事務員? いえ、公務員です   作:とある物書きMr.R

14 / 23
第14話 〜まきりんぱな 2〜

「お先に失礼します、お疲れ様でした」

「はいお疲れ〜」

「お疲れ様」

今日も仕事が終わった。他校のスクールアイドルの研究や茨城におけるこれまでのアイドル活動の記録の調査。茨城の財政からどれだけアイドル活動に支援ができるかなどなど……

 

あれ、これって公務員の仕事じゃなくない?

 

自分はいつから公務員からアイドルオタクにジョブチェンジしたのか考えながら、駐車場へと歩みを進めた。

 

 

*****

 

 

「こっちかな? えっと、あっち?」

「……何してるの?」

「ぴゃあっ!?」

夕飯の食材を買った帰り道、ばったり小泉さんに出会った。

小泉さんに声をかけるたびに、幽霊に遭遇したかのようなリアクションをされるけど、僕は一体彼女に何をしたのだろうか……

「こんな時間に一人歩きはあまりオススメできないかな。何かあったの?」

もう薄暗い時間だ。不審者というリスクを考えるとそろそろ危ない時間だろう。

「あの、これを見つけて……」

小泉さんの手にあったのは、ウチの生徒手帳だった。

「小泉さんのって訳じゃなさそうだね」

「はい、西木野さんのなんです。困ってるかなって思って……」

なるほど、事情は分かった。

「そっか……

歩きじゃ時間もかかるだろうし良かったら乗る?」

「え……」

「あ、ゴメン! 嫌だったら良いんだ、いきなり男の車に乗るなんてどうかしてたよ」

言いながら冷や汗が吹き出す。

いくらなんでもいきなりそんなこと言うなんて本当にどうかしてた。

「じ、じゃあ、お願いしても、良いですか?

「へ? あ、うん……」

まさかのOK頂きました。

 

*****

 

「これ、家か……?」

「ふぇぇ〜……」

生徒手帳の住所にあったのは、文字通りの豪邸だった。

「じゃぁ、行こっか」

「はい」

インターホンを鳴らすと数秒で女性の声出た。

『はーい』

「夜分に申し訳ありません、国立音ノ木坂学院の松本と申します。西木野さんのお宅でよろしいですか?」

『あ、はい。少々お待ちください』

「先生、何か本当に先生みたい」

「まぁ、一応ね。こういう対応は研修でも習うし」

「へぇ〜」

「お待たせしました。どうぞ」

「すみません、失礼致します」

「こ、こんばんは」

「こんな時間に申し訳ありません。実は……」

小泉さんが西木野さんの生徒手帳を拾って、それを届けに来たという事を伝えると、西木野さん(母)はすぐに納得してくれた。

「あら、そうなんですね。ありがとうございます。今真姫何ですけど病院の方に顔を出しているのでしばらくお待ちくださいね」

「いえ、お気遣いなく」

 

そう言われて僕たちが通されたのは、ガチな応接室だった。

「す、すげぇ……」

「真姫なんですが、後10分程で帰るそうです。よければこちらをどうぞ」

「あ、ありがとうございます。ではすいません、いただきます」

「い、いただきます……」

高級なこと間違いなしのティーカップに高級なこと間違いなしの紅茶を淹れてもらい、僕たちは西木野さんを待った。

このティーセットだけで、僕の月給飛ぶかもなぁ……

 

「ただいまぁ。あれ? 誰か来てるの?」

「あらおかえり。学校の人とクラスの子が来てるわよ」

「こんばんは、西木野さん」

「松本先生。それに小泉さん? どうしたんですか?」

「小泉さん」

「は、はい。

西木野さん、これ……」

「あ、私の生徒手帳? どうしたの?」

「μ'sのポスターの所に落ちてたんだ」

「え!? あ、そうだったのね。ありがと」

「西木野さんは、アイドルに興味あるの?」

「なな何言ってるのよ。そんな訳無いじゃない」

見事なまでに本音の見える否定だった。

「そうなの? よくポスター見てるから興味あるのかなって」

「違うわ。興味なんてない。それに、

私の音楽はもう終わってるの」

「え?」

「ウチが病院やってるのは知ってるでしょ? 私の進路は医学部一本。だから、私の音楽はもう終わってるのよ。

もういいでしょ? 手帳ありがと。また明日ね」

これ以上はきっと話してくれないだろう。

「そうだね、もう遅いしそろそろ帰ろう。それじゃあ西木野さん、また学校で」

「また明日……」

 

*****

 

 

「あ、ここでもう大丈夫です」

「そう? じゃあ、また明日」

「はい。ありがとうございました」

「はいはーい」

小泉さんを送り、今度こそ家へと帰る。

「にしても……」

『あの子を、真姫を、よろしくお願いします』

西木野さんの家を出るときに言われた言葉が頭から離れることは無かった。

 

 

*****

 

 

「これは……」

西木野さんの家に行ってから数日後、ピアノの音が音楽室に響いていた。

集中しきっているのだろう。部屋に入ってもまるで気付かない。

ピアノを弾きながら歌っている。その表情は……

 

「私の音楽は終わってる、か……」

「せ、先生!? いつからそこに!?」

「失礼失礼、あまりにいい曲だったもんでつい聞きいっちゃったよ」

「そうですか。では私はこれ位で」

「本当に君の音楽は終わっているの?」

「……はい」

「僕にはそうは思えないね。

君の音楽は、ただ『止まってる』だけだ。君自身が止めているだけだよ」

「何が言いたいんですか?」

「『好き』を、諦めるな。君のはDon'tなんだろう? なら諦めるな」

「違う。もう無理よ。もうどうしようもない。医学部の勉強がどれだけ大変なのか、先生はきっと知らない、分からない!」

「だったら君の『好き』は、その程度だったってことさ」

「なんですって?」

「残念だよ。あんなに良い曲が作れるだけの才能があって、あんなに楽しそうな顔でピアノを弾いているのに、肝心の君がそうじゃもうどうしょうもない」

あからさまな挑発。

いろいろと危ない橋だとは思っているけれど、これが有効な手なことも分かっていた。

見た感じ西木野さんはかなりの努力家だ。そうでなきゃ医学部なんて仮に押し付けだとしても目指せない。

そして、努力家にはーー煽りがよく効く。

(うわぁ、メッチャ怒ってるよ。真っ赤だよ顔。怖ぇぇぇ)

もっとも、それを仕掛けた僕はビビリまくっているのだが。

「いいわ、そこまで言われて黙ってられない。やってやろうじゃない!」

落ちた。

「へぇ、なら楽しみにさせてもらうよ」

心の中で悪い笑みを浮かべながら、僕は音楽室を後にした。

 

 

*****

 

 

数日後

「私、小泉花陽といいます!

1年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものも何も無いです……

でも……

でも、アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!

だから、μ'sのメンバーにしてください!」

 

小泉さんの涙ながらの入部届。それに付き添っていた西木野さんや、小泉さんの目にも光るものがあった。

「それで、お二人はどうするんですか?」

「「え?」」

「「μ'sはまだまだメンバー募集中です!」

 

 

こうしてμ'sは6人になった。

 

 

 

 

 

 




何気に最長か?

まきりんぱな2、いかがでしたか?できる限り早めの更新を心がけるつもりですが、9月以降また不定期更新に戻ると思います。申し訳ない。

感想、評価もお待ちしてます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。