※本編とは一切関係ありません。
もし俺の機体がしゃべれたとしたら,俺は機体に「今すぐに帰らせろ!」なんて怒鳴られているだろう。あまりにダメージが行き過ぎていて口もきけなくなっているかもしれないが。
満身創痍,絶体絶命。そんな四字熟語が脳裏に浮かぶも,すぐに雑念を追い払った。
『そっちはどう? 見つかった?』
『いないみたい。向こうを探してみましょ』
『なんだかテンション上がるにゃ~!』
通信機能がまだ生きていたらしく,相手の会話が聞こえる。
いや,おそらくこの会話を俺に聞かせているのだろう。
『ダメね,こっちもハズレみたい』
『う~ん……一体何処にいっちゃったのかしら?』
『ウチの予感が外れるなんて珍しいこともあるなぁ』
機体はボロボロだ。今なら新兵にも撃ち負ける気がする。
主武器の速射機銃はマガジン2つしか残弾が無く,副武器のクラッカーは残り1個。
期待できるのは補助武器の槍,SP-ペネトレーターだが,そもそもそれを当てられる相手ならこんなに苦労していない。
最悪なのはアサルトチャージャーを起動するためのエネルギーが充電中であるということ。のこのこ出て行っても蜂の巣にされて終わりだ。せめて速度で相手をかく乱させつつも一矢報いてやりたい。
『もぅ,このままじゃいつまでたっても終わらないよ~!』
『穂乃果,静かにしてください。集中できません』
『二人とも落ち着こう?』
通信は三方向から迫ってくる。口では俺を見失ったようなことを言っているが,どうやらしっかり捕捉したうえで俺を弄んでいるようだ。
なんとも良い性格をしている。
アサルトチャージャーが起動できるようになるまでどう見てもあと20秒はかかる。日常生活なら過ぎたことにも気づかないほどの短い時間だが,ここでは無限にも等しい長時間だ。
『そうだ! ことりちゃん,真姫ちゃん。索敵してみてよ!』
『いいけど,この辺りにいるの?』
『いいからいいから!』
どうやら俺に止めを刺すつもりらしい。あと10秒,間に合うか?
『それじゃあ,滞空索敵弾,発射するね』
『索敵センサーを仕掛けるわ』
パラシュートにぶら下がった索敵弾は俺の真上に展開,索敵センサーは俺の足元に転がってきてそれぞれ敵を発見した時の耳障りな音を発し始めた。
『『『みぃ~つけたっ!』』』
9人の声が唱和し,そして,
ドガガガガガガガガガガッ!!
「うおっ!?」
耳がいかれかねない大きさの轟音と共に大量の銃弾が俺の隠れている民家に叩き込まれた。
レンガ造りの民家は2秒と持たずに瓦礫の山と化し,その後ろで震えている俺に機体はボロ雑巾の如く大破する。
確かにそこに留まっていたなら確実にそうなっていただろう。
だが。
「危なかった……!」
まさに間一髪。かろうじて充電が完了したアサルトチャージャーを起動し俺は銃弾の嵐を寸前で回避した。
『お,ラッキーやね!』
『ハラショー』
『アンタら本当に良い性格してるわね』
同感だ。
縮こまったままボロ雑巾になることは回避できた。だがこのままブーストを展開していてらあっという間に充電が切れ,その瞬間俺はボロ雑巾だ。
右に行くと見せかけしゃがみ。いきなりブーストを解除して速度を落とす。
特に作戦があるわけじゃない。むしろ何も無い。
本能のままに機体を操り,銃弾をかわす。
別の物陰に飛び込む寸前,俺の視界は敵機の姿を捉えた。
相手は9機。強襲が3機,重火力が2機,支援が2機,遊撃が2機。
(……行けるか?)
相手は一人一人がかなりの腕前。連携もきっちり組んでいる。余裕そうに振舞っているが俺に対する警戒は欠片も緩んでいない。
普通に考えて詰んでいる。
だが,相手は1つだけミスを犯した。
それは,9人が1箇所に集まっていること。
もちろん,束になって向かってくる弾丸は脅威でしかない。
ただ,もしも固まっているところに爆発物が投げ込まれたら。それが爆発したら。
皆まとめて吹き飛ぶ,あるいはダメージを負うはずだ。
最後のクラッカーを手に取る。
これを外せばもう後は無い。散々いたぶられた挙句,俺はやられるだろう。
気づけば弾丸の雨が止んでいた。
『どうしたの~? もしかしてもうおしまい?』
『えぇ~,にこそんなのつまんない~!』
『ちょっと寒くないかにゃ』
『今なんてった?』
『なんでもないにゃ』
ずいぶん舐められたものだ。
その余裕,消し飛ばしてやる。
『どうやらここまでのようですね。そろそろ終わりにしましょう?』
『私もそれが良いと思うな』
『早く帰ってご飯にしましょう!』
『じゃあウチはお肉焼いちゃおっかな~』
『太りますよ?』
『『うっ……』』
心でカウントを始める。
5
『ここの敵機はあなたが最後。特に恨みがあるわけじゃないけど私たちは早く帰りたいの』
4
『一撃で終わらせてあげるね!』
3
『最後は凛がやるにゃ!』
2
『ま,私達とぶつかったのが運の尽きね』
1
『ほな,おおきにな』
Go!
相手の会話からして来るのは大火力の一撃。万全の状態でもまともに喰らったらお陀仏だ。
そう,まともに喰らったら。
力みすぎず,ただ俺は機体をジャンプさせ,躊躇うことなくクラッカーを投げつけた。
『! マズい!』
俺が何をしたのか瞬時に見抜いたのだろう。俺は戦闘が始まってから初めて相手のあわてた声を聞いた。
『皆,ウチの後ろに下がって!』
重火力兵装の機体が一歩前進し,バリユニットを展開する。
俺の乾坤一擲のクラッカーはバリアに触れた瞬間爆発し,相手にはかすり傷ひとつつかない。
だが,コンマ数秒でも相手の視界をさえぎる。それができれば充分だった。
「オオォッ!」
アサルトチャージャーを起動すると同時に雄たけびを上げながら突進。
そして俺の手には,しっかりと槍が握られていた。
「喰らええぇぇぇっ!」
相手は俺に近づき過ぎた。
『あぁビックリした』
衝撃。衝撃。
大きなショックが2回ほど機体を襲ったのは分かった。
だが,なぜ俺は今地面に転がっている?
『流石です希!」
『ふふ。希パワーたっぷり受け取ってくれたかな?』
重火力兵装の機体は,手にインパクトボムを持っていた。
つまり,インパクトボムの衝撃波で俺の機体は吹っ飛ばされたということか。
2回の衝撃は,衝撃波を受けたのと,地面に叩きつけられたものだった訳だ。
「あぁクソ。完全にフルハウスだこりゃ」
『ありがと。バイバイ!』
相手の強襲がSW-エグゼクターを振りかぶる。
俺はゆっくりと目をつぶり,次の瞬間襲ってきたとてつもない衝撃に意識を刈り取られた。
*****
気がつくと俺は医務室のベッドにいた。
「起きたみたいね。気分はどう?」
「最高。もうひと眠りしたいくらいだ」
「その調子なら大丈夫そうね」
「まぁな」
なぜ俺が生きているのか。
答えは簡単だ。
「しっかし,お前ら演習だからってやりすぎだろ。Aチームの奴らしばらくブラストに乗れないんじゃないか?」
「それなら平気よ『我々の業界ではむしろご褒美です』とか言ってたし」
「変態か……」
そう。あれはVR演習。例え機体をミンチにされようとも現実はご覧の通りだ。
もっとも,とことんリアルを追求するために作られたVR演習装置は衝撃まで再現する。
場合によっては俺のように気を失ったりすることもある。
「早く行きましょ。ご飯冷めちゃうわよ」
「そりゃイカン。行くか」
俺たちは傭兵。
戦場を駈け,鉛弾で交流する。
人は俺たちをこう呼ぶ
『ボーダー』と。
いかがでしたか?
サブタイトルでピンと来た方。さてはやってますね?
アーケードゲーム「Border Break」とのクロスオーバーです。
一度書いてみたいと思ってたんですよねw
感想などいただければ嬉しいです。
キャラは,
凛⇒強襲兵装 花陽⇒重火力兵装 真姫⇒支援兵装
海未⇒遊撃兵装 穂乃果⇒強襲兵装 ことり⇒支援兵装
にこ⇒強襲兵装 希⇒重火力兵装 絵里⇒遊撃兵装
としてみました。勝てる気がしない。
それでは,またお会いする日まで。