ! きちんと準備しておきます!戦頑張ってください!」

「分かっとるで。あんたら大好きな董卓ちゃんはうちらに任せときや」

「よろしくお願いします! 董卓様は我々の希望でございますから!我々にも出来ることがありましたらお申し付けください!」

「ありがとな。そんときは遠慮なく頼らせてもらうわ」

 

今、確認という名目で城下を歩いているわけだが、街の商売店とても威勢がよく活発な声が飛び交っていた。

張遼に話しかける人は皆戦に関するもので、しかも全てが協力の申し出。

それも董卓を心配するものが多く、この戦に関して街全体が一致団結していることが伺える。

 

「浜面」

「あぁ、言うまでもないな。皆生き生きしてる」

 

暴君に虐げられている印象は全く見受けられない。

それどころか皆董卓に感謝して、心配している。

ここでの普通がどうなのか分からないが、町民皆が自ら戦のために力を貸したいというのはそれほど都がまとまっている証拠ではないだろうか。

 

「せやろ?董卓ちゃんはいつも民が幸せになるように考えてるんや。それで暴君暴君なんてありえんっちゅうねん」

 

ふふん、と自慢げに張遼は胸を張る。

おおぅ…。

ただでさえサラシなのに……。

 

「ん?二人ともどうしたん?」

「な、なんでもないぞ」

「あ、あぁ。気にしないでくれ。俺達の威厳の為に」

「あんたらがそういうんなら……。しかしあれやなぁ。一方はんみたいな化けもんがうちらに力貸してくれたらホンマ助かるわぁ。ここ兵は多いんやけど、主力で言うとうちと華雄ちん、呂布ちんくらいやもん」

 

華雄ってのはあの時いた銀髪のお姉さんのこと。

一方通行に何やら頼み込んでいるのを出かける前に聞いた。

呂布はまだ見ていないが、名前だけなら聞いたことのある三国志内で一番の実力を誇る武将だ。

あ、因みに今の呂布の説明は浜面の受け売り知識。

 

「そういえば一方通行に何を見せられたんだ?」

「一般兵100人くらい相手に戦ってたで。なんかよう分からんけど皆攻撃跳ね返されるし、一方はん皆峰打ちで倒したんや」

「うわ……。割と真面目に見せたんだな……」

「普通に考えてエグいよな。対立したら勝とうと思わないもん、俺」

「せやけど上条はん。あんた一方はんに勝てるんやろ? 一方はんが言ってたで」

 

それは俺の右手のことを言っているのだろう。

あいつ……余計なこと言いやがって……。

 

「勝ったことはあるけど今勝てるか分かんねぇぞ? というか張遼とかには勝てないし」

「へ?なんでなん?」

「大将は右手が特殊なんだ。一方通行も大将の右パンチだけは反射できないんだよ」

「なんや、あれって反射しよるんか? そりゃ跳ね返されるわ。というか、どうやって反射しよるん?」

「どうやってって言われてもなぁ……。ベクトル操作で……」

「べくとる?」

「あ〜……分からないよな。なんというか……妖術とでも考えてくれ」

「ふぅん。難しいんやな。因みに浜面は強いん?」

「俺だけ浜面……」

「え?浜面やないん?」

「間違ってないけどよ……。まぁ俺は何も強い要素はないぞ。残念なことに一般兵以下だ」

「威張るなよ。俺もだけど」

 

ここじゃただの高校生だもんな。

いや、向こうでもただの高校生だけども。

相手に刀持たれたら何も出来ない。

対能力者用だからな、俺の右手は。

 

「なんやなんや。二人とも弱気やな?」

「仕方ないだろ。本当に何もないんだから」

「だいたいそれなりに強かったら最初捕まったときに逃げてるっての」

「あははっ。それはそうやな。兵の話やと一方はんだけ縛れんかったって言うとったわ」

「あいつ……反射使って縛れないようにしたのか……」

「能力いつでも使えるからって無駄遣いしすぎだろ……」

 

一人だけ平然と座ってたのも頷ける。

しかし一方通行のやつ、無制限に能力使えるからって使い過ぎだろ……。

羨ましい……。

 

「張遼様。これから頑張ってください。これはささやかな気持ちです。受け取ってください。ささっ、そちらの方達も」

 

露店から出てきたおやじさんが俺達に差し出してくれたのは三つの肉まん。

白い湯気が立ち上り、とても美味しそうだ。

 

「ありがとな〜。ほら、上条はんと浜面受け取りや。こーゆー好意は受け取っとくもんやで?」

「そ、そうか。それじゃ、ありがたく」

「いただくぜ、おっさん。って熱っ!?」

 

肉まんを受け取るやいなや、浜面は手で肉まんを転がす。

おおっ、確かに相当熱いぜ。

 

「これくらい我慢せんと。はふっ。ん〜! やっぱ旨いな!おっちゃんの肉まんは元気出るで!」

「そう言ってもらえれば光栄です。戦、頑張ってください!」

「当たり前や! この肉まんに懸けて必ず董卓ちゃん護ったるで!」

 

やっぱり今の気持ちは皆戦に向かってるのか……。

はふっ。

……熱っ!? 何これ!? 肉汁が凄い出てきたんだけど!?

 

「#¥€&!?熱/&%°〆!?」

「ふ〜、ふ〜。ん、大将そのまま食ったのか。無謀だな」

「そんなに熱ないのに」

「いや、熱いよ。俺達にしてみれば」

「そうなん? こーゆーのは熱々が旨い言うんやけどな」

 

それにも限度があることを張遼は知らないのだろうか。

この熱さを平気な顔して食べて尚感想が言えるなんてどれだけ凄いんだ。

 

俺は激熱肉まんをゆっくり食べながら街を見て周ることにし、城下見学を続けた。

 

「なぁあんたら」

 

肉まんを食べ終え、ある程度街も周った時、張遼がふと真面目な口調になる。

張遼を纏うその雰囲気は柔らかくて、それでいて緊張感のある不思議な感覚だ。

 

「なんか知らんけどな。うちらはきっとあんたらに相当頼らなあかん気がするねん。一方はんだけじゃなく、上条はんと浜面にもや」

「おう」

 

浜面が否定するわけでもなく、短く頷く。

 

「まだあんたらが正式に力を借すわけやない。ただあんたらに力を借りる時がきたら、そん時は全力で応えてくれへんか?」

「何言ってんだ張遼」

「へ?」

「こんな楽しそうにやってる街はそうそうないぜ?それが崩されそうなんだろ? 力を貸さない理由がどこにあるんだよ」

「そしたらあんたら……」

「俺は平和が崩された日常を知ってる。だから、二度とあそこには戻りたくない。大将もそう思わねぇか?」

「浜面にしてはまともな意見だな。俺も同感だ」

「一方通行も力を貸す。というかそのつもりで俺と大将に街を見学させてんだろ」

「だろうな。たぶん俺達を焚きつけるためだと思うぜ」

 

こんなの見て、戦わない道を選ぶか。

力になんねぇって分かっても出来ることを出来る限りやるっての。

 

「董卓、守りたいんだろうが」

「当たり前やないか。あんないい子、死んでも護るわ」

「だろうよ。それに俺達も肉まん貰ったし戦わねぇと。だから一方通行には力添え出来るように言っとくよ」

 

自分より背の低い張遼の頭に手を乗せて、浜面は笑う。

 

「浜面……」

 

そして、もう一言。

 

「ーー大将がな」

「「おい」」

「いや、だって俺一方通行怖ぇもん。なんか俺に対して沸点低いし」

 

やっぱ浜面は最後まで締まらねぇな……。

 

けど、俺達三人の間には今から戦だというのに不思議と笑みが零れていた。

 

 

 

 

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