霧に消えゆく超大戦艦   作:霧のまほろば

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お久しぶりです!
年末でドタバタしていましたが、何とか今年度最後の投稿が出来ました。


今更なのですが、東山の容姿について詳しく書いていなかったと気付きましたので前書きですが、書いておきます。
魔法科高校の劣等生に登場する”九島烈”の目を通常に戻したものをイメージしていただければ幸いです。
その他の司令官については後々登場した時に載せていこうと思います。


第11話 霧の総旗艦と巨星墜ちる

 

武蔵「そういえば、マホロバの主砲の威力はどのくらいなんだ?いや、56㎝砲に興味があってな」

 

司令官室で談話していたら、不意に武蔵がこんな事を言い出した。何事かと思えば、単純に戦艦としての興味だという。確かにこの話題は他の誰もが気になっていたようで、武蔵が切り出した途端、話し声がやみ、こちらを見つめてくる視線を感じる。

数瞬思案していたが、飲んでいた紅茶をテーブルに置いて顔を上げる。

 

マホロバ「ふむ……。言葉では通じないだろうから、実際に見せた方がいいだろう。そんな訳で、東山、演習の許可をくれないか?」

東山「構わない。……ああ、そうだ。その演習にここに居る全ての艦娘や、妖精さんや、手空きの兵士に見学させてもいいか?」

マホロバ「ああ。構わないが砲撃中に半径400m以内に入るなよ。衝撃で窓ガラスが砕け散る」

 

意外な程とんとん話で事が進んでいく。

実は、東山もマホロバの性能に付いてある程度で構わないから調べてきてくれと大本営の司令官たちや、工廠の妖精さんたちから要請されていたが、どう話を切り出そうかと悩んでいたので、渡りに舟とこの話に乗ったのだ。

 

 

それから数刻。マホロバと東山と艦娘らに、妖精さん、手空きの兵士が戦艦用の桟橋に集まっている。なにせ、呉鎮守府の艦娘全員に妖精さん、兵士もいるのだ。その数は膨大なもので、2000人近くを数える程の大人数だった。

因みに、大淀や、香取、鹿島などの訓練艦や演習に参加しない駆逐艦の娘は標的艦を牽引するために自身の艦に乗ってスタンバイしていた。

そして、軽巡以下の艦艇はそれぞれが集まった人達を手分けして乗せている。今回の軽巡や駆逐艦は閲覧船の役目を担わせているため、演習には参加しない。

重巡、戦艦、空母は希望者のみがマホロバに乗り、それ以外は自身の艦で演習に参加する事になった。

 

マホロバに乗る艦娘は武蔵、長門、陸奥、霧島、加賀、翔鶴、信濃、愛宕、高雄、ミズーリ、サウスダコタ。

それに加えて、東山が乗船する事になった。

その他の艦娘は外から見てみたいという理由で乗らなかった。

 

 

呉鎮守府の湾に碇を下ろして停船していたマホロバが碇をジャラジャラと音を立てて巻き上げながら緩やかに桟橋へ向かって動く。

一つの島と見間違えそうになる程巨大な船体が動き出す様はまさに圧巻の一言に尽きる。尚更、赤いラインが入った漆黒の船体は、禍々しくありながらも神々しい威圧感を放ち、見る全ての人に畏怖させる。

 

船体を横にして、ブースターを使って微調整しながら、ゆっくりと桟橋に近寄るマホロバ。

 

天高く聳える艦橋や煙突などの艦上構造物。

圧倒的な存在感を放つ主砲塔。

未来の技術で作られた副砲塔。

針鼠のように据えられた高角砲群に機関銃群。

現代のものとも隔絶した性能をもつミサイルVLS群。

 

世界最強だった“まほろば”とは比較にならない程の超火力を持つ超大戦艦の姿。

 

長門「………今更ながら、凄まじいな……」

陸奥「え、ええ…。近くで見るととんでもないわね……」

加賀「圧巻の一言に尽きるわね……。末恐ろしく感じるわ……」

 

実際にまほろばを間近で見たことのない、つまり、先の超兵器戦の時は留守番役だった艦娘たちの率直な感想だった。

だが、彼女らは此れからさらなる衝撃を受ける事になる。

 

音も無く桟橋に接舷して、完全に動きを止める。そして、次の瞬間、まほろばの左舷側の第2主砲塔と第3主砲塔の間に、クラインフィールドで構成された階段が現れる。

 

マホロバ「さて、乗り込むぞ」

東山「うむうむ、さあ、行こうか!」

 

やけにテンションが高い東山。これが89歳と誰が信じようか。

だが、無理もないだろう。姿が変わったとはいえ、70年ぶりにマホロバに乗るのだ。気分が高揚するのも理解出来るだろう。

武蔵たちもそんな東山に苦笑しつつも、自分たちも楽しみにしている節があった。

 

クラインフィールドで構成された簡易的な階段を昇って甲板に上がると真っ先に視界に飛び込んでくるのは第2、第3主砲塔の巨大さ。46㎝砲よりも一回りも二回りま巨大な砲塔。そして、そこから伸びる56㎝の大口径の砲身。

 

顔を左に動かして艦首を見渡せば、第1主砲塔と大和のように反り返った艦首と多数の機関銃座。

右に動かせば、第4、第5主砲塔と連なり、その後ろと両脇に砲身が二つに分かれたような形状の砲身をもつ36㎝2連装超電磁砲が5基。さらにその後ろには城塞の様な凄まじい存在感を放つ巨大な艦橋構造物。甲板から見ても、70mはあろうかという城楼をイメージしたようなそれにも多数の対空砲火器が据えられている。

その後ろには大和のものと形状が似ている煙突が聳え、その麓には、40㎝2連装ターボレーザー砲が左舷だけで2基。さらに、127mm4連装高角砲が17基。50mm6連装砲身のガトリング砲。

その向こうには第6、第7主砲塔が覗き、段差の下には第8、第9主砲塔があることだろう。無論、第6主砲塔の後ろと両脇には超電磁砲がある。そして、それらの兵装の隙間を埋めるかのようにVLSが見渡す限り嵌め込まれて、対空火器も針鼠もかくやとばかりに配置されていた。

 

まさに、この戦艦のみで世界を容易に焦土に化す事が出来る程の圧倒的なまでの重武装だった。

 

―――加えて言うならば、この戦艦はあの霧の艦艇、しかも霧の艦隊最強の総旗艦である。世界などという話では無い。その気になれば、1つの惑星どころでは無く、“星系”を滅ぼせる程の火力を有するのだ。

 

思わず身震いしてしまう何かがあった。それは東山だけでは無く、武蔵たち歴戦の艦娘も腕を抱えて身を震わせていた。

 

異様な程にまで存在感を放つ、形状美の取れた芸術的な船体に圧倒的な火力を秘める兵器群。

物言わぬそれらに東山たちは気圧されていたのだ。

 

マホロバ「さて、全員乗ったな?それでは、艦橋に行くぞ。逸れたら、間違いなく迷子になるからな」

 

マホロバの言う様に、マホロバの艦内は入り組んだ迷宮のように複雑な通路を持っていた。大和型戦艦が有する様な迷宮が子供向けの迷宮に見えるかの様に複雑さを極めていた。これを熟知するのは、マホロバとリーガルのみといった有様であり、妖精さんでも、一回迷えば相当苦労するという。

 

これに、引き攣った顔をして、先を歩くマホロバについて行く東山たち。

第4主砲塔の麓にある艦内へ入るとなるほど、これは迷宮だというような風景が広がっていた。

入り口は主砲バーベット部にあるため、装甲が1100㎜もある分厚い鋼鉄に設けられた小さめの扉を潜ると、目の前にまっすぐに伸びた通路と左右に緩やかにカーブした通路。そして、上下に移動するための階段が2つ、降下棒が2つ、通路に沿って作られた部屋。その部屋を囲むかのように枝分かれした複雑な通路。

 

マホロバ「私の艦内は大和型の反省点を活かして艦首から艦尾まで一直線に行ける通路を複数設けられているため、単純に見えるが、上下に通路が張り巡られているから迷いやすいんだ」

武蔵「なるほど……艦橋に行くためにはどうすれば良い?」

マホロバ「このエレベーターで直通だ。階段もあるが、60m分を一気に登らねばならん」

 

ある程度歩いて、通路の突き当たりまで行くと、“EV”の表示が付いた扉があった。マホロバがその扉の前に立つと、圧縮空気が抜けるような音を立てて、スムーズに開く。

 

翔鶴「あら?外面と中身が違うのですね?」

 

翔鶴の疑問の声が示したように、エレベーターの扉は鋲打ちされた鋼鉄の扉だったが、エレベーターの内部は打って変わって未来を連想させられる内装だった。

 

マホロバ「霧の艦艇だからな」

ミズーリ「ああ、なるほど!」

 

マホロバの返事の意味が分かったのはミズーリだけで、他の艦娘には伝わらなかったようだ。

 

霧の艦艇は第二次世界大戦時の艦艇を模倣した艦艇群のこと。だが、光化学兵器や、ミサイルなど、現代すら超越した技術を持っているということだ。つまり、外見に限らず、内部は全く違うということだ。

此れはエレベーターに限らず、船室や、艦橋などの密閉空間はほとんどが未来のものである。

 

東山「こ、これは……」

信濃「驚愕せざるを得ないですね……」

 

呆然と呟く東山と信濃。

彼らの目の前には現代を通り越して遥かな未来にあると容易に想像出来る程、ハイテクな設備が据えられていた。

 

至る所に浮かぶ空間ディスプレイには膨大な数字が瞬時に浮かんでは消えるを繰り返し、文字の羅列が目にも止まらぬ速さで並べられる。

イージス艦のCICにあるような巨大なコンピュータのようなものが次々と新たな情報を吐き出す。

そして、艦橋の窓ガラスには窓ガラス越しで見られる様子に捕捉情報が正確にリアルタイムで映し出され、実際に窓ガラス越しで見られる風景と照らし合わせながら見ることができる。

 

今も、マホロバを中心にする演習に参加する艦隊の情報が事細やかに現れており、更に、視界に映る艦の名前のみならず、性能すらリアルタイムで出ていた。

 

マホロバ「この窓ガラスに浮かぶ情報は兵装、装甲、速度、位置に至るありとあらゆる情報だ。もちろん、敵の状態も瞬時に判断出来る」

赤城「そ、それって、何処まで見れるの?」

マホロバ「解析度を上げれば、此処からアメリカの人々の一人一人を分別できる」

 

絶句するしかなかった。

余りにも隔絶したレーダー性能。自身たちと最低でも100年は離れている。

此処からアメリカまでという圧倒的な索敵範囲。人一人を分別、判別出来るまで高精度の索敵能力。

そのどれを取っても現存する電探、レーダー全てを探しても見つかる訳が無い。

ミズーリを含めた艦娘たちは今更ながら霧の艦艇の異常さを実感した。

 

こうしているうちに、いつの間にか瀬戸内海を抜け、堺鎮守府を横通りし、太平洋に出る。今回の演習に使う海域は高知県よりも和歌山寄りの沖合一帯が使われることになった。

 

マホロバ「さて、そろそろ演習海域に入るぞ。心の用意はいいか?」

東山「む、もう到着したのか」

大淀『こちら、大淀です。マホロバさん、司令官、聞こえますか?これから演習を始めますが、先ずは、主砲の性能を見たいので、鹿島が引く標的艦を砲撃してください』

マホロバ「承知した。全兵装システム、オンライン……システムオールグリーン。主砲弾種選定、二式徹甲弾。40ノットへ増速。……第1から第5主砲、指向−81度、仰角4.24度。第6から第9、指向101度、仰角4.18度」

 

本来ならば、声に出す必要は無いのだが、この場にはマホロバの他に東山や、武蔵、ミズーリたち艦娘がいるため、現状を説明するという意味も兼ねて声に出しているのだ。

 

マホロバの体に特徴的な紋様が浮かび上がり、周囲を金色に光る輪が回りだす。その途端、機関の出力が上がり、エンジンが唸りだす。

そして、艦橋の窓ガラスから見える風景は正に圧巻だった。5基という絶大な火力を誇る巨大な主砲が一斉に旋回を始め、砲身を僅かに上に向け、左方向に狙いを定めた。後部でも4基が旋回して狙いを定めたことだろう。9基の巨大な主砲が旋回するのは荘厳であり、雄大なものだった。

合計27門という絶大な火力が今、正に放たれようとしていた。

 

マホロバ「単発ずつ砲撃を開始する。砲撃まで5秒前。身構えておけよ。……3、2、1……放て!」<ゴォオオンッ!!!>

 

雷鳴もかくやと凄まじい衝撃と共に主砲が火を噴いた。46㎝を上回る56㎝から放たれる衝撃は46㎝のものとは比較にならない程強烈なものだった。

視界を強烈な閃光が覆い隠し、9つの紅蓮の火球を生み出される。

ビリビリ…!!と艦橋の床、壁を震わせ、振動の大きさが威力をありありと伝える。

 

武蔵「くぅ……!これほどまでとは……」

加賀「ブラストも大和さんとも比較にならない程大きいわね……」

 

耳元に雷が落ちたかと思うような轟音と衝撃に全員がよろめく。加賀の言うように海面も砲撃の衝撃で大きく、深く抉れており、その大きさが56㎝という空前絶後の主砲の威力を物語っていた。

 

砲撃した各主砲塔の右砲身が装填の為に砲身が下がり、砲塔が僅かに微調整して、中砲身が僅かに動く。

 

マホロバ「誤差0.19度。第2撃、てぇ!!」<ドゴォォオ!!!>

長門「なっ!?着弾の前に2撃を放っただと!?」

サウスダコタ「あ、あり得ないわよ!?」

 

通常ならば、初撃の弾の散らばりの大きさを見てから修正してから第2撃を放つ。だが、マホロバはそれを待たずに2撃目を放った。

 

大淀『えぇ!?ひ、標的艦消滅!?それに、全弾初撃から命中!?あ、2撃目も標的艦があったところには全弾着弾!?』

 

驚愕の声と共に大淀から通信が飛び込んでくる。標的艦は木造の駆逐艦並の大きさの船であるが、砲撃によって、穴が開くのではなく、船体に満遍なく9発の砲弾が直撃、直後に起爆し、その爆風で粉々に弾け飛んだのだ。

 

武蔵「な、なに!?沈没では無いのか!?」

霧島「なっ!?初弾命中!?」

鹿島『木っ端微塵ですよぉ〜っ!!こ、怖いですぅー!!』

 

涙目になって、叫びながら逃げ回る鹿島。確かに木造とはいえ、駆逐艦並の大きさの船が木っ端微塵に吹き飛ぶ主砲が此方側を狙っているというのは恐怖ものだろう。かつて、大和、武蔵の演習で46㎝を向けられたことがあったが、その時の恐怖とは桁違いに大きいものだった。

 

香取『つ、次は此方の、複数の標的艦に向けて、せ、斉射してみてください!』

島風『あ、当てられるかなー!?』

陽炎『の、のの呑気にしてる場合じゃ無いでしょ!』

 

涙目になって、声を震わせながら香取が次の標的艦を引いて鹿島から離れた場所に現れる。同時に島風と陽炎、吹雪、天津風、綾波、磯波、暁、響も標的艦を引いてくる。やはりと言うべきか、涙目の状態だった。

だが、現れた場所がバラバラであり、各主砲を再び指向しなければならなかった。

 

マホロバ「承知。標的艦数9隻。―――各主砲、指向設定完了。斉射!」<ゴ…ドドドォ……!!!>

 

先ほどの砲撃すら比較にならない程の強烈な閃光と衝撃が辺り一帯を襲い、その閃光は遠く離れた大阪の街中からでも見ることが出来た。更に言うならば、斉射の轟音も街中にまで轟いた。

 

陸奥「きゃあああ!?」

東山「むおっ!?」

 

砲撃の振動が激震となって艦橋を襲い、よろめく武蔵たち。東山はマホロバによって艦長席に強制的に座らされていたため、転倒するということはなかった。

だが、陸奥たち、艦娘は激しい振動で立つことも出来ず、床にしゃがんで耐えることしか出来なかった。それは46㎝に慣れているミズーリや武蔵でさえ、同じだった。それ程56㎝という巨砲は未知の領域だったのだ。

ただ、マホロバのみが平然と立って砲撃の制御を執っていた。

 

長門「……よく、これだけの衝撃の中、平然としていられるな……」

マホロバ「ん?ああ、メンタルモデルというものは便利なものでな、演算素子を強化する事で身体を強化する事もできる」

 

メンタルモデルの特徴として、自身の身体能力のみならず、耐久性をあげる事もできる。

マホロバは此れで北から霧に向けて放たれた核ミサイルをクラインフィールドを使う事もなく、大気圏にまで跳躍しナノマテリアルで作った刀で一刀両断にして、無力化したこともある。

 

閑話休題。

 

斉射でも全弾が標的艦に着弾し、木っ端微塵に消し飛ばしたところで主砲の試験も終わり、次に超電磁砲と高角砲などの試験に移ろうとしていた時だった。

 

マホロバ「ん、深海棲艦の一群が四国を目指して進軍中だ。総勢81隻の大艦隊だ」

東山「なに?ふむ、丁度いい。マホロバ、この艦隊を殲滅してくれ。性能試験の一端と思えばいいだろう」

マホロバ「やれやれ、そう言うと思っていたよ。では、現在の私の実力、みせよう」

 

目を薄っすらと開き、誰でも魅了されてしまう綺麗な笑みを浮かべるが、その意味を知る者は背筋が凍る思いをするだろう。

マホロバのこの笑みは一切の情け容赦無く無慈悲に絶大な火力をもって殲滅するという意思の現れであり、そこには艦娘のまほろばでは無く、霧の艦隊総旗艦のマホロバの姿であった。

 

幸か不幸か、マホロバの凄絶な笑みの意味を知る者はこの場にはいなかった。

 

マホロバ「超重力砲で一気に殲滅する。全艦、私の前から退避しろ。巻き込まれるぞ」

 

その言葉にピクリと反応したのがミズーリだ。彼女は前の世界で霧の艦隊と交戦して沈んだ。だが、その霧の切り札と言ってもいい超重力砲を使われる事は無かったのだ。だが、目の前のマホロバは超重力砲を切り札でも無いかのように簡単に超重力砲を使うと言った。

 

ミズーリ「いきなり超重力砲を使うの?超重力砲は霧の切り札でしょ、そんな簡単に私たちに見せていいの?」

マホロバ「何故簡単に見せるのか、か。ふ、簡単な事。私にとって超重力砲は切り札では無い。単なる攻撃手段の一つでしか無いからだ」

 

唖然。

唖然とするしか無かった。超重力砲を除いた単なる戦闘でも霧の大戦艦級を遥かに凌ぐ火力を有しているというのに、超重力砲が一介の攻撃手段でしか無いというのだから。霧にとっても超重力砲は切り札と言ってもいい程の強力な兵装。その威力は凄まじいもので、島一つを消し飛ばす事も容易である。超戦艦級になれば、大陸を海に沈めることも容易なこと。

そして、マホロバの言葉は暗に切り札は超重力砲など比較にならない程強力な奴があるのだ、と伝えている。

 

実際、マホロバにはスーパーレーザー、バルスといった絶大な威力を誇る兵装を備えている。この二つは惑星を破壊する事も容易に成し遂げるばかりか、太陽を破壊する事も可能。バルスに至っては、最大出力で放てば、太陽系を一撃の元に破壊し、消滅する事もできる禁断の兵器。

使う事が無い事を祈るばかりである。

 

マホロバ「……よし、全艦退避したな。超重力砲シークエンスに移行する」

 

その言葉と同時に艦首が上下に割れ、更に左右にも割れて4つになる。そして、その奥から円形状のレンズが8つ飛び出し、艦首の周囲に展開する。更に奥から2連装の大口径の砲門がせり出し、中にある螺旋状に彫られたライフルリングが高速で回りだし、甲高い音を立てる。

 

<ズゴゴゴォォ………!!!>

 

サウスダコタ「う、海が………!」

霧島「まさか……霧の力は環境にまで影響を及ぼせるのですか……!?」

ミズーリ「こ、こんなに強力な重力子反応……、私が戦った霧の艦隊の中にもいなかった……!」

 

海が割れる。広大な蒼い海がマホロバの一直線上に水平線まで、海底が見えるところまで割れる。正に圧倒される光景が目の前に広がっていた。

 

マホロバ「タナトニウムエンジン稼働率68%……70%。エネルギー充填クリア」

 

高速で回転している超重力砲の砲身から溢れ出したエネルギーが紫電となって辺り一帯に降り注ぐ。

 

マホロバ「超重力砲シークエンス最終段階に移行。標的の座標設定。トラクタービーム射出、固定!」

 

マホロバの遥か前方100km以上離れたところを侵攻している深海棲艦の艦隊まで海が割れ、動きを固められ、空中に浮く。必死に逃れようともがくが、霧の艦隊総旗艦である超大戦艦から放たれるトラクタービームは超戦艦級でも逃れられないほど強力な物だ。深海棲艦など高が知れている。逃れようが無かった。

 

マホロバ「システムオールクリア。―――超重力砲、薙ぎ払え!」<ドォオォオオオ……!!!>

 

次の瞬間、世界が紅い涙が混じった漆黒の闇に閉ざされる。禍々しい色を湛える光線は全てを引きずり込み、闇の色に染め上げた。

遂にマホロバが超重力砲を放ったのだ。一本一本が直径100mは超えるだろう分厚い光線が2つ放たれる。その2つの光線はうねりながら、絡み合いながら割れた海を深海棲艦目掛けて直進していく。

 

漆黒の闇の先端が深海棲艦の群れの先頭にぶつかったかと思えば、一瞬で全てを飲み込む破壊と死の奔流となって蹂躙する。飲み込まれた深海棲艦は超重力で爆発も起こす事無く、只々、塵となるまで崩壊していく。

 

段々と光線が薄くなり、遂に消えると、世界が色を取り戻していく。同時に割れていた海も動きを取り戻し、轟々と音を立てて割れ目を飲み込んでいく。

だが、その中に深海棲艦の群れは何処にもいなかった。破片すら残さず文字どおり、全てが消滅したのだ。

 

ミズーリ「そ、そんな……、あの数の深海棲艦が一撃で全滅……」

長門「恐るべき威力だな……」

信濃「これが……超重力砲……」

 

驚愕と共に戦慄するミズーリたち。たった一撃で81隻もいた深海棲艦の艦隊が破片すら残さず全滅したのだ。

艦娘たちが戦慄する中、東山は冷静にマホロバの言葉を思い返していた。マホロバた確かにこう言っていた。【タナトニウムエンジン稼働率68……70%】と。

―――つまり。

 

東山「……今のは本気での攻撃か?」

マホロバ「否だ。最大出力の7割程度だ」

 

やはりかと頭が痛くなる思いだった。先程あれだけの威力を見せつけた超重力砲でも、まだ7割程度の威力でしかないというのだから。

もし、全力で撃てば如何なるのか皆目検討つかなかった。

 

序でに書き残して置くと、100%の稼働率で撃てば、漆黒の光が紅い光に変わる。血よりも濃く、深い紅。全てを滅びに誘う禍々しい紅い光。そんな光が全てを焼き尽くす煉獄の炎となって襲いかかるのだ。

 

 

分裂した艦首が元に戻り、演習を再開しようと思ったが、先程の光景で放心してしまった艦娘が続出し、演習にならなかったため、切り上げて帰投する事になった。

 

 

呉鎮守府に帰投し、マホロバもいつもの港の外れに碇を下ろしてその巨体を横たえていた。

その司令官室にマホロバと東山、大和、武蔵、ミズーリ、信濃、長門、赤城、加賀の面子で入ってきた途端だった。

 

東山「うっ……む……」<…ドサッ>

大和「司令!?しっかりしてください!司令!」

 

東山が胸を抑えて苦悶の表情で倒れたのだ。その瞬間をみた大和たちは驚きつつも東山を仰向けに転がして呼び起そうとするが、頑なに目を閉じたまま微動だにしない。

 

マホロバ「大和!桟橋まで運べ!すぐに私の艦内にある医療室に運ぶ!急げ!武蔵とミズーリも大和に着いていけ!長門は医師を呼べ!赤城と加賀は此処の艦娘たちがパニックにならないように所属する提督たちに伝えろッ!」

「「「り、了解ッ!」」」

 

途端に騒がしくなる司令官室。大和は東山の抱擁を、武蔵とミズーリは担架を取りに行き、長門は呉鎮守府専属の医者を探しに行き、赤城と加賀は緊急事態である事を3人の提督に伝えにいく。

マホロバは速やかに港の外れに碇を下ろしていた船体を桟橋に係留すべく移動させる。

 

誰もが東山の死が間近である事を受け入れたくなかった。何が何でも東山を生き延びさせようと必死になった。

 

 

そして、2日後。東山はマホロバの医療室に置かれ、幾多のコードやチューブで繫れつつもなんとか生きていた。だが、意識不明の重体であり、油断出来ない状態だった。そのため、眠らなくても済むメンタルモデルのマホロバが24時間体制で東山に付いて、その他の艦娘も空いた時間があれば、見舞いに来るようになった。

東山が不在の間の執務は3人の提督で山分けして解消している。そのサポートに大和、武蔵、ミズーリが付くことになった。

 

マホロバ「……もう時間が無いのか…。なあ、東山。お前が死んだら、此処の艦娘たちは如何なる?」

 

東山の右手をそっと握って呟く。東山は意識が無いにも関わらず、手は温かく、今にも起きそうな雰囲気さえあった。だが、ピクリとも動かず、心電計も規則的に音を立てるだけで何も変化が無かった。

 

コンコンとノックする音が聞こえ、医療室の扉が空気の抜ける音を立てて開き、武蔵を筆頭に長門、翔鶴、妙高、川内、陽炎が入って来た。

本当ならば、艦娘全員が見舞いに来たいだろうが、ぞろぞろとやって来られるのは迷惑にもなるだろうということで、人数制限を設けた。

 

武蔵「失礼するよ。司令の具合はどうだ?」

マホロバ「まだ目覚めないな。容態は安定しているから目覚めてもいいのだが……」

長門「……司令の病に気付けなかったのだから、情けなく思うよ」

妙高「そんなに気負わないでください。それを言うのなら、私たち皆が同じ気持ちですよ」

陽炎「そうね……」

 

悔しげに後悔の念を呟く長門。それを妙高がフォローするが、その表情も悲しげに眉を潜めていた。陽炎もいつもの元気さは鳴りを潜め、顔に影を作っていた。

 

翔鶴「……マホロバさん、司令の病はなんでしょうか?マホロバさんなら分かりますよね?」

マホロバ「……覚悟はできているようだな。……東山は―――末期の結核だ。最早、霧の持つ技術でも手遅れだった」

 

金槌で思いっきり殴られたような感覚がした。頭が真っ白になって、何も考えられなかった。

 

―――結核?末期?

霧の技術でも手遅れ……?

それじゃ、司令は……

 

翔鶴「そう、ですか……。結核、でしたか……」

陽炎「そんなのって……!そんなの嫌よ!」

 

放心した風に呟く翔鶴。そして、ポロポロと涙を零しながら叫ぶ陽炎。

武蔵、長門、妙高もショックを受けたように、顔を歪ませた。

 

マホロバ「持って……数日だ」

武蔵「……そうか……」

 

閉じられた瞳を開き、銀色と紫色のオッドアイを見せて、悲しげに余命を告げる。

武蔵もなんとかしてマホロバを説得したかったが、マホロバの表情には【尽くせる手はありとあらゆる手を使ってなんとか現状を維持している】と書かれていたため、何も言えなかったのだ。

 

 

 

陽も傾き、オレンジ色の光が船窓から差し込む頃

 

東山「うぅ……む……?」

マホロバ「気づいたか?」

「「「司令!」」」

 

朧げながらも意識を取り戻したのだ。奇跡とも言える事だろう。

喜色を表しながらベッドの周りに集まる翔鶴たち。武蔵や長門は控えめだったが、安堵の微笑みを浮かべて東山の頭元にある椅子に腰を下ろして顔を覗き込む。

 

マホロバ「うん、バイタルも安定してきている。山場は越えたようだが……」

東山「……ああ、分かってる。もうじき儂は死ぬ」

川内「ダメ!死んじゃ、ダメだよ!」

陽炎「そうよ!まだ司令にはいて貰わないといけないわよ!」

東山「はは……。儂はもはや老兵。老いてはお前たちを導けん。引導の渡し時だ。元々前回の作戦が終わり次第引退するつもりだったからな」

 

悲哀を秘めた覚悟した顔でそう告げられては川内も陽炎も、翔鶴も武蔵も長門も何も言えなかった。ただ、涙を零して嗚咽を漏らすのみだった。東山はそれを静かに困ったかのように微笑を浮かべて見つめていた。だが、ふと何かに気づいたかかのようにマホロバの方へ顔を向ける。

 

東山「そうだ……。マホロバ、最期に儂を乗せて航海してくれ。儂の……最期の願いだ。かつて……お前に乗っていた、あの頃に……」

 

東山の脳裏には第二次大戦、まほろばに乗って数多の戦いに参加していた頃を、大日本帝国海軍が誇りを懸けて、日本全ての技術を集結して造られた世界最大最強の、そして、航空主義になりつつあった世の中に最後まで抗った偉大な戦艦の勇姿が浮かんでいた。閉じられた瞼に涙が滲みでる。

東山のようにまほろばに乗っていた水兵は老いて尚、死ぬまでまほろばに乗り、航空主義に抗い続けた事を誇りに思っている。そして、まほろばの水兵にはまほろばの写真が贈られ、家宝とされるまで誇りに思われている。

だからこそ、東山は死の時をまほろばで過ごしたかった。まほろばに再会する事無く散った艦長や、副長たち水兵の分まで共に有ろうとしたのだ。

 

マホロバ「……分かった。では、艦橋に向かおう。最期の航海に出ようか」

武蔵「……私たちも自身の艦でついて行こう」

マホロバ「大和にも伝えておけ。せめての花道を作ってやれとな」

 

哀しげに微笑みながらも伝えると同じく悲しげな顔をして頷いて医療室から出て行く長門たち。

マホロバは東山に肩を貸してゆっくりとだが、艦橋を目指して思い出を振り返りながら話していた。

マホロバは身長176㎝という女性にしては高い方だが、東山は老年ながらも180程の偉丈夫であり、肩に腕を回しても大した苦にならなかった。

 

東山「あの頃は祖国の為にがむしゃらだったな……。特にレイテ沖海戦以降はこの艦と僅かな僚艦とともに防衛線に参加したり、単艦でアメリカの大艦隊の中に突撃した事もあったなぁ……」

マホロバ「沖田艦長は慎重に見えて大胆な性格だったから、一見無茶苦茶な命令を出したしな。博打に勝てたから良かったものの、下手したら、私も沈んでいたかもしれんな」

 

まほろばの艦長はあの“沖田十三”である。

単艦で突撃したのは硫黄島防衛、シンガポール防衛、サイパン島防衛などアメリカ軍の上陸作戦で最大の障害として立ちはだかり、アメリカ軍に多大の被害を出させたのだ。

 

東山「ははは……。あの頃が今となっては懐かしいものだ……。仙石副長が酒を持って来て、お前の主砲の前で宴会を開いた事もあった」

マホロバ「ああ、あったな。だが、その頃は敗戦濃厚だったから、皆悔しそうで哀しげな顔で騒ぐものだから否応なく、悲しい気持ちにさせられたものだ」

 

当時は既にシンガポールが陥落し、硫黄島も陥落寸前にまで追い込まれていたため、前線で戦っている水兵や、陸兵は敗戦濃厚だという事は口に出さないものの、悟っていたため、宴会など無礼講の時は楽しい雰囲気の中に悔しげな、哀しげな雰囲気も混じっていた。それは艦を率いる立場にある艦長や副長、航海長なども同様だった。

 

東山「最も印象深いのは東京に原爆を落とす計画を阻止した時だな」

マホロバ「確かに印象的だったな。呉を出港して硫黄島を経由してサイパン島にあるB29の滑走路を目指し、此れを破壊するという指令だったが、初めて聞いた時は耳を疑ったぞ。なにしろ総勢500隻を超える大艦隊が蠢く敵の陣地に突撃しろというのだからな」

 

この話はマホロバのみならず、生き残っていた長門や伊勢、日向も眉唾物で耳を疑った。今までの戦いでも非常識の戦果を残しているまほろばでも無茶な司令だった。だが、やらねばならなかったのだ。やらないと、東京のみならず、札幌、仙台、名古屋、大阪、京都に原爆が落とされ、さらなる犠牲者を生み出すだろう。だからこそ、まほろばは決死の覚悟で敵陣深くへ斬り込んだのだ。

 

東山「儂もその時は命を諦めた。何処まで行っても明るい間止む事の無かった空襲、その合間に波状攻撃で迫ってくる戦艦を中心にする艦隊との戦闘。いつ終わるとも知れなかったのだからな」

マホロバ「今思えば、あの時、大破寸前までやられたのは初めてだったか。私の記憶が正しいのなら、総勢900機の爆雷撃機と10隻の戦艦とその他多数の主力艦と交戦して尚中破までしか行かなかったのだから、私でも、自身の防御力の高さには呆れ果てるしかなかった」

 

当時の被害は相当なもので、魚雷84本、爆弾171発、砲弾42発を受けた。此れは勿論、大和でさえ轟沈する猛攻であった。しかし、この攻撃でさえ“大破寸前”にしか至らなかったのだ。マホロバ自身が呆れ果てるのも分かるだろう。

 

東山「遂にはサイパン島に到達し、原爆を積んで今まさに飛び立とうとしていたB29の編隊を撃墜して滑走路を破壊して港湾施設を完膚無きにまで破壊し尽くし、帰還した所で漸く政府がポツダム宣言を受け入れて降伏した……」

マホロバ「漸く長かった戦争が終結したんだったな。私や長門、伊勢、日向たち、生き残った艦は水爆実験に使われることになった。そして、引き渡される日の前日の夜、私は霧の艦隊の総括者とも呼べる“アドミラリティ・コード”に呼ばれ、この世界を去った」

東山「そうだったのか……。いや、これで良かったのかもしれん。お前が水爆で沈むなど耐えられそうになかったからな……。実際、長門たちに乗っていた奴らは長門たちが沈んだ報を聞いた途端、海に身投げして死んでいったからな」

マホロバ「そうだったのか……。あの気が知れた奴らが死んでいくのは寂しいものだな……」

 

それきり会話が途切れる。黙々と足を進め、エレベーターに乗って一直線に艦橋へ向かう。

艦橋に到着し、東山を艦長席に座らせる。

 

マホロバ「ふむ…、準備も順調のようだな。停泊している艦船が次々と罐の気圧を上げて出港用意を進めている。あと数十分あれば完全に出航できるだろう」

東山「やれやれ、大事になるとはな……」

マホロバ「何を言う。此れがお前が築いてきた人徳というものなのだろう。聞いたぞ、休みの日はお爺ちゃんと呼ばれているそうじゃないか。随分と懐かれたものだな」

東山「いつの間にか艦娘が孫娘のように思えてならなくてな、お爺ちゃんという呼び方にも抵抗を感じなくなってしまった」

マホロバ「それはそれでいいじゃないか?」

東山「いや、そうなると、艦娘を戦場に出すのが苦痛に思えてならん。此れでは司令官失格だろう?」

 

数舜考え込んでしまう。確かに艦娘を失いたくないからと言って艦娘を戦場に出せなくなっては人類は滅亡するしかない。それでは司令官失格となってしまうだろうが、東山はそれを公私に分けることで切り替えているのだろう。そして、艦娘を失わないように最大限に手を回し、練度を上げたり、優秀な兵装や艤装を持たせたりして、あらゆる対策を練っている。それはこの間行われた小笠原諸島奪還作戦で行われた二重にも三重にも張り廻られた警戒網に現れている。偵察機による二重の偵察網、戦艦の電探による索敵、ミズーリの高性能レーダーでのカバー。この厳重な警戒網によって深海棲艦の艦載機は空母までたどり着くことも無く、自身の母艦で発艦する前に母艦ごと沈められたのだ。

東山が率いる呉鎮守府第1艦隊は様々な作戦の度にこのような手段を、天候や状況によって巧みに使い分けることによって今まで―――40年の長い年月を一隻の沈没艦を出すことなく今までを生き抜いてきたのだ。

 

マホロバ「だが、その大切な艦娘を一人も失わないように出来る限りの対策は練ってから出撃しているのだろう。今までお前が一人足りとて欠けることなくやってこれたのだからな」

 

言葉は要らなかった。ただ微笑むだけだったが、それだけでも言いたいことは伝わった。

この二人の絆は第2次世界大戦戦時まで遡ることが出来るほど深い。かつての水兵とそれを乗せる戦艦。その二人の絆は言葉で表すことなど出来ようがなかった。

 

 

それから数分。モニターに映る艦全てが黒い排気煙を吐き出し、錨を上げて出港用意が済んだことを示す。

 

マホロバ「総員用意できたようだな。では……征こう」〈ゴォォオオオオ……〉

 

重厚な音を立ててタナトニウムエンジンが稼働し、スラスターにエネルギーを伝える。スラスターに青白い光が灯り、莫大なエネルギーを噴出し、30万トンある巨大な戦艦を前に押し出す。

そして、そのマホロバを囲むように、日本が誇る主力艦艇が続き、更にその周りを軽やかに疾走する駆逐艦が展開する。

 

その風景は見るもの全てが圧倒される大艦隊だった。何せ、かの大日本帝国海軍が誇った猛き“全ての艦艇”が一度に動き出したのだ。この大艦隊は戦時でも見ることの叶わなかったものであり、自然と目頭が熱くなる。

各艦が矢印のように並び、駆逐艦を先頭に、軽巡、重巡と並ぶ。その後方にはマホロバを先頭にした戦艦、空母群が続く。

 

それを離れた場所で続くミズーリを含めたアメリカ艦隊、その主力であるミズーリ、サウスダコタ、ニューメキシコは胸が熱くなるのを感じていた。

 

サウスダコタ『これが……日本帝国が誇った蒙艟たち…。今回はマホロバもいることで完成された日本艦隊……』

ニューメキシコ『美しいデス……。マホロバサン、大和サン、武蔵サンの揃い踏みヲこの目で見れルトは思いまセンでシタ……』

 

それぞれの艦橋で呆然と呟く彼女ら。だが、無理も無かった。この艦隊には言い様の知れない、魂を震わせる何かがあった。戦争で散っていった英霊の魂が乗り移っているのか、艦娘たち、軍艦の誇り高き魂が見せているのか。それは誰にも分からないことだった。

 

マホロバ「如何だ?東山。見事なものじゃないか?」

東山「ああ……。流石は誇り高き蒙艟たちだ……」

 

艦長席に寄りかかり、ふー…と溜息を吐いた東山。彼の脳裏には何が浮かんでいるのだろうか。だが、命の灯が消えかかっているのは間違いなかった。脈動も弱まりつつあり、東山自身もとても眠たげに目を開閉していたのだ。

 

マホロバ「もう限界か?」

東山「ああ…。艦長たちがすぐそこに迎えに来てくれている…。もう行かなくてはならん…。マホロバ、儂の最後の願いだ。聞いてくれんか…?」

マホロバ「何だ?」

東山「それは――――。頼めんか……?」

マホロバ「分かった。私の体が滅びるまで守り続けよう。…さらばだ」

東山「すまん。……艦長、副長…。今行きます……」

大和『――総員、敬礼!! ……っ、うぅ……』

 

深く目を閉じて、軍刀を腰から抜いて、杖のように立てかけた状態のまま息を引き取った。

モニター越しだが、涙を零しながらも敬礼する大和たち。

 

―――東山以光元帥。享年89歳。世界の司令官の先駆けとして艦娘を率いた偉大な業績とありとあらゆる戦術を教え子に遺し、波乱に満ちた生涯を憧れのマホロバにて閉じた。その死に顔はやり切ったように満足したような穏やかな顔でありながら誇りに満ちた顔だった。

 




人の死を書き表すのって難しいものですね……。

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