改めて、お久しぶりです。
今回は兵装開発編に纏めたため、いつもより短めですが、その分濃いものが出ます。
時雨の胃は持つのでしょうか?妖精さんはどうなるのか?
「さて、本当にいいんだな?」
此処はリーガルの工廠。目的は時雨たち艦娘に適応する対超兵器を作る事にある。いつ超兵器が動き出してもおかしく無い。風雲、急を告げるとはこういうような状況を指す言葉だろう。霧の艦艇ならば、対抗する事は出来るだろうが、只の艦艇である時雨、響、矢矧の三人は万が一、超兵器と遭遇してしまえば生き延びる確率は低い。
それはもう、限りなく低い。何せ、豆鉄砲を積んだだけの漁船が大和級の重武装の戦艦とカチ合うようなものだ。
良くて這々の体で逃げ出せるか、悪くて跡形も無く爆沈か轟沈するかだ。
それは時雨たちも理解しているため、妖精さんを急かして開発を進めようとしているが、やはり、艦娘では規準ーーー常識内の艤装しか開発出来ず、大した戦力アップに成らず、(但し、ゲームならば、level200提督クラスの艤装。近海の深海棲艦ならoverkill)最後の手として、マホロバとリーガルに泣きついたのだ。
時雨としては出来ればやりたく無い事であったが、響と矢矧に押されて渋々と折れたのだ。あの響のキラキラした表情を見て、否と言える訳が無い。
何処か目が死んだ時雨。頭と胃が痛む近い将来を見据えて何かを悟ったのだろうか。
「うん、もう覚悟は出来ているよ」
「そうか……。早速それぞれ5回ずつでいいんだな?」
マホロバの目の前にはいつの間に作られたのか、タッチパネル式の開発スロットがある。その後ろには以前と同様に厳しい、巨大な鋼鉄の扉が。
以前はボタンとレバーだった物が暫く足を運んでいなかった内に此処まで進歩しているのだから、ゆくゆく妖精さんが末恐ろしく感じる。
【兵装】【艦載機】【補助兵装】と表示されているが、今回はそれぞれ5回ずつである。
「………とりあえず、此れで……」
「何がでるんだろう?ドキドキするよ。前に時雨に聞いた時は現存してはいけないモノが出たというのだから、期待大だ」
目をキラキラと輝かせる響。その後ろでは若干の緊張を隠せない矢矧がそわそわと体を捩る。
ゴウン、と重厚感に満ち溢れる音がして、扉の隙間から蒸気が勢いよく噴出して辺りを曇らせる。
「何が出るーーー」
「おお……?」
ーーー48㎝3連装陽電子衝撃砲。
膨大なエネルギーを衝撃波に変えることで生じる衝撃波エネルギーを螺旋状に撃ち出す事で破壊力を増した未来時代の主砲である。
というより、宇◯戦艦ヤ◯トの主砲である。
余りにも巨大な砲塔のため、ドックにあるような巨大なロボットアームによって運ばれてくる。
それを見た時雨の顔が引き攣り、言葉が途切れる。それに相対するように響の表情が更に輝いて見える。
「私の主砲のダウングレード版と思えば良いだろう。しかし、此れならば超兵器にも通用するかもしれんな」
「問題点は巨大な砲塔のため、大和級以上でなければ積めない事と、ボイラー式の機関ではエネルギーが足りず満足に稼働も出来ません。最低限でも核融合炉エンジンでなければ……」
リーガルの言うように、艦娘の機関では圧倒的に出力が足りず、この砲塔を満足に動かすこともできないだろう。ヤマトも波動エンジンという超高出力のエンジンの享受で動かしていたのだから、それに伍するものが必要になる。
「妖精さんに聞けば、開発をする他にも妖精さんが研究する事で新しいものが出来るらしい。この改装された工廠もそれによるものらしい」
「なるほどねぇ……。ま、研究が先か、開発が先かの勝負になるかんじかしらね?」
マホロバの言葉に相槌を打ったのはヒュウガだ。しかし、ヒュウガは既に好奇心に負けたのか、妖精さんと工廠に篭って何やら研究をしている所を目撃する機会が最近増えた。
ヒュウガたちが造船されてから既に一カ月程経っているが二日に一回は必ず工廠でマッドになっているヒュウガが目撃される。
この調子なら、鋼鉄の世界並みの研究開発の速度でたどり着き、さらなる極みに到達できるかもしれない。若しかすれば、霧の技術を再現する事も可能になる、という可能性すら芽生えてきた。何せ、未知の技術を有する妖精さんと霧という超科学によって生み出されたヒュウガが共鳴しあっているのだから。
「そうだな。……やはり、大和たちが居ないのだから死蔵になりかねないのだが、ヒュウガには積めんのか?」
「うーん……、無理ね。確かにこの砲塔の威力は魅力的だけど、サイズが大きいから大和級以上の全幅が無いと砲撃の反動で転覆しかねないわね。単装砲に換装すれば積めるかもしれないけど非効率ね」
「ならば仕方ない。搭載出来るクラスの戦艦が出てくるのを待つか」
と言いながらパネルを操作してボタンを押すと砲塔が倉庫の中に運ばれて、鋼鉄の扉が閉まり、金槌の音やら、溶接の音やら何やらで騒がしくなる。
十分程待つとサイレンが鳴り、再び厳しい鋼鉄の扉が開く。
そこから出てきたのはーー
「新型超音速酸素魚雷。……ふむ、駆逐艦でも搭載可能な魚雷か。性能としては私たち霧が搭載する魚雷(スーパーキャビテーション魚雷)に一歩及ばず、といったようだな」
「なんだか凄い兵器な筈なんだけど地味なように感じられるんだけど、此れって僕だけかな?」
時雨の困惑したような言葉には思わず頷きかけた。
確かにこうして振り返ってみれば、前回の開発では、インパクトがありすぎて、兵器の範囲に入るのかどうかすら不明な代物が出てきたし、そもそも、存在自体が反則な霧の艦隊に超兵器も出現、剰え、マホロバと言う反則の極地と言っても過言では無い戦艦すら居るのだ。
そんな濃い面子の中ではこの魚雷も如何に艦娘の装備の範囲を凌駕していると言えど、薄く感じるものがあった。
哀れ、新型超音速酸素魚雷。
鋼鉄の世界では最強の一角を占め、フリゲート、駆逐艦乗りの猛者には必須であり、此処の艦娘にとっても、強力な兵装になるのだが、いかんせん周りの奴が強烈すぎるのが悪かった。
妖精さんに操られるロボットアームによって倉庫に運ばれる。
再び重厚な音を立てて閉まる鋼鉄の扉。
「……こういうものは3回目か、4回目辺りでカオスがくるものなのよ」
「辞めてくれ、タカオ。現実に起きたら敵わない」
真剣な顔になった群像に釘を刺される。
カオス。つまりは常識に縛られない奇天烈なモノが出てくるという事だ。前回ならば、ハウニブー。又はプラズマ砲。
前々話のコジマプラズマ砲はマホロバが独自に作り上げた創造兵器であるため、極秘中の極秘として、マホロバ自身が保管している為妖精さんやヒュウガでも与かりしれない。
此れが万が一、妖精さんの手に渡ったらどんな結末を迎えるか。それを考えるだけで背筋に薄ら寒いモノを覚える。
蒸気が噴き出す音と共に、鋼鉄の扉が開き、中を覗く。
「ああ……、やはり……。フラグ回収したな。特大の」
「タカオェ………!」
「え!?わ、私のせい!?」
「ハラショー!!こんなおっきいの見た事無いよ」
「な、何だよ、このデカさはよ……、本当にどうなってんだよ?此処の妖精さんとやらはよ」
「あ、あはは……、どうなっているんでしょうね……」
「うぅ………、胃が痛いよぉ……」
「しっかりしろ、時雨。そら、霧印の胃薬だ」
「ありがとう……、マホロバ……」
たちまち騒がしくなる工廠の扉の前。
群像が遠い目で呟いたと思えば、ヒュウガがタカオを睨み、集まった視線にタカオが狼狽え、響が目を輝かせて賞賛し、杏兵が唖然とし、静が引き攣った笑みを零し、一方では時雨がお腹を押さえて崩れ落ち、マホロバが介抱する。
その騒動の原因となったモノが、再び妖精さんの操るロボットアームによって扉の前にまで出てきて、威風堂々とその姿を曝け出す。
因みに妖精さんの顔がやり切ったと満足そうなドヤ顔をして、時雨がそれを睨みつけるという展開はお約束となっていた。
「全く……、本当に鋼鉄の世界はどんな技術をしているんだろうな。恐らく、実弾兵器としては最強の一角を占めるだろう」
「そうですね……。レールガンでも此処まで巨大なのは作ろうとは思えませんし、非効率的ですし、此れを作るならば陽電子砲や粒子砲、又は超重力砲を放った方が早いです」
ズゥゥウン……とでも効果音が付きそうな威圧感を垂れ流しにするソレを見ながらマホロバとリーガルが評価を下す。
リーガルの言葉にメンタルモデル以外のメンツは「やろうと思えば作れるんだ……」と戦慄する。
「ふむ……、重量がネックだが、遠距離からの砲撃なら、一方的なアウトレンジ砲撃が出来るな。装填も完全自動であるし、仰角を取った状態でも可能、か。ただ、弾数が少なめなのが気になるな。搭載出来れば、戦術の幅が広がるのだが………ふむ」
「……なぁ。イオナ、アレーーー」
「無理だ。私の船体では容量オーバーだ。群像たちの居住スペースと艦橋と艦載機格納庫、あらゆる空間をアレに使わなくては載せられない」
「最後まで言わせろよ!全く……。ちぇっ……アレ、一回でもいいから撃ってみてぇな……」
群像が真剣な顔つきで目の前に聳えるソレのスペックを確認し、何やら思案顔を浮かべ、それを見た杏兵がイオナに縋り付こうとするが、バッサリと切り捨てられる。
切り捨てられた後も未練タラタラな表情を浮かべる。群像もイオナの答えを聞いて、更に頭を悩ませているようだった。
「あのね、容量ってもんを考えてよ。タカオやヒュウガなら辛うじて積めるかもしれないけど、イオナには流石に無理があるよ」
「なぁに言ってんだよ!いおり!こんな、こんなモン、男の浪漫じゃねぇか!単発の砲塔!超大砲口の砲門!此れを見て、黙っていられるかよ!」
「煩い、杏兵」
「アッハイ」
両手を突き出して叫ぶ杏兵だったが、イオナの氷点下の無表情で睨み据えられ、たちまち大人しくなる。さしもの彼もメンタルモデルには敵わないのだ。
「全く……、騒がしい奴らだ。しかし、こんなものが出るとは私も想像外だぞ。ーーー“160㎝45口径単装砲”。正しく化け物砲とでも評されるべきだな」
160㎝45口径単装砲。
かのドイツ帝国にて実際に造られた列車砲、ドーラをモデルにして造られた超兵器、【超巨大列車砲 ドーラ・ドルヒ】の主兵装である砲塔を改良し、艦船でも搭載出来るようにしたものが此れである。
その破壊力は凄まじく、砲門を真上に向け、1直径160㎝、長さ6m、重量、実に5トンを超える巨弾を大気圏外にまで撃ち上げ、その後は地球の引力に引かれ、落下を開始する。落下中に砲弾からフィンが出て、落下角度を調整し、敵艦の真上から直撃せしめる。着弾衝撃はおよそ数十億トンにまで登り、小さな隕石と言ってしまっても過言ではない。
落下する時、大気圏突入をするため赤熱化し、見た目は隕石のように赤く燃えながら落下するため、何某ゲームの隕石召喚魔術と勘違いしてしまいそうになるが、破壊力の桁外れであり、大和型の戦艦ですらこの砲撃には一発も耐えられず、轟沈するしかない。当たり所が悪ければ、一瞬で爆沈する。
そのため、かの世界の反帝国同盟軍の軍人たちからは『神の鉄槌(ミョルニョル)』と称され、帝国軍からは『飛翔する死槍(ゲイボルグ)』と恐れられた。コストの問題から二基しか作られなかったが、その二基とも反帝国同盟軍のとある艦艇に搭載され、その猛威を振るい、帝国を斃す所まで追い込んだが、究極超兵器と相打ちになって沈んだ。
ウルトラハードモードの周回では此れが無いと話にならないステージを経験した艦長も多いはず。
マホロバの演算によってこの砲塔の運用方法、砲撃理論が弾き出され、全員の目の前に空間ディスプレイが開かれ、目を通す。
「そんな……、あの大和さんでさえ一発も耐えられないなんて……」
「私でも此れの直撃は力の限り避ける。迎撃はもちろん、クラインフィールド、強制波動装甲。あらゆる手段を用いてなんとしてでも避けなければならない。直撃でもすれば私でも数発で、沈む」
呆然とした表情の矢矧。彼女は最後の最後まで大和を慕って、大和、霧島と共に沈んだ。
気高く、凛とした大和は最期まで力の限り激戦を戦った。
そんな大和が一発も耐えられないとは信じられなかった。
そして、もう一人。艦ならば誰もが憧れ、尊敬せずにはいられない超大戦艦。最大最強の名に違わぬ至高の戦艦。大艦巨砲主義の頂点にあり、第二次世界大戦で大きく兵器の順位が変わりゆき、大和でさえ敗れたその流れに唯一つ抗い切った怪物。
圧倒的量を至高の質ですり潰すという、量でもって質を嬲るという航空主義を真正面から叩き割った。
そんな存在が数発で沈むと断言仕切った。
此れもまた信じられない。
彼女たち艦娘にとってはマホロバは頂点。ありとあらゆる軍艦の頂に君臨する絶対の存在として認識されている。王か。帝か。神か。既に信仰に近いものすら有り得た。
それは嘗て砲火を交えあったアメリカの艦娘ですら同様である。あの自己主張の塊であるアメリカ艦娘がだ。
直接砲火を交えない空母の艦娘でもマホロバは艦載機を差し置いて最強であると断言している。
それは第二次世界大戦で何度も数百機に渡る大編隊でマホロバ一隻に空襲を掛けても一向に沈まないどころか、痛烈な反撃を喰らわしてくる怪物。艦載機の大編隊を殲滅された事も何度もある。
大和型を改良しただけの筈が桁違いの性能を誇る巨大な戦艦。この世にただ一つ、『不沈戦艦』その言葉を体現した。
それがマホロバだ。
「……此れはこの世に出して良い兵器では無い。超兵器とは別の意味でこの世に不要な争いを生み出しかねん。軍拡競争という名のな。………まぁ、霧もその意味では同じようなものなのかもしれんがな……」
「そうだね……。僕たち艦娘もこの戦いが終わったらどうなるんだろうね……」
哀愁を感じさせる微笑みを浮かべる時雨。それに誘われたかのように矢矧と響も寂しげな表情を浮かべる。
そんな三人に儚げな笑みを浮かべたマホロバはそれぞれの頭を撫でて暗くなった雰囲気を飛ばす。
「此れは私が処分する。設計図諸共、灰に帰す。異論は無いな?」
目の前に聳える砲塔に手をかざし、チラリと後ろを見てそう言葉を紡ぐ。
杏兵やヒュウガは惜しそうな表情を浮かべたものの、処分することに異論は無いようで黙ったまま頷く。時雨たちも同様に頷いたことで処分が決まる。
遠くで妖精さんが血涙を流しているが、妖精さんに此れを渡すのは以ての外。
「マイクロブラックホール作成するから少し離れていろ」
そう言うと翳した手の先に超重力を発する漆黒の球体を生み出し、マホロバがその場を少し離れると一瞬で160㎝砲を包み込み、圧壊し、塵すら残さず消え去る。
「マイクロブラックホール……。やはりお姉さまは規格外です」
「不躾に失礼な事を言うな。まぁ……私とて自覚はあるのだがな」
「なら宜しいではありませんか」
特大のブーメランを放っていることに気づいているのかと言いたくなるような台詞を吐くリーガル。この移動要塞軍港を動かしているのはこのリーガルであり、マホロバと同様、Ωコアを有する霧の艦艇の最終系、最強と言っても過言では無い実力を持つ。
実際、瞬間砲火力、継戦能力はマホロバすら凌ぎ、リーガル単体でも超兵器の大艦隊とタメを張れる実力である。
その事を指摘するのはヒュウガとタカオ。彼女らメンタルモデルはリーガルの圧倒的な火力を“データ上”知っている。
「私は戦闘を忌避します。軍港である私が戦闘に直接参加して良いとは思いません。皆さんの帰る場所であり、何としてでも陥す訳にはいかないのです」
「確かに拠点であるリーガルが先陣切って交戦、殲滅しては私たちの出る幕は無い。だが、戦場というのは何が起こるか分からないものだ。想定外の出来事なんぞ、珍しくも無い。故にリーガルが被害に遭うような事は極力避けるべきだろう」
「ですが、自衛の為の戦闘ならば行いますよ?攻撃されて防ぐばかりでは面白くありませんから」
そう言って微笑むリーガルであったが、その目には凄惨な光があり、この戦闘に消極的なリーガルでも確かに霧の技術によって産み落とされたモノだと理解せざるを得なかった。
実際、リーガルが自衛の為の戦闘は的(敵)が視界に見えた瞬間、圧倒的な砲火力で面での制圧を行なう。それも一度たりとて容赦しない。
流石に地球に影響を与えるような超火力は使わないがそれでも、リーガルから放たれる火線はまるで迫り来る壁を連想させる凄まじいものだ。迫り来る分厚い壁の如く吐き出される巨弾の嵐。光化学兵器の光線。津波のように襲いかかる魚雷。超音速で飛行する艦載機から放たれるミサイルや爆弾。
敵にしては避ける隙間も無いほど、壁のように迫り来る濃密な射撃は悪夢としか言いようが無いだろう。
次に出てきたものはミサイルランチャーのような形状の比較的小型の兵装。見た目は頼りなさそうであったがこれが中々の曲者である。
ーーー光子榴弾砲。
圧縮したプラズマエネルギーを球形に放ち、海面を這うように突き進むそれは着弾と同時に膨大なプラズマエネルギーを放出し、周りを蒸発させる兵器である。
コジマプラズマ砲のダウングレード版と思えば大差無いだろう。
膨大なエネルギーを消費するも、その小型の兵装であるが故に駆逐艦にも搭載できる利点があり、超兵器にも通用する兵装である。
「威力は申し分ない。大きさでも駆逐艦にも搭載出来る」
「ですが、ネックとしてはプラズマエネルギーを圧縮させるための装置に重量を取られ、駆逐艦に乗せるとトップベビーになってしまい、転覆の可能性が高いということ。そして、膨大なエネルギーを生み出すための機関がまだ無いため、射撃が出来ないという事ですね」
「やっぱり、機関の問題かぁ………。ねぇ、ヒュウガさん、霧の機関のタナトニウムエンジンを僕たちにも積む事は出来ないのかな?」
首を傾げながらも時雨が側にいたヒュウガに尋ねるが、そのヒュウガはその疑問を聞いて、眉間に皺を寄せて数瞬考えるような仕草を見せるも、うっすらと目を開いてモノクル越しに時雨を見つめる。そして、時雨だけではなく、響や、矢矧にも話が通るように説明を行う。
「………出来ない事は無いでしょうけど、機関の制御に精一杯になって運航、戦闘に支障を来してしまう可能性もあるわね。タナトニウムエンジンは言い換えてみれば重力子機関の一種。一歩間違えれば核兵器よりも凄まじい影響を与えるような危険な代物を機関として使っているの。これはユニオンコアを持つ霧の艦隊だからこそ出来た訳であり、艦娘にも適応できるかどうかは全くの不明よ。出来れば戦艦や空母の艦娘も調べてみたいのだけれど、此処にいるのは駆逐艦と軽巡の艦娘だけ。だから今取れるデータも偏ってしまうと意味を成さないわね」
核兵器よりも凄まじい影響というのは、嘗ての世界で群像たちがキリシマとハルナを沈めた後、起こった重力場の変動、時空間の乱れを指す。
「そっか………。僕たちじゃ扱えないのかな……」
「安心しろ、時雨。お前が力不足なのではなく、霧が過剰に力を持っているだけだから、気に負う事はない。此処には妖精さんもいることだし、少しずつ改装していけば超兵器級の兵器すら扱えるようになるだろう」
心底残念そうに、悲しそうに呟くが、すかさずマホロバがフォローに回る。もう一つの可能性を示唆しようとするヒュウガに釘を刺しつつ。
ヒュウガが示唆しようとした可能性は艦娘のメンタルモデル化である。
マホロバのように艦娘の体のまま、コアを埋め込み、半メンタルモデル化し、超兵器級の兵器を扱えるようにするという案である。ただ、マホロバのように高性能のコアではないため、霧の駆逐艦、軽巡と同様の性能を持つことで打ち止めになる。これだけでも相当な戦力アップであるだろうが、問題なのはマホロバたちでもコアを新しく作ることは出来ない。出来るといえば、アドミラリティ・コードくらいだろうか。
しかし、群像たちを始め、イオナ、ヒュウガ、タカオの戦力を転送してくれたようだが、深くは関わろうとはしなかった。だから、艦娘のメンタルモデル化に同意するかは疑問に思う。
兎も角、フォローしたことで、少し元気を取り戻し、光子榴弾砲も妖精さんによって運ばれて行った後、最後の開発を行おうとする。
やけに重厚な音を立てているのに、スムーズに開く矛盾さを孕んだ扉が開ききると、白いカプセルのようなものにガトリング砲のバレルを取り付けたような奇妙な形状の機関砲。
「20mmCIWSか。本来ならば、レーダー連動のシステムを搭載した艦がいいのだが、そのままでも対空能力は格段に上がるだろうから、妖精さんに指示して量産できるようにするか。それと、このCIWSの大口径も研究してもらおう」
「漸く、此処で現状の艦娘にも搭載できるまともな(?)兵器が出ましたね」
「此れは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか複雑なものだな」
微妙な表情を浮かべるリーガルの言葉にまた、微妙な表情となるマホロバ。
確かにそうである。時雨の頼みに応えようとして、開発を行うも、出てきたのはどれも現在の艦娘では搭載できようもない兵装ばかりであった。
48㎝三連装衝撃砲。
新型超音速魚雷発射管。
160㎝45口径単装砲。
光子榴弾砲。
20mmCIWS。
かろうじて20mmCIWSが搭載出来たということだけであり、本来の目的から脱輪しているような気もしないではない。
兵装で此れなのだから、艦載機や補助兵装ではどうなるのかと痛むべきもない頭を抱え てしまう。
それよりも時雨の胃が心配だった。いっその事、時雨の胃をナノマテリアルで代用しようかとさえ、何をトチ狂った考えすら浮かんでしまうほど精神的疲労感が途轍もない兵装開発だった。