ご都合主義の如く能力を開放した主人公、物理攻撃ならば自動で回避行動が取れる(オートパイロット)
神崎将、つまるところ俺はこれで一泡吹かせられると思っていた。
目の前には不良執事、構えもせず自然体でいるように見える、だがそこから放たれる威圧感は半端ではなく、少しでも気を抜いたら脚が勝手に動いて逃げてしまいそうだ。
しかしこの距離ではこの執事からは逃げられない。
つい先日もそのせいで瞬殺された。
あいつから目を離さずに警戒し続ける。
どこから攻撃してくる?
右か?左か?
それとも正面か?
そう思った時だった。
しっかり目を離さずに見ていたはずなのに消えた。
驚く暇もなく体がまたも勝手に、上半身を前に倒すように動く、その時に頭上からブンッ!…っと聞こえた。
恐らく不良執事が後ろに回り、背後から攻撃してきたのだろう。
これならば行けるっ!!
そう思いながら今度はこちらから動く、恐らく相手は容易く避けられるであろう俺の右拳を紙一重でかわし、こちらに右蹴りを放ってきた。
今度はぎりぎり見える速度ではあるが恐らく(オートパイロット)がなければ避けられないであろう速さ。
実際に体が勝手に動き、半歩後ろに下がる。
だが下がるだけではなく、今度は避ける動作に加え、俺の意思で動き、蹴りを放ったばかりの不良執事に向かって右蹴りを放つ。
そのようにお互いぎりぎりの回避を数十秒、あるいは数分繰り返した。
そしていつしか不良執事の攻撃がこちらに当たるようになってきた。
「なるほど、この速度まで上げると当たるようになるわけか」
観察されていた!?っと驚いたと同時に額に衝撃が来てその拍子に数歩後ろに下がってしまう。
だが痛みはなく恐らく当てただけなのだろう。
どうやらこちらがどの程度の速度まで回避できるかを観察されていたようだ。
そして思い知った、(オートパイロット)も万能ではなく、ある程度俺の身体能力に応じて回避できる速度が決まっているのだと。
それに加え体力を大幅に使うのだろう、先ほどから息が切れかかっている。
今現在七歳児としての身の上だが体力作りはなんちゃって修行でしてきた。
そうそう早く切れることはないのだと思っている。
長期戦は無理、ならば狙うは超短期決戦。
次の攻撃は絶対に避けよう。
そして避けたと同時に接近し、相手の服を掴んで殴る。
服を掴んでいる状態ならば避けられないだろう。
そう俺は考え、相手の出方を待った。
だが思っていた攻撃は来ず、代わりに言葉が来た。
「気を知っているか?」
なんで今ここで聞く?
そう思いながらも決してこちらから口は開かずに相手の一挙一動に警戒する。
「なかなかの集中力ではある、だが、大人の質問にはきちんと答えなければ痛い目を見ることになるぞ?」
動いたっ!
そう思ったときにはもう眼前、しかし目で追えないほどではなく、左脚からの上段蹴りが来た。
そして狙い通りに躱しそこから攻撃に移ろうとした瞬間体が動かなくなった。
まるで電撃を浴びた様に、体全体が麻痺しているかの様に…。
「気というものは生物である限り多かれ少なかれみなが持っているもの、だが希にその気を何かに変換出来る者がいる」
「わかるか?」
「俺は小僧、貴様に攻撃する際に気を電気に変換し、左脚に電気を纏って蹴りを放った、その結果蹴りは避けたかもしれんが、蹴りに纏っていた電気は躱しきれなかったようだな」
「小僧、貴様の回避能力は目を見張るものが有り、根性や勇気もある。まだその年でこれほどの才気、だから貴様に伝授してやろう」
「我が一族代々伝わる電撃を…な」
そう不良執事が言い終わったと同時にこちらに近づいてきた。
俺は嫌な予感と冷や汗が止まらずに逃げ出そうとしたが体が全く言う事を聞かない。
声を出そうにも口が動かない。
体全体が本当に麻痺しているのか、それとも上段蹴りを躱す際に食らった電撃が脳に直接触れていたのか…。
理由はわからないがこれから起こることは絶対に良いことではないのは確かだ。
覚悟を決める間もなく、不良執事に顔全体を覆うように片手で掴まれいわゆるアイアンクローの状態にされ、宙に浮かされ、そして……。
――そこからは地獄だった。
ひたすら電撃を直に食らわせられた。
顔を掴んでいる手から流れてくるようにまずは脳へ、そこからゆっくりなのかそれとも早すぎてわからないのか…、上から順に体の中を駆け巡った。
そこで俺の三日目の記憶は途切れた。
~四日目~
目が覚めたら恐らく昨日とは違う場所の森の中、頭が異様にがんがんと響く、そこでズボンの左ポケットの中に
違和感を感じた。
そこに入っていたのは百円で売っているようなライターであった。
まさかあの不良執事が?
なんて考えたが即刻その考えを破棄した。
この短い時間だがあの不良執事の事は嫌でも理解してしまった。
こんな施しをするようなタイプの人間ではない。
今になって考えてみればあれは人ではなく悪魔か何かじゃないのかと思えてくる。
だがありがたいことには変わりはなく、ライターをポッケにしまい歩く、数分もしないうちに川に着いた。
そしてとりあえず体を洗いたかった。
この数日まともに体を洗っていないが体は不思議と小奇麗だった。
だがさっぱりした感じが欲しく、服を脱ぎ、川の中に入り小魚を取るついでに体を洗った。
小魚は意外にも簡単に取れた。
あの不良執事を見ていたからだろうか、小魚の動きはゆっくり見えて逆に不気味だった。
小魚を数匹取り、服を着てから枯葉と小枝を集め、ライターで火を灯した。
そこから焼き魚を作り、食事を終えた後は仰向けになり空を見上げていた。
正直な話し今日で何日経っているなんてわからなかった。
そして何か忘れている気がする。
そんな事を考えていたら急にばっ…と体を起こし、思い出した。
『我が一族代々伝わる電撃を…な』
そんな事を言われ電撃を体中に食らったんだ。
何故忘れていたのかを考えようとした時に体がふわっ…と浮いていた。
というよりもいつの間にか不良執事がいてまたも顔を掴まれていた。
「ま、また電撃ですか?」
「小僧、何か勘違いしているぞ、貴様が電撃の気を覚えるまでずっとに決まっているだろう?」
…oh
もう…、好きにしてください……。