やはりナイトは格が違った!!-第5次聖杯戦争- 作:まじでやばい
今回ブロントさん出ません。
パチュリーが住む大図書館は、紅魔館とよばれる大きな館の地下にある。
ブロントさんが「グラットンが通じたどこか」へ行くために、パチュリーは、大図書館の魔法実験用に設けたスペースでその作業をしていた。
グラットンが開けた小さな穴を広げて、人が通れるようにする。
そんな面白そうな魔法を行うと、この館の主が嗅ぎつけて、それを紅魔館のホールでやろうと提案した(わがまま)
「すごい!私も見たい!」
鶴の一声である。
泥があふれて危険だから、当日大図書館に来ればいい、と説得したパチュリーだったが、館の主がだだをこねて作業が進まなくなったので、仕方なくパチュリーが折れた。
そういう経緯でパチュリーは現在、紅魔館のホールで魔法設備の最終調整をしているわけだが、どうも陰険な魔法を行う場に見えない。
パチュリーが設置した謎設備からすこし離れたところには、白いクロスが掛けられた清潔そうなテーブルが並び、おいしそうな料理が乗っている。
その料理にわいわいと群がる人もいれば、手にグラスを持ちながら会話を楽しんでいる人もいる。
なんということでしょう。
これは、さながらパーティーといったところだ。というかどう見てもそうだ。
「どういうことなの・・・」
パチュリーはホールから離れて、この魔法設備に使う付属品の調整を行っていた。
それは精密な作業になるので大図書館にある自室で行っていたのだが、ホールに戻ってきたらこの様だ。
親友であるこの館の主は一体何を考えているのか、パチュリーはただ愕然とするしかない。
そんな風にして立ち尽くすパチュリーに、声を掛けてくる人がいた。
「よーう!パチュリー!聞いたぜ、なんかすごいことやるんだろう?」
「魔理沙・・・」
黒のとんがり帽子にエプロンドレスを身につけたこの少女は、普通の魔法使い「霧雨魔理沙」
癖のある金髪を腰のあたりまで伸ばし、それをやわらかそうに揺らしながら歩いてくる。
魔理沙は歩きながら、手に持った小皿から料理をつまみ、口に放り込みもぐもぐと食べていた。
「もぐもぐなんだ、元気ないなもぐもぐ、これ食べるか?」
「口にものを入れながらしゃべらないで。それより、誰からそのことを聞いたの?」
「・・・むぐ、ん?そのことって、どのことだ?」
口に物を入れながらしゃべるなと注意された魔理沙だったが、小皿から再び料理をつまむと口の中に放り込む。
パチュリーはそれを不満たっぷりの目で見つめるが、その意味に気がついているであろう魔理沙はニカニカと笑うだけだ。
あきらめたパチュリーは小さくため息をつくと会話を再開する。
「ここで魔法を行うということよ。誰にも言っていないはずだけど」
「もぐもぐ何言ってんだお前?紅魔館から招待状がもぐ送られてきたぜ?もぐもぐ」
「・・・は?招待状?」
「もぐもぐもぐ、うん。いやーしかし、もぐ飲み食いまでさせてくれて、もぐもぐおまけになんかすごそうなものまで見れるなんてもぐもぐ、粋なことしてくれるぜ。すごいなーあこがれちゃうなもぐ、ごくん」
パチュリーは頭を抱えたくなった。
どうやらこのホールに人が集まったのは偶然でも幻でもなく"あらかじめ予定されていた"ということらしい。
もちろんパチュリーにそれは知らされていないし、知っていたら反対する。
こんな風に隙を突くようにして会場を整えるのだから、それは主催者である館の主も理解していたということだろう。
「それよりさ、知ってるかパチュリー。ブロントさん女の子になっちゃったんだぜ。しかも天人に瓜二つ。びっくりだぜ」
「知ってるわよ・・・、だってそのためにこれを・・・」
この先を魔理沙に話したら首を突っ込んできそうな気がしたので、パチュリーは言葉をとめた。
これ以上余計なトラブルを抱えたくないのだろう。
「まあいいわ。私はやることができたからそろそろ行くわね。パーティーを楽しんで」
「おうー!出し物楽しみにしてるぜ!」
出し物ってなによ、とつぶやいたパチュリーは、この館の主で親友の吸血鬼の元へ足を運んだ。
-カカカカッ-
「レミィ、こんなことになるなんて聞いてないわ・・・」
パチュリーは背中からこうもりの羽を生やした小さな少女に、うんざりと言った感じで話しかけた。
何を隠そう、パチュリーが「レミィ」と呼ぶこの赤目青髪の少女こそ、紅魔館の主「レミリア・スカーレット」である。
見た目は幼女だが、齢500年という長い年月を生きてきた、れっきとした吸血鬼だ(500才児話)
レミリアはうれしそうに羽をパタつかせ、縁にフリルがあしらわれた上品そうな白のワンピースを揺らす。
「いいじゃないか。最近は異変もなくて退屈だったし、たまにはこういう催しもないと」
レミリアはふんぞり返ってカリスマたっぷりに微笑むと、大声で言う。
「なんせ紅魔館の総力をもって世界を手玉に取るというのだから!!その力を存分に見せ付けてやろうじゃないか!!ハハハ!!」
「それをやるのは私。まったく困った吸血鬼ね・・・」
手を広げてバタバタと騒ぐレミリアに、パチュリーはあきらめに似た感情を抱いた。
レミリアは長い時をこの館の主として生きてきた、貴族にも似た価値観をもつ誇り高い吸血鬼である。
しかし悲しいかな、その経験で培われたカリスマは乏しく、性格はわがまま、行動原理は子供そのものだ。
こうして楽しそうな事があるとすぐ飛びついて、自分もその騒動に混ざろうとする。
不死である吸血鬼にとって、退屈は大敵だ。
今回の場合、その事件に深く関われないものだから、こうして人にお披露目するようなことを思いついたのだろう。
慎重に事を進めたいパチュリーにとって、それが迷惑になるわけだが・・・。
しかしもうそんなことを言っても仕方ない。
こうして人は集まってしまったし、今から皆を追い返してしまえばレミリアの顔をつぶすだろう。
なんだかんだいってパチュリーは、レミリアに甘かった。
パチュリーは今までもレミリアのわがままを聞き、ロケットなんて近代的なものを魔法で作ってしまったこともある。
「今から見せるのはきれいな花火でもなんでもないのよ?」
「かまわないよ。どうせ周りで見てる奴らにはしょぼいか派手かしかわからないだろうし」
パチュリーはうすうす感づいていたが、レミリアはこれがどういう魔法で、どんな結果が生まれるかを理解していない。
ばーん、とか、ぼかーんみたいな擬音的なイメージでこれはすごそうだ・・・と判断しているのか、要領を得ていない発言をする。
今も周りの人間は分からないだろう、という趣旨で発言したようだが、どう考えても自分の頭の中をさらけ出しているようにしか思えない。
それがなんだか気に入らないパチュリーは、小さな小さな反撃をしてやろうと計画する。
そうして考えること約3秒。
聡明な頭脳をもつ魔女が立てた作戦は、簡単に説明すると"じわじわといこう"だ。
「・・・そう。なら一応伝えておくけど、これは流れ出すう○このが飛び跳ねないようにしようって、そういう魔法だから」
「すばらしい!・・・って、えっ!!そ、それってどういう・・・」
腰に手を当ててカリスマたっぷりといった感じでふんぞり返っていたレミリアは、目に見えてあせり出した。
やはりこの魔法についてあまり理解していなかったのだろう。
レミリアは、"グラットンが開けた世界の穴を人がくぐれるようにする"ということだけを聞いて、脊髄反射で誰かに見せようと考えた。
思い立ったが吉日、早速行動を起こしたレミリアはパチュリーに内緒で準備を始める。
ニコニコしながら招待状をしたためるレミリアは、ひさびさの大事に胸をおどらせていた。
うーうー言いながら、魔法の成功を持って黄色い歓声を受ける自分を想像する。
そんな素晴しい未来を幻視したレミリアはパーティ騒ぎにまで発展させたわけだが、間違いだったのだろうかと冷や汗をたらし始める。
一体私は何をお披露目しようとしているのか・・・。
そんなフレーズがレミリアの頭の中で飛び交っていた。
アワアワとあわてるレミリアに、心の中で小さくガッツポーズを浮かべたパチュリーは、くるりときびすを返すと仕上げの準備を進めるためにさっさと謎施設へ向かっていった。
「・・・あっ!ちょ、ちょっと・・・!!パチェ!今のどういうことなの!?ねぇー!!置いてかないでよーーー!!やだーーー!!」
一人残された哀れな吸血鬼は、泣きそうな声で「ザグヤーザグヤー」と奇妙な呪文を唱えていた。
パチュリーは下品な言葉をつかったが、もちろんそんな魔法ではない。
ただあふれ出すであろう泥をそうたとえただけで、大丈夫(モザイク不要)
これは危険な魔法を勝手に見世物にされた、パチュリーなりの小さな抗議である。