少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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何かノリが居酒屋に近くなっている気がするこのごろ。
相も変わらず蘭子ちゃんキャラ崩壊。
それでも良い方はお読みください。


少女少年と堕天使の勘違い

シャワーから吐き出される水の音が、風呂場に木霊します。私も蘭子ちゃんも互いに動く事が出来ず、ただ体を見つめ合うだけ

 

(見てる場合じゃ無いんですけどぉ!)

 

おお落ち着きなさい鳳神楽、こんな時のために凛から防衛術を教わったじゃないですか!……いや、こんな事態は想定してませんし教わってないですね!

 

「か、神楽さん…?」

 

蘭子ちゃんが声を出した事で、慌てて私は自身の陰部を隠します。タオルなんて持ち込んでいないために、腕で隠しますが如何せん時既に遅し。

既に蘭子ちゃんは私のソレをしっかりと目撃していたらしく目が点になったと思えば全身を真っ赤に染めています。

そして私はと言えばちゃっかり蘭子ちゃんの裸を見ています。いや、故意にじゃないですよ?蘭子ちゃんも隠すものが無い状態ですし、私と違って状況が飲み込めていないのか腕で隠す事もしません。必然的に裸を見てしまうのは致し方ない事なのです。

 

(誰に言い訳してるんですかね私は…)

 

そんな事を考えて、幾分か落ち着いた頭でこの場をどう切り抜けるか考えます。

 

1.病気で腫れ上がっている

こんな病気聞いたこともないので不可能ですね…

 

2.堂々とさらけ出して当たり前のようにシャワーを浴びる

これも当然不可能ですね。仮に叫ばれでもしたら私の人生終わりですよ。

 

3.湯気や光が奇跡的に隠してくれる事を祈る

 

現実は非常である、打開策無し!

頭を悩ませていると、蘭子ちゃんが後ずさるのが見えます。

 

「ら、蘭子ちゃん…?」

 

「ぴっ…」

 

逃げ出すのかと思い、それだけは勘弁をと試しに声を掛けますが小さく悲鳴を挙げられてしまいました。分かってはいた事ですね、何時かはこんな日が来ることも想定していましたが、少なからず親しい仲になった彼女に悲鳴を挙げられると心にダメージが入ります。

ここは素直に打ち明けて、処遇を彼女に託す事にしましょう。そう思った所で、蘭子ちゃんが大きく呼吸をしたのが見えて

 

 

 

 

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熊本のママとパパ、お元気ですか?

私は元気です。

いきなりですが、今現在私は人生の中でとてつもない程の衝撃に見舞われています。

 

(神楽さんが、神楽君だった…?)

 

私が東京に出て、一番親しくなった鳳神楽さん。そんな神楽さんと本日はお泊まり会をする事になり、私はとても楽しみにしていました。

一緒にお風呂に入ったり、ご飯食べたり、布団に入って色々お話したりと。が、今はそんな考えが消え去るほどの衝撃を受けました。

生えてます。今よりも小さな頃、それこそ幼稚園の頃にパパと一緒に入ったお風呂で見た女性と違うモノ。保健体育の授業で少しだけ習った男性にしかないモノ。

 

(え、え?神楽さんば実は男の人で、アイドルやってて。男の人だけど女の子で、アイドルやってて。あれ、男の人なのに生えてる?生えてるけど女の子?)

 

支離滅裂な考えが脳内に浮かびますが、ハッキリと言えるのは私がこの現実を受け入れきれないという事。

以前読んだ本で

『こんなにカワイイ子が女の子なわけがない!』

なんてセリフがありましたが、まさかそれは本当にだとは思ってもいませんでした。

 

(もしかして、凛さんも男の人…)

 

神楽さんと一緒にいる事が多い凛さん。もしかしたらというそんな考えが浮かび、終いにはシンデレラプロジェクトとのメンバーが全員男の人なのではと考えてしまいます。

 

「ら、蘭子ちゃん…?」

 

そんな事を考えている内に、神楽さんが声を掛けてきます。あまり男性と接する事の無かった私は思わず小さく悲鳴を挙げてしまいます。そこで気付いてしまいました。

神楽さんは腕で隠す物を隠していますが、私は一矢纏わぬ姿でスッポンポンです。

それに気付いてしまい、恥ずかしさのあまり声を上げようとした時

 

「それだけは、ごめんなさいっ」

 

神楽さんに口元を抑えられ、腕を掴まれて壁に押し付けられました。

 

「うぅ、ごめんなさい蘭子ちゃん…。ここで悲鳴を挙げられたら私の人生終わりですし、凛にも武内さんにも迷惑がかかっちゃうから…」

 

いえ、いまはそんな事は良いです。そんな事で片付けていい話ではありませんが、今はそれよりも

 

(揺れてるっ、揺れてる!)

 

私の口元と腕を掴んでいるために、先程まで隠されていたソレが露わになります。しかも揺れてます、揺れてます!

 

(男の人のって、あんな形してるの!?)

 

記憶の中にあるモノと全然違う気がします。まだ可愛らしいと思えた記憶のソレですが、目前のソレは可愛らしいくないです!

そして、私は慌てて自身の胸元を隠します。遅いかも知れませんが、流石に晒したままというのは受け入れられませんし。

 

「蘭子ちゃんや皆を裏切ってる事は分かってるけど、私も憧れの為にこうするしかなくて、でもお泊まり会に誘ってきてくれた事は嬉しかったし、参加してもっと仲良くなりたかったし…」

 

「む〜、む〜!」

 

そ、そろそろ息が苦しくなってきました…。

私は何とか手を離してもらおうと、声を出しながら神楽さんの手を叩きます。

その行動の意図をわかってくれたのか、神楽さんは手を離しタオルを体に巻き付けて後ろを向きます。

私も同じ様にタオルを巻き付けて、隠します。

 

(お嫁に、いけないっ!)

 

酸素を得た事で幾分か余裕が出来た頭で考えた事がこれです。裸を見られたからには、責任を取って貰う物だってママが言っていたのを思い出します。

 

(か、神楽さんと結婚!?)

 

私まだ学生なんだけどっ。それにアイドルだし、恋愛はしない方がいいかもしれないし、でも裸を見られたし…

 

「蘭子ちゃん、一先ず服着よっか?」

 

そう声をかけられて、私は考えを切り替えて今はこの現実と向き合うことにしました。

 

 

 

 

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何とかお互い服を着て、テーブルを挟んで向かい合うように座ります。

 

「えっと、何から話したら良いかな…」

 

何から話したらいい物かと頭を巡らせ、蘭子ちゃんの顔を伺うように覗き見ます。

視線が交わり、先程の光景が蘇ってしまい。蘭子ちゃんも思いでしたのか二人して顔を赤らめます。

 

「そ、その…。神楽さん…神楽君は、どうしてアイドルになったんですか?」

 

「私がアイドルになった理由ですか」

 

蘭子ちゃんから聞かれたことを、私は隠すこと無く話しました。

楓さんのライブを見に行ったこと。舞台で光り輝く彼女を見て、私も同じ様になりたいと思った事。路上ライブを繰り返して、武内さんの目に留まりスカウトされた事。

 

「でも、流石にバレてしまいましたし。私は事務所を去るつもりです」

 

デビューしたばかりですが、流石に私という異物が居るなら蘭子ちゃんは落ち着かないでしょう。それに蘭子ちゃんが誰かに話さないとも限らないですし、成るべく早いうちに居なくなった方が賢明でしょう。

ですが、蘭子ちゃんは私が居なくなると聞いて驚いた顔をしていました。何故?と思う間もなく、蘭子ちゃんは立ち上がり私の肩を掴んで来ます。

 

「居なくなる必要なんて、無いじゃないですか!」

 

「で、でも…。私は男だし、皆を騙しているし、それに一緒にいたら気持ち悪いでしょう?」

 

「気持ち悪くなんてないです!確かに驚きはしましたけど、でもだからってそんな簡単に諦めて良い物なんですか?」

 

「諦めるのは、確かに辛いけど。ほら、また別の機会が訪れるかも知れないし」

 

「離れたら、嫌です…」

 

その言葉と共に、蘭子ちゃんは涙を流し始めました。突然の出来事に理解が出来ず、泣かせてしまった罪悪感が襲いかかります。

 

「神楽さんが居なくなったら、私はまた一人ぼっちになっちゃう…。素直に話す事が出来なくて、離れて行くのは嫌なんです…」

 

「蘭子ちゃん…」

 

私と話す時は普通に話す彼女ですが、武内さんや新田さんなどメンバーの方と話す時には言葉が変わります。以前聞いた時には、それは照れ隠しであると言っていました。

ですが、その照れ隠しで話すのではなく。ありのままの自分で話す人が居なくなる。離れて行くのが嫌みたいです。

私はそっと彼女の頭を撫でます。

頭に手が触れた時に、蘭子ちゃんが少しだけ体を強ばらせていましたが、拒むこと無く私を受け入れてくれました。

 

(酷い人ですね、私)

 

こんな子を裏切って、親しくなって、勝手に居なくなるって言って泣かせて。

撫でる手を止めずに、私は話し掛けます。

 

「蘭子ちゃんは、私が男の人でも、居ても良いのですか?」

 

「…私の我侭で、皆さんには悪いですけど。離れるのは嫌です…」

 

「だったら、私はずっと側にいます。女の子を泣かせる趣味は、ありませんしね」

 

そう言って私は軽く笑って、空気を変えます。

ですが、泣かせたくないのは事実です。今後も、他の皆さんのことを騙す事になりますが、今はその事よりも蘭子ちゃんの事を考えましょう。

ふと、蘭子ちゃんが泣き止んだ事に気が付き、そちらを見ると。蘭子ちゃんはこちらを見つめて顔を赤く染めていました

 

「ず、ずっと側にいるって…。それは何時まで…」

 

「それはもう、アイドルを辞めるまで)ずっとですよ?」

 

それぐらいの事しか、私は蘭子ちゃんにしてあげられませんしね。

そう伝えると彼女は立ち上がり、部屋を飛び出して行きました。

何故…?

 

 

 

 

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(ずっと側にいるってことは、死ぬまで一緒って事だよね!)

 

初めて言われたその言葉に、私は嬉しさと恥ずかしさから思わず部屋を飛び出してしまいました。

初めてまともに親しくなった男の人で、初めて伝えられたプロポーズの言葉。

 

(きゃー!!!)

 

声に出すと迷惑になると思い、頭の中で歓喜の声を出します。

そのまま暫く駆け回り、大広間にたどり着いた所で私は止まりました。

 

「ら、蘭子ちゃん。どうしたの…、急いでたみたいだけど…」

 

「死を司る者…。何、少し体を動かしたくなっただけの事」

 

私の少ない友達の一人、小梅ちゃんがそこにはいました。最初は素直に告白された事を伝えようと思ったけど、神楽さんが男の人だってバレたら側に居られなくなる事を思い出して、慌てて違うことを伝えます。

 

(告白…)

 

その事を思いですだけで、自然と頬が緩みます。幸せが胸を埋め尽くして、抑えようとしても笑顔になって…。

小梅ちゃんに別れを告げて、私は部屋に戻ろうとして凛さんに出会いました。

 

「蘭子、どこ行ってたの?お風呂に居なかったから少し心配してたんだよ?」

 

そう声を掛けてくれた凛さんですが、もしかしたら凛さんも神楽さんに告白されて…。

 

「ど、どうしたの?私睨まれるようなこと、したかな…?」

 

「む、すまぬな。蒼き姫が粗相を働いた訳ではない。神の玩具が少しな…」

 

「神の玩具って…神楽の事?神楽がなにかしたなら部屋変えてもらう?」

 

「ぴ?」

 

部屋を変える?何故変える?

そう思いましたが、私は思い出してしまいました。

 

(この後、同じ部屋で、一緒に寝る…?)

 

その事実に気づいてしまい

 

「ぴゃーぁぁぁぁ!!!」

 

私は思わずさけんでしまいました。




この勘違いが原因で、あんな事になるなんて…

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