少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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少女少年を知っている方がいらしゃって感無量です。
感想はのんびりと返すつもりですが、時たま返し忘れると思うのでそんな時はすみません。
お気に入り30ありがとうございます。
この主人公大変ちょろい


少女少年は進みだす

 

「どういうことですか武内さん!」

 

 皆さんから歓迎の言葉と、自己紹介を受けてから少し間を空けて。私は別室にいる武内さんを問い詰めました。

 

「当然の結果です」

 

「何が!?」

 

「いえ、私なりに調べた結果なのですが、近頃は男の娘というものが流行しているらしいので、私達もその波に乗っかるのも良いと判断したのですが・・・」

 

「判断するのはいいんですっ、ただそれを私に伝えなかったのは納得行きません!」

 

 女子高に一人放り投げられたロボット操縦者じゃないんですよ私は。そもそもどこぞの乙女に恋する作品じゃないんですし、世の中そんな簡単に隠し通せるモノじゃないと思うんですよ。

 

「安心してください、鳳さんは大変魅力的ですし、ちょっとやそっとの事ではばれることはないかと」

 

 魅力的とか同姓に言われても嬉しく無いですし、そもそも男に魅力的って言葉は褒め言葉なのかすらわからないんですがっ。

 そんな私の訴えも何処吹く風。武内さんとの間に微妙な空気が流れつつあります。

 そこで私は逆に考えることにしました、武内さんの言う通りばれなければ良いのですと。もういっそ開き直って、女の子として過ごしていけば演技力の向上にも繋がりますし、アイドルの近くにいることで立ち振る舞いなども学べますし、良い事尽くめじゃないですか・・・・・・。

 

「良い事なんてないじゃないですか!」

 

 私が突然叫びだした事で、武内さんがビクッと体を震わせます。そもそも元凶は武内さんですから、謝りませんよ私は。大体こんな女性だらけの環境とか良い事よりも悪い事の方が多いと相場が決まっているんです。見たくもない女性の一面を見たり、生々しい会話を聞く羽目になったり、それに女性だけの環境と言うのは苛めが発生しやすいと聞きますし、その対象に私がならないなんて言いきれません。考えるだけで寒気がします・・・。

 

「と、ともかくっ!私はシンデレラにはなれないんですから!別の部署に異動させてください!」

 

「・・・申し訳ないのですが、346プロダクションは男性の方はプロデューサーしかいないのです」

 

「つまり・・・?」

 

「ここで話が流れた場合、鳳さんはプロデューサーと言うわけでも無いので、ただの部外者と言う形になりますね・・・」

 

 逃げ場なんてないじゃないですか!鬼、悪魔、武内!幾千もの呪詛を並べても足りない程に恨んでやります!

 

「それに、このお話を受けていただけるのでしたら、何れ掲載されるプロフィール欄には性別不明で載せたいと思っています。その方が、注目を集めるでしょうし」

 

 それは、その・・・いらぬ注目まで集めそうで怖いのですが・・・。ですが、武内さんの次の言葉で、私はぐらついてしまいます

 

「それに、性別不明のままで行けば、今後男性としても売り出すことが可能になるかと」

 

(ほとんど不可能かと思いますが・・・)

 

 何か小声で言ってた気がしますが、気にしません。男性としてデビュー出来るのであれば話が違いますよ武内さん!成程・・・最初から武内さんは私をちゃんとデビューさせる算段を立てていたわけですね!出来る大人は違いますね、思わず憧れてしまいそうですよ・・・。痺れはしませんが。

 

「では、その方向でお願いします!やったやった、楓さんにまた近づきました!」

 

「鳳さんは、高垣さんに憧れを抱いているのですね」

 

 それはもう、憧れと言うよりも最早崇拝と言っても変わらないかもしれませんね。彼女がいるから、私はここまで挫けず、折れることなく頑張ってこれましたし。

 

「そうですか、ありがとうございます・・・」

 

 んー?何故か武内さんにお礼を言われてしまいましたが、一先ずはそれは置いておきましょう。どうやら話を聞く限り、この後は一度全体でレッスンを行う見たいです。成程そのために動きやすい服装をもって来るようにと連絡してきたわけですね。先日名刺を貰った時に、と言っても話が終わった後ですがアドレスと番号を伝えておきました。そしたら昨晩ジャージを持ってきてくださいと連絡を貰ったのです。

 一先ず、話す事も終わりましたし部屋を出てレッスンルームに向かいます。と、ここでまた問題が一つ浮上しました。

 

「レッスンルーム、何処でしょうか・・・」

 

 そもそもここに来るまで渋谷さんに先導されてきた私です。道順なんて覚えていませんし、一人で歩いていたら不審者に間違えられてしまうのではないでしょうか・・・。もしかして結構やばい状況かもしれません!

 

「あー、いたいた。鳳、一緒に行くよ」

 

 そんな風に思って立ち止まっていたら、渋谷さんが私を探していたのか声を掛けてきました。どうやら一緒に行くために探し回っていたらしいので感謝感激です。

 

「ありがとうございます渋谷さん!何処にあるかもわかりませんし、間違った部屋に入るわけにもいかなかったのでどうしようかと思ってました・・・」

 

「わかるわかる、私も最初の頃は迷ってたし」

 

 ほうほう、渋谷さんにもそんな失敗談があるんですね。

 

「・・・その渋谷さんって呼ぶのやめてくれないかな。同い年なんだし・・・」

 

「む、すみません。では・・・渋谷と?」

 

「それはそれで場所の名前と被るから・・・、凛いいよ」

 

「なんか恐れ多いですね・・・。では私の事も神楽って呼んでください、そうしたら私も凛って呼びやすくなりますしねっ」

 

 少し恥ずかしくなり、頬をぽりぽり掻きながら提案する。女性を呼び捨てで呼ぶなんて初めての事でありますし、それに渋谷さんは綺麗な女性ですから、少し抵抗があります

 

「そ、じゃあ私も神楽って呼ぶね。ほら、次は神楽の番だよ」

 

「えっと、それじゃあ・・・凛?」

 

 そう告げると、渋谷さんは何故か鼻を抑えてそっぽを向いてしまいます。お気に召さなかったでしょうか・・・

 

(下手な女の子よりも女の子なんだけど・・・)

 

 これはせめて『さん』と付けて呼んだ方が、今後の関係をこじらせることも無く安全なのでは・・・

 

「ふぅ、それじゃあ少し急ごうか。着替えないといけな・・・い・・・」

 

「ん?どうしました凛さん」

 

 歩き出そうとして、突然固まってしまった凛さんに不思議に思い、肩を叩きます。

 

「凛でいいって、それよりも、神楽は何処で着替えるの?」

 

「何処でって、普通に更衣室で着替えますけど?」

 

「更衣室、女性用しかないよ・・・」

 

 あっはっは、そんなまさか・・・。いやでも、この事務所男性のアイドルいないらしいですし、そうなると当然の様に更衣室も存在しないのでは・・・?

 恐る恐る凛の方を見ます、すると彼女もどうしたものかと天を仰いでいました。これはトイレで着替えるべきなのでしょうか、でも一応私女性に見られるようですし、男性トイレに入るのも誰かに見られでもしたら変態扱いされてしまうのでは・・・。

 

「あーもう、時間無いし・・・。いい、神楽。なるべく私が隠すから、こっそり着替えて・・・」

 

 でも、それはつまり女性と同じ部屋で着替える事になるのですが・・・

 

「時間ももうないし、遅刻したらトレーナーさんの雷が怖いし。それに私も手伝うって言っちゃったしこうするしか今は手段は無いよ・・・」

 

 どこが諦めるように呟く凛に申し訳なく思いながら、彼女の後を付いていきます。階段を3階ほど降りたところで通路に戻り、また少し歩いて立ち止まります。

 

「ここが女子(・・)更衣室。覚悟は良い・・・?」

 

 覚悟も何も、いっそ諦めの方が強いですし。それに今からこの程度で戸惑うようでは、この先色々と大変な事になるでしょう。

 凛の声に、コクリと頷きで返します。いざ、世間一般の方からすれば楽園であろうその場所に!今の私からすれば地獄の蓋が開いた気分ですが!

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

「わーぉ、しまむーおっぱい大きいね!」

 

「未央ちゃんも、大きいじゃないですか、揉まないでください!」

 

「アーニャちゃんは肌が白くて綺麗ね、私ラクロスやってるからたまに日焼けしちゃって・・・」

 

「ワタシよりも、ランコの方が白いですよ?」

 

「ひゃぁ!な、何を!」

 

 渋谷さんこれどうすればいいですか、前後左右下着で囲まれてしまってるのですが。

 

「と、取り合えず角を陣取れば見られることも少ないと思うしそこに行くよっ」

 

 うら若き女性の肌と見るだけでは済まされず、下着まで見てしまった事で顔が赤くなります。あまり周りを見ないように下を向いたまま、凛に手を引かれて目的の場所に辿り着きます。

 

「神楽は一番端のロッカー使って、私が隣で着替えるから、それで隠すようにして何とか誤魔化す」

 

 でも、そうすると凛の着替えは見えてしまうのですが・・・目を瞑って着替えれば大丈夫でしょうか・・・

 

「別にそこまでしなくてもいいよ、私はいっそ神楽が男だって忘れるようにするから・・・」

 

 それはそれで、男の子として虚しいものが・・・。しかしこの際贅沢は言っていられません。ごめんなさいと一言謝り、凛が服を脱ぎだしたのを横目でチラチラと見ながら私も着替えます。チラチラ見るのは仕方がないと思うんですよ、私だって思春期真っ盛りの男ですし、隣でこんな綺麗で可愛い女性が着替えてるんですよ?少し目が行ってしまうのも仕方が無い事です。

 などと自分に対して言い訳しながら、一気にズボンを下ろしてジャージに着替えます。誰も見ていないタイミングで行った早業は自身でも感嘆する程です。

 無事に最難関の下を履き替えた事でふぅと一つ息を吐き出します。上はインナーは着替える必要は今は無いですし、ジャージを羽織るだけでいいでしょう。

 

「着替え終わりましたよ凛!」

 

 どうですか、私もやればできるんです!と、そんな意味合いを込めて彼女に向き直ります

 

「「あっ」」

 

 ですが、タイミングが悪かったのでしょうか。いいえ、悪かったのです。見れば凛はスカートを下してそれを手に取って畳んでいたらしく、下は下着だけの状態。青い下着が目に入り、思わず殴られる!と思い目を瞑ります

 

「っ~~!!・・・・・・バカ」

 

 ですが、どうやら殴られずに済んだ様子です。それはありがたい事なのですが、殴られなかった代わりに足を踏まれました。痛い・・・。

 少し問題のあった着替えも終わり、全員でレッスンルームに向かいます。歩いている時に凛の機嫌を窺うように、またチラチラと見ていたら後ろを歩いていた新田さんに声を掛けられました

 

「凛ちゃんの事、気になるの?」

 

「あーいえ、気になると言いますか・・・」

 

 年上故の気遣いでしょうか、今はそれが少しだけ恨めしいです・・・。一先ず凛に聞かれないように少し距離を取り、新田さんと連れ添うように歩きます。

 

「見ていた理由なんですが、私と凛って学校が同じなんですよ」

 

「へー、意外と世の中狭いのね」

 

「狭すぎですよね、そもそも隣の席ですし。でですね、学校だとクールな凛がアイドルになったらどうなるのかなーって思いまして」

 

「成程、それで見ていたのね・・・」

 

 ふむふむと頷く新田さん。どうやら上手く誤魔化す事が出来た様子で一安心です。ホッとしたのも束の間、何やら凛がこちらを睨んできています。何故・・・

 

『下手な事喋るなよ』

 

 口パクで伝えられた言葉に、私は無言で頷いて返します。ここで下手な事喋って私が男だとばれたら武内さんにも凛にも迷惑かかりますしね!

 こっそりと両手でガッツポーズを作って、気合を入れます。そうこうしている内にレッスンルームに辿り着いたようす。

 

「失礼します!」

 

 一人一人が挨拶しながら部屋に入っていくのを見て、私も真似て挨拶をして入ります。中には既にトレーナーらしき人が待っており。私達を見るなり頷いていました。私たちが一列に並ぶのを待って、並び終えてから彼女は口を開きました

 

「私が今日君たちを担当するトレーナーの聖だ。初心者だからと言って手は抜かない、ビシバシ行くつもりなので覚悟するように!」

 

『はいっ!』

 

 その声は私達も負けじと声を出して返事します。それに気を良くしたのかトレーナーの聖さんは笑顔になっていました。

 

「一先ずみんながどれくらい体力があるのかを見せてもらいたい。そのためにもまずはランニングをしてみようじゃないか」

 

 笑顔で告げられたその言葉に、確か・・・そう双葉さんが目に見えてげんなりとしているのが分かります。まぁあの身長ですし、体力面で不安なのでしょう。ですが私は男なので体力には自信があります、それに伊達にぴにゃこら太を着て飛び跳ねたり全力で熱唱したりしていませんよ・・・ぐふふ。

 

 

 そう思っていたのですが

 

 

「鳳、お前は少し体力が有り過ぎだな。周りを見てみろ、皆へばっている中でお前だけぴんぴんしているじゃないか」

 

 所内をひたすら走らされて、一人、また一人をランニングを脱落していく中。とうとう私に付いてきていた新田さんと諸星さんもダウンした所で聖さんにストップが掛けられました。

 

「お前は何か運動とかをしていたのか?経歴などを見させてもらったが島村みたいに養成所に通っていたわけでもなさそうだが・・・」

 

 養成所、そういうのもあるのか・・・。もしかして路上ライブではなく、普通にそう言った場所に通っていた方が近道だったりしたのでしょうか・・・。少し落ち込みますが、それはさておき。取り合えず聖さんの質問に答えるべく、ぴにゃこら太を着て路上で頑張ってましたと告げます

 

「なるほど、あの着ぐるみはそれなりに重いはず。それを着て歌って踊ってとなると体力が付くのも当然か・・・」

 

 納得してくれた聖さんですが、凛がこちらを睨んできております。何故でしょう・・・。疑問に思っていると、動かぬ足を頑張って動かして凛がこちらに近づいてきてくれました。今にも倒れそうなその姿に慌てて駆け寄って肩を支えます

 

「ちょ、近いって・・・。それに汗臭いし・・・」

 

 そんな事を言われましても、こうでもしないと凛が倒れてしまいそうですい・・・。それに汗臭いと言いましたが凛からは花の匂いがしますので、むしろ嗅いでいたいくらいです。

 

「ばっかじゃないの・・・。と言うか、アンタ今は自分が男だって事を隠さないといけないんだから、こんな体力あるところ見せて疑われでもしたら・・・」

 

 失念しておりました・・・。同じ女性同士で走っているのに一人だけぴんぴんしているのは可笑しい事なのかもしれません。ですがぴにゃは凄いんですよ実際、殴られても良いように刺されても良いようにとあれやこれやと取り付けていたら気が付いたら総重量10kg程。初めこそは重すぎて動くのが辛かったですが慣れればなんてことはありません。

 

「成程ね、あんたから目を離したら色々と面倒だってことは良くわかったよ・・・」

 

 私一人には荷が重いよプロデューサー・・・。そう呟いた凛ですが、何が重いのでしょうか。凛は軽いですよ?と返すとデコピンを貰ってしまいました。何故・・・。

 

 一先ず体力測定のようなものも終わり、本日はもう解散になるらしいです。そう解散です。つまりまた皆で更衣室で着替えることになります、大変です。今度はインナーも着替えないといけないですし、もしかしたら人によっては下着まで着替える人もいるかもしれません。本当に大変ですよこれ、最悪これで私警察にお世話になる可能性だってあるわけですから・・・。

 

「どうしよう、凛・・・」

 

「あー・・・流石に不味いかもね・・・。プロデューサーの所に逃げるのもありかも・・・」

 

 成程合点。今の状態を伝えればプロデューサーも納得してくれるでしょう。そうと決れば善は急げ、私は皆さんにばれないように集団を離れて、一足先に皆が集まる部屋に向かいます。というか、私最初からそこで着替えれば良かったのでは・・・?

 記憶を頼りに階段を駆け上がり部屋を目指します。少し駆け足で部屋を目指していたのですが、どうやら先にその目的の部屋から誰かが出てきました。

 

「お疲れ様です」

 

 扉が開き、出てきた人を見て私のすべてが止まります。あくまで表現ですが、呼吸も忘れて、心臓の動きも止めて、脈動も止めて。そんな比喩です。

 でも仕方が無いです、だって部屋から出てきた人は眩しくて美しくて、今の私からすれば天上の存在で・・・

 

「あら、新人さんですか?」

 

「え、あぁ、はい。新しく企画に参加した鳳さんです」

 

 武内さんが紹介してくれたことすらもわからずに、私は思わず涙を流していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




珍しく文章が長いこの作品、その割にはそんなに前に進まない模様。
相変わらず設定がばがばですが今後ともよろしくお願いいたします
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