この子、見た目は仁美でも中身は仁美ではありません!
目を開けると、体の感覚も、意識も合った。
ただこのお姫様ベッドにはかなり驚いたが。
驚きすぎてベッドから転げ落ちたのは本当にごめんなさいとしか言いようがない。
勿論志筑さん本人に、だ。
確かに
どうでもいいがどれくらい驚いたのかと言うと、当然のように生活していたのに、朝起きたら差出人不明のモアイ像が部屋の中に送られていたくらいに驚いたのでは無いだろうか。
というか部屋に飾ってあった人形みたいな彫刻みたいなのには本気で驚いた。
普通のサラリーマンやOLでも朝食食べてるくらいの時間なのに、近所迷惑とかお嬢様とか言うのがぶっ飛ぶくらいに驚き、物凄い悲鳴をあげた。
これはどれくらい驚いたのかと言うと、当然のように生活していたのに、朝起きたら差出人不明のモアイ像が部屋の中に送られていた上に、実は勤め先の会社が地球の平和を守るために結成された秘密結社だったと知ったのも束の間、本当はこっちが悪の秘密結社で、悪の秘密結社だったと思っていた方が地球の平和を守るために結成された秘密結社だったと1分で種明かしされる悪質ドッキリ番組のドッキリよりも驚いた。
地球が焼き鳥と同類だと言われた方がまだ驚かない。
すいません最後のは流石に冗談です。
「仁美~さっきは急に悲鳴をあげてどうしたの?」
最近のお嬢様プラス家族は健康的な生活を送っているようだ。
朝早すぎだと思いますよお母様。
「仁美~?」
「何でもありません! ちょっと変な夢を見てしまって……そう、変な夢……だったら良かったのに本当に……いっそのことこれ全部がモアイ像……だと逆に怖いし友達呼べない……っていうかこれ友達呼んだときどうしてるんだろう? 取り合えずこれを片付けたい。あぁ、多分
お願いなのでこの良く分からない彫刻という名の未知の何かを片付けてください。
嫌、志筑さんのセンスが悪いと言う訳じゃ無いんだけど怖いもん! 何か夜中にかたかた動き出しそうで怖いんだよ!
「ひ、仁美?」
「何ですか、お母様? お母様は朝早いんですのね。私、まだ眠いわ……本当に眠いどうしよう。もう寝ていいですか? ていうかこの彫刻片付けてください。頭痛くなるので……」
志筑さん家のお母様の声が少しずつ大きくなりつつも裏返り始めていることに気付かずに一人で彫刻みたいな恐い何かについてブツブツ言っている|見た目志筑さんだけど中身は素性も分からないどっかの少女《私》。
「え、えぇ? ちょ、彫刻? 彫刻を片付ければいいのね?」
聞こえてたのか。
ごめんなさい。
……聞こえてたんですね!
この扉簡素な作りにでもなってるのか……志筑さん家のお母様が魔法少女もビックリの化け物聴力をお持ちなのか……実はそう言っている本人の声が大きいだけということに気付いていないある意味怖い少女であった。
「取り合えず朝ご飯は食べる……わよね?」
え、何に怯えているんですの?
と言いたくなったがいい方向に進む気がしなかったので黙ってお母様の質問に答える。
「勿論答えはイエスですわ!」
良かった……これは何時のやり取りに含まれているらしい……お嬢様のイメージとかけ離れているなこの子。
何と言うか……超悪質詐欺師として有名な癖に身寄りの無い子供達へお金を寄付する上にボランティアに参加しまくってる超善人っぽい笑顔を振り撒く人みたいな感じだ。
何だよそれ、とは私も思いましたよ。
志筑さん、突然で悪いがヘマすると面倒なのでここでバトンタッチだ。
「あ、れ? 私はこんな所に立って一体何をしていたのでしょうか……え? え?! じぃや、それは……止めてください! あ、止めてぇぇぇぇぇ!」
うわぁ……ごめんなさい志筑さん、本当にごめんなさい。
でもそれ普通に怖いから!
分かろうよ? それ普通に怖いから!
人魚みたいなのに至っては何か髪逆立ってない?!
普通に怖いもん!
でもごめんなさい!
もうこのまま起きてると私、罪悪感で死にそうだからもう寝てます……。
どうしてこうなった。
集合時間早過ぎません?!
7時35分ですよ?!
最近の学生は朝早いんですね……。
志筑さんの体に入ってからは、突然よく分からない方向に話が進むことが多い気がする。
「おはようございますさやかさん! 実は私志筑仁美ではやく志筑仁美別人格何です!」
「え? ジョーク? 仁美も結構面白いこと言うよね~。それで別人格の仁美さんは朝何食べたの?」
何かさやかさんのスルー力が凄まじい……物凄く自然な流れで話を変えられましたわ……まぁ、まどかさんが来るまで世間話でもしていましょうか。
それから数十分、さやかさんと話をしていると、まどかさんが走ってきた。
「おっはよう~」
予想以上に早く来てくれたまどかさん。
「お、おはよう、ございます?」
疑問系になって一瞬ヒヤッとしたがにこりと微笑んでおはようと返してくれた。
この子が……鹿目まどか。
神様じゃない方です。人間の方です。
「まどか、おそーい。お? 可愛いリボン」
さやかさん! あなたその話術どこで身に付けたの?!
なんて事を考えていたが、きっとこれがさやかさんなのよ。
「そ……そうかな? 派手過ぎない?」
「そんな事ありません! とても素敵ですわ! まどかさんだからこそ似合うのですわ! 私がやったら色合い的に確実に浮きまくりますもの!」
緑と赤の組み合わせって可笑しいと思うんですの。
何て言うか合わせづらいと言いますか……合ったらきっとそれはそれで素晴らしいと思うんですのよ!!
「そ、そうかな? そこまで褒められると何か恥ずかしいな……あ、それでね。ラブレターでなく直に告白できるようでなきゃダメだって」
き、聞いた通りの会話……あれ?
ひょっとして前準備その他諸々無し……ですか?
え、いきなり本編突入ですか?!
いや、赤いリボンは稀に付けていたと言っていましたから暁美さんが転校してきたら本編確実ですわ! 今断定するのは早い……はずですわ!
そうです、今はこの会話を楽しみましょう!
「相変わらずまどかのママは……」
「直で告白なんて常識ですわ! 地球が回っているという事よりも当たり前の常識ですわよ?! それも出来ない男はカッコ悪いです! 男なら真正面からぶつかって来いですわ! そして砕け散りなさい!」
胸を張りながら叫ぶ。
周りの人が私を何言ってんだあの子という見ていますが気にしません……!
「え、あたし知らなかったんだけどその常識……それにしても、羨ましい悩みだねぇ」
さやかさんモテそうなのに……以外。
やっぱり上條君とやらが好きだからなのかしら?
一瞬何かが引っ掛かるような感じがしたが、きっと気のせい……だと思いたい。
「私も一通ぐらいもらってみたいなぁ。ラブレター」
それなら私が差し上げましょうか?
と言いたくなったが絶対に変人扱いされるので黙る。
勿論冗談だが、やはり変な誤解を招くのはよろしくないと思うんです。
「ほーう? まどかも仁美みたいなモテモテな美少女に変身したいと……そこでまずはリボンからイメチェンですかな?」
リボン……イメチェン……私が面に出てる時は髪結ぼうかな。
何て事を考えながら近くのビルを見る。
見滝原って凄いなー。
なんていう事を考えながら……え。
女の子が屋上にいる。
黒髪の女の子が屋上にいる。
え? 学校間に合うのかな?
……黒髪? 女の子?
……暁美さん、よね……?
今はまだ見て見ぬふりをしておかないと……ここで変な行動を取ってこれから動きづらくなったら困りますから。
「違うよぅ! これはママが……!」
「さては、ママさんからモテる秘訣を教わったな? けしからーん! そんなハレンチな子はー……こうだぁっ!」
「や……ちょっと……やめて……や……め……」
「可愛い奴め! でも男子に持てようなんて許さんぞー! まどかは私の嫁になるのだー!」
……いつの間にかさやかさんがまどかさんに抱き付いていた……周りの人が奇怪な物を見るような目で見ていたので咳払いをして気付かせようと奮闘。
何やってるんだろう私。
「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」
思わず息を飲んでしまうくらいに真剣な顔をしていた早乙女先生。
「目玉焼きとは、固焼きですか?それとも半熟ですか? はい、中沢君!」
そして真剣な表情で割とどうでもいい事を言った。
生け贄は中沢君の様だ。
先生、ホームルームは質問をするためにある訳じゃ無いと思うんですが。
「え、えっと……ど、どっちでもいいんじゃないかと」
「その通り! どっちでもよろしい!」
質問した意味を教えてください先生!
「たかが卵の焼き加減なんかで、女の魅力が決まると思ったら大間違いです!」
指揮棒?!
嘘でしょ指揮棒折った!
あの先生怖いよ!
何で素手で指揮棒折れるの?!
いや、折れるかもしれないけど折るスピードが異様に早かったよ! しかも私の居る席までバキッて聞こえたんですよ!
ていうか指揮棒は折るものじゃないよ!
「女子のみなさんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように!」
先生まさか目玉焼きの半熟完熟で彼氏さんと別れたんじゃ……いや、きっと喧嘩、だよね?
別れてないわよね? 喧嘩しただけ……ですよね?
「ダメだったか……」
「ダメだったんだね」
隣でさやかさんとまどかさんのやり取りを聞いて思ったこと。
……嘘でしょ、先生。
まさか目玉焼きが完熟か半熟かで別れる人達が居るとは……。
「そして、男子のみなさんは、絶対に卵の焼き加減にケチをつけるような大人にならないこと! はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」
転校生は何分も廊下で待たされることになるんですか……。
「そっちが後回しかよ!」
最もですさやかさん!
「じゃ、暁美さん、いらっしゃい」
……ぶっつけ本番過ぎてどんな反応すればいいのか分からない!
「うお、すげー美人!」
そこ! 突然ナンパですか?!
「え……? 嘘……まさか」
ここでまどかさんが反応?!
あ、夢で逢った事があるんだっけ……。
どうもこの辺り微妙に覚えていないわ。
「はい、それじゃあ自己紹介いってみよう」
「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
短い自己紹介とお辞儀の後、鹿目さんを睨むように見つめる暁美さん。
確かにこれならガンを飛ばされたと勘違いしてしまうかもしれない。
「え……?」
「えぇと……暁美さん?」
──今日は、長い1日になりそうです。