少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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皆さま感想評価ありがとうございます。
特にしゃのあさんの言葉には私も考えるところが深まりました。
ですので今回はちょっとした補足も含めたお話し。例のごとく黒ウサギの後付け設定になります(目を逸らしながら

デレステ楓さん確保成功しました。無課金でもいける!
あとこの作品に限り加蓮は病気により一年留年したという設定でいきたいと思います。



少女少年は泣き出した

北条加蓮と名乗ったその少女。少し長めの髪を両サイドでまとめており、服装も何処か最近の若者らしく崩して着ています。胸元のボタンを外すのは、視線のやり場に困ってしまうのでやめてほしいですが、いきなりそんな事を言うわけにもいかないので自然と視線を逸らしてしまいます

 

「もし時間良かったらさ、少し話出来ないかな?」

 

 その申し出を、私は取り合えず受けました。向こうはどうやら私の事を知っているみたいですし、私も彼女の事を思い出すのに良いでしょうし。

 一先ず私達は店員に同じセットを注文して、席に運ばれるらしいので先に席に座ります。対面に座る彼女は、一挙一動が全て気だるそうに見えました。それが彼女の性格なのかは分かりませんが、少しあまり良い印象を持つのは難しいかもしれませんね

 

「改めて、北条加蓮です。同じ中学だったんだけど、覚えてないかな?」

 

 そう言われて私は少し記憶を探りますが、いかんせん中学の記憶はあまり残って無いのです。と言うのも、私こんな容姿ですから中学の時もあまり親しい友人がいなかったんですよね。それにその頃は色々と家族の不幸もありましたし、それに楓さんに出会ったことで殆どがそちらに意識が行っていたと言いますか・・・。まぁ兎も角自身の周囲の事は殆ど無関心だったと言っても良いでしょう。

 

「ごめんなさい、私あんまり中学の頃は覚えて無くて・・・」

 

 ですので、素直に覚えていないことを伝えます。そしたら、北条さんは悲しそうに顔を歪めました。そんな顔をされるととても申し訳ない気持ちになります・・・。

 

「じゃ、じゃあさ。保健室まで運んでくれた事は覚えてない?」

 

 保健室ですか・・・。そういえば三年生の頃ですが、授業中に具合が悪いと仰った誰かを連れて行った気がしますね。ですが、その時の少女は髪も長かったですし・・・。いやでも、どことなく北条さんに面影が・・・

 

「むぅ・・・、手紙!手紙貰わなかった!?」

 

 手紙と言われましても、それらに関してはあまりいい思い出も無いんですよね。わくわくしながら指定の場所に向かったら男の人が待っていたり、指定の時間になっても誰も現れなかったりと・・・。やっぱり私の中学時代結構悲惨なのでは・・・?

 

「そっか、覚えてないか・・・」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「気にしないで、そもそも私達そんなに交流あったわけじゃないし・・・」

 

 ふむ、でしたら何故北条さんは私の事を今も記憶しているのでしょうか。人と言うのはどうでも良い事はすっぱりと忘れたりします。それなのに私の事を覚えているというのは少し気になりますね。

 

「そのね、私昔体弱くてさ。といっても今も弱いけど、学校の皆は私が具合悪そうにしてても、段々心配してくれなくなったんだよね。そうした時に私の事をちゃんと心配してくれたのか君だったわけ」

 

 そんなエピソード・・・、あぁありましたね。成程あの時の子が北条さんだったわけですか。

 

「手紙も、結局出したのは良いけど体調崩しちゃって結局行けなくなって・・・」

 

 まぁそれは仕方が無い事でしょう。体が弱いなら、急に具合が悪くなるのも仕方がありません。

 

「そもそも私留年したから、皆より一個年上だしさ。なんかあまり親しい友達ってのがいなかったんだー」

 

 さらっと重要な事を言われた気がします。

 

「結構噂になってたんだけど、知らなかったんだ?」

 

 存じませんでした。先程も言いましたが、中学の時は自分の事で精いっぱいでしたし。無関心でしたし・・・。そんな風に自身に言い訳しながら彼女と話をしていると頼んでいた品物が届きます。揚げたてらしいポテトの香りが鼻孔をくすぐり、お腹が自己主張を始めます。彼女も同じ気持ちだったのか、届いたポテトを摘まみながら幸せそうに顔を綻ばせています。一本一本口に含む様子はまるでリスの様です。思わず手に持っているポテトを彼女の口元に運びたい衝動に駆られますがやめときます。凛にもあまり変な行動するなと言われたばかりですしね。女性との距離感をもう少し考えた方が良いでしょう。

 

「ん?というか北条さん手紙ってもしかしてなんですけど・・・ラブな手紙・・・?」

 

「面と向かって言われると恥ずかしいけど、それです・・・」

 

 顔を赤らめながら北条さんは俯いてしまいますが、私はそんな事よりも男性として意識されていることの方が重要です。男装して通ってるとか今では言われてますが、昔もきっとそう思われていたのでしょうか・・・。ですが北条さんはちゃんと私の事を男性だとわかっていて手紙を出してくれて・・・

 

「ありがとう、ございますっ」

 

 

「え、何で泣いてるの!?」

 

 だって、最近私女性としてアイドルデビューしましたし。高校でも変態みたいに思われてそうですし凛と武内さんしかまともに男性として扱ってくれませんし・・・。もう昔から男性と思われていたことが嬉しくて嬉しくて・・・

 

「いやまぁ、私も最初変な子がいるなとは思ってたけど。保健室に運ばれた時にちゃんと男の子だって判ったし、意外に逞しく感じたし・・・。って、何言ってるんだろうね私!」

 

 逞しい!素敵なセリフですね・・・。

 

「それに、女の子だったら私の体見て顔赤くしたりしないでしょ」

 

 あぁ、完璧に思い出しましたよ。北条さんを保健室に連れて行ったのは良かったんですが、先生がいなかったから私が介抱したんですよね。北条さん熱いなんて言って脱ぎだしますし・・・。汗も凄い掻いていましたのでタオルで拭いたりと色々やりましたね・・・。今思えば中々凄い事をしたんじゃないでしょうか私。

 しかし、こうして中学の頃の人と昔を離す機会があるなんて思ってもいませんでしたね。それもちゃんと私の事を異性として認識してくれている数少ない人ですし。

 

「こうしてまた会ったのも何かの縁だしさ。連絡先交換しない?あ、嫌だったら良いんだけど・・・」

 

 嫌だなんてとんでもない。私の携帯連絡先そんなに登録されて無くて少し寂しい事になっているんですよね。ですのでこうして連絡を交換出来るのは喜ばしい事です!

 そうして連絡先を交換して、私たちは食べ終えたプレートを戻して別れます。

 

「でしたら北条さん、何時でも連絡してもらっても良いですからね!」

 

 ここ最近凛としか連絡とっていませんでしたし、違う人と連絡とるなんて楽しみですよ!

 

「うんっ、私も今日会えて楽しかったよ!それで、もしよかったら加蓮って呼んで貰えないかな?」

 

 うん?いきなりそれはハードルが・・・。蘭子ちゃんの場合と違って、北条さんは私の事を異性と認識していますし、そうなると流石に躊躇いが・・・。蘭子ちゃんはほら、女同士でしたら下の名前で呼び合うのも仕方が無いと割り切っていましたし。今回は少し・・・

 

「ダメ、かな?」

 

 ぐぬぬ、その顔はずるいですよ北条さん!そんな悲しそうな顔をされては断るわけにはいかないじゃないですか・・・

 

「でしたら、加蓮さん。とお呼びしますね?」

 

「別に呼び捨てでもいいんだけど・・・。まぁ行き成り呼び捨てにしてっていう方が難しいか。それじゃあ私は神楽って呼ぶね!」

 

「あ、はい。よろしくお願いしますね!」

 

 そうして私達は違う方向に別れて帰路につきました・・・

 

 

 

 

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 それからあっという間に時間は過ぎ去って美嘉さんのライブの日になりました。この日はレッスンも無く、プロジェクトメンバー皆でライブを見に行こうといった話になりました。と言うのも、事前に美嘉さんからライブチケット渡されてますし、見に行かないのも勿体ないんですよね。

 

「んふふー 」

 

 そうして会場に向かう道中、何故か蘭子ちゃんが私の手を繋いだまま離さないんです。何故なのかと思いますが、彼女が幸せそうにしているので振りほどくわけにもいきませんし、別にこのままでも支障があるわけでは無いので良いでしょう。

 

「蘭子ちゃんと神楽ちゃんは仲良しなんだね」

 

 新田さんとアナスタシアさん程ではないと思いますけどね。お二人とも何をするにも一緒なイメージですし、それに比べると私達はそれほどでもないかと。

 そうこうしているうちに、会場に着きました。凄い人ですね、これだけの人がライブを見に来ていると思うと、何時か私もと思えてしまいます。

 何時かは私もこうしてライブを開くことがあれば、こんな風に人が集まってくれるでしょうか。少し楽しみでもあり、不安でもありますが。今はそんな考えを振りほどき凛たちの応援に集中する事にします。ふふふ、ちゃんとこの日のためにサイリウム・・・でしたっけ。光るペンも用意しましたし、美嘉さんの曲の合いの手もちゃんと覚えてきました。万全ですよ!

 

 まず私達は、関係者入口から入ってバックダンサーを務める本田さん島村さん凛の三人の様子を見に行きます。スタッフの方たちに挨拶しながら、三人がいる場所に向かうと既に着替えを終わらせてライブ衣装になっています。が・・・。そのライブ衣装って少し露出が・・・、おへそ出てますし、ミニスカートですから太ももがチラチラとですね・・・。

 皆さんが激励の言葉を伝えている間、私は凛に近づきます。

 

「神楽、来てくれたんだ」

 

「それはもちろん。大事な仲間の晴れ舞台ですしねっ」

 

 会話している時も、私は目線を逸らしたままです。直視するの結構難しいですよこの衣装!そんな私の謎の行動も、凛は分かってくれた様子。頑張って衣装から出ている肌を隠そうと腕で頑張っていますが、むしろその動きが色気を誘発すると言いますか・・・。

 

「と、とにかく頑張ってくださいね!」

 

 それだけ伝えて、私は一人部屋を出ていきました。すると丁度よく武内さんがこちらに向かってきています。その隣には美嘉さんも並んでおり、こちらを見ると手を振ってくれました。私もそれに応えて挨拶をします。しかし美嘉さんの衣装も中々派手ですね・・・。またもや目線を逸らすと、武内さんと目が合いました

 

(目のやり場に困りますっ)

 

(諦めてください)

 

 なんてアイコンタクトを交わせる程度には、武内さんと親しくなりました。顔は怖いですけど意外と親しくなると表情の変化が乏しいだけなんですよねこの人。

 それから、美嘉さんと武内さんが部屋に入っていくのを見て。私は一人お手洗いに向かいます。蘭子ちゃんと手を繋いだままでしたので、途中でお手洗いに行けずに困っていたんですよね。お手洗いは何処でしょうかと探しながら歩いているとありましたありました。

 

「これは、どちらに入るべきか・・・」

 

 当然ですが、お手洗いは男性用女性用と二つに分かれています。ですが、ここで女性用に入るのは少し気が引けるんですよね。346プロダクションではお手洗いに行かないように努力していたんですが、今はもう我慢の限界に・・・。かと言って自分に素直に男性用に入った場合、それを誰かに見られでもしたら問題になるんですよね・・・。少し逡巡してから、結局私は女性用に入ることにしました

 

「女の子、私は女の子・・・」

 

 そうして扉に手を掛けたと同時に、先に入っていた方がお手洗いから出てきます。瞬間私は壁に張り付くようにして顔を見られないようにします。えぇ、さぞ怪しい人に見えたでしょうね・・・。

 出て行った女性が不思議そうにこちらを見て去っていきます。彼女が廊下を曲がるのを確認してから私も急いでお手洗いに入り用を足しました。

 

「危ないところでした・・・」

 

 もう少しで見せられない状況になるところでしたが、何とか無事に回避できました。いえ、無事では無いですけど、男としてやってはいけないことをしたようなものですし・・・。

 一先ず危機は回避したので、時計で時間を確認するとそろそろ始まりの時間になりつつあります。私は少し速足で席に向かうと、蘭子ちゃんが頬を膨らませて私の事を待っていてくれていました。

 

「遅いですっ」

 

「ごめんなさい、少しお手洗いに・・・」

 

 何故怒っているのか分かりませんが、一先ず謝っておきましょう。理不尽な気もしますが社会に出たらこれ以上の理不尽が襲い掛かりますしね。これぐらいで腹を立てる程沸点低く無いですし。そんな蘭子ちゃんの横に座ると、アナスタシアさんが耳打ちをしてきます

 

(ランコ、カグラがいなくて、寂しそうでした)

 

 それは、その、申し訳なく・・・。何でしょうね、蘭子ちゃんが私にべったりな理由が思い浮かばないのですが・・・。そうして色々と考えている内に、ライブが開始されました。この疑問は後に考えることにして、とりあえず今はライブを楽しむことにしましょう!

 

 

 

 

 




少し強引ですが次回に続く。
蘭子がべったりな理由ですが、今度まとめて別視点を載せる予定ですのでその時にでも謎を解消するとします。

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