事務員? いえ、公務員です   作:とある物書きMr.R

13 / 23
第13話 〜まきりんぱな 1〜

小さい頃から、アイドルに憧れていた。

テレビの向こうにいる彼女たちは、いつも一生懸命で、キラキラしていて、まるで夜空に輝く星みたいだった。

私もあんな風になりたい、子供ながら真剣にそう思った。

引っ込み思案な私が、その夢を届かないものと考えるまで、そこまで時間はかからなかった。

声は小さいし、運動もそこまで得意じゃない。一つダメだと思ったら、次から次へとアイドルになれない理由が浮かんできた。

結局のところ、私はアイドルに『向いていない』。ただそれだけだったのだ。

 

私自身が向いていなくても、好きを辞める理由にはならない。

 

そんな理由を付けて、ファンは続けた。プロのアイドル以外にも、スクールアイドルというものも出てきて、

 

 

 

ほんのちょっぴり、胸が痛んだ。

 

我ながら身勝手だとは思う。

でも、怖い。

これだけ向いていない要素が揃っている私。仮にアイドルを目指したとして、もし『なれなかったら』?

星を目指しても、力及ばず燃え尽きてしまったら?

 

そう考えると、どうしようもなく怖かった。

 

高校に上がって、少しは大人になれたかなと思っていたら、高校自体が無くなるかもしれないと言われた時は本当に驚いた。上級生には、ショックすぎて本当に気を失った人もいたらしい。

まだ入学して間もないけれど、音ノ木坂は凄く良いところだと思う。

上手く言い表せないけれど、こんな私でも大丈夫だよって受け入れてくれる。そんな雰囲気がする。

できれば無くなって欲しくない。いろんな人に、ここの良さを知ってもらいたい。

 

そんな矢先だった。

スクールアイドル始めました、そのポスターを見つけたのは。

 

噂だと2年生の先輩3人が、廃校を阻止したいとの思いで始めたらしい。確かにアイドルを始めて、その活動が上手くいけば、部活で全国大会出場! のような大きな宣伝効果が見込める。

μ'sというそのグループの初ライブ、見てみた感想といえばーー

 

正直に言ってしまうと、歌もダンスも全然だった。

園田先輩は恥ずかしいという気持ちが出すぎてしまっているし、高坂先輩は色々と大雑把。南先輩はキレイにまとまっているけれど、そこまでだ。

 

ただ、そのマイナスポイントを帳消しにしてプラスになるほどの「熱意」を感じた。

ほとんど人のいない講堂。私が来た時には無人だったから、ステージに上がった先輩たちが見たのは誰もいない観客席だったのだろう。

 

その時の絶望感は、私が軽々しく想像しちゃいけないと思う。

でも先輩たちはやりきった。その姿に私はどうしようもないほど胸が熱くなった。

 

 

 

ーーでも。

「アイドル、かぁ」

ーーやってみたら良いじゃない。

前に事務の先生に言われたことが頭をよぎる。

ーーかよちんは声もキレイだし、きっと向いてるよ。

親友の凛ちゃんにもそう言ってもらえている。

でも、どうしても『一歩』が踏み出せない。その勇気が、出てこない。

「あれ? これは……」

 

またいつものようにポスターを見ていると、誰かの生徒手帳が目に入った。

ここで落としてしまったのだろう。

 

 

 

 

 

 




まきりんぱな2に続く。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。