とある魔術と恋姫†無双   作:近衛龍一

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ヒーロー、協定を結ぶのこと

 

洛陽で暴政が行われていないことを充分に理解した俺達は城に戻った。

早速一方通行に報告しようと最初に連れていかれた大広間に向かうと、ちょうど反対側から一方通行が歩いてくるのが見える。

 

「おぅ、一方通行」

「三下か。帰ってきたンだな」

「あぁ、今な。お前は何してたんだ?」

「華雄と呂布に頼まれて手合わせしてたンだよ。まァ俺は立ってただけなンだが」

 

そりゃそうだろう。

まさか能力使って攻撃するわけにもいかないし。

大人しく受ける攻撃を全部反射するくらいしか出来なくて当たり前だ。

 

「いいサンドバッグだな」

「お前をサンドバッグにしてやろォか?」

「なんで!?」

「まぁまぁ一方通行。浜面のサンドバッグについてはまた今度にしてさ」

「するな!否定しろ!今すぐに!」

「仕方ねェな。サンドバッグは次の打ち込みの時にしてやンよ」

「助けて張遼! 俺の言葉スルーされて虐められるんだけど!?」

「しゃーないんちゃう?浜面やし」

「まだ仲良くなって少ししか経ってないのに俺の扱い方が酷い!?」

「冗談や冗談。二人ともやめてやりーな。いくら浜面でもサンドバッグは可哀想や」

「だよな!」

「せめて斬られ役で勘弁しといて」

「悪化してる!?」

「ん、これ悪化しとるん?うちサンドバッグを知らへんからよー分からんねん」

「だったら『斬る』より酷い想像のサンドバッグがどんなのか教えてーーいや、やっぱいい……。なんか怖いわ……」

 

さりげなく使ってしまったが横文字は張遼達には分からないんだった。

これから使う時はよく言葉を選んでから言わないとな。

でも俺も斬る以上の酷い扱いを知りたいものだ。

 

「とりあえず一方通行」

「おォ、どうだった?」

「問題なし。暴政なんて敷かれてなかったよ。それどころか皆董卓のこと心配して戦頑張ってくれって応援ばっかだ」

「そォか。他には?」

「肉まん貰った」

「……それに釣られたわけじゃねェだろォな?」

「俺が食べ物に釣られると思うか?」

「卵一パック奢っただけでだいぶはしゃいでた記憶があるンだが」

「………あれは気にするな」

「ま、いいけどよォ。報告なンざ受けなくても」

「まるで最初から俺達が出す答えを分かってたみたいな言い方だな」

「違ェか?」

「いや、合ってるけどよ」

「だろォな。というか、今のてめェら見たら予想してなくて分かンだろ」

「そうだな」

 

これだけ張遼と話していて断るなんて答えあるわけないよな。

だけど一方通行が全部見透かしてて手のひらで踊らされていたってのはちょっと悔しい。

 

「浜面ァ。後でビビンじゃねェぞ」

「なめんな。これでもレベル5倒してんだ」

「その言葉、覚えとこォか」

 

一方通行試すような問いに浜面は自信ありの様子で頷く。

覚悟を決めるのだけは俺と同様早いようだ。

 

「力貸してくれるんやな。ほなうちも一安心やわ」

「そォと決まればさっさと董卓達の所に行くぞ。時間はそんなにねェみたいだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

本殿の大広間に行くと、既に董卓、賈詡、華雄と先ほどはいなかった女の子が二人座っていた。

張遼曰く小麦色の肌にタトゥーが入っている方が呂布。

その隣にいる小さい女の子が董卓陣営の賈詡に並ぶもう一人の文官、陳宮らしい。

董卓以外真剣な顔付きで入ってきた俺達に目を向けることなく座っている。

董卓はどうしてるのかって?なんかおどおどしながら俺たちに頭下げてるけど。

 

「本当に力を貸してくれるの?」

「だからそう言ってンだろォが」

 

着席すると直ぐに協力の旨を賈詡に伝えたところ、賈詡の反応は疑心暗鬼、といったことろだった。

やはり一方通行のようなチートの力が簡単に借りられるのかと疑っているのだろう。

 

「………張遼」

「いいと思うで。確証はないけどこの人らは信頼するに値する。少なくともうちはそう感じた」

「張遼が言うなら間違いなさそうね。一応、陳宮はどう思う?」

 

近くにいた少女ーー薄緑の髪にショートパンツ、橙と白のニーソが印象的な陳宮と呼ばれた子が静かに意見を告げる。

 

「呂布殿の仲良くしていた辺りねねはそこの白髪はあまり好きじゃないですが、信用はしていいと思います。正直、今の我々に力が欲しいというのは事実であります」

「そう……。えっと…ごめんなさい。ボクの方から頼んでおいて疑って」

「イヤ、仕方ないことだろ。実際、俺らにそれを証明するもンだせなンざ言われても無理だ。軍師なら当然ってもンだ」

「理解してくれて助かるよ」

 

ふぅ、と一つ大きい息を吐いた賈詡は董卓と目を合わせた。

まるで最後の判断任せるけど、と言いたげだ。

けれど董卓の方は何かアクションを起こすわけでもなく、丁寧に両手を膝に置いている正座状態のまま賈詡を見つめている。

そして賈詡の方が何かを理解したようにコクンと頷く。

今の間に二人の中でやり取りが行われたようだった。

 

「では、正式に貴方達を我が董卓軍に招きたいと思います。って、口調は苦手だから砕かせてもらうわね」

「別に俺は構わねェぞ」

「じゃあ、招待にあたってそっちの条件を提示してくれない?ボク達の方はできるだけそれに応えるから」

 

こちらの要望というわけか。

俺はそんなものないし、アクビをしている浜面にもないだろう。

だけどこうなることをすでに見据えていた一方通行はどうやらあるらしい。

表情は眉一つ動かさずに条件を提示した。

 

「俺達を客将扱いにすること。勿論、連合軍との戦の間はどこにも投降しないから安心しろ。客間は雨風防いで寝泊まり出来ればそれでいいし、飯も特に豪華にしろなんて言わねェ。次に俺達に部隊を与える必要はねェが政治、治国に関して以外のことに関しては董卓と同様の発言力を与えてくれ。最後、会議には必ず俺達も参加させること。この三つが俺の要望だ」

 

焦ることなく淡々と言い切った一方通行。

その条件の裏にどんな考えがあるのか分からないが、こいつのことだ。

足りないどころか余分なものすら含まれない必要最低限のものなのだろう。

その一方で賈詡は少しばかり眉を顰めていた。

無理もない。

政治以外とはいえ董卓と同様の権限を持たせるのだ。

それに客将というと何時でも出て行っていいことになる。

となると他国に行く可能性ある者に機密事項も出てくる軍議に全て参加させろなんて提案は無茶を言い過ぎだ。

沈黙のまま五分、十分と過ぎていく。

 

「……君達はどこか別の軍に行きたいの?」

「そォいうわけじゃねェンだ。可能性がゼロとは言わないが他の軍に移る可能性はほとんどない。あるとすれば軍を移るわけじゃなくて、この軍を抜けるって話だ」

「普通だったらどこかの軍に所属していた方が誰にとっても得策なはずなのに、わざわざ流浪人になるってことはその時君達にはそれなりの優位点があるってことだよね」

「まァそォなるな」

「それはボク達には教えられない?」

「悪いがな。ただ一つだけ言えるとすれば別に野心を抱いてるってわけじゃねェ、ってことぐれェだな」

 

俺も聞いていない条件の真意。

確かに賈詡の言う通り軍に属するってことは所謂就職先と同じことだ。

そこを離れるとなると他所に移る以外の選択肢は普通考えられないな。

一方通行はいつもの面倒臭そうな表情ではないが、相変わらず顔からは考えていることが読めない。

 

「ちょっといいか」

 

一方通行と賈詡以外、皆黙って二人の会話を聞いていた最中、一人浜面が胡座をかいたまま手を挙げた。

視線が一斉に集まり、渦中の二人も視線を向ける。

顔を見るだけだと浜面も何を考えているのか分からないが、一方通行とは違い隠しているというよりは本当に何も考えていない感じだ。

けれど口から出てきた言葉は意外なものだった。

 

「一方通行を信じてくれないか」

「え……?」

 

その意外性に賈詡も、何より一方通行が初めてみるような驚きの表情をしている。

浜面はそんな二人の様子に気づかないまま話を続ける。

 

「正直なところ、俺にも一方通行の考えてることなんてわかんねぇよ。大将ーー上条だってたぶん一緒だ」

「それなのに信じろ、と?」

「そうだな。これが一国を動かす大事なことってのは分かってるけどさ、頼めねぇか」

「結構無茶なこと言ってるよ。それが分かってて言ってるならバカだよね」

「かもな。それは自分でも思うよ。だけど、一方通行はお前らを裏切らない。絶対に」

「証拠もないのに?」

「ないのに、だ」

 

多分言ってることで言えばある意味一方通行より無茶苦茶だな。

なんか言ったかと思えばただの思いつきで言ったような発言でこっちの要求を通せだなんて。

けれども賈詡の方は少し心が動いたようで、また暫く黙り込んだ。

 

「張遼は今度の戦いで俺達に助けてもらわないといけないって言ってた。そこまで言うって俺達を斥候じゃないって話を信じた結果だよな。疑ったまま大事な戦に参戦させるなんてありえねぇもん」

「……もしかすると尻尾出させるためにわざとさせてるのかもしれないよ?」

「あ〜……そんなことするのか? だったら俺にはそんなこと見抜けねぇっての。お、ならちょうどいい。俺はあんたらがそんなことしてないって信じるから、お前らは俺達が裏切るようなことはしないって信じてくれよ」

「それ、強引すぎない?」

「そうか?結構対等だと思ったんだけどな……」

 

こいつ本物のバカだ、と思ったやつがここにどれだけいるだろうか。

俺でもその理論はないぞ。

一方通行も手を額に当ててため息だ。

当然賈詡も……と思ったのだけれど……

 

「……いいよ。その条件、受ける」

 

少し笑みを浮かべてまさかの言葉だった。

 

「ほ、本当にいいのか!?」

「うん。実際、こいつの言った通り力を借りないと何ともならないし。いいでしょ、陳宮」

「そうですね。このバカに深い考えはできないでしょうから疑うこともないでしょう。約束してくれるならいいと思いますよ。破ればこいつを処刑ということで」

「そうだね」

「あれ?俺の命が懸かったの、これ?」

 

なんというか……。

さっきまでの緊迫感はどこへやら。

浜面のおかげで空気が和み、皆肩の力を抜いていた。

 

「君達を信用する。だから裏切ったら許さないよ。普通はこんな簡単には信じないけど今回は仕方ないかな。ボクは董卓を絶対に護らなくちゃいけないしね。ついでに、この戦はこき使わせてもらうよ。ここの武将を含めて休む暇はないから。君達も精一杯活動ってこと」

 

言葉の裏の力強い口調にこの戦にかける想いが伝わる。

フルで活動って……。

それほどまでに厳しい戦いなのか……。

今更だがこの子達は凄い。

俺はまだ『ここでの戦』を見てない。

でも命を懸ける戦いだ。

どんな規模でも、どんな内容でも、決して遊び感覚じゃない。

生きるために、誰かを守るために必死になっている。

それを俺たちより年下なのに冷静に状況を判断しているなんて。

軍師二人に限ったことではない。

ここにいる他の皆ーー張遼、華雄、呂布は武将だ。

これから前線で戦わなければならないのだ。

それが当然かのように。

 

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