今回はあの子の登場となります。
では、どうぞ!
「なんだよ……」
また、あの夢を見た。
昨日出会った少女、東條 希。彼女は本当にあの子なんだろうか?
あの子が大きくなったらあんな感じになっているのだろうか。
「はぁ……
うしっ、今日も頑張ろう」
一人で考え込んでいても何も変わらない。
とりあえず出勤することにした。
今日は入学式、音ノ木坂学院にとって最後になるかもしれない入学式だ。
*****
「新入生、退場」
暖かい拍手とともに新入生達が退場していく。
ここまではごくごく普通の入学式だ。
だが、
「マジかよ……」
普通だったらかなりの時間がかかる入退場は、あっという間に終わった。
音ノ木坂学院は今年、定員割れを起こしていた。
1クラス
それが今年の1年生の人数だった。
(これは、廃校もほとんど確実だな……)
自分の仕事は、与えられた環境と時間の中で結果を出すこと。
この環境で結果を出す。それはどう考えても廃校の阻止以外ないだろう。
(難易度高すぎやしません……?)
茨城の魅力をPRする人材を育成する部署なことは説明されてないけど察しはついてる。
人気のない所に人を呼び込む。まさに今の茨城に必要なことだ。
でも
この状況から何をどうしたら廃校阻止に繋げられるのだろう。
「どうしたん? こんなおめでたい日に暗い顔して」
「ッ!?
あ、あぁ東條さんでしたか。いえいえ、なんでもないんですよ。ちょっと仕事のことで考え込んでいただけです」
いつの間にか体育館からは生徒もいなくなっていて、入学式の後片付けが始まっていた。
一応事務員としてここにいる以上、何もしないのはマズイだろう。
「すいません、手伝いがあるのでこれで失礼しますね」
「松本さん、
いや、“りょー君”」
世界が 止まる
視界から色が消え、鼓動が高鳴る。
“りょー君”
その呼び方で呼ばれるのは何年ぶりだろう。
間違いない、彼女は
「どうしたの、“のんちゃん”?」
あの時の、彼女だ。
*****
「放課後、神田明神に来て」
それだけ言うと彼女はふらりと立ち去っていった。
そして
「神田明神……
ここでいいんだよな?」
夕方、僕は神田明神へと来ていた。
いや、この言い方だと少しおかしい。
正確には神田明神のそばにある男坂に来ていた。
情けない話だが、勇気が出ない。この階段を昇って、一体どんな顔で彼女に会えばいいのだろう。
僕を“りょー君”と呼んだということは少なくとも僕のことは覚えていたのだろう。
だとしたらなぜここに呼んだのか?
そんなことをいつまでも考えていると
「あっ! もしかして、新しい事務の先生ですか!?」
いきなり声をかけられた。
疑問に思う前に体が反応する。
振り返ると、音ノ木坂学院の制服を着た3人組の姿があった。
リボンの色からして2年生だろう。
「えーっと、君たちは?」
「あ、はい! 私は
高坂 穂乃果! 音ノ木坂学院の、スクールアイドルです!」
運命は風みたいなモノで、確かにそこにあるのに捕まえることも、流れを変えることもできない。
味方をしてくれることもあれば、敵として襲いかかってくることもある。
本当に気まぐれなヤツだ。
でも、この日この瞬間。
いや、音ノ木坂学院に配属されたことを、僕は運命に一生感謝する。
「ちょっと穂乃果! まだやると決めた訳ではないですよ!?」
「あれ、そうだっけ?」
「まぁまぁ、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも落ち着こ? ね?」
なんだか強烈な3人だ。話が吹っ飛びすぎててなんで僕に話しかけたのかさっぱりわからない。
「えっと……どうしたの?」
「あ、そうだった!
私たち、ここで練習することにしたんです。そしたら、東條先輩が松本さんだったらいいアドバイスをもらえるんじゃないかって」
「えっ?」
何のことだ? それに、今東條さんに言われたって言った?
「僕が!?」
「えぇ、音楽が好きとのことでしたので
あ、すみません。私は園田 海未と申します」
「私は南 ことりです!」
「南……?」
理事長の親族かななんて思ってたら、
「ことりちゃんのお母さんがこの学校の理事長なんだよねー」
はい、この子の前で迂闊なこと言えねぇ……
というより、
(どういうことだよ、東條さん……)
ふと男坂を見上げると、東條さんがこっちを見下ろしていた。
「ッ!
ごめん、ちょっとここで待ってて」
「あ、松本先生!?」
言うが早いか階段を駆け上る。
だが、登りきった時、彼女の姿は境内のどこにも見えなかった。
「ハァ、ハァ……
どうしたん、ですか。松本先生」
一体何事という顔で3人も登ってくる。
僕は、今結構なピンチなんじゃないだろうか。
何も言わず、いきなり階段全力ダッシュし出した僕。
何か目的があるはずだが上には何もない。
うん、完ッ全に怪しいヤツですね。
「もしかして松本先生……」
ヤバい、“来る" ……!
「穂乃果達に練習の仕方を教えてくれたんですか!?」
……ん?
「そうですね、口で言うより先ず行動ということなのでしょう」
……あれ?
もしかして、勘違いしてくれちゃってる?
……アッブねー!!
「そ、そうなんだよ。ここ、結構急な坂だろう? 上り下りするだけでもかなりの運動になるんじゃないかって思ってな、ハハッ!」
ネズミの化け物のような声を上げながら必死に取り繕う。このまま押し通す!
(ニコッ)
あ、ダメだこれ。南さんには確実に見抜かれてるわ……
グッバイ、僕の職場ライフ……
「ねぇねぇ、朝と夕方にここで練習でいいんだよね?」
おや? ことりさん?
もしかしなくても、分かった上でスルーしてくれる感じですか?
……天使だ君は!
とりあえず明日から朝と夕方にここで体力作りをするところから始めるということでその場はお開きになり、それぞれがそれぞれの家路についた。
慌てていたから気付くことができなかったのかもしれない。
僕たちを見つめる視線に……
いかがでしたか?
いよいよスクールアイドルとしての彼女達に関わり始めました。
1年生は……もう少し待っててください。
推しの方、すみません。
誤削除してしまったにも関わらず、アドバイスや励ましの言葉を下さった読者の皆様、本当にありがとうございました。感謝しかないです。
次回も、よろしくお願いします!