真剣で私に恋しなさい!inガキ大将   作:ぷるたぶっち

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第十話 ~夏休みが無人島で潰れた件について~

 

 

8月ももうあと僅か、不真面目な学生でも宿題の追い込みに入る時期である。

 

しかしこの俺、神崎将は夏休みが入った途端に金髪の不良執事に誘拐されてたのであった。

 

解放されたのはつい先日…、まさに昨日だ。

 

そんな俺が小学校から出た宿題もやっているはずがなく、ただいま必死こいて取り組んでいる状態であるっ!!

 

小学生の宿題だと思って甘く思うことなかれ、大人達は小学生に質は求めず、量を求めるのである。

 

つまりは量が半端ではないのである。

 

でた課題は、算数ドリル、漢字ドリル、ポスター、自由研究、習字、読書感想文、そして最後に絵日記……。

 

あと2日でやれないこともないがめんどくせぇーーーーーー。

 

そして一番の難関は絵日記である。

 

ありのままを書けって?

 

夏休み初日に誘拐され、無人島生活で死ぬ気の鬼ごっこやって、滝から落ちて、電撃の拷問受けて、ひたすら虐められてたと書けと?

 

間違いなく嘘つき呼ばわりされるわっ!!

 

俺はこれでも外面は良く、模範的な優等生なのである。

 

今までの積み上げてきた世間体を崩してたまるか!!

 

い、いや待てよ?

 

また優等生で行くと面白みのない人生になるのでは?

 

だ、だがしかし…、いきなりこの絵日記はハードルが高すぎる気がするぞ?

 

く…、なんてくだらないことで悩んでるんだ!?

 

はぁ~、しかたがない、嘘と現実を混ぜよう。

 

え~っと、一日目。

 

『お父さんの友人と一緒に一ヶ月ほど田舎の島に遊びに行きました。』

 

二日目。

 

『木がたくさんあり、大きな滝もありました。』

 

五日目。

 

『お父さんの友人と川で釣りをして魚をいっぱい取りました。』

 

七日目。

 

『お父さんの友達と鬼ごっこをしました。とても早かったです。』

 

十五日目。

 

『川に電気ウナギがいて、体中が痺れました。しばらく動けなかったです。』

 

~~~~~

 

よし、こんなもんでいいだろう。

 

さて次はドリルでも――

 

ピンポーン。

 

ん?

 

誰だ?

 

ピンポーン。

 

そう言えば今両親どっちも出かけてるんだっけか。

 

確か母さんはご近所さんとお茶だっけ、そして糞親父は何か仕事関係の友人と飲みに行くとかで今夜は帰らないんだっけな。

 

そうそう、あれから親父と一体一の時はしばらく遠慮せずにタメ語にすることにした。

 

一応はしばらくである。

 

親父が言うには修行の内容は一切知らんらしいし、土下座して謝ってきたので渋々許そうと思う。

 

「はーい、今でまーす」

 

俺はリビングを出て玄関に向かい、扉を開ける。

 

そこにいたのは3人の少年だった。

 

と言うか同じクラスの少年A、B、Cだった。

 

「しょー君、あーそーぼー」

 

「「あそぼー」」

 

先ほど言った模範的な優等生の俺の定義は、適度に勉強できて、先生の言う事をよく聞き、クラスメートの面倒を適度に見ることである。

 

そのためクラスでは一応はお兄さん的ポジションなのである。

 

なのであるが…、何で家を知ってるし。

 

「それはねー、なんとしょー君のママは今僕ん家にいるからなのです!」

 

「「いるからなのです!」」

 

っ!?

 

こやつ、心を読みおった!?

 

「やだなー、顔に書いてあるよ~」

 

「「あるよ~」」

 

あなどれんな、少年Aよ!!

 

そしてBとCよ、お前ら一生BとCな。

 

Aは今後の活躍次第だ。

 

「それでねー、近くの空き地に遊びに行こうよ」

 

「「行k「ごめんね、留守番してなきゃいけないんだ」う…よ…。」」

 

言わせんぞBとCよ。

 

「大丈夫だよ~、しょー君のママからは許可とったから!」

 

何その根回しの良さっ!

 

A、何て恐ろしい子っ!?

 

だがしかし、ここで遊びに行っては明日はマジで宿題地獄だ。

 

だからといって宿題を理由にはできない、それは俺が模範的な優等生だからである。

 

…本音は小学生の宿題をまだ終わってないことを言うのは、精神年齢がおじさんな俺にはできないからである…。

 

だがあれやこれやと理由を付けたが少年A、と言うよりもBとCが何故か泣き出してしまった。

 

流石に近所さんの目が厳しく(精神年齢がおじさんにはそう見えた)諦めてついて行ってしまったよ。

 

だがまさかここで運命が大きく左右されるとは誰も思わなかった…。

 

 

SIDE ~OUT~

 

 

 

 

SIDE ~BAR THE GRIZZLY~

 

 

ここはある県に存在する、裏通りのBAR。

 

ここは訳ありの客が集まる店である。

 

ここでのルールは3つ。

 

1、人の詮索をしない。

 

2、ここで聞いた話は他言無用。

 

3、喧嘩は御法度。

 

これらさえ守ればどんな奴であろうと差別や区別なく歓迎する。

 

例えここに総理大臣が来ようと一人の客として持て成す。

 

例えここに武神が来ようとルールを守らなければ出入り禁止だ。

 

だからここに来る客は自然に静かな雰囲気を持つお客ばかりだ。

 

ばかりなのだが…、ここに一人例外がいたようだ。

 

見た目は30歳前後の男、スーツを着てカウンターに座りバーボンを片手に持って飲んでいる。

 

「ヒック…、なんだよなんだよ、秋恵も将も俺のこと邪魔者みたいに…、扱いやがって!!」

 

一言で表すならば自棄酒である。

 

「将也、わかったから少しは落ち着け」

 

それを止めるように言う連れは同じく30歳前後の、同じくスーツ姿の男。

 

髪の色は付け根辺りは白、そこから毛先に行く程黒くなっている長髪の男。

 

「景清~、俺はいったいどうすればいいんだ…」

 

「まずは水を飲め、何で私がお前を慰めなければならないんだ」

 

「うぅ~、冷てーよ~、俺の周りみんな冷てーよ~…」

 

ふたりの雰囲気からすると友人である様に思えるし、ただの知り合いにも見える。

 

「まぁ、俺の息子は素直でまだまだ甘えん坊だからな」

 

「将だってな~、将だって…、……ヒュームめ、今度会ったら覚えてろお~」

 

「しかしそうか、いずれ大和にも反抗期が来るのかもしれんのか」

 

ただの親バカコンビであった。

 

「だが将君か、興味があるな」

 

「んだよ~、将はやらんぞ!?」

 

「いらんよ、……あの九鬼の一位に認められる、か…」

 

「あん?最後声小さくて聞こえなかったぞ~?………」

 

「なんでもないさ、いずれ会わせてくれよ?大和と良い友達になれるかもしれんからな」

 

なんて長髪の男がいうが自棄酒の男は酒が回りきったのかうつ伏せで寝ていた。

 

BAR THE GRIZZLYの夜はまだまだ明けない…。

 

 

 

 

 


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