霧に消えゆく超大戦艦   作:霧のまほろば

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早いもので今年も残りあと僅かとなりましたね。私が投稿を始めてからもう2ヶ月が経つのですね……。

今回は超兵器戦後のごたごたについてです。


第10話 混沌の前触れ

 

『one step of a big counterattack(大反攻の一歩)』の大作戦は失敗に終わった。

 

アメリカ太平洋艦隊は事実上超兵器の艦隊による攻撃を受けて壊滅。生き残った艦娘も海を見ただけで取り乱すほど精神に異常をきたし、解体、自害などで喪われ、壊滅状態に陥った。

さらに、大西洋奪還に動いたアメリカ大西洋艦隊、イギリス艦隊には、超兵器“超巨大ホバー戦艦 アルティメイトストーム”、“超巨大高速空母 アルウス”、“超巨大双胴航空戦艦 近江”、“超巨大戦艦 ナハト・シュトラール”、“超巨大レーザー戦艦 グロース・シュトラール”、“超巨大高速潜水艦 アームドウィング”、“超巨大光学迷彩戦艦 シャドウ・ブラッタ”の艦隊による強襲を受け、大半を喪った。

 

フランス、ドイツ連合艦隊の前にも超兵器は現れ、完膚なきまで叩き潰され、ビスマルクら戦艦をほとんど失った。現れた超兵器は“超巨大航空戦艦 ムスペルヘイム”、“超巨大航空戦艦 テュランヌス”、“巨大円盤型攻撃機 ヴリルオーディン”であった。

 

人類が追い詰めらたかと思えば、超兵器は深海棲艦に対しても敵対しているようで、現在も各地で超兵器と深海棲艦の交戦が確認されている。もっとも、超兵器優位でいるようだが、深海棲艦も艦娘の艦隊の数十倍ものの数の暴威で拮抗している。

だが、超兵器にはまだ出現していない兵器があり、それらが参戦してしまったら、瞬く間に世界は超兵器に蹂躙されてしまうだろう。何故ならば、未だ出現していない超兵器には、単体で一国を落とせるものや、世界に終焉をもたらすことが出来る化け物がいるからだ。

 

 

その報せが入ったのは、サウスダコタ、ニューメキシコに率いられるアメリカ艦隊を含む呉第一艦隊がマホロバに護衛されながら、武蔵と日向が現在出せる11ノットで命辛々帰還し、傷付いた艦隊をドックに入れた後だった。

マホロバは余りの巨体のため、港湾施設の許容範囲を遙かに超えていたため、仕方なく軍港の外れに碇を下ろして粒子転移で呉鎮守府に向かっていた。

 

やはりと言うべきか、マホロバの巨体は鎮守府からよく見えるどころでは無く、市街地からもその巨体は強烈なほどのインパクトを与えたため、大騒ぎとなった。

しかも、マホロバの手前には長門、陸奥、ミズーリが並んで碇を下ろして停船していたため、余計にマホロバの巨体が際立って見える。

巨大な筈のミズーリが駆逐艦や軽巡並みに見えそうになる錯覚を起こすほどの差があった。天高く聳える艦橋。大和よりも広大な甲板に2倍以上もある巨大な船体。56㎝という凄まじい存在感を持つ巨砲を9基。針鼠を思わせるほどびっしりと置かれた対空火器群。

その全てが空前絶後の代物なのだ。此れを見た者たちが騒ぐのも無理は無いだろう。

 

鎮守府の司令官室に置かれている革張りの椅子に座って執務机に向き合う東山と、ソファに腰掛けて紅茶を飲むマホロバ。この紅茶は金剛がブレンドした東山のお気に入りである。

 

東山「こほっこほっ………ふぅ…。やはりマホロバの存在が厄介事になったな…」

マホロバ「………そうだな、まぁ、伝えるべき事は伝えて私たちは拠点に戻るとするよ。暫くは此方からは人類側に干渉はせんよ」

 

変哲もない咳のように思えたが、軽い咳と共に少量の血を吐いたのだ。何らかの病を得ているのは明らかだった。

そして、マホロバら自身のもつスキャンで、東山の病が深刻な末期状態であることを知り、暗い顔になる。ここまで進行してしまっては、霧が持つ超科学でも完治することは出来ない。ただ、ある一つの手段を除いて。

 

東山「むぅ……、このことは内密に頼む。今、儂が病を得ていると知られたら、各鎮守府の士気に関わる」

マホロバ「……承知。何時からだ?」

東山「2年前からだ。最初は軽い咳だったから自覚がなかったが、半年前に血を伴う咳が出たことで初めて何らかの病を得ていると判明した」

マホロバ「やはり、…結核か?」

 

東山の病は結核。それも末期だった。さらに、東山は89歳という高齢であり、本来なら既に現役から退いて療養しなければならない身だ。だが、無理を押して現役であり続けたが、今回の出撃で容態が悪化してしまった。そして、この戦時であり、大陸から資材を輸入しているとはいえ、数に限りある。さらに軍関連を優先して回されているため、医療薬などを開発するのが遅れていたため、現在のように最先端のものではなかった。つまり、結核に通ずる薬が無く、結核は不治の病として、癌や心筋梗塞、脳卒中などの病と並んで死因の一つとして挙げられていた。

 

東山「そうだな。それに加えてこの歳だ。進行も想像以上に早く、あと数週間も持たないだろう」

マホロバ「そうか……。なあ、この手段は使いたくないが、お前を半分メンタルモデル化する事で半永久的に生きながらえる事ができるが、如何する?」

 

そう、ある手段とは東山の半メンタルモデル化である。これはムサシが千早翔像に施したものと同じ事である。

心臓と脳が無事であれば、ナノマテリアルを使って、新たな身体を構造し、そこに移植し、更に簡易的なコアを心臓に埋め込むことでナノマテリアルを自在に使えるようになるという事だ。そして、メンタルモデルになれば、脳や、心臓、コアが破壊されない限り半永久的に生き続ける。

この説明を受けた東山は唖然とするしかなかった。この説明通りだとするなら、自身はまさしく不老不死に限りなく近い存在と言える。完全な不老不死で無いのは、脳、心臓、コアを破壊されてしまえば、死ぬからであり、完全な不老不死とは言えないからだ。

だが、東山の答えは―――

 

東山「……霧の技術には毎度驚かされる。魅力的な申し出だが、儂はこれ以上生きようとは思わんよ。何時までも老兵が幅をきかせて如何する。それに……病を得ていなくとも、今回の作戦が終わり次第引退するつもりだったからな…」

マホロバ「そうか。その答えが聞けて良かったよ」

 

―――拒否だった。

その反応に安堵のため息を吐くマホロバ。その様子を訝しげに見つめる東山。

東山としては、強くメンタルモデル化する事を勧めて来るだろうと予想していたが、その正反対の答えが来たため、理由を問う。

 

マホロバ「私の自論だからこれが正論だと押し付けるつもりは無いが―――」

 

ーーー人に限らず、あらゆる万物は、形ある物はいつかその形を失い、崩壊し、命の灯火が消える。それは、絶対の掟であり、覆すのは許されない事だ。艦娘は軍艦の魂が具現化したものであって、人のようにこの世界に生を授かって生まれた存在ではなく、造られた人の形をとった兵器。だから、人間とは年の取り方が違う。

それに、私はメンタルモデルと艦娘のハーフのようなものだから、コアが破壊されない限り永久的に生き続けるだろう。

半永久的に生き続けるというのは確かに限りある生を授かった人にとって魅力的な話だろうな。だが、そうなると、その時から取り残される事になる。親しい者の死を、孫が大人になって、衰えて死ぬのを何十年変わらぬ姿で見送るというのはとても辛い事だ。それに、何十年変わらぬ姿でいたら、周りの人々は如何思うか、簡単に想像出来るだろう?そうなった者の末路は―――孤独。

無限に続くだろう長い時間を一人で過ごすのは人にとっては拷問に等しいものだ。

そして、孤独は如何しようもなく…寂しくて、…悲しくて、…虚しくて、…辛い。

ぽっかりと空いた胸の穴は絶対に埋まらない。一時的に自身を受け入れてくれる存在が現れたとしても、また自分を置いて逝く。そして、また孤独になる。そのループが延々と続く。

 

実際、私は70年を一人で生き続けた。沈む事も出来ず、人と艦娘とは絶対的に違う霧の艦隊のメンタルモデルは友人であるが、時の概念には疎い存在だった。そのため、話は出来るものの、理解する、とまではいかなかった。あの時の寂しさは如何しようもなく辛かったものだ。

 

 

東山は壮絶なマホロバの生き様の片鱗を見たような気がして愕然とした。

ふとマホロバの顔をみれば、俯いており、目元は長い髪に隠されて見えなかったが、泣いていた。閉じられた瞳から目尻を通じて一筋の泪が零れ落ちて身体の前で組まれた手に落ちて弾ける。

 

そんなマホロバは初めてだった。軍艦時代の魂は見る事は出来なかったが、なんとなく誇り高く並大抵の事では動じないと言うことは、終戦時、夜霧に紛れて出航したマホロバの艦橋に現れた女性の雰囲気から掴めた。

だが、目の前にいるマホロバは弱々しく、今にも壊れそうなガラス細工のような感じがする。どう声をかけたら良いのか分からなかった。東山も89年生きているが、常に側には七月や一条といった部下、艦娘たち、家族がいたため、孤独というものに理解が薄かったからだ。

 

マホロバ「―――………済まない。柄になく昔を思い出してな。今考えてみれば、病人のお前の前で泣く事じゃなかったな」

 

少し泣いて、落ち着いたのか目元を拭って顔を見せた。その表情は何時もとは変わらぬが、何処か寂しさが紛れたかのような雰囲気が感じられた。

 

東山「やれやれ、流石に目の前で泣かれては焦るものだ。だが、お前の考えはよく分かった。だがな、この世界じゃ、メンタルモデル程とは言わぬが、艦娘たちも長く生きれるんだ。少なからずとも孤独は紛れるだろう?」

マホロバ「そう、だな……。幸い、今はリーガル、時雨、矢矧、響がいるから、それ程でもないがな」

東山「それは何より。ああ、そうだ。明後日、京都の大本営で超兵器についての説明をして欲しい。現状でアレについて詳しく知っているのはお前くらいだろう?」

 

アレとはもちろん超兵器についてである。

実際、東山に“ヴィルベルヴィント”、“ドレッドノート”のスペックを教えたのはマホロバだった。だから、他の超兵器のスペックを知っていると確信した上での疑問だった。

 

マホロバ「承知した。だが、話す超兵器のスペックがそのままだと思うなと忠告しておく」

東山「それは“ヴィルベルヴィント”、“ドレッドノート”の件で身に沁みている。だが、他の者たちになるとそうでもないのかも知れんな……」

マホロバ「超兵器の恐ろしさは体験してみないと分からんだろうな」

東山「いきなり超兵器と言われても、実感が持てない者たちが多いだろう。出来れば、超兵器の映像とかあれば良いのだが……」

マホロバ「なんだ、そんな事か。あるぞ」

 

あんのかいっ!と突っ込みたかったがぐっと堪える。期待しないで言った言葉だったが、まさかあるとは思いもしなかった。

 

マホロバ「リーガルが監視していた映像があるから、それを使えば問題ないだろう」

東山「ちょっと待て、リーガルとは何だ?」

マホロバ「ん?ああ、話してなかったか?私たちの拠点である移動要塞軍港の名前だ」

 

絶句するしかなかった。まさか、前に冗談で霧の拠点があるかもと言ったがあくまで、冗談のつもりだった。だから、実際にあるとは思いもしなかった。しかも、聞き捨てならない単語があった。

 

東山「……移動要塞軍港だと?」

マホロバ「そうだ。詳細は言えんが、とにかく島並みに巨大な軍港だと思えばいい」

東山「………そうか…」

 

溜息を吐いて、現実逃避したくなった。何処に移動できる要塞型の軍港があるだろうか。鋼鉄の世界にはスギズブラズニルというドック艦が存在しているが、リーガルはそれとは桁外れに巨大なのだ。

 

マホロバ「今はシンガポールを離れて、パラオに移動している。要望でもあれば、日本近海に移してもいいぞ」

東山「いや、それは儂の一存で決められるような事じゃない。しばらくはそのままでいてくれ」

 

国際問題に発展しそうになる程大きな問題だった。もし、リーガルが日本近海に拠点を移したら、完全に日本に所属していると宣言しているようなものだ。無論、世界はそれを良しとはしないだろう。

 

マホロバとリーガル。

この二つの存在は世界の一つや二つは意図も容易く滅せる圧倒的、絶大な戦力を持っている。

そんな戦力を放置するのは得策ではないばかりか、自国の物としようと暗躍するものたちが続出するだろう。

だからこそ、マホロバたちには、中立でいて貰わねばならなかった。無用な争いを生み出さないためにも。

 

 

 

それから二日後、マホロバと東山は帝都京都の大本営の会議室に当てがわれた席に着いていた。

やはりと言うべきか、東山の後ろに控えていたマホロバは注目を浴びていた。

第二次大戦中、世界最大最強の戦艦。大艦巨砲主義の頂点に君臨していた超大戦艦であるマホロバ。第二次世界大戦以降航空主義に切り替わったものの、この戦艦に限って、航空主義は通用しなかった。何度も何度も爆弾や魚雷を当てても沈まず、逆に300機以上の艦載機の編隊が殲滅させられる。それ程の存在だ。

 

マホロバはシンガポールにいる筈。それが何故此処に居るのかと各地の司令官は混乱していた。

 

東山「緊急招集がかかった理由は分かっているな?」

七月「今回の作戦の失敗、そして……超兵器と呼ばれる存在の出現についてですね」

東山「そうだ。呉鎮守府第1艦隊とアメリカ派遣艦隊の連合艦隊はグアムの北200kmほどの地点で超兵器2隻の襲撃を受けた」

一条「そんな…⁉︎大事なかったでしょうか?」

東山「ああ。ミズーリの妨害が間に合ったのと、マホロバが救援に駆けつけてくれたから壊滅とはいかなかった。しかし、武蔵と日向、伊勢が初撃で大破。武蔵に至っては沈没寸前まで追い込まれた。その他にも大和が中破相当、金剛、比叡、愛宕、高雄たちほぼ全員が小破。無事だったのは空母たちのみといった状態だ」

 

席に着いた司令官達から驚愕の声が上がる。“あの”武蔵が初撃で沈没寸前まで追い込まれたというのだから。これだけでも、超兵器の異常さが理解できたからこその声だった。

 

東山「その他にも世界各地に超兵器が出現して、こちら側の艦隊が壊滅したのは知っていると思う。それで、マホロバ。超兵器のスペックを展示してくれ」

マホロバ「承知した。…初めてになるか?まほろば型戦艦1番艦まほろばを改造した霧の艦隊総旗艦マホロバだ。これから超兵器について、私が知り得るだけの情報を教える。だが、心して置いてくれ。超兵器のスペックが実際と違う可能性もあるという事を」

 

頷いて、表情を引き締める司令官たちを見て、スクリーンに超兵器の映像を映す。

まず映し出されたのは初めて観測された超兵器“超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント”、“超高速巡洋戦艦シュトゥルムヴィント”、“超高速戦艦インテゲルタイランド”の三隻。それぞれが深海棲艦の艦隊を蹂躙している場面だった。

圧倒的な速度で十数倍以上の差がある深海棲艦を翻弄し、次々と沈めていく。

 

仙石「むう……。凄まじいな…」

 

仙石郷司大将(58)。大湊鎮守府の司令官であり、東山の初めての弟子。豪胆な性格であり、戦い方も、戦艦でぶつかり合う事を好む。そして、まほろばの副艦長が彼の祖父であり、東山によくまほろばの話を聞きに行く。

 

京桜「こんなものが存在するなんて……」

 

京桜満奈美少将(25)。舞鶴鎮守府司令官。日本に二人しかいない司令官の片割れ。そのおっとりした見た目に反して、綿密な作戦を組んでから行動する慎重な性格。ただ、判断力がずば抜けて早く、臨時応変に対応出来る。

 

白雪「180ノット、ですか……。確かに手を出しようが無いですね…」

 

白雪悠風中将(26)。室蘭鎮守府司令官。中性的な見た目の裏腹は合理的主義であり、確実に戦果を出せ、艦娘の練度を上げるために効率的な出撃をする。勿論、艦娘を労わりつつだ。彼の最近の悩み事は休みの日、艦娘が女装させようと迫って来ることだそうだ。

 

マホロバ「この3隻の超兵器は私が知る超兵器の中でも底辺に位置する」

 

沈黙に包まれる司令官。深海棲艦の大群を蹂躙する圧倒的な性能を発揮する3隻でさえ、底辺だというのだから。

 

次に映し出されたのは2隻の潜水艦。但し、船体規模が大和を優に超える巨体である。映像の脇にその潜水艦の性能表が表れ、司令官達がその性能に瞠目する。

 

マホロバ「この2隻の潜水艦は“超巨大潜水戦艦ドレッドノート”、その2番艦“ノーチラス”。今回の戦闘で武蔵と日向、伊勢を大破に追い込んだのは“ドレッドノート”だ。基本的な戦術ロジックは魚雷、ミサイル攻撃を行ったのちに浮上して自身の主砲で止めを刺す、といった戦い方のようだ。2番艦は主砲がβレーザーに換装されて、その他にもミサイル、魚雷の発射管の数が増えて、純粋に火力は“ドレッドノート”以上だ」

 

この2隻のうち、“ドレッドノート”は武蔵、日向、伊勢の3隻を大破させ、ミズーリを加えた33隻とアメリカ艦隊18隻の艦隊に単体で強襲をかけたものであり、その戦闘能力は相当高い。

 

“ドレッドノート”が艦隊に強襲をかけた場面を流すと、呻く司令官たち。圧倒的な攻撃能力と大和を超える290mの巨体。そして、潜水艦にあるまじき水上戦闘能力、46㎝2連装砲を2基、そして、対56㎝装甲という分厚い鋼鉄の壁。

自身の持つ艦隊をぶつけても勝ち目が無いと言うことを悟ったのだ。

 

だが、此れでも超兵器の中でも低い性能だ。

 

―――次々と表れる超兵器の映像と性能表に司令官の表情は悪くなり、青かった顔が白くなり、終いには土気色にまでなってしまうほどの代物だった。それは東山も例外ではなかった。

 

 

“超巨大強襲揚陸艦 デュアルクレイター”。

“超巨大双胴戦艦 ハリマ”、“スルガ”。

“超巨大要塞戦艦 超播磨”。

“超巨大ドリル戦艦 アマテラス”。

“超巨大要塞艦 ストレインジデルタ”。

“超巨大航空戦艦 ムスペルヘイム”。

“超巨大氷山戦闘空母 ハボクック”。

“超巨大戦艦 リヴァイアサン”。

“超巨大戦艦 ヴォルケンクラッツァー”。

“超巨大戦艦 ルフトシュピーゲルング”。

“究極超兵器 フィンブルヴィンテル”。

 

マホロバが知る中でも群を抜いて強力な超兵器だけでも此れだけいる。さらに、マホロバが知らない超兵器も存在する可能性も否めないのだ。

 

此処にいる司令官全員が感づいたこと。それは、冗談抜きで人類…いや、地球の滅亡が現実味を帯びてきている。

 

マホロバ「いま表示した11隻は超兵器のなかでも特筆すべき性能を誇る。特に“究極超兵器フィンブルヴィンテル”は一度人類を滅ぼして氷河期を創ったと言われる超兵器だ」

京桜「ふむん?一度人類を滅ぼしたって、どう言う意味なの?」

マホロバ「そうだな…、その事を話す前に超兵器とは一体何物なのかを先に話すべきだろう」

 

超兵器は超常兵器群の略称であり、その性能は一般のそれを遥かに凌駕する性能、特徴を持っている。

そして、超兵器は“古代人の遺産”である超兵器機関をエネルギー源にして活動する。

超兵器機関は例え、バラバラに破壊されたとしても、部品一つだけになっても生きており、その部品を他の機関に組み合わせるとそれだけでも出力が跳ね上がり、構造すら超兵器機関になる。原因は不明であるが、超兵器機関特有のノイズが発生している事から断定されている。

さらに超兵器機関は無限機関。つまり、燃料の補給を必要としない。そのため、一度艦船に搭載すれば直ぐに活動できるという長所がある。だが、その反面、膨大なエネルギーを大量に消費できない小型の艦船、駆逐艦や巡洋艦には搭載できない。もしも、搭載しようものならば、膨大なエネルギーに耐えられなくて自壊する。

しかし、その恩恵は計り知れないもので、500m級の巨大戦艦単体で5個艦隊を殲滅出来る程の圧倒的な性能を有する様になる。

 

兵零「…ふん、下らん。超兵器程度、俺の艦隊で――」

マホロバ「下らないのはお前だ。現実から目を背けようなど司令官の役目を持っている奴のやる事では無い。現実逃避?結構だ。それで自身の艦隊を失いたいのならば、出撃するがいい」

 

冷たく、氷を思わせる声で兵零の言葉を斬り伏せる。悔しげに拳を握りしめ押し黙るしか兵零には残されていなかった。

 

七月「古代人とは、何を示すのです?」

マホロバ「ああ、超兵器の始まりとなった“究極超兵器フィンブルヴィンテル”を創ったのは古代人だ。都市伝説などでムー大陸やアトランティスなど、言い伝えを聞いた事は無いか?」

東山「まさか……、実在したのか……!?」

マホロバ「そのまさかだ。詳しい年代は不明であるが、確かなのは古代人はその究極超兵器の暴走で大陸ごと消滅したという事だ」

 

遥か太古、ムー大陸に存在した古代超都市アトランティス。それは異世界のハワイを中心に太平洋に存在する巨大な島国であり、古代ながら、かなり発達した技術を持っており、現代の技術を遥かに凌駕していた。そして、現在では超兵器機関と呼ばれるものを造り、無限に生み出されるエネルギーで、その大陸は長い間繁栄したそうだ。

だが、その超兵器機関に自我が宿り、破壊と死を齎す兵器として“フィンブルヴィンテル”に繁栄に終止符が打たれた。大陸は海に沈み、世界に永い氷河期をもたらした。生き残った者たちは世界各地に散り、メソポタミア文明、エジプト文明、アンデス文明、黄河文明などの古代文明の礎となる技術を遺していった。

そんな経歴があるからこそ、“フィンブルヴィンテル”は『大いなる冬』という別称があるのだ。

 

そして、その“フィンブルヴィンテル”は時空間を渡って北極海で永い眠りに就いていたが、つい最近目覚めた。とは言っても、完全に覚醒したという訳ではなく、超兵器機関の自我が目覚めただけであり、“フィンブルヴィンテル”という兵器として目覚めた訳では無い。

 

マホロバ「だが、“フィンブルヴィンテル”が完全に目覚めたら間違いなく世界は終わる」

 

痛いほどの沈黙。

話のスケールが大きすぎてついていけないのだ。

先ほどまで深海棲艦と人類の滅亡を掛けて戦っていたのが超兵器という圧倒的な存在とも戦わなければならないのだ。それも、深海棲艦のように一進一退の攻防ではなく、一度合間みれば蹂躙されるしかない。

 

 

絶望しかなかった。

 

 

だが、そんな中ある報せが入った。

 

マホロバ「ん?失礼、リーガルからだ。―――そうか、分かった。ありがとう」

東山「何と?」

マホロバ「世界各地の超兵器の動きが沈静化しているようで、散漫的な深海棲艦と交戦があるが、先ほどまでの派手な動きが途絶え、大人しくなったらしい」

白雪「………なんだか、不気味ですね……」

 

白雪が言った様に不気味な感じさえするほど超兵器の動きが静かになったのだ。襲撃してくる深海棲艦と戦闘するだけになり、その場からほとんど動かなくなったのだ。これが、人類の大反攻作戦で動員した大艦隊を壊滅に追い込んだ超兵器なのかと疑いたくなるほど荒々しさが鳴りを潜めていた。

 

―――まるで、巨大な嵐の到来を告げるかのように、沈黙を保っていた。

 

―――究極超兵器の目覚めは近い―――

 

 

 

 

何時ものように朝、司令官室で演習や、超兵器についての確認をしていた時だった。更に、マホロバから超兵器についての説明がある為、呉鎮守の艦娘が全員集まっていた。既に一昨日各地の司令官には緊急招集が行われ、マホロバが超兵器について話していたため、それぞれの艦娘には伝達されていることだろう。信じるか否かはわからない。だが、超兵器を舐めてかかっては死ぬということは司令官も分かったことだ。

 

長門「―――演習や開発については以上だ」

大和「問題は……」

サウスダコタ「超兵器、ね……」

マホロバ「現状のまま、超兵器に対抗するなは自殺行為だ。特に防御面で対策を練らねばならん」

ミズーリ「どうして防御面を優先するのですか?」

マホロバ「攻撃を強化しても、上位にあたる超兵器には効果が薄い。電磁防壁と重力防壁によって、無効化されるからだ。その防壁を突破出来る高い攻撃力を有することが出来るなら話は別だが」

リーガル『失礼します、皆様方。マホロバの拠点のリーガルと申します。お見知りを』

『『『!?』』』

 

突然、マホロバの隣に空中ディスプレイが表れ、リーガルが映し出された。

 

マホロバ「どうした?」

リーガル『実はですね…、此方の開発の件で、電磁防壁Ⅱと重力防壁Ⅰが出てきたので、そちらに提供出来ないかと思いまして』

マホロバ「……なんてタイミング……」

 

タイミングが良すぎだ。まるで、こうなることを見通したかのように。

因みに、この開発を行なったのは時雨であり、orzになったのは言うまでもない。まさか、常識人だと思っていたのがいつの間にか非常識に両足を突っ込んでいたことに気づいてしまったからだ。

 

マホロバ「あー…。さて、電磁防壁Ⅱだが、一般的に光化学兵器の威力を弱める効果がある。Ⅱならば、“ヴィルベルヴィント”が持っていた超怪力線照射装置を20%軽減するだけではなく、ある程度なら逸らしてくれる。重力防壁Ⅰは10%だが、無いのとは大違いだな」

蒼龍「それって、どの位効果があるの?」

リーガル『ええと、大雑把ですが、元々の威力を41㎝としましょう。電磁防壁Ⅱを用いた場合、28〜34㎝辺りまで落ちますね』

 

相当な変化である。戦艦に例えるなら、長門と三笠になるまで開きがある。

 

東山「ほう…、是非とも欲しいものだ。―――タダではないのだろう?何が望みかな?」

リーガル『大した事ではありません。お姉様……マホロバと私の“中立的立場の保証”が欲しいのです』

東山「………大した事であろう……」

 

思わず頭を抱える東山。リーガルが出した要求は相当な労力を要するものだった。

何故ならば、マホロバは然り。リーガルも霧の拠点ならば、相当な戦闘能力を持つだろう。そうでなければ、“移動要塞軍港”などと呼ばれはしないだろう。

そして、マホロバの持つ戦闘力は比類し得るものがないほど隔絶した戦闘能力を持つ。それは、世界最強の艦隊と謳われた呉鎮守府第1艦隊が何もできず武蔵と日向、伊勢を大破された2隻の超兵器をいとも容易く撃沈したことから明らかである。

そんな一大戦力を世界が放置しておく訳がない。瞬く間にマホロバを自勢力の元に置きたがる国が暗躍を始めるだろう。

そんな国を宥めすかし、独立した勢力として認めさせるという事をリーガルは求めたのだ。

 

簡単に言えば、核兵器すら凌駕する兵器を所持する個人を一つの国、勢力として認めてくださいと言っているのである。

 

こんな要求、通るとは思わなかった。だが、やるしか無いだろう。新たな世界大戦を防ぐためには。

 

東山「………分かった、いつ、実現するかは分からんが、やれるだけやってみよう」

加賀「……正気かしら?司令官。リーガルと言ったかしら。その要求、無茶苦茶なのは分かっている筈よ?」

リーガル『ええ。分かってますよ。ですが、最善の形なのはこれしか無いのですよ。無用な争いを、“次の大戦”を引き起こさないためにも』

長門「………それを言われると弱いな……。私たちもあの大戦を生きて、沈んでいったのだから、余計にな…」

 

沈痛な表情をする長門。彼女はマホロバが去った後、生き残っていた日向、伊勢らと共に水爆実験に使われた壮絶な過去を抱えている。

再びあの悲惨な戦争を引き起こしたく無いという気持ちはここに居る皆が同じだった。

 

東山「うむ、話は纏まったな?それでは、リーガルだったな、よろしく頼む」

リーガル『はい、……マホロバのコアとリンク。座標設定、固定……転送』

マホロバ「おっと、来たか」

 

マホロバの胸の前にどこからともなく金色の光輝く粒子が表れ、次の瞬間、丸められた設計図がひと束マホロバの手に抱えられる。此れこそが電磁防壁Ⅱと重力防壁Ⅰの設計図であり、人類の一縷の光筋。

 

マホロバ「これは、此処の開発妖精さんに託すとしよう。此れを生かすも殺すもお前たち次第だという事は分かっているな?」

明石「はい、もちろん、重々承知していますよ」

 

真剣な顔で頷き、開発妖精さんと共に司令官室を出ていく。彼女たちは工廠に向かい、すぐさま転送された設計図の試作品を作るつもりなのだろう。そして、この設計図は彼女たちに限らず、此処にいる……否、世界中の艦娘にとって未知の技術であり、技術を解析し、完璧に運用できるようにならないと兵器としての役目を十全に果たせない。だからこそ、明石と開発妖精さんが動いたのだ。さらに言うならば、工廠には既に夕張ら開発に造詣が深い艦娘が集まっていることだろう。

 

東山「何から何まで恩に着る」

マホロバ「気にするな。私とて元々艦娘だ。仲間を何とかして助けたいと思う気持ちは大切にしたいものだからな」

 

そう微笑んで東山の感謝を受け入れるマホロバ。その微笑みを差し向けられなかったにも関わらず、思わず顔を赤くする艦娘が続出したそうな。

 

東山(何はともあれ、深海棲艦も、超兵器も現在は動きも沈静化している。今のうちに出来る限りの装備を整え、来るべき戦乱に備えなくてはならんな。儂の体が持つ限り出来ることはしておこう)

 

だが、しばらくは平穏な時を過ごせそうだ、と一息を吐く東山。だが、東山の体は確実に病魔に侵されつつあり、余命も幾許も無かった。

 

―――それに現在気付いているのはマホロバ、リーガルのみ。

 




補足としてですが、”超巨大要塞戦艦超播磨”は架空戦記『不沈要塞播磨』から出しておりますが、鋼鉄の要素も絡んでいますのでもはや誰コイツなレベルなので、参考にならないと思いますが、基本的なイメージは維持しています(笑)

あ、因みにマホロバが言った言葉は私の考えでもありますが、書いてあるようにこれが正しいことだと押し付けるつもりはありませんという事だけ付け加えておきますね
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