ガンゲイル・オンライン-サード・スクワッドジャム- 作:シリカ
第三回スクワッド・ジャムの開催まであと六日の今日、いよいよGGOにダイブです。
後に史上最悪のデスゲームと歴史に名を残したSAOに初めて足を踏み入れた時、目の前には石と鉄で出来た巨大なお城がありました。
妖精の国と謳われるALOに空から召喚された時、暗闇の中眩しい程に輝く、美しい光の都市がありました。
銃の世界と呼ばれるGGOにはどんな世界が広がっているのでしょうか?現実には存在しないであろう空想の世界へ行くことを考えると、とても胸が高鳴ります。
二つに結んでいる髪をほどき、仮想世界へ繋げるネットダイブ装置アミュスフィアを装着し、ベッドへ横たわります。
「Link Start!」
コマンドを唱えると、見慣れた白い放射光が視界を塗り潰し、あたしの意識を肉体から解き放っていきました。
空が一面、薄く赤味を帯びた黄色に染まっていました。憂鬱な黄昏の色の空は、いかにも世界の終わりという雰囲気感じます。
改めて、目前に広がるGGOの世界の中央都市《SBCグロッケンへ眼を向けます。
メタリックな質感を持つ高層建築群が天を衝くように黒々とそびえ、それらを空中回廊が網目のようにつないでいます。ビルの谷間をネオンカラーのホログラム広告が賑やかに流れ、地上に近づくにつれそれらの数は増して、色と音の洪水のようです。
ともあれ、まず自分のアバターの外見を確認したいです。コンバートしても、ALOの外見情報は引き継がれるわけではないので、もしかしたら筋肉もりもりな女の子になってしまうという可能性もあるのです。
せめてゲームの中くらい胸が大きくなってないかなぁ…と心の中で願いながら、街の通りを歩いているとお店がたくさんありました。
お店はガラス張りになっているので、鏡替わりに使えます。ぴょこぴょことリズミカルなステップで歩き寄り、自分の姿を確認すると…そこには胸の豊かなあたし──がいるわけでもなく、普段のアバターとあまり変わないあたしがいました。変わっているところと言えば、ツインテールに髪を結んでないことと、ケットシー特有のケモ耳が無いくらいです。
巨乳への夢は断たれた…でもまあいっかな…なんて思っていると、少し離れた場所にいた人物が突然走り寄ってきて、背後からガラス越しに映るあたしに声をかけました。
「お嬢ちゃん運がいいな。そのアバター、F一三〇〇系だろう?めったに出ないんだよ、そのタイプ。新規プレイヤーなんだろう?アカウントごと売らないか?二メガクレジット出すぜ。」
「そ、その……ごめんなさい。このアカウントはコンバートしたものなので…」
「ならば四メガクレジットでどうだ?悪くねぇ話だろ?」
「ですから…コンバートしたものだって…!」
一歩後ずさると、何者かに両手を掴まれて拘束されました。それはガタイのいい男性プレイヤーで、その後ろにはもう2人。
「お嬢ちゃんを痛え目に合わせたくねえからよ、大人しく譲ってくれよ。」
「離してくださいよ…あたし、そういうことする人だいっキライですからタダじゃおきませんよ…!!」
せめて短剣…いや、武器さえあれば…。しかしコンバートしたてでなにも持ち合わせてなく、更にハラスメントコードを使用したくても、手を掴まれているのでウィンドウ操作ができません。
「はは、これじゃどーしようもねーだろうに。」
くすくすと男たちは笑います。
「なにこの状況…なんかほら…えっちな漫画みたいな?ま、それより。そういうのよくないと思うなー。」
男性二人の更に後方から新たな声が聞こえます。拘束されながらも、首を精一杯曲げてその声の在り方を見るとフードを被った小柄な人物がこちらに寄ってきていました。
「ああ?なんだおま──ガッッ!?!?!?」
ぐさ。
フードの人はダッシュで距離を詰め寄ると、男性の両足の間をすり抜けて、足首に約二十センチはありそうな黒いナイフを突き刺しました。
更にすぐさまナイフをひき抜くと、隣にいたもう一人の男性の喉元にナイフを捻り込みます。
ここは街中なので、ダメージが通ることはありません。しかし、痛みは発生します。鍼や指圧でツボを押された痛みに、よく例えられます。
現に足首と喉にナイフを突き刺された男性二人は、苦悶の表情で顔を歪めてうずくまってしまいました。
「ね?もう放してあげよ?可哀想だよ、その子。それともそこのひとたちと同じ風に──」
「わ、分かった!俺らが悪かった。お前さんには敵いそうにねーよ。その子を放してやれ、行くぞ。」
フードを被った人が言い終える前に、あっけなく降参した男性らはうずくまってる二人を担いでどこかへと行ってしまいました。
「助かった……。あ、あの…!ありがとうございます…あたしを助けてくれて。あたし、シリカっていいます。」
「うん、どういたしまして!もうあのひとたちはどっか行っちゃったから安心して大丈夫だよ。わたしはレン。」
あたしを助けてくれた恩人は、被っていたフードをめくって顔を出すと、無邪気に笑ってそう名乗りました。