………お久しぶりでございます。
ネタが浮かばなかった事と、他の作品も書いていた(打っていた)ので後回し後回しになってしまい、此処まで遅れてしまいました。
今回はつぎに繋ぐ閑話のようなものですので、短めです。
どうぞ、ご覧くださいませ。
「よし、次は艦載機の開発だな。………アレとか出てこなければ良いのだが。出来ればF-15とかF-22の辺りで踏みとどまってくれればいいのだがな」
アレとはハウニブーの事である。因みに前回の開発で出たハウニブーは既に妖精さんの手によって魔改造され、ハウニブーの皮を被ったナニかにと変貌してしまった。
何せ、普通に飛行していたかと思えば、空間を捻じ曲げて明らかに瞬間移動したとしか思えない現象を起こし、ヒュウガが操るズイウンを翻弄しては撃墜し、更には波動砲のような光線を飛行しながら十字砲火を食らわせ、ヒュウガに轟沈判定を喰らわせた怪物なのだ。タカオは瞬殺。イオナも海中で隠れていたに、波動砲モドキを雨のように撃たれ、轟沈判定。
そんな現象を見た群像は「この機体だけで霧を打倒出来たんじゃないか」と頭を抱え、イオナは「妖精さんの恐ろしさの片鱗を見た気がした」と震えていた。
しかし、そのハウニブー魔改もマホロバと模擬戦し、大戦艦級の霧の艦艇でも一撃即殺級の超威力を壁の如き弾幕で放ち、回避、移動する隙間を無い程にまで空間を埋め尽くし、撃墜判定を喰らわせ、妖精さんを涙目にした。
そんな妖精さんに追い討ちをかけるようにマホロバによって死蔵入りを宣告され、涙目が血涙になるのは言うまでもなかった。
「ええ、全くね。あのハウニブーモドキには酷い目に遭ったわ!」
「ドイツでもハウニブーがあれ程の性能になるとは思いもしなかっただろうな………」
タカオが不機嫌そうに叫ぶと群像も疲れたかのような表情を浮かべた。そんな群像に時雨はとてつも無い近親感を抱いたそうな。そっと群像に近づいた時雨はポケットに忍ばせていた胃薬を群像に渡し、頑張ってねと虚しい励ましをかけた。
此処に被害者一号と二号が誕生した。
「よーし、やるぞー」
「少しは気合込めて下さい」
「いや、あのハウニブーモドキが出るかもと思えば憂鬱でな……」
「ああ……」
流石のマホロバもあのハウニブーモドキには精神的疲労を感じずにはいられなかった。それは投げやりな言葉に含まれているだろう。
それに応じたリーガルもそっと視線を逸らす事しか出来なかった。
ゴウン……と鋼鉄の扉が開き、台車に引かれて出てきたのは……。
「あー………。なんて言えばいいんだ?」
「いや、下手な慰めは要らん。率直に言って構わん」
「だから!なんでコレが!出てきたの!?」
「………ハウニブーIVか……。前回のハウニブーの強化版だな。幸い、妖精さんの手が入る前の状態だからノーマルだろう」
ハウニブーIV。前回の開発で出たハウニブーI型の爆撃機シリーズの強化版であり、特筆すべきなのは速度と耐久性が格段に向上し、荷電粒子砲を二基搭載し、小規模の艦隊ならば、一機のみで殲滅する事も可能というぶっ飛んだ性能を誇る機体である。
「なんか嫌な予感が………」
「うん、ボクも同じ予感がするよ……」
群像と時雨が冷や汗を流して工廠の隅の方を見ると、暗がりの中でも妖しく目を光らせる妖精さんの姿が。
あ、これヤバイやつだと、ドッと冷や汗が出る一同。妖精さんは如何も、以前のハウニブー【魔】がマホロバに一方的に撃墜された事で、打倒マホロバを目指すようになったそうだ。
そんな妖精さんにとって、前回のハウニブーを上回る性能を持つハウニブーIVは格好の獲物なのだろう。爛々と目を輝かしてハウニブーIVが運び出されるのを待ち構えていた。
「……リーガル。此れは私が保管してもいいか?」
「そうですね。その方が最適かと」
隅の方で妖精さんが、なぬっ!?とばかりに驚愕するのを尻目にハウニブーIVはマホロバ船体の方へ飛び去っていく。
此処に時雨たちの安全は守られたのだ。
その後の開発は、ハウニブーIVを奪われた妖精さんの怨みを買ったのか、至って平凡な機体が出てきた。
両目に《怨》の字を浮かばせた妖精さんの姿なんて見ていない。
尚、その妖精さん《怨》はマホロバの船内で作られる甘味でニヨニヨ顔に変わり、《怨》は《尊》に変わった模様。チョロい。
「やはり、中で作られるのは妖精さんの気分によって右往左往するようだな」
「そうだね。…………ぱったりと“ジェット機”しか出なくなったのもどうかと思うんだけど!?」
レシプロ機が主流である時雨たち、艦娘にとって、ジェット機は晴天の霹靂以外の何物でも無かった。
更に言うならば、出現したジェット機は現代でも最高性能を持つ機体ばかり。
F−22.ラプター。
F−15EX.蒼天。
F/A-18E S.ホーネット。
F-23.グレイゴースト。
現代でも最強の一角を不動のものとする最精鋭の機体で勢ぞろいしていた。
その中に実現しなかった機体も混じっているのは愛嬌というものだろうか。
此れらの機体ででも、充分深海棲艦に対してはオーバーキルである。
しかし、忘れてはならないのは、今回の開発の目的は対超兵器。
「此れらの機体でも超兵器に対しては荷が重いだろうな。空母型の超兵器は此れらと同格の機体を揃えている。それも数百、下手すれば数千もあるかもしれん」
ナノマテリアルの粒子を輝かせて、空間ディスプレイを作り、其処に映像を流す。其処には、人類が大反攻作戦を行い、突如として現れた超兵器の艦隊によって殲滅された海戦。
それから映像が巻き戻され、超兵器が出現した時まで逆巻きされる。
「この映像はリーガルに監視してもらっていた超兵器の艦隊の一部を拡大、鮮明化したものだ。写っている三胴船は【超巨大航空戦艦 ムスペルヘイム】だ。両脇を【超巨大二段空母 ペーター・シュトラッサー】、真ん中の戦艦部を【超巨大戦艦ムスペルヘイム】。此れらの3隻が一つになった超兵器だ」
「………!デカイな……」
全長が1000mを超えようかという巨大な超兵器。Y字のような配置の三胴船の船体は戦艦と空母の機能を分離独立しての指揮を行う事も可能であり、純粋な戦艦と空母として活動する事も可能。最も、そのどちらも『巨大』という言葉が付く超兵器であるが。
そして、ムスペルヘイムの空母部分から飛び出してくる機体はもれなく現代機。幸い、F-15やユーロファイター、タイフーンなど、今回の開発で出た機体よりも0.5世代分の性能差がある機体であり、一対一なら勝てるだろう、そんな楽観的な思考を映し出される映像は拒絶した。
「真逆……、これ程とは……」
「これが、超兵器………。規格外過ぎる……」
呆然と僧といおりが呟いたのは、ムスペルヘイムの空母部分であるペーター・シュトラッサーから夥しい数の艦載機がジェットエンジンの青白い火を噴きながら飛び立っていく様子だった。
アメリカの原子力空母でさえ、最大2機ずつ発艦するのが限界であるのに、ムスペルヘイムは毎回4機編隊3隊、12機ずつ飛び立っていき、広い甲板の至る所にある巨大なエレベーターに多数の艦載機を載せて格納庫から甲板に現れ、カタパルトに固定されれば、数秒もしないうちに飛び立つ。
そのサイクルが数十回も繰り返せば、超兵器の艦隊の上空には黒い雲霞の如き影が音速の速さで旋回を繰り返す大編隊が出来上がる。
その数、『千』。
現代でも見ることのできない、現代機の大編隊に呆然と放心状態に追い込まれてしまう群像たち。
空間ディスプレイに備えられているスピーカーからジェット機特有の爆音が響くのに、群像たちを包む空間のみが静かだった。
「ムスペルヘイムは単体で一国に匹敵する格納量を誇る。それも現代機で揃えられているとあれば、今回の開発で出来たハウニブーIV以外の艦載機では話にならないだろう。……まぁ、人類に譲渡して、恩を売っておくという手もあるだろうが、今は使えん」
亡き東山元帥と交わした条約にマホロバはこれ以上の混乱を防ぐために必要以上に人類に干渉しないこと。何処の国にも属さず、中立であること。
これを約定として、亡き東山元帥の後を引き継いて新たな元帥となった七月元帥が各国と協定を結んだ、とあいも変わらずハッキングして得た情報の中に含まれていた。
故に、各国からの要請がない限り、マホロバから人類に技術提供を行うことはない。
いわば、この約定は共同戦線を張って、超兵器に対抗しましょう、という上部だけの条約で定まり、内部は東山の死の混乱に流されてしまい、ガタガタの状態であった。
そのお粗末さがモロに出てしまったという形となってしまい、今回の開発ででた5機の艦載機は死蔵扱いとなることが確定となってしまった。
そもそも、マホロバ側に艦載機の開発を行う必要があったのかと言われれば、必要無い。
リーガルの格納庫には、次世代とか、新世代とかそういうレベルのものではなく、『霧』が作り上げた機体が数百とその黒い輝きを秘めて眠っている。
『霧』。
この言葉を聞いただけである者は発狂し、ある者は怯えて泣き叫び、ある者は破壊神、人類滅亡の断罪者だと言う。
そのどの言葉の裏には人類の英知など及びもつかぬ、文字通り未知の叡智が凝縮された技術を畏れる声だ。
かつての世界で超兵器とは異なる形で兵器の頂点に君臨する存在。それが霧の艦隊。
世界を恐怖のドン底に陥れた人類最悪の敵。
そんな存在が叡智を集めて作り上げた最新鋭の機体があるのだから。
そして、此処にはかの第二次世界大戦、質から量の時代へと切り替わった戦争でただ一つ、その航空主義の時代に抗い、最後まで沈むことのなかった世界最大最強の大戦艦、マホロバもいる。霧の力を得て。
その実力は数千の大編隊の襲撃を受けてもいとも容易く跳ね返し、叩き潰す。
故に艦載機の開発は不要である、と言い切れた。いや、言い切ってしまう。
しかし、それでも開発を進めるのは、いつか此方でも空母型の艦娘が登場でもすれば、それに順次適応させることができるからだ。
そして、人類側のゴタゴタも収まり、交渉も始まれば、技術の提供が行える。
そうなれば、豊富な空母を持つ鎮守府の戦力の底上げになるだろう。
「まぁ、この機体も目覚める時が必ず来る。いや、来ない時は人類の敗北だ」
「………………」
超兵器による蹂躙、殺戮、破壊の地獄絵図が広がる。
そして、その先に待つのは人類の滅亡。その五文字のみだ。
それは現実のものとなりつつある。先の超兵器との邂逅による艦娘の大半が沈没。人類の戦力はほぼ失われたと言っても過言ではなかった。故に、マホロバの介入があってほぼ無傷の日本艦隊を除く各国の艦隊は戦力の再編成に奔走していることだろう。アメリカのみならず、艦娘を保有する国は、各地にある造船所をフル稼働させて新たな艦娘を生み出しているという。
いわば、丸裸の状態である。
しかし、そこに超兵器が突っ込めばどうなる?
簡単な事だ。国が滅びる。
超兵器は単体で戦略に影響を与える。もしくは単体で一つの国の艦隊に匹敵する戦闘能力を持つ。もしくは単体で一つの国を物理的に消滅させる事も可能な超兵器すら存在する。
今の人類の目下の課題は超兵器に対抗できるものを作ることだった。
しかし、失われた戦力の回復を優先し、技術的な存在もあって、それは遅々として進まない。それが各国の首脳陣の憔悴を駆らせていた。
其処にほぼ無傷の日本に、技術提供したマホロバの存在が浮かび上がる。
特にマホロバの存在は各国に、その中でもアメリカにとっては救いのようなものに見えただろう。マホロバの戦闘能力はアメリカの艦娘が身を持って知っている。
戦艦を一撃、二撃で沈める圧倒的な破壊力、魚雷を数十本も受けても沈まない鋼鉄の城。大艦巨砲主義を文字通り体現した超大戦艦。
大日本帝国の叡智を集結して造られた、大和を上回る至高の戦艦。
その戦艦が帰ってきた事はアメリカの艦娘のみならず、世界中の艦娘にとっては、終わらぬ戦をに終止符を打たれる希望の光明となった事だろう。
故に世界がマホロバを求めた。日本にマホロバの引き渡しを求め、圧力をかけようとした。
しかし、マホロバはそれを察し、自ら人類から距離を置いた。誰もが手出しできないように中立という立場を貫こうとする。
但し、そのマホロバと唯一のパイプを持つのが日本だ。パワーバランスは完全に日本に傾き、列強国は悉く焦るが、これだけはどうしようも無かった。
何せ、マホロバの故郷は間違いなく日本なのだから。遥か、70年前に日本で誕生した超大戦艦なのだから、日本とパイプを持つのは至極真っ当なことだった。
しかし、アメリカやイギリス、ドイツを筆頭とする海軍を持つ国は納得出来ず、それぞれが独自にパイプを繋ごうとちょっかいを出してくる。
鬱陶しいことこの上ないのが………
「お姉さま、原子力潜水艦のようです。3時の方向、400キロ、深度500に2隻。音紋からロザンゼルス級と判定します。静音行動中でありますが、既にこちらでは捉えています」
「………今月に入って5回目か。アメリカも必死だな」
潜水艦の存在だ。マホロバの存在が世界に知られ渡って、位置もジャミングをかけていないことで、人工衛星から丸わかりだったため、人工衛星を有しているアメリカやイギリス、ドイツ、ロシアから手が伸びている。
通常艦艇だと、深海棲艦や超兵器の索敵に入ると忽ち沈められてしまうため、少しでもリスクを減らすために原子力潜水艦が選ばれ、乗組員に潜水艦の艦娘が選ばれ、度々こちらの様子を伺うかのようにウロウロしては離れて、近づいたりと何がしたいのかよく分からん行動を取っている。
しかし、アメリカから此処まで来るのは並大抵の事ではない。ハワイも既に深海棲艦の支配下に置かれ、アメリカの太平洋における制海権は完全に失われていると言ってもいい。
それに、ハワイ、シンガポールを結ぶ線以降南は完全に深海棲艦の支配下にあり、踏み込むこと=死。そんな魔の海域と化している。
リーガルはそんな魔の海域に停滞している。そんな中に原子力潜水艦で向かってきたのだ。重要な理由があるのには違いなかった。
「マホロバとの繋がりを保とうって?」
「そうだな。単純な戦力比で言えば、此処にある戦力だけで世界を敵に回しても勝てる、むしろ、大陸を海に沈めることも可能な程過剰戦力なんだ」
此処にいる戦力はまさしく世界を滅ぼすことも可能な戦力だ。
マホロバを筆頭にリーガル、ヒュウガ、タカオ、イ401、矢矧、時雨、響。
後者の艦娘を除く5隻は霧であり、単艦で一国の艦隊を撃滅できる戦力を持つ。
「……確かに、どこの国でも喉から手が出るほど欲しい戦力だな。ヒュウガたちの存在は知られていないだろうが、それでも、マホロバの存在だけでもアメリカ……いや、世界にとっては魅力的な存在なのだろう」
「本当ならば、無茶な手を使って……それこそ、強引にでも自国の艦隊に組み込みたいが、七月元帥が結んだ条約の存在がそれを阻む」
「なれば、こっそりと秘密裏に手を回そうって魂胆なのね。………如何にもあの国が考えそうな事ね」
うんうんとヒュウガが頷いていると、突如としてサイレンが響く。索敵を担当していたリーガルが閉じられていた目を開き、鋭利な光を灯す。
「お姉さま、件の潜水艦の後方に強力なノイズを確認しました。これはーーー」
ーーー超巨大航空戦艦リヴァイアサン。
海竜の名を冠し、海を支配下に置く超兵器。
それも超兵器の頂点に限りなく近づいた完成された超兵器の一つが二つの潜水艦を喰らおうと襲いかかる。
久しぶりに書いたもので、ちぐはぐです(笑)
ていうか、いきなりリヴァイアサン襲来。