少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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今回で美嘉のライブのお話を終えて、次回から別視点で書きたいな・・・


少女少年は涙もろい

 ライブが始まりました。

 今回のライブは美嘉さんだけでなく、元アナウンサーの川島さんを筆頭に。いえ、決して年齢が一番上だから筆頭というわけではありませんが。元読者モデルの佐久間さん、小日向さん、日野さんなど大勢のアイドルが参加しています。

 それはまるで、水面に投げかけられた石の様でした。私達観客という水面に歌という石が投じられます。そうして生まれるのは波紋の様に広がる熱気、歓声。その大きな動きに私は圧倒されてしまいます。

 

「凄いね、蘭子ちゃんっ」

 

「凄いです、皆キラキラしててっ」

 

 ライブ中と言うこともあり、私達はお互い顔を近づけながら小声で会話します。とは言っても歌声と声援で小声で話してしまった場合聞こえなくなるので、それなりに声量は出しています。蘭子ちゃんはこういったライブを見る機会はそれなりにあったらしいですが、こうして所属が同じ方々のライブを見るのは初めてだそうです。私は楓さんのライブを一度見に行ったくらいで、まともにライブを見るのは今回が二回目。あの時とは会場の規模もお客さんの数も桁違いですし、少し熱気に中てられた体温が上がっている気がします。

 関係の無い話になりますが、こうして蘭子ちゃんと顔を近づけて会話していてわかりますが、本当に可愛いですよねこの子。線も細いですし、身内びいきになりますがアイドルになって当然と言える容姿です。いえ本当に、何でこの子私にこんなに懐いているんでしょうかと疑問でしょうがないですね。私としては妹が出来たみたいで少し嬉しいですが。あまり過剰な接触をした場合、万が一にでも性別がばれてしまった場合彼女を裏切る形になってしまいますので心が少し痛いです。蘭子ちゃんだけでなく、私皆さんの事をだましているんですよね、そう思うと少し悲しくなってきました。

 

「神楽さん、美嘉さんの出番ですよ!」

 

 ハッと、蘭子ちゃんに声を掛けられたことで今はライブ中だったことを思い出します。声を掛けてきた蘭子ちゃんは目を輝かせながら、きっと未来の自分を夢見ているのではないでしょうか。いつか、こうして光り輝くステージに立つ自分の姿を・・・。

 

(色々考えるのは、後にしましょうっ)

 

 そう判断して、舞台に上がった美嘉さんを見ます。少しずれた事を思いますが、あの服装寒そうですよね、おへそ出して腕出して脚を出して。私もあのような格好をする日が来るのでしょうか・・・。あぁダメです、考えたらいけないイメージが・・・。

 そんな事を考えている内に、三人が舞台下から飛び出してきます。曲が始まると同時に飛び出してきた彼女は先程見た衣装に身を包み、着地に成功すると同時に曲が流れ踊り始めます。

 

--ステップに手古摺っていた島村さん。

--二人とペースが合わない事に戸惑っていた本田さん。

--踊る事の恥ずかしさが抜けなかった凛。

 

 三人が美嘉さんの後ろで、一糸乱れることなく踊る姿を見て、思わず涙が流れます。三人共この日のためにいつも頑張って、それをずっと私達は眺めていて。努力が今報われる瞬間をこの目で見て・・・。だからでしょうか、何時までたっても涙は止まらず、視界がぼやけて上手く見えません。慌てて鞄からハンカチを取り出して目元をぬぐいます。晴れた視界では美しく踊り、眩しく輝く彼女達が見えて、私の心は高鳴りました。

 そんなライブも終わり、皆は控室に向かいました。そんな中私は一人外に出ます。日も沈み、熱気に中てられた体が冷たい風に晒されて少し心地よいです。

 私一人こうして外にいるのは、きっと今彼女達に会えばまた泣き出してしまいます。それとは別に、こんな気持ちを抱いたまま会うなんて出来ません。

 

「三人共、羨ましいな」

 

 美嘉さんに直接指名された三人。それを聞いた当初こそ、素直におめでとうと思い、今ライブを見た後も彼女達の笑顔が楽しそうで嬉しそうで忘れられません。でも、だからこそそんな彼女たちの笑顔をみて、どうして私じゃないのかと少しだけ嫉妬してしまいます。美嘉さんが選んだんだから仕方が無いとは思っています。ですが私が選ばれなかった理由は何ですか?

 

「考えても、答えなんてわかんないですよね」

 

 夜風を浴びていたことで、少し頭も冷えました。今は素直に彼女達にお疲れさまと言いに行きましょう。そう思い、控室に向かおうとすると正面から凛が歩いて来るのが見えました。

 

「凛、どうしたの?」

 

「どうしたのって・・・、神楽の姿が見当たらないから探しに来たんだよ」

 

 それは、申し訳ない事を・・・。ライブ衣装のまま来てくれたことから心配させてしまった事に少しだけ情けなくなってしまいます。

 

「それで、何で一人で外にいたの?」

 

「秘密です。と言っても少し熱くなってしまったので外に涼みに来ていたんです」

 

 手近のベンチに二人で腰かけて、私達は空を見上げます。

 

「星、とっても綺麗ですね」

 

「そうだね、遠くにあるのに凄く眩しく見える」

 

 今日の凛も綺麗でしたよ。そう言おうとしましたが、経験則から殴られるのではないかと思い止めておきます。からかい半分で伝えてみることも考えましたが、今はそんな雰囲気では無いですしね。

 隣り合って座ってどれくらい時間が経ったでしょうか。私が星をのんびりと眺めていると、凛が頭をこちらに預けて寝息を立てていました。

 

「本当に、お疲れさまでした」

 

 初めてのライブで疲れていたんでしょうね。それに緊張から解放された事で糸が切れたとでも言うのでしょうか。安らかな寝顔の凛を起こすわけにも行かないので、武内さんに連絡をしておきます。きっとこの後は彼が送ってくれるでしょうし、それまで私は枕になっているとしましょうか。肩に頭を乗せたままでは痛いと思い、起こさないように体を少しずつ動かして膝枕をします。その際に、凛が寒そうに体を震わせていたので、私が羽織っているシャツを掛けておきます。これで風邪なんて引いたら台無しですしね。気持ちよさそうに寝ている凛の髪を、そっと梳かすように撫でます。こうして見ると、凛も綺麗ですね。凛や蘭子ちゃんに限った話では無いのですが、プロジェクトメンバーの皆さん綺麗ですよね。そんな中に、私みたいな異端な存在が混ざっていて良いのでしょうか。

 

(ダメですね、また思考が変な方向に・・・)

 

 そんな事を考えていたら、武内さんとメンバーの皆さんがこちらに向かって来ているのが見えました

 

「おーい、しぶりーん!とりちゃーん!」

 

 とりちゃんとは私の事でしょうか・・・。大声を出して走ってくる本田さんに、私は口元に人差し指を当てて『お静かに』とジェスチャーを伝えます。それに気づいたのか、彼女はゆっくりと歩いてきて、私たちの前に立つと屈みこみ凛の頬をつつき始めます。

 

「やー・・・しぶりん気持ちよさそうに寝てるねぇ・・・。とりちゃんの膝はそんなに寝心地がいいのかな?」

 

「分かりませんけど、疲れてたんでしょうね。本田さん、島村さん。今日はお疲れさまでした。三人共とても輝いていましたよ?」

 

「ありがとうございます、神楽ちゃんっ」

 

 島村さんの笑顔にこちらも笑顔で応えて、武内さんにこの後どうするかを訪ねます。どうやら既に他の皆さまは解散したそうで、これから新田さんが企画したお疲れさま会なるものを開こうとしているらしいです。会場は事務所の何時もの場所で行う見たいですので、幸いここから事務所までは歩いて行ける距離なので私は凛をおぶって歩くことにしました。

 皆さんが思い思いに今日のライブについて話しながら歩いて行く中、諸星さんがこちらに話しかけてきます

 

「大丈夫~神楽ちゃん。辛かったらぁ、きらりが凛ちゃんおぶるよぉ~?」

 

「大丈夫ですよ諸星さん。これでも私鍛えていますので、それに凛は軽いですから」

 

 そかそか。と諸星さんは告げてそのまま隣を歩きます。私より10㎝以上高い彼女ですが、恐らくメンバーの中で一番女の子だと思います。当然その中に私はいませんよ?着ている服も女の子らしく可愛らしいものを着ていますしね。

 歩いている内に、双葉さんが歩くのを疲れたと言い出し。それを聞いた諸星さんが双葉さんを肩車しながら歩きます。その様子をみんなで楽しそうに見ながら歩き続け、私達は事務所に着きました。

 

「みんな、お帰りなさい。準備は出来てますよ」

 

「ありがとうございます、ちひろさん」

 

 ちひろさんが既に用意をしていてくれたらしく、部屋の中にはお菓子や飲み物。それにオードブルやピザと言った主食も揃えられています。鞄の中から財布を取り出し、凛の分も含めてお金を渡そうとしましたが断られます。

 

「今日は私とプロデューサーからのお祝いですから。それに、子供がお金の事を心配しなくてもいいんですよ」

 

 そう言われてしまい、私は財布を鞄にもどしました。ちひろさんは大人の女性ですね。

 

「んっ・・・。あれ・・・ここ、どこ・・・?」

 

 ソファに下した凛が目を覚まして、現状を説明した所でお祝いが始まります。主役の三人に今日の感想を聞いて、雑談に花を咲かせながら料理を摘まみ、皆さん楽しそうにしています。

 その様子を、私は一人飲み物を片手に椅子に座って眺めています。どうしてもこういった女性ばかりの場所では、混ざるのを少し躊躇ってしまわれます。そんな私に武内さんが近づいてきます

 

「鳳さんは、あの場に混ざらなくても良いのですか?」

 

「武内さんこそ、混ざらなくて良いんですか?と言っても、多分私と同じ気持ちでしょうけど」

 

 クスクスと笑いながら伝えると、武内さんは首に手を当てて天井を見つめてしまいます。やっぱり武内さんも混ざりにくいご様子で。私を除いて女性しかいませんし、肩身が狭いんでしょうね。だからでしょうか、こうして最近は武内さんと話す機会が増えてきました。

 

「神楽ちゃーん!」

 

「おっふっ」

 

 そうしている内に、みりあちゃんが私に突撃してきました。子供らしく元気なみりあちゃんですが、座っている私に突撃してきたお陰で膝がピンポイントに急所にぶつかってしまって痛みが体を駆け上がります。

 

「どうしました、みりあちゃん」

 

 冷や汗を流しながら、何か用事でもあるのかなと聞いてみます。

 

「神楽ちゃんも、一緒に食べようよー!」

 

 そう言われながら手を引かれ、私も賑やかな集まりに混ざります。

 

「神楽ちゃんっ、みくお魚苦手だから変わりに食べてくれないかにゃ・・・」

 

 ならどうして魚を取ったんですか前川さん・・・。そう言われて彼女からお皿を受け取りましたが、お魚だけでなく他にもお惣菜が乗っています。どうやら、私の分をお皿に取り分けていてくれたらしいですね。ありがとうございますと前川さんに告げて、私も食事に入ります。

 

「はい、これ飲み物」

 

 そうして食事を楽しみながら、皆さんと話していると凛が飲み物を持ってきてくれました。それを受け取り一口飲み、改めてお疲れさまでしたと凛に告げます

 

「ありがと。それとありがとね神楽。ここまで私の事おぶってきてくれたんでしょ?」

 

「あら、誰かから聞きました?」

 

「未央から」

 

「別に気にしないで良いですよ。凛は軽かったですし、そこまで苦労したわけじゃありませんから」

 

「それでも、ありがと」

 

 感謝を述べられて気恥ずかしくなり、顔を逸らしてまた一口飲み物を飲みます。素直に感謝を述べられてしまうと中々恥ずかしいですね。何度も言いますが凛は綺麗で可愛いですから、そんな人に笑顔を向けられてしまうのですから、仕方がないでしょう。

 そうして凛と話ながらも、皆さんとも話、暫くして宴はお開きとなります。疲れているだろうということで、本日バックダンサーを務めた三人は武内さんが車で送る事になり、残った私達は片づけを終えて帰路につきます。

 何時もなら凛と帰る道が、一人で帰ることで少し長く感じてしまいます。音楽でも聞きながら帰ろうと思い、イヤホンを耳に刺した所で携帯が震えました

 

「はい、もしもし」

 

『お久しぶり、で。良いのかしら?』

 

「か、楓さん!?」

 

 突然楓さんから電話がかかってきたことに驚き、思わず大きな声を出してしまいます。幸い周囲に人はいなかったので変な目で見られることはありませんでしたが、少し反省ですね

 

「どうしましたか楓さん」

 

『あら、用が無ければ電話したらいけなかったかしら・・・』

 

「いえいえっ、そんな事は無いですが急に電話が来たもので・・・」

 

『そうね、今日は美嘉ちゃんのライブを見に行ったでしょ?』

 

 何故楓さんがそれを知っているのでしょうかと疑問に思いましたが、同じ事務所にいるのですし知っててもおかしくないと判断して話を続けます。

 

『どうだったかしら、大勢のファンに囲まれたアイドルを見て』

 

「正直、羨ましかったですね。川島さんや美嘉さんは兎も角、その舞台に上がれた三人が」

 

 自然と、本心を楓さんに話してしまいます

 

『そうよね、私も憧れてた事があるわ。最初の頃は私もあまり仕事が無くて。でも同期で入って来た人たちは私の先をどんどん歩いていく・・・。焦燥感って言うのかしらね、こういうの』

 

 楓さんも、一度はそのような気持ちを抱いていた事に少し親近感を抱きます。ですが、当たり前なのかもしれませんね。同期と言っても、業界ではライバルになりますし。蹴り落とし蹴落とされ、それが当たり前になる可能性もあります。

 

『でもね、今はそれも良かったなって思えるの。その気持ちがあったから今がある。その気持ちがあったからここまでこれた。そう思えるの』

 

「私も何時か、そう思う時が来るんでしょうか」

 

『さぁ、それは神楽ちゃんの今後私次第よ』

 

 そう言って電話越しでクスクス楓さんが笑うのが聞こえました。そうですよね、自分でもわからない事が楓さんに分かるわけないですよね。

 もしかしたらですが、楓さんは私がこういった気持ちを抱くことを見越して電話してきたのでしょうか。・・・流石に考えすぎですね

 

「ありがとうございます楓さん。話せてすっきりしました」

 

『ふふ、どういたしまして。神楽ちゃん、めげずに頑張ってね』

 

 そう言って、電話が終わりました。ここまで憧れの人に言われて、めげるわけにはいきません。明日から、気持ちを入れ替えていくとしましょうか!

 そう決めて、私は家に帰りその日は早めに布団に入りました。

 

 

 

 

 

 

 




今日はここまで。
前書きにも書いてありますが次回は他のアイドルの視点で書きたいと思います。まぁ黒ウサギは基本書きたい事書くので、そのまま話が進む可能性もありますので、その時はその時で

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