二か月以上投稿出来ず、申し訳ありません。
身内の不幸だったり、私自身、体調を崩して入院したりと執筆出来るような状態では無かったので、此処まで時間が掛かりましたことお詫び申し上げます。
今回の投稿は、書き方を変えてみてはどうか?という意見があり、前回までとは少々違うかもしれません。
今回と前回までとどちらが読みやすいでしょうか?
東山以光元帥、死去。
この短い一報は世界を巡り、衝撃を与えた。
深海棲艦出現時から最前線で艦娘を率いて、世界の司令官、提督たちの手本。そして、艦娘と人類の共存という1つの時代を築いた、父のような偉大な存在が死んだ。
更に言うならば、東山は世界最強の艦隊を率いる最高の名将で世界中の人々に知られ、人類の希望の灯火として存在してしたのだ。
そんな東山の死が与える影響は計り知れなかった。人類の希望の灯火が消えたと思い、奈落の底に叩き落とされた感覚すら覚えた。
東山の死から3日後、厳島神社にて、国を挙げての葬儀が行われた。何故厳島神社で行われたのかというと、元々は京都の清水寺で行われる予定だったが、参列する人数が凄まじい数になり、数万人が参列希望を出したのだ。そこで、艦娘は自身の艦に乗って、参列者を艦に乗せて厳島神社へ向かい、混乱を防ぐために厳島神社に変更されたのだ。
そして、それぞれの艦には大勢の参列者が乗り込み、自分たちの番になるのを待っていた。
だが、マホロバは東山の葬儀が終わり次第、パラオを拠点にしているリーガルに帰投するため、一切人を乗せずに、厳島神社の近くの海で碇を下ろし、全ての砲門を最大仰角に持ち上げて待機していた。
因みに、この葬儀には天皇皇后両陛下も参列されており、過去にも御召艦としての経歴がある比叡が大阪から厳島神社まで航行することになり、長門と陸奥が追随艦として従い、愛宕や高雄たち重巡、軽巡が護衛艦として周りを囲んだ。
そして、呉鎮守府の桟橋から雪風の船体の艦首に東山の遺体が収められた棺が乗せられ、厳島神社の桟橋に向かってゆっくりと航行している。雪風は棺の前にしゃがみ込んで大粒の涙を零しながらもしっかりと艦の制御も行っていたのは流石は鍛え上げられた艦娘であった。
ゆっくりと動いていた雪風の船体が厳島神社の桟橋に接岸し、各地の司令官の手によって棺が本堂に運び込まれ、全国から集められた高僧が経文を読み上げ、厳かに葬儀が始まった。
厳かな雰囲気の中、東山の顔は眠るかのように穏やかで有りながらも精悍な顔だった。
参列者が次々と献花し、別れの言葉を告げ、厳島神社を後にする。そして、最後は艦娘の番になり、一人一人が涙を浮かべながら、拙い言葉遣いであったが、それぞれの思い出を振り返る。そして、更に溢れる東山に対する想い。
止め処を失った感情は涙となって頬を伝う。
それはマホロバも同じだった。更に言うならば、マホロバと東山の縁は第二次大戦時まで遡ることが出来、一時離れていたものの、あの過酷な戦場を生き抜いた絆は何より深く、強固なものだった。
そして、共有する記憶も数多だった。だが、この場でそれを語る気は無かった。
「遂にお前の死を見届ける日が来るとはな……。お前と共にあった日々は私の誇りだ。………最早何も言うまい。安らかに眠ってくれ。私のお前に対する最後の……願いだ」
哀しげに微笑んで東山の手に触れる。氷のように冷たい感触が伝わり、本当に東山は死んだのだと実感する。閉じられた目から涙が一筋流れ、東山の手に落ちて弾ける。
「お前との約束、私が滅びるまで違えたりせん。………さらばだ」
涙を拭い、棺に背を向けて出口に向かって歩みだす。不意に吹いた風が髪を撫で、夕日を反射して、オレンジ色に煌めく白い髪が靡く。
マホロバside
厳島神社の鳥居まで来ると粒子となって私の船体まで転移する。
同時に目覚めるかのように、重厚な機関音が唸り、黄金に輝く文様が浮かび上がり主砲に火が入る。
「弔砲用意。………撃て!」
3発の大轟音が轟き、放たれた零式弾が厳島神社から離れたオレンジ色の大空に白い華を咲かす。この零式弾はちょっと弾薬に細工を施していたので、火薬が燃えるようなオレンジではなく、雪の様に白い火花となって咲いた。
途端に湧き上がる歓声。誰もが大空に咲いた華に見惚れていた。
一工夫を加えた甲斐があったものだ。
その間に私大和、武蔵、信濃たちと通信を交わしていた。皆がそれぞれ寂しげな顔で、目尻に涙を浮かべている。
「大和。武蔵。信濃。皆……さらばだ」
『はい……さようならです……』
『次に会える日を楽しみにしよう』
『武運長久を…祈ります』
漆黒の巨大な船体が緩やかに動き出し、大和たちに背を向けて太平洋側に向かって速度を増す。同時に濃い霧が発生し、辺り一帯の海面を白く染め上げる。
私の故郷と言ってもいい呉から離れるのは寂しいものだが、新たな大戦を避けるためには仕方ない事だ。
人類側から接触があるまで私の方から関わるような事はしない、と東山が生存していた時、大本営にて出た結論だった。
最も、それは戦闘には手を出すが、所属はしないという事で、こんな我儘が通じるとは思っていなかったが、アッサリと通じたので、キョトンとしてしまったのは別の話だ。
「……ふぅ……。よし、潜行開始」
スラスターの向きを上に調整して、艦首にあるブースターを起動させて、上向きに噴射させる。すると、艦首が沈み始め、700m以上もある、巨体が前に傾き始めた。
見送りに来た艦娘と、それに乗船していた参列者から驚きの声が上がったのをセンサーで感知した。
無理も無いだろう。誰が想像出来ようか。この巨大な戦艦が突然沈むなど。
だが、これは沈没なのでは無い。只の潜航なのだ。
大きく波飛沫をたてて艦首が沈降していき、ついに甲板を波が洗うほどにまで沈んでしまう。そうなったら沈む速度は更に上がり、海水を泡立てながら、前部5基ある主砲が海の中へ消えていき、艦橋の根元が海面に浸かる。そして、最終的には轟音を立てて完全に海中に船体の全てが収まった。太陽の光を反射して煌めく海面がもう頭上遥か遠くに見え、顔を下に向ければ底が見えないほど深い深海がぽっかりと暗黒の道を作っている。
……ふむ、針路は山口県と福岡県の間を日本海へ抜けて、台湾の沖合を通ってシンガポールを経由してからパラオに向かうとしよう。
―――さらば、東山よ。
さらば。日の本の国よ。
ミズーリside
「マホロバさんの艦影、完全に消失しました……。最早レーダーにも何も映りません」
『そうか……』
マホロバさんがとうとう、呉鎮守府を離れました。マホロバさんの巨大な船体が九州の方面を向いたかと思えば、どこからともなく霧が生まれ、辺り一帯の海面を白く染め上げ、その中で金色に輝く紋様が神秘的に浮かび上がります。
そんな神々しい風景に、私や皆に乗っている、お爺ちゃんの葬式の参列者も圧倒されているようで、呆然と見つめていました。
しばらくそんな風景を眺めていたら、マホロバさんが急に潜航を開始しました。慌ててレーダーや、ソナーをチェックしても、やはり霧の艦隊の機関の副作用で顕れる霧にはジャミング効果があって、レーダーやソナーにノイズが現れたため、索敵が出来なくなってしまいました。
如何する事も出来ず、呆然としているうちに、マホロバさんの姿が完全に海の中へ消えていき、同時に、霧も晴れましたが、レーダーにもソナーにも、マホロバさんの姿を確認する事が出来ませんでした。
改めて霧の恐ろしさ、技術の高さに戦慄せざるをえませんでした。
マホロバさんは私の知る霧とは少々違うようですが、マホロバさんのいた世界の霧について聞く事が出来なかったのは残念だなと思います。次に会える時が来たら、もっと色々話してみたいです!
武蔵side
遂にマホロバが呉鎮守府を去ってしまった。僅かな時間だったとはいえ、久しぶりに…70年振りに姉妹がすべて揃ったのだ。もっと語り合いたかったが、致し方無いだろう。
今は、通信モニターの向こうで泣いている大和を宥めなくてはならんな。全く、困った姉と妹だ。
「大和、泣くな。きっと、マホロバとも再び会えるのだからな」
『ひっぐ……何で、そう言い切れる、のですか?』
「七月司令が、今、各国とマホロバの立場について、協議しているそうだ。悪くても、中立。よければ、日本所属となるだろうよ。日本所属は無論、中立だとしても、交流、親睦を結ぶのは認められる筈だ。だから、その気になれば、パラオまで何とかいけるだろう?」
『姉さん。でもそれだと、超兵器とも戦う可能性が高まってしまいますよ?』
確かに、信濃の言うように、超兵器と交戦する可能性が高いだろう。そして、私たちは何も出来ずに沈められるかもしれない。
それは、この間戦った“ドレッドノート”で証明されている。この私が初撃の魚雷で戦闘不能になるまで追い込まれるとは理解したくなかった。だが、超兵器という存在、そして、世界中の艦隊が壊滅状態に陥ったという事が否応なく、現実であると叩きつけてきた。
だが、マホロバがそれに対抗する術を伝えてくれた。重力防壁と電磁防壁。私たちが現在持ち得る技術では到底成し遂げられない完成度を誇っている。しかし、マホロバは【これを研究、開発していく事で更に強力なものを作ることは勿論、副産物で新たな兵装が出来る可能性もある。それをモノに出来るか如何かはお前たち次第だ】と言い残している。
実際、今も明石や夕張を中心に、研究開発に長けている者たちがマホロバから渡された設計図を元に試作品を作ろうと奮闘している。完成すれば、私達でも、超兵器にある程度は対抗できるようになれるだろう。―――今度こそは誰も失う事なく、平和な世界で過ごしたいものだ。
明石side
早速、工廠に帰った私は、夕張や、工廠に勤める妖精さんを集めて、マホロバさんから頂いた設計図を開いて、試作品を作ろうとした。だが、設計図を開いて、驚愕すべき技術のオンパレードが飛び出した。この設計図だけで、幾つもの特許が容易に取れる程の代物だった。正しく世界が変わる感覚を覚えてしまったのは仕方がない事だと思う。
「こ、こんなものを本当に実現する事が出来るのですか……!?」
夕張が何とか絞り出したかのように掠れた声でこの設計図の異常さを示す。
「幸い、材料は探せばあるもので作れるものだから、一から作る必要は無さそうだから、実現は出来ると思うわ。―――それに、私達がやらないと、マホロバさんから渡された意味が無いもの」
そう言い、設計図の1つを手にとって、私に充てがわれた机に向き合い、必要な材料を考案する事にした。
でも、私にとって、未知の領域。何処を如何すれば良いのかまるで分からない。でも、此処で挫けたら、人類の滅亡が現実のものとなる。そのプレッシャーが私達の肩に重くのしかかってくる。でも、負けていられない!きっと、この設計図を完成させてみせる!
………マホロバさん、助けてー!
マホロバside
………?
何やら明石の叫びが聞こえた気がするが、気のせいか?
現在船速140ノットで潜航している。既に本州を離れ、沖縄周辺を通過しているが、深海棲艦の姿が全く無い。多少の破片が浮かんでいるものの、超兵器が出現する前にはあれほどいた筈の深海棲艦の影が、全く無いと言うのは気掛かりだ。
リーガルに問い合わせてみるか。
「リーガル、聞こえるか?」
『はい、聞こえます。既にそちらの位置も把握しています。何かあったのでしょうか?』
「沖縄周辺に集結していた筈の深海棲艦が見当たらない。嫌な予感がしてな、索敵を頼みたい」
『了解しました。―――………あら、これは……。沖縄周辺の深海棲艦はインド洋に移動しているようです。狙いは………超兵器、“超巨大双胴戦艦 ハリマ”、“スルガ”、“超巨大要塞戦艦 超播磨”。更に“超巨大双胴航空戦艦 近江”、“超巨大航空戦艦ムスペルヘイム”、“超巨大航空戦艦テュランヌス”。これらの超兵器が停船しているエリアを目指して進軍しているようです。総勢2000隻以上の大艦隊です』
「マズイな……」
リーガルとリンクされて、モニターに深海棲艦の大軍の様子が示されるが、凄まじいものがあった。
蒼い海面を闇よりも深い漆黒へ染め上げ、それが見渡す限り、水平線上まで埋め尽くされていた。これ程の規模を率いれるのは相当な実力の深海棲艦。鬼か―――姫。世界中に散らばる深海棲艦の中でも最強クラスの戦闘力を誇る存在が遂に自ら動き出したのだ。
更にマズイのは、この衝突で超兵器を刺激し動きが活発になってしまえば、人類は滅び去るしかない。重力防壁、電磁防壁も此間渡したばかりで、完成には最低でも3ヶ月は掛かるだろう。材料の調達し具合では1年掛かってもおかしくない。それほど、技術に開きがあるのだ。
ふむ………、今は一刻も早くリーガルと合流し、最悪の事態に備えなくてはならん。
「リーガル、急いでそちらに向かう。お前は世界中に散らばる超兵器の動きをチェック。何か動きがあれば、伝えてくれ。いいな」
『了解。此方からも報告が。以前、造船を指示されましたが………様子がおかしいのです』
「なに?造船内容は?」
『戦艦1隻と重巡1隻、潜水艦1隻ですが、何故か重巡では“タカオ”が、潜水艦では“401…イオナ”が出ました。戦艦は未だ造船が終わらないので、不明ですが、霧の可能性が否めません。』
………タカオと401が?何かの兆候なのか?不吉な予感がしてならないものだが……。
『それと同時に、私の桟橋に千早群像ら401クルー、刑部蒔絵嬢も出現しています。現在は私の中にある談話室にて寛いで頂いていますが……。尚、タカオやイオナ、千早群像たちには私やお姉さまが存在した世界から来たようで、私たちの存在を知っていました』
なに?千早群像たちと蒔絵嬢が来ているだと?………なるほど、“コード・アドミラリティ”の仕業か。あの人ならば、出来て不思議では無い。
ふむ……、"蒼き鋼"を人類の手助けになれるようにと手配したのか?それならば、タカオも同時に造船されたのも納得いく。と、考えれば、現在造船されている戦艦はヒュウガの可能性が高い。又はハルナとキリシマの可能性も否めない。
もしかすれば、霧の艦隊が次々と出現する可能性が高いのかもしれないが、そうなるとますます混沌の世の中になっていくしかないのか………。
そうならないように祈るしか無い。
『140秒後、深海棲艦の大軍と超兵器がぶつかります。数では、深海棲艦が圧倒的に優位ですが、超兵器それぞれのカタログスペックを見ても、私達霧の大戦艦級と互角に渡り合える程の性能を誇っています。これがどう転ぶかは不明です』
確かに“ハリマ”、“スルガ”、“超播磨”、“近江”、“ムスペルヘイム”、“テュランヌス”。これれの超兵器は我ら霧の大戦艦級と闘っても、どちらが勝つか分からないと言ってもいい程実力に差が無い。
霧には超重力砲があるとは言えど、超兵器にも光子榴弾や、反物質砲など高威力の兵器があり、特に反物質砲はクラインフィールドでも防御しきれるか如何か分からない代物である。最も、反物質砲を、装備しているのは、究極超兵器や、"摩天楼"のみだが、ムスペルヘイムには光子榴弾、圧縮プラズマ砲、重力砲など、豊富な兵装がある。ハリマや、スルガは、スペックの殆どを火砲に振り分けられているが、ある程度の光化学兵器も保有している。
だが、特筆すべきなのは、異常なまでに高い耐久力と、修復能力だ。カタログ上では、大戦艦級の超重力砲の直撃をもらっても、大破程度。しかも、自己修復能力も高く、ものの数秒で完全に元の姿へ復活してしまうというタフネスさがあった。
更に言うならば、超播磨にもこの機能も付き、ハリマよりも高威力、大口径の主砲や、光化学兵器も多数装備している。そして、私を優に超える50万トンもある巨大な戦艦であるが、40ノットという通常の戦艦に比べても快速を発揮でき、膨大な排水量に見合うだけの高い防御力があり、更に重力防壁、電磁防壁も高レベルのものを装備しているのだから、厄介な敵であるということは確実であった。
「兎に角、今はお前と合流する事を優先する。401らの事について考えるのはひとまず後だ」
『了解です。現在位置は以前同様、パラオ付近の港湾跡地の沖合いに固定しています。現在は深海棲艦も超兵器の接近も無く、時雨と響、矢矧が私の所持している艦載機の援護のもと、哨戒活動をしています』
「哨戒活動?辺りはお前が索敵しているのだから、敵などいないだろう?それに神武と神矢を飛ばしているのなら、哨戒活動を艦娘が行う意味が無い―――ああ、そういうことか。済まない、その事について考慮していなかった」
リーガルのレーダーがあり、艦載機を飛ばすのなら、時雨たちが哨戒活動をする意味があるのかと疑問に思ったが、メンタルモデルと艦娘の違いを思い出したので、素直に謝る。
メンタルモデルには、時間に対する理解が薄いため、時間の経過を大して苦痛には思わないが、艦娘たちはそうではない。年を取りづらい体だとはいえど、人と大して変わらないのだ。無論、時間の感じ方も人と大差無く感じるのだ。
それに、艦娘も兵器なのだ。軍艦の矜持もある。ずっとリーガルのドックの中で過ごすのを良しとしなかったのだろう。だから、おそらく時雨か、矢矧辺りが哨戒活動をしたいと言い出して、紆余曲折したのちに、現在の形に落ち着いたのだろう。
『ええ、そういう事です。それに加えて言うのならば、パラオ付近の海に多数の破片が漂っていたので、その破片の回収も含めてですが、気分転換にもなるかと』
「破片?艦だったものなのか?」
破片が漂っているということは、付近で何かしらの戦闘があったということ。又は、海流で遠く離れたところから流れて来たという可能性がある。まさか……?
『おそらくですが、超兵器と交戦して、敗れた深海棲艦の残骸かと思われます。漂流してくる場所はここから南東に40km離れた海域です』
「その辺りの海流マップはあるか?」
『はい、こちらになります』
ふむ……モニターに開かれた海流図を見ると、丁度南極辺りからニュージーランドとオーストラリアの東海岸の間を掠めてインドネシアの方へ流れていく巨大な海流が表示されている。パラオはその海流の脇にあるため、海流からはぐれた破片が流れ着いているのだろう。
ふむ……。如何やらリーガルから報告があった深海棲艦のものらしき破片はその海流に乗って流れてきたようだが……、現在観測されている限り、南極に眠っている超兵器ヴォルケンクラッツァー、またの名を“摩天楼”以外にその周辺に超兵器らしきものの艦影は観測されていないようだが、警戒は十分にするべきなのだろう。
マホロバたちは知らないことだが、この残骸はその“摩天楼”が一時的にだが眠りから目覚め、自身を眠りからたたき起こした深海棲艦を思うがままに蹂躙したものである。この深海棲艦は沖縄の膠着状態を動かそうとして東方棲姫が送り出した大艦隊であり、オーストラリアを迂回してニュージーランドを掠めて沖縄の横を突くという作戦だったが、うかつに南極に近づき過ぎたため“摩天楼”を呼び起こしたのだ。
超兵器と深海棲艦の衝突から既に半刻程が経とうとしていた。
遥か彼方まで海を覆いつくす、禍々しい黒い艦艇群が蠢く大艦隊の中で空母棲姫は苛立ったように叫んだ。
「何故500隻の前衛艦隊ト連絡ガ取レナイ!!」
『恐ラク、全滅デモシタモノカト……』
深海棲艦の大艦隊の布陣の前衛艦隊に所属する500隻の艦艇、そのいずれとも連絡が付かないのだ。超兵器から発生するノイズの影響かと考えたが、まだノイズの影響の範囲外に布陣していたし、レーダーやソナーにも異常は全く発生しないため、除外。ならば、500隻の前衛艦隊丸ごとが寝返ったのか?……否だ。レーダーで艦隊全体の動きを監視している。だから、何か動きがあればすぐに分かる。さらに言うならば、レーダーに映っていた無数の赤い点がわずかな時間で次々と消えていったのだ。レーダーの故障も疑ったが、自身の周りにいる艦隊は確りと映っていたため、故障でもない。
最後に残るのは敵―――超兵器。超兵器による攻撃によって沈められた、空母棲姫にとって正に最悪の結果しか残らなかった。しかし、彼女はそれを認めない、認めたくなかった。
沖縄に集結していた膨大な数の艦隊は全てが彼女の部下であり、共に戦う忠義心の厚い戦友だった。故にその戦友が沈んだという事を認めたくなかった。
しかし、その戦友を示さないレーダー、連絡が全くつかないという事態が現実を叩き付けてくる。そして、最後に残るのは激しい炎の如く吹き上がる憤怒、憎悪の念。なればこそ、取るべきことは仲間の仇取り。
「……全艦隊、全テノ艦載機ヲ飛バセ。標的ハ敵超兵器ダ……!」
その赤く光る眼を更に禍々しいものにさせて“姫”と謳われる個体の実力を発揮する。それに合わせるかのように艦隊に所属する全ての空母が艦載機を次々と発艦させる。
一機一機と飛び立っていたのが一刻もすれば、空を覆い隠すほどの大編隊となって艦隊の周りを旋回して編隊を整え、超兵器がいるあたりへと機首を向けて轟音を立てて飛び立つ。総勢4000機近くまで膨れ上がった大編隊は一直線に愚鈍なまでに向かって行く。
だが、超兵器も黙っている訳が無く、航空戦艦は自身の艦載機を飛ばしながらミサイルを怒涛の如く垂れ流しはじめ、苛烈な迎撃を始める。山のような巨体を誇る戦艦は通常の戦艦の倍は行く数の主砲を旋回させて虚空を睨み付ける。
その中でも圧巻だったのは“超巨大要塞戦艦 超播磨”である。己が最大の武器である“80cm55口径3連装砲”という比類のしようが無い巨砲が14基、旋回し、虚空を睨み付けるその様はまるで巨大な火山が噴火する直前の緊張感が漂っていた。
しばらくして、ミサイルの執拗な迎撃を潜り抜けて雲の切れ目から抜け出してきた機体が“超播磨”の射程範囲内に侵入した瞬間、噴火が始まる。先ずは42門の巨砲の斉射から始まり、視界を塗りつぶす白い閃光と共に本物の火山の噴煙のような濃い砲煙を吐き出し、2m近い全長と4トン近い圧倒的な重量を誇る巨弾が砲身から飛び出して迫りくる艦載機の方へ飛んでいく。
深海棲艦側も何もしないわけが無く、直ぐに編隊を解散し、それぞれが回避行動を行おうとする。しかし、“超播磨”のみならず、全ての超兵器に共通する点で対空対艦射撃はレーダー連動であり、高い命中精度を誇る。さらに言うならば、80cmという巨砲から放たれる巨大な砲弾は三式弾のように子爆弾を多数抱える。
つまり、何が言いたいのかと言うと、撃墜率は三式弾や、VT信管とは比較にならないほど高精度であるという事だ。
一度、大空に巨大な花火が咲いたかと思えば、その爆発に巻き込まれた深海棲艦の機体が粉々になって火だるまになって次々と海面に激突する。超兵器の航空戦艦から放たれたミサイルの迎撃を辛うじて躱してきた機体に半径数百mの空間に無数に煌めく火花を避け切ることは限りなく難しかった。本来ならば、船が飛行機に蹂躙されるという常識が完全に否定され、逆に飛行機が悉く撃墜されるという、質が量をすり潰すという“超兵器”の本懐を発揮する。
「ソ、ソンナ馬鹿ナ、馬鹿ナ!!……―――ッ!化ケ物ガ!!」
その結果が編隊の全滅だ。空母棲姫に非現実的な現実が叩き付けられる。
信じたくなかった。自身が今まで育ててきた艦載機が全て海面に叩き落されるなど、信じられるだろうか。本のわずかな時間で全機との連絡が途絶える。レーダーは超兵器から発せられるノイズの範囲内に艦載機がいることで捕捉することは出来なかった。しかし、4000機という大編隊が一斉に通信が途絶えるという事はあり得ない事態だった。
彼女は改めて“超兵器”が一体どのような存在であるのか。何故“超兵器”と呼ばれ、恐られるのか。それを理解し、恐怖を覚えた瞬間、彼女の意識は水面の下へ沈み、消えていった。
空母棲姫の船体を沈めたのは、“近江”、“ムスペルヘイム”、“テュランヌス”から放たれた艦載機の一群だ。
この3隻いずれも航空戦艦であるが、それでも“超兵器”と呼ばれるにふさわしい巨体である。この3隻の中で最も搭載量の少ない“近江”でさえ、正規空母の搭載量を遥かに上回る搭載量を誇るのだ。“ムスペルヘイム”や“テュランヌス”はそれを更に上回る量を積むことが出来る。
この3隻だけで大国の大艦隊が保有する大編隊に匹敵する艦載機を保有できるのだ。
そして、搭載している艦載機も次世代と言ってもいいほど優秀な機体を揃えていた。先ず、戦闘機には“震電改”、“F-4BファントムⅡ”。攻撃機は“橘花改”“Yak-38Mフォージャー”。爆撃機では“火龍”、“A-3スカイウォーリア”、“HoXⅧB”。
これを見て分かるだろうが、超兵器が積んでいる艦載機は、人類側最高練度を誇る日本の呉鎮守府ですら、未だに実現していないジェット機である。それが一国の大艦隊から放たれる数に匹敵する機体を上げてきたのだ。
“近江”からは144機。“ムスペルヘイム”から353機。“テュランヌス”から283機。占めて780機の大編隊だ。此れはかつての大戦の最終局面時、太平洋全体に展開していたアメリカ艦隊が搭載していた機体数に匹敵する。
さらに言えば、超兵器は全ての機体を出したという訳ではない。まだその広大な格納庫には今出撃した艦載機の大半と同等の数が繋がれている。
最初の機体が後部から赤い炎を噴出し、用意を整えた瞬間、飛行甲板の至る所に走っているカタパルトの一つに引っ張られ急激に速度を上げて、僅かに上に反り返っているジャンプ台を飛び出して左に大きく旋回して母艦の高空を廻り、僚機が飛び出してくるのを待つ。
その繰り返しが半刻程経てば、蒼い空を覆うほどの大編隊が完成し、レシプロ機とは比較にならないほどの爆音を轟かせる。
そして、編隊が整ったのを見計らって総編隊長の機体が深海棲艦目掛けてフルスロットルに押し上げて噴出する火の長さを長くして音速に迫ろうという速さで飛び去り、それに続くように次々と後続機も超兵器の上空から飛び去っていく。
そして、超兵器も深海棲艦に止めを刺すべくして速度を上げて津波のように海水を押し分けて驀進する。“超播磨”を先頭に、両脇を“ハリマ”“スルガ”が固め、その後方には“ムスペルヘイム”、“テュランヌスが”続く。
遂に大艦巨砲主義の極みと言っても良い“超播磨”が動き出した。城塞と見間違えそうになるほどの巨体が滑るように海面を動き出し、自身の持つ火砲全ての照準を“戦艦のみ”に合わせる。“超播磨”以外の超兵器も同様に戦艦のみに合わせた。空母や重巡以下の艦艇など目に入っていないかのように全くと言ってもいいほど無反応だった。
何故か。
戦艦以外の獲物には既に一足先に強襲を掛けた艦載機が一方的に撃破しつつあるからだ。先ず震電改ら戦闘機が深海棲艦の艦隊の上空を護衛する直掩機を誘い込んで、防護が空いた隙に横から橘花改たち攻撃機が超低空でレーダーの範囲の下を潜り抜けて、空母群に狙いを定める。
無論、空母を守る深海棲艦も黙っている訳が無い。空母に迫りつつある機体と空母の間に身を捻じ込んで対空砲火を上げようとするが、その行動を察知していた火龍たち爆撃機が4機編隊になって超高空から一気に急降下して、今まさに火箭を切ろうとしていた重巡の艦橋に100lb爆弾を叩き付ける。此処でも火龍は神業とでも言えるのだろうか、4機とも全て命中という、命中率100%を叩き出した。4機とも命中させるだけでも難しい業だというのに、4機から放たれた爆弾はピンポイント爆撃でもしたかのように真っ直ぐ艦橋の天蓋を貫通し、内部で爆発を起こし、艦橋そのものを吹き飛ばした。最期の4発目の爆弾は吹き飛んだ環境に開けられた破孔を通って艦内に進入し、機関を徹底的に破壊したのみならず、主砲の弾薬庫にまで影響を及ぼして大爆発を引き起こして海面にひときわ巨大な火球を生み出して海中へ消えていく。
沈み始めた重巡を掠めるように橘花改らが突っ込んで真正面に横たわるひときわ巨大な船体を持つ空母棲姫の横腹めがけて魚雷を全弾投下する。
空母棲姫の船体は信濃と大鳳を組み合わせたかのような堅牢な装甲を持つ装甲空母であり、舷側の装甲は大和型と同様46㎝砲を耐えられる、空母としては破格の防御力を持ちながらも格納庫をギリギリのところまで拡大することで100機を超える搭載能力を併せ持つ空母だった。そのため、単発ずつ当てていったのでは魚雷の効果も薄いと判断した橘花改らは一気に20本以上の魚雷を両舷から回避不可能なところで放つという方針で固め、それを実行に移したのだ。
そして、その結果は顕著であり、堅牢な装甲を持つはずの空母棲姫の舷側に15本以上の魚雷が同時に命中し炸裂する。7万トン近くある巨大な船体がフワリと持ち上がり、けたたましい破砕音を立てながら分厚い装甲板が歪む。その荷重に耐えきれなくなった部分から爆発で弾け飛び、巨大な破孔を開けて大量の海水の侵入を許す。そして、命中した魚雷の内2本が艦橋の根元に命中し、艦橋を支える基部を完膚無きにまで捻じ曲げて破壊した。そして、爆発と衝撃が艦橋を倒壊させてわずかな時間で艦としての機能を完全に喪失させるまでに至った。
舷側に開けられた破孔から大量の海水が侵入し、見る見るうちに復旧不可能なレベルの大傾斜に陥り、泡沫を立てながら滑るように海中へ消えていく。
空母棲姫の轟沈から僅か20分ほどで深海棲艦の主力を担う正規空母群は全滅した。残るのは直掩機しか積んでいない護衛空母のみであり、接近しつつある超兵器に対して牽制にも使えないものしか残っていない。そして、空母機動部隊が全滅してしまった今、深海棲艦の主力は戦艦のみとなっていた。
その戦艦群を率いる戦艦水鬼は呆然としていた。無理もないだろう。出撃した時は2000隻近い大艦隊だったのが今では500隻ほどの戦艦と護衛空母、重巡などしか残っていなかったのだから。
「……撤退シテ…。直チニ撤退!フィリピンマデ撤退シナサイ!」
流石に深海棲艦を率いる立場でもある戦艦水鬼は歴戦であるため、このままとどまっていても勝ち目はもはや無いと判断し、憎々しげに端麗な顔を歪めて残る艦隊全てに撤退を指示する。その号令が下った途端、駆逐艦や軽巡など、理性が薄い艦艇などは我先に逃亡を開始し、混乱を来す。その中でも戦艦水鬼は懸命に艦隊行動を支えようと翻弄する。全ては生きて帰るために。
“艦娘だった”頃の記憶の中に『何があっても命を散らすな。惨めな敗北でも生きて帰れ。生きて帰ればまたチャンスは訪れるのだから』と彼女が生涯の中で憧れた戦艦から言われたことを何とかして守ろうとしていた。
しかし、超兵器はそれを嘲笑うかのように苛烈を極める追撃を始める。自身の平穏を邪魔した愚かな獲物を屠るために。フィリピンに撤退しつつある深海棲艦を射程範囲に収め、先端を“超播磨”が切り、巨砲を次々と叩き込む。
そもそも、超兵器と深海棲艦で出せる速度に差があり過ぎたのだ。超兵器は最も鈍足であった“超播磨”でさえ40ノットの高速を発揮できる。それに対し、深海棲艦の戦艦は30ノット前後である。快足を誇る駆逐艦や軽巡は我先にと逃亡を開始し、戦艦を置き去りにして逃げ散ってしまった。それに加えて言うならば、深海棲艦はUターンしたことで更に超兵器との距離を縮めてしまっていた。
“超播磨”の射程範囲は80kmに容易に手が届く。“ハリマ”、“スルガ”は56cm55口径3連装砲であり、“超播磨”には届かないものの、60km近い射程範囲を誇る。“ムスペルヘイム”や“テュランヌス”に至っては61cm60口径3連装砲を備えている為、“ハリマ”よりも遠くまで砲撃できる。だが、砲撃戦に参加する前に深海棲艦を攻撃した艦載機を回収するのに大忙しのため、“超播磨”から離れたところでゆっくりと航行していた。
木枯らしを何倍にも増幅したような甲高い音を立てて“超播磨”の巨弾が至近弾で着弾する。2m近い全長と3トン近い重量を持つ巨大な砲弾が着弾した時に発生するエネルギーは凄まじいもので、水柱が100m近くにまで立ち昇り、天に昇る龍を連想する。
限界まで立ち昇った水柱は重力に引かれ、落下を始める。巨大な水の塊となったそれは戦艦ル級の甲板に叩き付けられた瞬間、弾け飛び、4万トン以上の巨体を大きく揺さぶる。
初弾で至近弾が出た事態に戦艦水鬼は青白かった顔を更に青くする。至近弾が出たというのならば、次の砲撃からは命中弾が出たとしてもおかしくないからだ。そして、飛来してくる砲弾は“超播磨”から放たれたものであり、“80cm55口径3連装砲”の砲弾だ。その破壊力は並大抵の砲の比にもならない、天と地ほどの差もある。
それに対するル級の装甲は対41cm装甲であり、“超播磨”の前には駆逐艦同然の装甲しか持たない戦艦に成り下がってしまった。
それは戦艦水鬼でも同じこと。戦艦水鬼の装甲は対51cm。“超播磨”を前にすれば、精々軽巡か重巡に格上げされた程度で、戦艦と見なされる事は無かった。
着弾修正した“超播磨”の各主砲が火を噴き始め、轟音を撒き散らし、黒い硝煙を噴きながら次々と巨弾を送り込み始める。“超播磨”の主砲は18基。副砲“51cm60口径3連装砲”は14基。いずれもが目の前に広がる深海棲艦の艦隊を撃滅しうる巨大な火力を誇っている。それを雨のように撃たれては流石に500隻以上もいる深海棲艦でもどうしようもなかった。
次々と砲弾が命中し、分厚いはずの戦艦の装甲がバターに穴を開けるかのように容易く貫通される。艦船にとって最重要防御区域“バイタルパート”でさえ簡単に破られ、内部に飛び込んできた巨弾が炸裂するものだからたまったものじゃない。
ただでさえ、“超播磨”の主砲の炸薬も“46cm砲”の約二倍ものの量が込められている。単純な威力でも2倍以上。
そんな巨弾が自身の砲門の半分程度の装甲しか持たない戦艦へ飛び込んできたのだ。爆発の規模も、衝撃も46cm砲のそれとは比較にならない。
装甲を突き破って、艦の内部へ飛び込んだ砲弾は大規模な爆発を引き起こす。艦内で生まれた小さな太陽は瞬く間に強烈な衝撃波を生み出し、爆炎が膨張し、艦内の通路と言う通路を灼熱の炎で埋め尽くし、地獄絵ながらの風景に塗り替える。そして、爆炎が上に向かって手を伸ばせば、一瞬甲板が膨れ上がり、次の瞬間、火柱に突き飛ばされるように天を舞って海へ落ちる。艦橋にも火の手が回り、防弾ガラスが入っているはずの窓ガラスも一瞬で砕け散り、穴と言う穴から火を噴き出し、艦橋そのものが松明のように明々と燃え盛る。戦艦ル級の人格も炎で焼かれ、物言わぬ骸と成り果て、完全に艦としての機能を喪失し、漂流するだけしかできなくなってしまった。そして、止めとばかりに、主砲塔の弾薬庫に炎が侵入し、誘爆を引き起こして大爆発を引き起こして船体を3基ある主砲塔を境目に4つに割れて轟々と渦を巻きながら海中へ消えていく。
僚艦が轟沈していく様を呆然と見ていた戦艦水鬼が我に返った瞬間、視界には6つのクリスタルのように煌めく、2m近い巨弾がこちらへ迫っているのが飛び込んできた。驚愕で目を見開いた瞬間、6発とも命中し、紅蓮の球を生み出した。
激震が走り、急激に倒れていく艦橋の中、床に叩き込まれ、意識が朦朧としてきた戦艦水鬼はかつて、憧れた戦艦の姿を思い浮かべていた。
機能美の取れた一つの芸術作品のようなデザイン性を持ちつつ、世界最大の51cmの主砲を5基備え、アメリカ軍を大いに苦しめた世界最大最強の戦艦、まほろばの雄姿を。
東京などの都会に対する原爆攻撃を阻止するために出撃したまほろばに立ちふさがるも撃沈された瞬間、目に焼き付いた5基ある主砲を振りかざし、砲弾を次々と浴びて炎と戦塵を舞い上げながらも、脚を止めることなく突撃していくその姿に“戦艦”としての真の誇りと矜持を思い出させてくれた、超大戦艦。薄れゆく意識の中最後に見たのは踵まで届く雪のように白い髪を靡かせて、僅かに煤で汚れながらも凛とした雰囲気を感じさせる美しい女性の姿だった。
「―――マホロバ……、最後二、貴女ト話シタカッタ……。私ガ唯一憧レ、尊敬シ続ケタ…貴女ト……」
彼女の意識が途絶えると同時にバキバキとけたたましい破砕音を響かせながら大きく船体が前に傾き、滑るように波間へ消えていく。
彼女の沈没を最後に“超播磨”も砲撃を止めて足を引き返し、深海棲艦が襲撃してくるまで錨を下ろしていた場所へ舵を切る。逃げ散っていく駆逐艦や軽巡などには目もくれずに。
大艦巨砲主義の極みという境地へ至った超兵器は圧倒的なまでの火力で蹂躙し、完膚無きにまで叩きのめし、超兵器という存在の恐ろしさを深海棲艦の記憶に刻み付けた。