少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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久し振りの投稿。決してファフナーを見て鬱になっていたとかではない。一輝・・・。
モバマス4周年、デレステアーニャSSRおめでとうございます。まぁどちらも何も引けずに終わりましたが・・・


少女少年の膝枕

 

 外の照り付けるような熱気、それと湿気。夏が近づいてきていることもありここ最近は皆さん肌の露出が増えてきて、私と武内さんはその露出から目を逸らすことが増えてまいりました。

 やっぱり女性が多いと異性の視線が無いために皆さん少しだけ警戒心と言いますか、兎も角油断する事が多いんですよね。以前なんかは本田さんが上の服を脱いでキャミソールだけになったり、双葉さんなんか下着すらも暑いと言ってTシャツのみで過ごしていたりと。流石にそれは私の精神上よろしくないので、お二人にはしっかりとお話して理解していただけましたが。

 

「もうやだ、杏はここから動きたくない・・・」

 

「双葉さん、膝の上でそんなこと言われると困るのですが・・・」

 

 現在、冷房の効いた事務所内。仕事もレッスンも本日は私は入っておらず、何をするわけでもありませんが事務所に来る日が多くなっています。実際家にいても一人寂しく家事をしたりTVを見たりと過ごすだけですし、こうして事務所に来た方が皆さんと接する事で仲を深める事が出来ますし有意義なのでいいんですけど。

 そんな気持ちで訪れた事務所ですが、現在は双葉さんにみりあちゃん、城ヶ崎さんしかいませんでした。私が来た時は皆さん暇を持て余していたのかトランプをしたりおしゃべりをしたりと、普段の双葉さんを見ていたら分かると思うのですが珍しくお姉さんみたいな事をしていました。が、私が来たらその役割が変わり双葉さんはソファに座った私の膝に頭を乗せてのんびりと寛いでいます。

 

「ねーねー、神楽ちゃんのお膝ってそんなに寝やすいの?」

 

「これは一度体験したら虜になるから、子供にはまだ早いよ。だから皆が犠牲にならないようにこうして杏が身を挺して庇っているんだ・・・」

 

「え~!莉嘉はもうセクシーでアダルトな大人だよ?それぐらい大丈夫だし☆」

 

「いえ、虜も何もそんな事は無いんですが・・・」

 

 実際凛は虜になった様子はありませんし、双葉さん退きたくないからとそんな嘘を教えないでください。そんな気持ちを込めた視線を双葉さんに送りますが何処吹く風。彼女は寝返りをうって視線から逃れます。

 

「にょっわー!杏ちゃん見つけたー!」

 

 その時、部屋の扉を盛大に開け放ち諸星さんが事務所に来ました。双葉さんを探していたのでしょうか、私の膝に横になる双葉さんを見つけて抱き抱えるように持ち上げます。身長の小さな双葉さんが諸星さんに抱き抱えられると、足が地面に着かずにぶらんぶらんと足が揺れていて、不謹慎ですがそれを見て和んでしまいます。

 

「やめろっ杏はまだここを離れるつもりはないんだっ」

 

「も~、またそんな事言って~・・・。めっ!だよ~?」

 

 二人を見ていると、何故か自然と笑ってしまいます。見慣れたこの感じがとても心地よく、この遣り取りを見るのが当然の様な気がします。

 やめろー離せーと未だ逃れようと何とか動く双葉さんを諸星さんが連れだして行くのを見届けます。大方レッスンをすっぽかしていたのでしょうが、流石にそれはトレーナーさんに申し訳ないので頑張って来てくださいと告げます。すると双葉さんも諦めたのか帰ってきたら膝枕をもう一度する事を約束して諸星さんと消えていきました。

 そんな二人を見届けて、私はソファに戻ります。すると待ってましたと言わんばかりにみりあちゃんが膝に飛び込んで来ました。

 

「あ、みりあちゃんずるーい!私も私もー☆」

 

 みりあちゃんが膝の上に乗り、城ヶ崎さんも同様に反対側の空いている膝の上に陣取ります。これはあれですか、私また膝枕をする必要があるわけですか。

 如何せん双葉さんが先ほどまで乗っていた為、膝に少し痺れが生じていたので休みたかったのですが

 

「凄いねこれ、柔らかくて気持ちいい!」

 

「家にある枕よりも寝やすいかも!」

 

 楽しそうに笑う二人を見て、私は諦めて枕になることにしました。まぁお二人なら左程時間も取られないでしょう。この後お二人もレッスンがあるようですし。

 現時刻はお昼の少し前。家にいたのならばお昼の支度をする頃合いですが。今日は天気も良いですし外に食べに行くつもりでした。お二人はと言えばレッスン前とのこともあり、胃の中に物を入れたくないようです。お腹いっぱいでレッスンなんてしたら辛いですしね。

 お二人が会話に興じている間、私は持ち込んだ小説を片手にお二人の会話をBGMに本を読み進めます。お二人の会話はみりあちゃんの妹の話だったり、美嘉さんの話だったりと家族のお話が大半です。昨日は家で何があっただの、今朝の美嘉さんの様子だの色々と。それから時間が少し経過し、お二人の会話が消えた事に気が付いた私は本を読む手を止めてお二人の方に視線を向けます

 

「あらあら・・・」

 

 お二人はすうすうと気持ちよさそうに寝息を立てて眠っていました。その様子が微笑ましく、私はお二人の頭を撫でてしまいます

 

「ハッ!危ない危ない・・・」

 

 私の中に存在しないはずの母性に目覚め掛け、撫でる手を止めた所で。お二人は目を覚まし、起きた直後と言うのもあり目を擦りながら体を起こします。

 

「ん~・・・寝ちゃった・・・」

 

「神楽ちゃんの膝、気持ちよすぎるよぉ・・・」

 

「おはようございます二人とも。そろそろ時間ですけど、大丈夫ですか?」

 

 もぞもぞと膝で動かれたこともあり、少しくすぐったくなりましたが顔には出さず。起きた二人に声を掛けて時計を確認してもらいます。

 

「大変!もう時間になっちゃう!」

 

「本当だ!ありがと神楽ちゃん☆行ってきまーす!」

 

 みりあちゃんと城ヶ崎さんを見送り、部屋に一人取り残された私は膝を見てどうしたものかと頭を悩ませます。何故悩ませるかと言いますと。余程気持ちよかったのかお二人して涎を垂らしてしまったわけで、履いてきたジーンズに涎の跡がくっきりと残ってしまっています。

 

「ジャージは・・・上の服と合いませんし、外を歩いていれば渇くでしょうし・・・」

 

 そう考えた私は、荷物を纏めて事務所を出ます。向かう先は本屋です、持ち込んだ本を読み終わったので発売されている続編を買いに行くとしましょう。

 

 

 

 

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「ふぅ、歩き疲れました・・・」

 

 人込みの中を歩いて本屋に向かったのですが、人の熱気と空から照らされる太陽の熱に中てられて体温が上昇してきたのもあり、私は公園のベンチで休んでいました。この公園ですが、木陰に丁度ベンチが設置されているので涼むには持って来いの場所となっております。

 自販機で買った冷たい水を片手にベンチに座り、一息つきます。目的の本も購入してお昼も済ませ、後はまた事務所に戻るだけとなったのですが

 

(続きが気になりますね・・・)

 

 如何せん先程読んだ本の終わりが良い所で続きに向かってしまったので、今買ったばかりの本を読みたくなってしまいます。少しだけ少しだけ。そう自分に言い訳しながら私は袋の中から本を取り出し読み始めました。

 そのまま読み進めて半分ほど。時間にしてみれば一時間経っであろう頃。ふと顔を上げた私の視界に一人の女性が映りました。その人は覚束ない足取りでふらふらと歩いており、何時か倒れるんじゃないかと見ているこちらが不安になってしまいます。腰に届きそうな長い髪をカチューシャで軽く纏めていますが、黒という色は熱を溜めやすい色なのであれ程長い髪であればきっと熱いのでしょう。そんな余計な事を考えながら彼女を眺めていると、突然彼女は蹲る様に座り込んでしまいます。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 その様子を見て、私は駆け寄ります。近くに人がいないこともあり、私しか彼女に駆け寄ることはしません。声を掛けられた事でこちらを見た彼女。こんな時に何をと言われるかもしれませんが彼女は見目憂わしく、それこそ私が所属する346プロダクションにいてもおかしくないと思える程に綺麗でした。そんな考えを頭を振って振り払い、彼女に聞こえやすいように私もしゃがみ込みます

 

「行き成り座り込みましたけど、大丈夫ですか?」

 

「あ・・・すみません・・・。少し日に長く中てられてしまって・・・」

 

 軽度の熱中症でしょうか、一先ず彼女を休ませるためにも私は彼女に肩を貸して先程まで座っていたベンチに誘導します。

 

「ご親切に、ありがとうございます・・・」

 

「困ったときはお互いさまでしょう。少しここで待っててください、今冷たい物買ってきますから」

 

 彼女がベンチに座り、楽な体制を取ったのを見てから、私は財布片手に公園の外に位置するコンビニに走りだしました。

 コンビニで必要そうな物を購入して、また走ってベンチまで戻ると彼女はベンチに横になっています。

 

「お待たせしました。これ、飲んで下さい」

 

 そう言ってスポーツドリンクを手渡して、さらに袋の中から氷を取り出し、さらにその氷を袋に入れて水を入れ簡易的な氷嚢を作ります。

 

「何から何まで、本当にご迷惑を・・・」

 

「良いんです、気にしないでください。私が勝手にやっていることですし」

 

 そう言って、横になったままの彼女の頭に氷嚢を乗せます。その際に彼女の目元まで伸びる前髪が軽く掻き分けて乗せます。行き成り顔に触れられた事で身を竦ませた彼女ですが、私が手に持っている物をみてされるがままになっていました。

 一先ずこれで大丈夫でしょうと思い、一応ハンカチを水で濡らして首元にも軽く巻き付けます。動脈を冷やすことで冷えた血液が体内に回るので、熱が下がりやすくなるんですよね。朝方のTVでやっていたことがここで役に立つとは・・・。

 

「私は大丈夫ですので、貴女も座った方が・・・」

 

 そう言って彼女は体を起こします。ですがその動きはゆっくりとしたもので、まだ体調が良く無い事が窺えます。折角の好意を無下にするわけにもいかずに、私はそれを受け入れベンチに座ります。そこでふと思い出しました

 

(私の膝って、そんなに気持ちいい物なのでしょうか・・・)

 

 であれば、彼女も膝の上に乗せて寝かせてあげれば楽になるのでは・・・?いや待ってください私、事務所内の知った方達ならばまだしも。今隣にいる人は今日初めて会った名も知らぬ人。流石にそこまでする必要は無いのでは・・・?横目で彼女を見ると、未だ辛そうに胸を上気させて呼吸しています。それを見て、私は決意して彼女に声を掛けます

 

「まだ辛そうですし、横になりませんか?ベンチにそのままですと硬くて辛いでしょうし、私で良ければ膝をお貸ししますが」

 

 いざ言葉にして、何て事を言っているのかと顔を赤らめてしまいます。そんな事を伝えられた彼女はどう思ったでしょうか、男性にこんな事を言われていい気分はしないでしょうし、もしかしたら通報なんてされたり・・・。

 

「・・・でしたら、お言葉に甘えさせて貰います・・・」

 

「え、あ、はいどうぞ・・・?」

 

 素直に受け入れられた事に驚きつつ、私は膝を貸し出します。

 彼女はゆっくりとした動きで私の膝の上に頭を乗せて、ゆっくりと呼吸しています。

 と言いますか、これはあれですか。私この人にも異性として見られておらずに、同姓からの誘いだから素直に受け入れた。そういう事なのでしょうか。

 

(深く考えるのはやめましょう・・・)

 

 考えれば考えるだけ気落ちするだけですしね。それにもう慣れました。慣れてはいけないのでしょうが慣れてしまいました・・・。少しだけ気落ちしますが、今はそんな事を考えていても意味がありません。早く彼女の体調が回復するようにと、軽く祈りを込めて手で仰ぎます。

 

「私、あまり体力が無いので・・・。こうして直ぐ体調を崩してしまうんです・・・。昔から、こうでした・・・。その度に、母がこうして膝に寝かせてくれたのを思い出しました・・・」

 

 やはり、これは私に母性が・・・?いや、そんなまさか・・・。存在して父性でしょうし、母性何て物は存在しないはず・・・。

 そんな事に軽く頭を悩ませながらも、手を止めずに彼女の熱を冷ましていきます。それを続けてどれくらいでしょうか。

 

「ありがとうございます、大分楽になりました・・・」

 

 そう言って彼女は体を起こし、こちらにお礼を告げてきます。それと同時に、鞄から財布を取り出すのが見えたので私はそれを制しました。

 

「お金は大丈夫です。もしかしたら、病院に行く可能性もあるわけですし」

 

「ですが、私のために使ってくれたお金ですし・・・。私が払うのが道理かと・・・」

 

「道理も何も関係ありません。私は当たり前のことをしただけですから。それではこれで!」

 

 引く様子の無い彼女を見て、私は逃げるようにその場から走り出しました。逃げる必要は無いのではないかと思いましたが、あのままではどちらも譲らずに時間だけが経過しそうでしたし、それにあの綺麗な目で真っすぐ見られてしまうとなんというか恥ずかしくて・・・。

 そうして走って事務所に辿り着いたのですが、そこで思い出してしまいました。

 

「買った本、置いてきてしまいました・・・」

 

 何ということでしょう・・・。かといってここで戻ってしまったら格好がつきませんし、今日の所は諦めて明日もう一度公園に向かうとしましょう。運が良ければそのまま置いてあるかもしれませんしね。

 少しだけ気落ちして、私は事務所に入ります。そんな私を待っていたのは、双葉さん。あぁ膝枕する約束をしてましたからね・・・。そうして彼女が満足するまで、私は彼女の枕として帰るまで過ごすことになりました。

 

 


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